それではどうぞ!
それは幼き日の少女の記憶だった。
幼き少女は小さな子犬と戯れていた。その傍らで少女の母親がアルバムらしき物を楽しそうに眺めていた。
少女の母親「?」
母親が少女の視線に気づくと微笑みながら、あることを少女に伝えた。
恋「……」
そして幼き少女だった恋は掲示板にとある張り紙をすると、決意の表情を浮かべてその横の封筒から紙を一枚取ると、去っていった。
掲示板に貼られた紙は、生徒会発足に付いてのお知らせだった。
《OP:
『決戦!生徒会長選』
可可「うう~……」
朝……何故か可可は疲労困憊気味に弱々しく唸った。
かのん「お疲れだねぇ」
可可「島から戻ってすぐ新学期は堪えるデス……」
神津島でのライブが終われば、すぐに夏休みが終わり2学期が始まったのだった。
しかし、残暑がまだまだ厳しく、人によっては昨日までの長い夏休みを名残惜しく想って憂鬱になる気分の者もいるのだ。
かのん「可可ちゃん、ステージ作りとか色々頑張ってくれてたもんね。ありがとう」
可可「かのん~~っ」
可可が感激したような瞳をかのんに向けた時だ。
「しゃきっとしなさいっ!」
ピシャリとした、身が引き締まるような声が前から聞こえた。
かのん・可可「あっ」
見れば千砂都が立っていた。しかし、かのんと可可は千砂都を見て……
かのん「ちぃちゃん?」
可可「何か、違和感が……」
そう言ってかのんはじっと目を凝らして、クゥちゃんは瞼を擦って千砂都を注視する。
そんな2人に構わず、千砂都はステップを踏みながら話し続ける。
千砂都「これからは前よりも、みっちりダンスの練習するんだから、疲れてる場合じゃないよ!うい~っす!」
そして気づいた。音楽科である千砂都が、どういう訳か普通科の夏服を着ていたのだ。
それに気づいたかのんと可可は、2人して目を大きく見張って驚愕している。
千砂都「どう?普通科の服!」
千砂都はスカートの裾をちょこんと摘まみながら1回転、そこから片足だけ爪先立たせたポーズで訊いてきたが、それに対する少女二人の答えは、
かのん・可可「ええっ?ええぇぇぇぇぇぇっ!!??」
互いの手を合わせ、ワルツのダンスポーズの一つを取りながら驚く事だった。
そして同じ頃……舞斗はスマホである画像を見ていた。
舞斗「……」
?「どうせれました?本郷さん」
舞斗「ん?神崎か」
舞斗に声をかけてきたのはヴァイスだった。
そして舞斗の見ている画像に視線をやると……
ヴァイス「その子は確か、幼馴染の……」
舞斗「あぁ……実は結ヶ丘の音楽科だったんだが、普通科に転科したみたいなんだ」
ヴァイス「そんな簡単に行くのですか?」
舞斗「本当は退学してまた普通科を受けるつもりみたいなんだが、理事長が転科を許可してくれたみたいだ」
ヴァイス「そうなのですね」
舞斗「ところで神崎」
ヴァイス「?」
舞斗「帰り支度してるが……なんかあるのか?」
ヴァイス「えぇ……これから習い事が……」
舞斗「大変だな、神崎財閥のご令嬢は」
ヴァイス「と言って跡取りは弟になりますが」
そんな風に雑談していると……
?「お―い!」
舞斗・ヴァイス「?」
舞斗「吉井」
ヴァイス「聡も」
聡「久しぶりだな」
舞斗とヴァイスに声をかけたのは峻貴と聡だった。
舞斗「大学になんでいるんだよ」
峻貴「実はここの近辺である奴らを追ってるんだ」
ヴァイス「奴らとは?」
聡「うちの訓練生時代の同期なんだが……」
そう言って聡はとある写真を4枚出す。そこで写っているのは4人の人物だった。
舞斗「あれ?こいつらって……」
ヴァイス「確か私を……」
舞斗は4人。ヴァイスはその内3人には見覚えあったのだ。
その4人は狼我と猿太郎、豚太、弦の4人だった。
峻貴「知ってるか?」
舞斗「この3人はな……以前ヴァイスを襲おうとしたんだが、俺が返り討ちにした」
聡「なんだって……」
ヴァイス「ですが……だいぶ前の話ですが」
