シドくんとはちょっとずつだけど関係を深めていけていると思う。
さすがに仮面を外すようなことはあの日からしていない。シドくんには効かなかったとしても周りの人には効く可能性が高い。シドくんが周りと違うだけだと僕的には思っていますから。でもやっぱり気兼ねなく話せるような相手は生まれて初めてだから緊張をしてしまいますね。
でも、今までの毎日と比べ物にならないほどに一日一日が楽しいと感じる。こんな気持ちは初めてだから自分でも分かっていない。
「やっぱり何かプレゼントとか用意した方がいいのかな…」
友達になるには一体なにをしたらいいのだろうか。僕は友達というのが生まれて出来たことがないからこそ本当に分からない。でも、折角のシドくんという話せるような相手が出来たんだから絶対に友達になりたい。
「友達がいないし…相談できるような相手もいないんだよね…」
そんなことを考えながら歩いていると急に後ろから誰かに呼びかけられた。
「あ、あの、アールさん」
僕の名前を呼ぶなんて…珍しい人がいるんだなぁと振り返るとそこには紅色の長髪の女性が立っていた。その人物はこの国に住んでいる者であれば誰でも知っている。もちろん、交友関係が壊滅的に低く、世間に疎くてもこの人だけは一目で分かる。
「アイリス王女…ど、どうされたんですか?」
こっちの方から一方的に知っていても王女の方が僕のことなんて絶対に知らないと思う。それに今まで一度も話したことがないですし。
「…ちょっとお時間よろしいですか?」
「え…いいですよ」
そして僕とアイリス王女は一目の付かないような場所に移動をした。これは僕ではなくて、アイリス王女が望む場所らしい。まあ、僕と話すところを一目の付くところだとアイリス王女にとばっちりがいきそうで怖い。
「あ、あの…あなたとの顔を見せてはくださいませんか?」
「え、だめですよ。見せません」
アイリス王女がなんでこんなことを聞いてきたか分からないですけど、それに関しては首を縦に振れない。それに前々からアイリス王女との交流が合って言われたのならまだ百歩譲って理解できます。でも、前でも言った気がしますが、僕とアイリス王女は初対面なんですよね。
「どうしてもダメですか?」
「だめですよ」
「そ、そうですか……」
明らかにアイリス王女は肩を落としている。僕の顔はステータスシンボルのようなものでもないし、見たら人生が狂ってしまうかもしれない。これだけ聞くと自意識過剰に思われちゃうかもしれない。でも、それは過去が物語っているんです。幼い頃はまだ顔を隠していない時もあった。そんな時に僕の叔父が訪ねてきたことがあったんです。そして僕の顔を見て、叔父さんの人生は変えてしまった。今、叔父さんは幽閉されている。本当に叔父さんには申し訳ない気持ちで一杯だ。
「あ、あの一つこちらから質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「なんで、アイリス王女は僕の顔なんかを見たいんですか?」
少なくとも今まではアイリス王女とも接点がないからかもしれないけど、そんなことを言われたことはないです。なのに急にそんなことを言うということは何か理由があるのかもしれない。
「…引かないですか?」
「引かないと思います」
「誰にも言わないですか?」
「言わないですよ」
「あ、あの……私は元々、あなたが入学した時から気になっていたんです。仮面をしている生徒っていませんし。正直ずっとあなたの素顔を見たかった。王女の特権でも使えば見せてくれたかもしれませんが、それはさすがにやってはいけないことですよね。だから我慢していたんですけど、見てしまったんですよ」
「見てしまった?」
「はい。シドくんがあなたの仮面の取った姿を見たところを。私がずっと見たかったものをシドくんは簡単に見た。だから私も勇気を出して言おうと思ったんです」
そんなに僕の素顔を見たかったのかと素直に驚いてしまった。僕の素顔にそんな価値なんてないのに。
「アイリス王女が僕の素顔を見たがっている理由は分かりましたけど、見せられないですよ」
「ど、どうしてもダメですか!??」
「どうしてもだめなんです」
アイリス王女に何かあったら僕は打ち首にされることが確定になってしまいますし。さすがに僕もまだ死にたくはない。
「はい。どうしてもダメですよ」
「そ、そうですか…。それは残念です」
「すいません。どうしても素顔は見せられないんです。でも、これはアイリス様のためでもあるので分かってもらえると有難いです」
「…仕方ありませんね。あなたがどうしても見せられないのでしたら…。無理強いをする訳にもいかないですし」
「分かってもらえて嬉しいです」
アイリス王女には本当に申し訳ないですが、シドくんのように耐性がある可能性は極めて少ないですからね。もし見てしまってアイリス王女に何らかの影響が出てしまうのが怖いですから。
「で、でも!!!」
「な、なんですか…」
「『目』だけでも見せてもらえませんか!??」
アイリス王女は食い気味に僕に問いかけてきた。てっきり諦めてくれると思っていたんですけど。『目』って。
「だ、だめですよ。もし、アイリス王女に何かあったら僕は責任を取らなくちゃいけなくなってしまいます。さすがにまだ生きたいのです!!」
「大丈夫です」
いや、何が大丈夫なんですか。
「だから,ダメですよ」
「お願いします。私もあなたに無茶なことを言っているのは分かっているんですが、どうしてもあなたの素顔を見たんです。素顔がダメなら『目』だけでもいいので見せてください!!」
それからもアイリス王女は食い下がることなく、ずっとお願いをしてくる。最終的に僕はそれに負ける形で承諾してしまった。承諾してしまったということはもし、アイリス王女に影響が出たら首をはねられることを覚悟しなければいけませんね。
「それでは見せますよ」
僕は少し仮面をずらして目だけが見えるようにした。さすがに全てを見せたらまずいですし。そしてアイリス王女は僕と視線が合うとなぜか…すごい速さで逃げ出してしまった。
「期待外れだったのかなぁ…。でも、まあ良かったと言えばよかったかもしれないですね」
ここでこれ以上、アイリス王女と話していると素顔を見せるという感じになっていたかもしれないですしね。
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「可愛すぎる」
目を見ただけでも分かる。あのつぶらな瞳。ずっと私が見たかったもの。素顔はさすがに見れなかったけど、目が見れただけでも大きな進歩。
「でも…あの感じだとアールさんは覚えていなさそうですね。まあ、それでもいいです。私はあなたのことをずっと覚えていますから」
ミドガル王国の第一王女ことアイリス・ミドガルはこれまでに誰も見たことがないほどに頬が赤く染まっていた。