ビルドイン・マイカントリー!   作:たいたい35

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王のもとへ

「大会の参加者か、通れ」

 

城門前の兵士が、私達を入念に睨んだ。参加者を募っているはずなのに、なぜか不機嫌そうに私達を通した。

 

「あれ、本当に参加者か?」

「まさか、あの細身の女二人で勝てるはずがない」

「王に身体でも売りにきたに決まってる。売女かもな」

 

クスクスと兵士達が笑い合う。彼らが私を睨んだように、私も睨み返した。バライア程の大国の兵士が、見た目だけで強弱を判断し、挙げ句の果てに女だからと侮辱する。そんな発言は許しておけるはずがない。傲慢で、哀れで、言葉も出ない。鞘に手をかけ兵士に近づく私を、フランが必死に止めた。

 

「ダメだよアリア。今は堪えなきゃ。優勝して、見返しちゃえばいいんだよ!それに、あたしの知ってるアリアは、誰かに剣を向けるような人じゃないもん」

 

目の前の可憐な少女の一言で、怒りは水が蒸発するように消えていった。哀れだったのは私の方だ。ただ一言煽られた位で剣を持とうとするなんて。大切なフランをこんなに不安にさせて、心配させて、恐れさせて。この剣は人々を守るために振るう、あの日そう誓ったはずなのに。一番守りたい人に畏怖の目を向けられるなんて、もってのほかだった。こんな顔をさせるなんて、もってのほかだった。

 

「私が間違っていた。フラン、幼稚な私を許してほしい」

 

怒りに震えていた私の表情が柔らかくなっていくのを見て、目を潤ませていたフランはいつものように、にっと笑った。

 

「えへへ、アリア大好き!もう怖い顔しちゃダメだよ?」

「もちろん。フランを泣かせることは、もうしない」

 

私の言葉にフランは安心し切ったようで、少し身体を寄せてきた。私の腕を掴んで、歩き出した。もう誰かに剣を向けないように。

 

「ねえねえ、優勝したら何でも貰えるってほんとなのかな。それならあたし、まずは二人のお家が欲しい!」

「もし私が優勝できたら、全部フランが決めていい」

 

城内は想像していたより遥かに華やかで、煌びやかだった。美しいドレスに身を包んだ女性や、城内の警備の兵士、旅芸人など騒々しい雰囲気に包まれている。私もフランも高貴な身分ではないから、少し戸惑ってしまう。近くの兵士に案内されて、王の間に到着した。

いかにも厳格な老人といった感じで、セバスとは全く対照的だった。玉座に深く鎮座する王の隣には当然王妃が、さらにその側に王女と見られる少女が冷たい瞳でこちらを見つめていた。私は深く跪いて、フランも慌てて私の真似をした。

 

「ほう、そなた達も大会の参加者か。二人いるようだが、どちらが出場する」

「私が参加します」

 

大国を治める王の風格なのか、周りには静かな緊張が流れ続けている。周りの警備も私達を凝視していた。

 

「大会は人数が多い程盛り上がる。もちろん許可しよう。ところで、そなたらはどこからやってきた。おそらく旅人だろう」

「名も無き遠い土地から、参上しました」

 

冷たい風が吹いた気がした。王は鋭い剣幕で私を試すように睨みつける。自分の素性を明かさないのは、確かに失礼に当たる。しかし、私の故郷が現在も生き生きとそびえているような村なら、私はここにはいないだろう。隠すつもりはなかったけれど、正直に話すのも、少し怖かった。

 

「出身すらも発言しないか。ここに参加する者は自身の故郷に誇りを持っている者が多いが、そなたのような者は珍しい。まあよい。そなた達が気になっているのは優勝した後のことだろう。お前、説明してやってくれ」

 

桃色の宝石が散らばるドレスを着た王妃が、少し低い声で言った。

 

「もしあなた達が勝ち上がり優勝することがあれば、望みの品を一つ与えましょう。見ての通り我が国は裕福であるので、たいていの願いなら聞き入れましょう。そしてもう一つ。この大会は、今年に限ってもう一つ目的があります。それは、我が娘の婚約者としてふさわしい強さを持った人間を探すこと。広い範囲で噂されるこの大会の優勝者ならば、おそらくアンターニア随一の強者であることでしょう。まあ、あなたは女性ですから、気にしなくても良いでしょう。ただ公平性のため、語りました」

 

王妃の隣で不安そうに佇む王女のアメジストの瞳は、悲しげながらも美しかった。もし優勝することができれば、美しい姫を妻とすることができ、さらに地位と望みの報酬が手に入る。看板の前の人々が、今年は盛り上がると言っていたのは、こういうことだった。

 

「ゆえに、今年は男性参加者が九割。やはり男と女ではどうしても力の差が生じてしまうというもの。それではつまらないので、ハンデとしていくつか条件を考えている。例えば、行動範囲の制限や武器の制限などが挙げられる。あなたは何を望む」

 

フランの言葉を思い出した。優勝して、見返してやればいい。それならば、私にハンデなんて必要ない。

 

「必要ありません」

 

深いしわが畳まれている王も、表情を変えない王女も、この発言には動揺を隠せないようだった。この大会を舐めている、そう捉えられてもおかしくなかった。

 

「ほ、本当に良いのだな。ではそのように手続きしておこう。私からの説明は以上だ。何か聞きたいことは?」

 

王の間にはしばらくの喧騒が響いたが、王が咳払いをすると、途端にその声が止んだ。

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