舞斗「そいつらがどうかしたのか?」
峻貴「実はEGFのある研究細胞をそいつらが盗んだんだ」
ヴァイス「研究細胞?」
聡「宇宙からきた細胞組織なんだが、その調査で研究所にあったんだが」
舞斗「でもなんでEGFの訓練生がそれを盗むんだよ」
峻貴「そいつ粗暴が目立ってな。色々な悪事を隊長に告発されたんだ」
聡「今までは、政治家や自衛隊の上の立場の親の影で隠れてたんだが、その親の悪事も暴かれてな」
舞斗「その細胞を売って儲けをしようと?」
ヴァイス「宇宙細胞にそれだけのことができるんですか?」
峻貴「それが出来るんだよ……」
舞斗・ヴァイス「?」
そう言って、話だしたその細胞の実態を聞いて、舞斗とヴァイスは驚愕した。
舞斗「その細胞を摂取した生物は突然変異を起こして怪物化するだって!?」
ヴァイス「そんな細胞が売られれば……」
峻貴「突然変異を起こした奴らを研究と実験すれば生物兵器の完成だ」
聡「だから一刻も早くそいつらを見つけないといけないんだ。見つけたら連絡してくれ」
舞斗「わかった」
そう言って、峻貴と聡はパトロールに戻っていった。
舞斗(厄介な事にならないといいが……)
そう思った舞斗だった。
そして場所が結ヶ丘に戻り、千砂都は他の生徒達と仲良く話していた。
それをかのんは頬杖ついて見ていた。
可可「出来マシタ!」
かのん「ん?」
そこに可可が何かを持ってやって来た。それは『しぶやかのん』と書かれたタスキだった。
かのん「何で平仮名?」
可可「調べてみたら、名前を平仮名にするのは日本の選挙の基本と書いてありマシタので!」
かのん「選挙って?」
可可「まさかかのん、忘れたのデスカ!?今さっき見たばかりデスよ!」
そう言って可可が見せたのは、結ヶ丘に発足される生徒会の選挙の立候補届の用紙だった。
かのん「それは覚えてる。……何で私の名前が書いてあるの?」
震える声でかのんが尋ねれば、可可はさも当然のように答えた。
可可「勿論、かのんが立候補するからデス」
数秒の沈黙が起きたのだった。
かのん「あ~……」
そんなかのんが次に発したのは、そんな間抜けな返答だった。
それに構わず可可はスマホを弄りながら続ける。
可可「アカウントも作りましたので、立候補にあたっての動画を撮影します!」
かのん「い~……」
完全に逃げ道を塞ぎにかかっている可可がかのんにタスキを渡そうとするが、かのんが取った行動は……
可可「さぁ、このタスキを!」
かのん「うえおぉぉぉぉぉぉっ!!」
可可「かの――んっ!?」
全力疾走で逃げたることだった。
可可「かのん!開けて下サ――イ!!」
かのんは部室に閉じ籠り、籠城した。
それを可可が扉をドンドン叩き、次いで扉を力ずくで開けようとするが、かのんも開けられたくないのか、内側から閉めようと必死に抵抗する。
かのん「嫌だっ!絶対に出ないぃぃ……っ!!」
千砂都「かのんちゃん」
千砂都に声を掛けられてそちらに視線を向けると。
千砂都「とりあえず話そ。話せば分かるから」
座り込んでる千砂都が、かのんの名が書かれたタスキをかのんに見せながら、宥めるように話しかけた。
かのん「ちぃちゃんも賛成なの!?」
千砂都「賛成と言うか……」
そしてこうしている間も、かのんと可可の扉を使った攻防はどんどん激化していく中で千砂都の後に可可が続ける。
可可「スクールアイドルの為デス!今立候補を表明しているのは、恋と言う人だけデス!あの人が生徒会長になったらスクールアイドルはいよいよマズイですぅぅぅうっ!!」
千砂都「それに、生徒会長は普通科の生徒がなった方が良いって声も多いんだよ?」
かのん「だったらちぃちゃんか可可ちゃんが立候補しても良いでしょぉぉぉおおっ!!」
そんな風に押し問答をしてると、背後から不敵な声が聞こえた。
すみれ「しょうがないわねったらしょうがないわねぇ。うっふっふっふっ」
