戦艦三笠、海賊世界であろうとも勝利を手にする! 作:島田愛里寿
信濃丸が電文を送信して数分後…
カチカチカッチカチカチカチ…
『信濃丸より緊急電を確認!』
『『『『!!!』』』』』
戦艦三笠の電通室に詰めていた妖精たちに激震が走った。
『タ連送です!』
『ん』
カキカキカキ…
『ん!すぐに三笠様に届けろ!』
『はい!!』
この電文を受け取った三笠は…
「直ちに全艦出動!出航を命じます!」
『『『はっ!!』』』
『出航用意!錨を上げ!』
『出航用意!錨を上げ!』
パッパッラッパ、パッパッラッパ、パッパッラッパッパッパッラパ~
『総員石炭捨て方!総員…!』
『急げ!早くしろ!』
海戦の場がどこになるかわからない以上、各艦ともに甲板上に積みあがるまで石炭を満載していたのでそれを捨てねばらなず…
『これで高級料亭で何回豪遊できるかなぁ?』『もったいねぇなぁ』
『そこ!ちゃっちゃとやる!』
という愚痴が各艦で見られたのはお約束である。
そうして三つの連合艦隊は事前の作戦計画にのっとって出航していった。
そしてこの時、三笠通信長妖精がふと思いつき全周波数帯に向け通信が発せられた。
『敵大艦隊見ゆとの警報に接し、トラック諸島連合艦隊は直ちに出動、これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども波高し』
これはかつて日本海海戦前に大本営への報告の際に秋山真之作戦参謀がふと思いついて挿入した有名な言葉である。
この時、トラック諸島より出撃した三つの連合艦隊は大まかにこのように編成されている。
第一連合艦隊
大日本帝国海軍
第二連合艦隊
清国海軍北洋水師
第三連合艦隊
ロシア帝国海軍バルチック艦隊・旅順艦隊
この三つの連合艦隊はそれぞれの所属国家ごとの特色があるので一つの大艦隊にまとめることは危険であると三笠が判断したことで結成された。
そして先遣偵察艦の任を受けて先行していた第一連合艦隊所属第三艦隊旗艦の厳島から世界政府海軍捕捉と敵情の続報が入ってきたことと三笠のマストにて監視をしていた士官妖精が世界政府海軍艦隊を発見したことで海戦間近と判断した各連合艦隊ではそれぞれ準備を始めた。
第三連合艦隊では将兵妖精一同に第一種公式服への着替えを命じたのち、将官妖精と艦娘はシャンパンで、一般水兵妖精らはラム酒で乾杯して気勢を上げた。
第二連合艦隊では艦娘・将兵一同に中華料理がふんだんにふるまわれ、普段食べられない高級料理まで提供されたことで士気高揚して、船体までもがキラキラしているように見えたという。*1
そして第一連合艦隊ではすべての艦娘・妖精たちに鯛の塩焼きを始め山海の珍味が供され、日本艦に残っていた恩賜の菊正宗で乾杯をし、『天皇陛下万歳!』『日本海軍万歳!』を唱えていた。
このように各連合艦隊ではそれぞれ兵員の士気を上げて決戦に備えた。
ここでこんな悠長に構えていいのか?と疑問に思うかもしれないが日清・日露戦争のころの戦闘前はこんなもんである。日清・日露戦争時代の戦闘艦の平均速力は18.5キロ程度、日本は最大で33キロは出せるし清国海軍艦艇に至っては12キロほど…。基本的に第二次大戦期の戦闘艦や現代の艦艇に比べたら遅いのだ。
よって黄海海戦においても互いを発見しても海戦開始まで二時間近くかかっていた。
おまけに今回の相手は帆船、清国海軍よりも遅いのだ。昼飯を食う暇すらあったわけである。
さて、ここで世界政府海軍とトラック諸島艦隊の艦隊進路を説明しよう。
世界政府海軍 ⌇ トラック諸島艦隊
⌇
⌇第一連合艦隊三笠←ーーー
⌇
ーーーーーーーー→ ⌇
ーーーーーーーー→ ⌇
ーーーーーー→ ⌇
ーーーーーーーーーー→⌇ 第二連合艦隊定遠←ーー
ーーーーーーー→ ⌇
ーーーーーーーー→ ⌇
ーーーーーーーーー→ ⌇
⌇
⌇第三連合艦隊旗艦←ーーーー
⌇
⌇
⌇
おおよそこの図のように双方は艦隊を動かしていた。なぜ世界政府海軍側は一列ではなくいくつも列を組んでいるのかと言うと実は世界政府海軍の拠点マリンフォードからトラック諸島のある海域にいくまでは帆船では航行が厳しい海域を通らねばなかったのと*2各地からかき集めた船で編成せざるを得ないので練度に不安が隠せず、単横陣に近い陣形で各艦隊を大将らが御守りをしつつ、指揮をとらなければならかったからと言うのがある。
おまけに船長がパワハラ気質な船もあったので士気を保つのが難しく、士気は完全に低下していた。
そして双方の艦隊は相対した。
「むぅぅ…」
この時、センゴクは頭を抱えていた。予想以上に味方の士気低下が見えていたからだ。
「ぶわっはっはっは!センゴク、面白い顔になっとるぞ!」
「だまっとれガープ!!おぬしにも今日はしっかり働いてもらうからな!」
相変わらずガープは能天気なようである。
そして三笠は…
パッ!
敵との距離が8000mに達した時、手を左に折った。
『とーりかーじ!いっぱい!』
『とーリかーじ!』
この時、第一連合艦隊旗艦三笠は敵前でUターンをした。日本海海戦よりもU字に近い形でである。
三笠はかつて秋山真之が考案した作戦に習い敵の頭を押さえることを最優先したのである。
そして同時刻、第三連合艦隊旗艦は面舵を取って同じくUターンを行いこちらも敵の頭を押さえる進路を取った。
とはいえこれは場合によっては味方の破滅を招く恐れがあった。
三笠以下の各艦が次々と回頭している間は僚艦共々射撃は不可能に近く、また敵にとっては制止目標を打つに等しい。
これは実際の日本海海戦で発生した事態でもあった。
しかし、この世界の標準的な軍艦の射程は日本海海戦時代の砲とは違い有効射程距離は100m程度であった。
なので砲弾がとどくわけがない…。
「ええい!さっさと撃て!!」
「む、無理ですよ!届くわけがありません!!」
何隻かが勝手に発砲したが先頭艦に届く前に海に弾着し、当然のように弾着した。
おまけにこれはセンゴクの指示を無視しての行動であったので艦隊全体が混乱状態に陥っていた。
そして三笠以下、第一連合艦隊第一戦隊・第二戦隊が回頭を完了したその時…
『距離6300!』
『射撃を開始しますよ?』
「…ええ。お願いします」
『打ち方はじめ!』
『前部六インチ砲!試し打ち方!目標、敵艦隊先頭を航行中の敵艦!速力おおよそ2ノット!打ち方はじめ!』
『前部六インチ砲試し打ち方!』
『距離6300!打ち方!はじめ!!』
『用~意!てぇぇえ!!!』
こうして三笠の右舷前部に設置されていた六インチ砲から伊集院信管を搭載し、下瀬火薬を満載した榴弾が世界政府の悪意を乗せた船に向かって飛翔していった。
次回 運命の砲弾