まずは僕の自己紹介をしようかな。
僕の名前は……。一応、それなりに名が通った貴族の長男なんですよね。僕なんかよりも相応しい人がいるのに…と思いながらも長男に生まれてしまったんだから仕方ないですよね。それで…僕が15歳になったタイミングでミドガル魔剣士学園への入学も決まってしまった。僕は『天才』ではないんだよね。父や母はどうやら天才肌だったらしくどんなことでも出来てしまうような優秀な人だったと周りの人が言っていた。
でも、そんな両親とは正反対に近く、僕は凡人のような人間。
そんな僕に一つだけ非凡なところがあるんです。
自分としてはこんなの『呪い』でしかない。僕の顔には呪いが付いている。その呪いについて話していこうかな。この呪いは…僕の顔を見た人をどんな人物であったとしても惚れさせることができるんです。
これを聞いたら只のバカが言っているように消えるかもしれませんが、本当なんです。この顔のせいで幼い頃はトラブルに巻き込まれることも多かったんです。
だから、普段の生活をする上で僕は仮面をしながらの生活を強いられている。周りに迷惑を掛けないようにするためにも仕方のないことだと分かっているんだけど、やっぱり仮面を付けながら生活をしていたら浮いてしまう。まあ、それに関しては僕が人とのコミュニケーションを得意としていないのが大きいんだけどね。それに加えて仮面が追い打ちをかけている感じかな。
そしてそれは今も継続中でベンチで一人食事を取っている。もうこの学園に通い始めて2年も経っているから一人飯にも慣れちゃったけどね。そういえば、最近の学園ではアレクシア様に恋人が出来たという話題に持ち切りになっていた。アクレシア様と言えば今まで色んな人に告白されていると聞いていたけど、一度も付き合ったことがなかったらしい。そのアクレシア様に急に恋人が出来たとなれば学園中の噂になるのは分かっていたことかもしれないけどね。
「それにしても…相手ってどんな人なんだろう~」
付き合い始めたとは聞いているんだけど、その恋人の詳細についてにはただ一つを除いて何も知らない。その一つはある生徒が話していた『アクレシア様と不釣り合い』という言葉だけ。アレクシア様が選んだ相手のことをそんな風に言うのはどうなんだろうと思う反面、逆にそんな風に言われていると知ると一層に見たくなりますよね。
そんなことを考えていると僕の隣に…黒髪の男子生徒が腰を下ろした。僕は急なことに驚きを隠せなかった。仮面をしているから外から表情は分からないかもしれないが、本当に驚いている。
「え……」
「座っちゃだめだった?」
「い、いや…べ、べつにそんなわけじゃないけど!」
「それなら…遠慮なく座らせてもらうよ」
自分の隣に誰かが座るなんて……。皆、仮面を被っている奴なんて不気味で近づいてこなかったのに。急に誰かが隣にいるというのは予想以上の緊張するんですね。久しぶりに感じるその緊張はどこか心地よく感じた。
「あ、あの……あなたは僕のことが怖くないんですか?」
「こわい…ってキミが?」
「は、はい…。だって僕って仮面をしてますし。気味悪くありませんか?」
自分でこんなことを聞いていると少し悲しく思ってしまうけど、やっぱり疑問に思ってしまうんですよね。
「全然。仮面を被るってとってもカッコいいと思うけどな」
「そ、そう!?」
「うん。少なくともボクはそう思うけどね。なんか悪のヒーローって感じがしてね」
そんな風に言われたのは初めてな気がする。
「そうかなぁ…でも、そんな風に言われると嬉しいです。あ、あの…あなたのお名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「ぼ、ぼく?」」
「あなた以外にいません!」
「ボクはシド・カゲノ—」
「シド・カゲノ—さんですか…」
お名前を聞いたことはありませんが、これからは胸に刻みましょう。僕に話し掛けてくれた人なのだから。僕にとっては一生忘れられないような人かもしれないし。
「…僕の名前は…アール・ロスと言います。よろしくお願いします」
ただ隣に座ってくれただけなのかもしれないのに名前まで聞いちゃうのはかなり…マズイかなぁと思いながらもこんな事がなかったものだから、どうしたらいいのか分からない。
「うん。よろしく。それにしてもキミはカッコいいからその仮面をつけてるの?」
「…いいえ、ちょっと事情がありまして。仮面をつけていないと外を出歩けないんです」
顔を見せることはどんなことがあったとしても避けなければならないですから。
「そうなんだ」
そこで僕はちょっと油断していたのかもしれない。シドくんは何も躊躇することなく、僕の仮面を取った。本当に隙のない動きでまるで当たり前かのように。
「え………」
「………別に何もなさそうじゃない」
「だ、だめ!!!!」
僕は急いでシドくんから仮面を取り上げて付け直した。急いで付け直したけど外している時間があったのが非常にマズイ。その時に僕の顔を見た人…。特に隣のシドくんはまじまじと僕の顔を見ていた。
恐る恐る、隣に視線を向けるとそこには何事もなかったかのように座っていた。
「し、しどくん!!」
「なに?」
「何も異変はないんですか!??」
「…ないかな…」
もしかして見てなかったかなと思ったけど、そんなことはなかったはず。だって視線があったし。だとしたらシドくんにはあの呪いが聞かないのかな。そんな人がいるなんて聞いたことなかったけど、世界は広いんだ。もしかしたら一人ぐらいそんな人が居たとしてもおかしくない。
「これからも話してくれませんか!??あなたのように僕の顔を見て普通で居られる人を家族以外で初めて見るので!!」
「べ、べつにいいけど…」
「あ、ありがとうございます!!!」
やっと僕にも普通に話せるような人が出来たんだ!これから話していって『友達』だと言ってもらえるようになりたいな。
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あの生徒の前では必死に何も動じていないように演じたが…さすがにそろそろ限界。
「はぁ…はぁ……はぁ…あぶねぇ」
まさか顔を見ただけで……何かに取り込まれそうになった。もう一度そっちに言ったら戻っていけない気がした。だから必死に心を強く持ったが……。
「なんだあの生徒は…顔を見ただけで。あれは魔力を要しているのかも分からないな。でも何よりも………あの生徒は可愛いかった」
ボクにもまだこんな気持ちが残っていた事に素直に驚きだ。ずっと陰の実力者を目指してきた。そのために必要でないものはそぎ落としてきた。そんなオレにこんな気持ちは残っていないと思っていた。
「…やばいな……浸食されそうだ…」
分かる人は分かるかもしれませんが、主人公はToLOVEるダークネスに出て来るセフィのような感じです。