振り返ればすみれが立っていて、彼女は自身の名が平仮名で書かれたタスキを体に掛けていた。
すみれ「ショウビジネスの世界で生きて来たこの私が、その力を発揮して……」
そんな風に威風堂々とアピールしてきた。ところが……
可可「かのんお願いしマス!」
千砂都「かのんちゃんっ!!」
かのん「嫌だぁぁああああっ!!」
しかし誰も彼もが無視していて、かのんに至っては奇声を上げていた。
すみれ「ギャラクシーっ!?」
と言いながら面白いズッコケを披露した。
すみれ「スクールアイドルを続ける身として、この平安名すみれが……!」
それでもめげずにすみれは格闘中の可可にアピールするも……
可可「かのぉぉぉぉぉんっ!!」
すみれ「見なさい…っ!」
変わらずスルーされたので、遂には彼女の顔を両手で挟んで強引に自分に向かせる実力行使に出た。
可可「どちらしゃまデスカ?」
すみれ「知ってるでしょ!!」
千砂都「あれ? え~っと……す……す……何とかさん?」
すみれ「すみれったらすみれよ!!全く!メンバーの名前忘れてどうするの!!」
千砂都「すみませぇん。新入りなもので~」
ポヤッとした顔でそう言う千砂都。すみれはそれを然程気にせず話し続ける。
すみれ「まぁいいわ。生徒会長選挙と聞いて、正直それほど気は進まないけれど──」
可可「なら結構デス。間に合ってマス。おととい来やがれ。身の程弁えろデス」
すみれ「何さらっと酷い事言って……!」
当然すみれも文句を言うとするが、言い切る前にかのんが部室から飛び出し、すみれの両手を握った。
かのん「すみれちゃん!」
すみれ「ええっ?」
かのんはそのまますみれにすがるような、或いは救世主を見るような瞳を向けながら言った。
かのん「ありがとう!全力で応援するから!!」
すみれ「ええぇ……////っ!!」
困惑と歓喜が混じった表情と声を発するすみれ。それに対して可可と千砂都の2人は……
可可・千砂都「ええ~~……」
心底残念そうな、不満そうな声を上げた。
すみれ「え~~って言うな!!」
場所は変わり、音楽科の廊下では……
恋「立候補?」
音楽科生徒A「何か普通科で1人いるんだって」
普通科の生徒が立候補者が出た事で、音楽科でも既に情報が出てるようだった。
恋「そう……」
音楽科生徒B「選挙になっちゃうけど大丈夫かな?」
音楽科生徒C「普通科の方が多いし……」
音楽科の生徒は不安そうな表情をするが、恋は毅然とした態度でいた。
恋「仕方ないです。それに必ずしも普通科の生徒が普通科の候補者を応援するとは限りません。頑張るしかないです」
恋のその態度に安堵したのか。
音楽科生徒B「そうだね」
音楽科生徒C「うん頑張ってね」
音楽科生徒A「もし手伝うことあったら言ってね」
恋「ありがとうございます」
そう言って音楽科の生徒が去った後、恋は立候補の紙を理事長に提出していた。
理事長「本当に立候補するのですか?」
恋「はい!」
理事長の問に恋は決意した表情で答えた。
一方その頃かのん達はすみれのPR活動をしていたのだが、可可のやる気が感じられず、その間も恋は着々と普通科の生徒も味方に付けていった。
可可「これで終わりデス。勝てる訳ありまセン。……そしてスクールアイドルは……」
憂いを帯びた瞳を可可は窓の外にやり、そして近い未来を予測した妄想を垂れ流す。
着ている服が全身黒ずくめだったり、街の背景や仲間とのやり取りがマフィア映画みたいだったり、恋が白い軍服を着て『やっと見つけましたよ、スクールアイドル。校則第10条325項!結ヶ丘におけるスクールアイドルの活動は、この一切を禁止する。引っ捕らえなさい!』などとそんな妄想をしていた。
かのん「そこまではないと思うけど……」
可可「いいえ!あの人ならやりマス!あの目は、スクールアイドルを憎んでいる目デス!」
かのんが否定するが、可可はその姿勢は崩さない。
