ビルドイン・マイカントリー!   作:たいたい35

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帰路と弓

バライアの街を出てしばらく歩いた。もちろん目的地はセバスの村だった。すぐにでも村へと戻って復興の準備を進めていかなければ。フランは新しい弓を大事そうに抱えながら楽しそうにスキップしている。彼女から貰ったナイフは鍛冶屋で買った剣と共に腰に提げておいた。村までの道のりには見晴らしの良い草原がある。日の入りまでにそこに到着して、とりあえず一晩を過ごすことにした。

 

「ようやくあたし達の計画のスタートだね!まずはお家をたくさん建てないと!」

「セバスと相談して方針を決めないといけないな」

 

無事に到着して、周りが見えなくなる前に急いで火を焚べた。フランが鼻歌を歌いながら夕食を作っている。まともな調理器具も持ち合わせていないのに、本当に器用にこなしている。私だったら何でも焦がしてしまいそうだ。香ばしく焼き上がった魚やその他のおかずと共に焚き火を囲み、広い草原で笑い合った。フランがすっかり深い眠りに落ちてしまった後、少し見回りをして何時間か周りを見張ってから私も目を瞑った。

翌朝、私が目を覚ますと、フランは弓の練習をしているようだった。何本もまばらに落ちた矢が苦心を示している。いくら彼女でも数日で実戦で扱うことができるまでに上達させることは難しい。目を擦る私に気づいた彼女は悲しそうに成果を報告した。

 

「全然当たらないよー!早くアリアと一緒に戦いたいのに、これじゃあかえって迷惑かけちゃう」

「皆最初は当たらない。ゆっくり練習していけばいい。

それに私はフランが少しでも役に立ちたいと思ってくれることが心から嬉しい。だから、迷惑だなんて思わないでほしい。さあ、もう一度構えて」

 

熱心に練習する彼女が愛おしかった。きっと彼女ならすぐに百発百中の名手になるに違いない。

 

「もう少し背筋を伸ばして、弓を高く」

「こうかな。うーん、ちょっと苦しいよお」

 

そう言いながら放った一撃は、綺麗な直線を描き的の中心に当たった。力強くも心地良い空を切る音。彼女なら数ヶ月もすれば立派に扱えるようになるかもしれない、そんな期待まで抱いてしまうくらい美しい一矢だった。やった、当たったよ!喜ぶフランの隣で私は放心してしまう程感心していた。しかし、何か足音がする。魔物か、他の動物か、巧妙に姿を隠しているけれど、確かに近くまで迫っている。

 

「フラン、弓を少し借りてもいいだろうか」

「アリアが持つのは久しぶりだね」

 

音だけに意識を集中させる。前方から少しずつ後ろに回り込んでいる。ゆっくりゆっくり、雑草を潰す音がかすかに聞こえる。そこだ、足音が一段落大きくなってから、私は弓を引いた。数メートル先で大きな獣が倒れた。目が肥大化し、ドロドロに溶けたような全身はとてもフランには見せられないグロテスクなものだった。見なかったことにしよう。念のため頭と思われる部位にもう一発を打ち込んで、何も言わずフランの元に戻った。

 

「アリアすごい……。まるで女神様みたい、とっても綺麗だった!いつかあたしもアリアみたいになれるかな」

「私なんか簡単に越えられてしまう。私の背中を預ける時も近そうだ」

「背中だけじゃなくて、全部預けてくれてもいいんだよ?」

「か、からかわないでくれ」

 

シャロンのことがあってから、一層妖艶な瞳で見つめてくるようになった気がする。じっと見ていると吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥る。ふるふると首を振って抵抗した。フランを先導し、ごまかすように急いで歩き始めた。

 

「そっちじゃないよ、村はあっち。アリアはお茶目さんだね!」

 

結局彼女に腕を絡められ、そのまま連れられるように向かうのだった。

 

「アリアってさ、結構面食いだよね。かわいい子見たらすぐ好きになっちゃうんだから」

「そ、それは……」

「まったく、あたしの気持ちも考えてよね!」

 

私の腕がさらに強く締められる。いつも以上に密着して、誰かに見られたりなんかしたら恥ずかしい。もちろんフランは解く気なんて全くない。やっぱり、少し積極的になった気がする。

 

「アリアのバカ!女たらし!ちょっとかわいいからってデレデレしちゃってさ。やっぱり許せない!あたしだって、結構かわいい方だと思うのに……」

「ち、違うんだ。もちろんフランのことは大切に思っている。大好きだ。これは嘘じゃない」

「ほんとに、大好き?アリアはあたしのこと、ちゃんと見てくれてる……?」

 

強く腕を絡ませる彼女に応えるように頭を撫でた。一番大切な人にこんな辛い思いをさせて、不安にさせて。もっともっと彼女に寄り添ってあげなければいけない。彼女の頬に慣れない口づけをした。フランの顔に熱がこもっていく。やがて真っ赤に染まって、りんごのようになった。これが夕方だったなら、彼女の赤はもっと鮮やかに輝いていただろう。少し見てみたい気もした。なんとか機嫌を取り戻してくれたようだった。

 

「許してはあげないけど、ちょっと安心した。でも今日はもう離してあげないから」

「フランの好きなようにしてほしい」

 

そう言ってしまったら最後、村に戻るまでフランに色々と振り回された。なんとか夜までには到着したが、そもそも何もない場所だから結局野宿のような形になってしまった。とうとう明日からこの村の復興作業が音を立て始める。そう考えると興奮が抑えられなかったのだ。

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