ビルドイン・マイカントリー!   作:たいたい35

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番外編6 お誘い

「大きなアクシデントはあったが、今年の優勝者及びバライアの救世主は、天才剣士アイリス・ルーランに決定した!さあシャロンよ、これをアイリスに」

 

優勝したアイリス様に私はトロフィーを渡します。近くで見るといっそう綺麗で、その笑顔に私の心臓がトクンと跳ねました。聞きたいことはたくさんあります。けれど今は聞けそうもありませんでした。特に隣のフラン様が私を睨んでいるのです。

 

「ほら、もうトロフィーは渡したんだから、王女様も早く離れてください!」

 

私がアイリス様に見惚れていると、フラン様に引き離されました。お父様の一言で、また後で褒美についての話をするということになりました。私は一旦部屋へと戻ることにしました。もたもたしているとアイリス様はこの街から去ってしまいます。なのでなるべく早くアイリス様とお話しする機会をつくらなければいけませんでした。私は考えに考えて、部屋に案内することにしました。もう一度アイリス様が王の間へと足を運ぶ時にお誘いするのです。そうと決まれば何かもてなしを用意しなければいけません。私は紅茶を淹れるのが趣味なので色々と種類があります。どれがアイリス様の口に合うでしょうか。甘過ぎるのは良くないと思います、だからといってマニアックな物をお出しするわけにもいきません。もしかしたら紅茶自体が苦手ということもあるかもしれません。考えれば考える程分からなくなっていきます。何度も迷った挙句、癖のない物の中で一番高価な物を使うことにしました。成金だと思われないでしょうか。ううん、もう決めたのだから、当たって砕ければいいのです。あとは菓子を用意して部屋を片付けました。考えてみれば、ここに誰かを呼ぶなんて初めての体験でした。ましてその相手がアイリス様だなんて、部屋におかしい部分は無いか何回も確認します。インテリアもできるだけ減らして清潔感のある部屋を目指しました。あれこれと慌てている間に、お父様の面会の時間が近づいていました。

 

 

「そうだ、今日は泊まっていくといい。いや、今日だけと言わず明日も明後日も泊まって良いぞ。場所を取らせよう。お前達も、文句無いな?」

 

アイリス様を気に入ったお父様が言いました。二人は驚いていましたが、すぐに了承してくれました。アイリス様はしばらくここに留まってくれる、それが心の底から嬉しくて、思わず本題を忘れてしまうところでした。勇気を振り絞ってアイリス様に初めて自分から声をかけました。

 

「アイリス様、この後私の部屋まで来ていただけないでしょうか。お話ししたいことがございます」

 

女神様のような美しい顔を間近にしながら私はお誘いをしました。意外にもアイリス様はあっさり了解してくれて、肩から力が抜けていきます。そしてそのまま部屋へと向かう二人の背中を見つめていました。

 

自室の前で待っていると着替えたアイリス様が現れました。二人の時間に堅苦しい護衛は付けたくありません。声をかけるといつもは聞かない兵士が簡単に退きました。これもアイリス様の強さを信じてのことなのでしょうか。少しずつ緊張が高まっていきます。私は扉を開けてアイリス様を部屋に招き入れました。早速紅茶を入れて菓子と共に差し出すと、感心したように飲んでいました。

 

「ここまでおいしい紅茶を飲んだのは初めてです。王女様は、紅茶を入れるのも上手なのですね」

 

それはアイリス様の自然な笑顔でした。照れ隠しもできない位顔が赤くなっていることに気づきました。けれど同時に距離も感じました。私もシャロンと呼ばれたい、つくった笑顔ではなくて、今のような自然な笑顔をもっと見せてほしい、そう思いました。せっかくアイリス様が私を褒めてくれているのに、素直に喜ぶことができませんでした。

 

「シャロンと呼んでいただけないでしょうか。アイリス様には、そう呼ばれたいのです。私には敬称はいりません、よそよそしい態度もいりません。お連れのフラン様のように扱われたいのです」

 

アイリス様からしてみれば、ろくに話したこともない私からこんなことを言われて不気味なはずです。けれど不快な顔一つすることなく、今度は私をシャロンと呼んで、紅茶を褒めてくださいました。すっかり舞い上がってしまった私は、アイリス様にもっともっと近づきたい、その思いがどんどん強くなっていきます。距離を縮めるためにはまず自分の思いを知ってもらう必要があります。私は何の迷いもなく流暢に生い立ちを話し始めるのでした。

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