そこで千砂都はある疑問を投げかける。
千砂都「でも、どうして彼処までスクールアイドルを毛嫌いするんだろう?」
かのん「ちぃちゃんも分からないの?」
千砂都「うん。音楽科では、殆どその話した事ないし……」
すみれ「やはり選挙で勝つしかないわ!」
すみれがそう言うと、千砂都が尋ねた。
千砂都「でもどうやって?」
すみれ「大丈夫!」
そう言って意気揚々としていたのだが……
舞斗「んで……千砂都のたこ焼き屋の屋台を引っ張ってきて、作ったたこ焼きを生徒達を買収しようとしたと」
ユー「それで理事長にペナルティを課せられて、マイナスからのスタートねぇ……お馬鹿さんね」
すみれ「やかましいったらやかましい!」
すみれが行った事を聞いて、舞斗とユーは呆れ返っていた。
舞斗「てか……普通にかのんが出れば良かったんじゃないか……」
可可「舞斗さんもそう思いマスか!」
かのん「やめてよ……」
千砂都「舞君はどう思う?」
舞斗「どうって?」
ユー「あの恋って子のこと……」
舞斗「俺がそんなの知るわけないだろ……ただ」
舞斗がそんな風に言えば、みんな一斉に耳を傾ける。
舞斗「千砂都に会う為に案内してくれた時、軽く話したんだが……彼女…相当追い込まれてる感じがした」
かのん「追い込まれてる?」
すみれ「何によ……」
舞斗「それが分かれば苦労しないよ……」
そう言いながら、舞斗はカップを洗い始める。
ユー「でも可可ちゃんじゃないけど……あの子何かしてきそうな感じはするわね」
可可「やっぱりスクールアイドルを……!」
ユー「スクールアイドルだけで済めばいいけど……」
そして迎えた翌日……
すみれ「ざ、ざっ……惨敗…っ!何でったら何で~~っ!?」
恋が101票、すみれは-20票と挙げられた選挙結果に、すみれちゃんが愕然とした声を上げた。そして器用に座ったまま地団駄を踏んだ。
可可「当然デス。舞斗さんも言ってマシタ」
すみれ「じゃかましい!!うっううぅぅ~…ッ!!」
可可「まぁ、ペナルティがなくても結果は変わりませんケドね。だから可可は、最初からかのんが良いと言っていたのデス」
かのん「でも、やっぱり葉月さんが生徒会長で良かったような気がする」
千砂都「私も」
すみれ「アンタ達ぃッ……!!」
かのんに続いて千砂都までそんな事を言うので、すみれは恨みがましそうに涙目で二人を睨む。
かのん「いや、すみれちゃんがダメってわけじゃないんだよ?ただ学校全体のことを考えたり色々決めていったりしなきゃいけないことを考えると……」
かのんはあくまでも学校の事を考えて、恋がいいと思ったのだ。しかし……
可可「ですが、スクールアイドルは……」
千砂都「そこだよねぇ……」
唯一の懸念事項に可可は俯き、千砂都も達磨を擦りながら困り顔になった。
かのん「……話してみる」
やや数秒の沈黙の後、かのんはそう切り出した。
可可「聞いてくれるでしょうか?」
可可の問いに、かのんは曖昧ながらもしっかりとした言葉を紡いだ。
かのん「分からないけど……。でも、きっと何か理由がある気がするんだ」
そして理事長室では……
理事長「どうするつもりですか?」
恋と理事長が向かい合って、話していた。理事長の問を遮るように恋はあることを聞いた。
恋「その前に来年の入学希望者の数を教えてください。生徒会長として……」
その時、恋の拳に力がはいる
恋「いえ、創立者の娘として知る権利があります」
話が終わったのか、恋は理事長室から退出する。
恋「失礼します……っ」
そして理事長室を出るとかのんが窓際に佇んでいた。
恋「貴方は……」
かのん「ちょっといいかな?」
そう言ってかのんは紙パックのアップルティーといちごみるくを恋に差し上げる。
いかがでしょうか?
次回は後編になります。
それではまた次回!
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