超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜   作:環 藍河

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第9章 そして伝説は、次の世界線を超える

 

今日、アカリとヒビキはビートポータルで元の平行世界へ帰る。

アルダーク打倒まで居残ると申し出た2人だが、ミキサダがこれを固辞。曰く、

「いつまでも甘えていては…こちらの人間の自立が叶わないからな。

それに、向こうの長官も…俺を介さない君たちとのDチャージを、心待ちにしているようだぞ。」

「『っっ!!!』」

 

…理由はともかく、壊滅の危機からダイビートを建て直した功労者の旅が、間もなく終わる。

 

「ルビー! これが今の、私の全力…!

あなたに鍛えられた、全部だああーーっ!」

「来てっ、ガーネット! 

この目に全部、焼き付けるから!」

…こうして、師弟のように強く結ばれた2つの赤石が、最後に再び共鳴する。

 

「やあああっ! たあっ、ええいっ!」

がっ、がつっ、ばしいっ。

「くうっ…!」

最後のスパーリングは、攻撃こそルビーに届かないものの、以前よりもガーネットのディフェンスが堅牢になり、一進一退の展開。

 

「はああああーーーっっ!」

ちょっと前まで新米だった戦士が、吠える。

「いいよ! ラスト一撃!」

我流の悪い癖を削り、僅か半月ほどで洗練された戦士に鍛え直した先輩戦士が、構える。

 

たたたたたっ、ばっ…!

(…えっ…?!)

ジャンプの踏切から測った、ガーネットが振るう拳が届く瞬間。だが…そのタイミングで届かないインパクトに、虚を突かれるルビー。

 

「決まれええええっっ!!」

一撃目の右はフェイント、本命は体を一回転ひねっての、左脚のニールキック。

 

びしっ。「くっ…!」

 

(…当たったああっ!)

 

「やああっ!」「がふっ…!!」

時間差攻撃は、その後に無防備な五体を晒し、ルビーの回し蹴りに撃ち落とされる。

 

どさあっ。

「かはあっ、げほっ、うっ…!」

冷たい地べたに伏し、しかし初めてルビーの頬に当てた一撃の余韻を噛み締めるガーネット。

(や…やった…、やったあ〜〜〜っ!!)

「はあっ…、はあっ…。」

もちろんスパーリングはルビーの勝利だが、ガーネットの著しい成長に、ルビーは目を見張る。

(うわ〜、スキあり、だったかなあ。

でもこれなら、きっと大丈夫だね…!)

「…こっちのアカリも、無茶する奴だとは…。」

「…そちらのアケミも、そうなんですね…。」

 

紅き戦士たちの最後のスパーリングを見届ける青き戦士2人は…女房役は嘆息し、お互いの気苦労をいたわり合った。

 

……

「…やっぱり、実戦じゃまず使えない、捨て身の一撃を当てても…ダメだよね。」

「ううん、その後にチームの誰かが必ず追撃できれば、無防備をカバーできるもん。ラズリたちとの連携次第で、十分イケるよっ!」

カバーを強要される相棒の気苦労も知らず、アカリとアケミは談笑する。

 

「でも…ガーネットはどうして、ギリギリの無茶な戦況で、ためらわずに飛び込めるの? 怖く…ないの?」

「…あっ…。」

 

崩壊寸前のダイビートを踏みとどまらせたのは、ガーネットの…谷崎アケミの無鉄砲だった。

でも、こんな捨て身を繰り返せるのは…?

 

「…私、救えなかった人がいて…。

近所のおじいちゃん…いつも夕方にジョギングする元気な人だった。

でも…私の前で、胸を押さえて倒れて…。」

「…!」

「学校で習った心肺蘇生法も…持ってたスマホで救急車を呼ぶことも…何一つできなかった。頭が真っ白で、ただ自分が震えるだけだった…!」

「ああ…。」

 

「命は取り留めたけど…心臓が弱って、もう走れないって…! 

だから…、あそこで動いていたら、おじいちゃんが助かったかもしれないと思うと…、

自分が情けなくて…悔しくて…。」

 

アケミは、自らの古傷を隠さず語った。

「踏み込むのは怖いけど、立ち止まってしまって、誰かが苦しむのが、もっと怖いから…。

それ以来、私は、誰かが危ないとき、自分にできるできないお構いなしに、体が先に出るんだ…。」

 

(…そうなんだ…!)

 

 すっ。

 

アケミの懺悔を聞いたアカリは、指切りげんまんの小指を立てる。

 

「アケミちゃん、私と約束して。

助けたい人のためにムチャするのは、悪いことじゃないよ。

…でも私たち、どんなに強くなっても、全部の人なんか救えないんだ。それは神様にもムリなことなんだから。

だから…誰かを助けようとしてダメだったときは…必ずまた来るその時は、絶対に一人で抱えないで。その悲しみを自分一人で背負わないで。」

「…アカリでも、救えない人がいるの?」

「うん…きっとアケミちゃんにも、すぐわかるよ。」

 

(そっか…。きっとアカリは…。

私よりずっと修羅場を潜ってきたエスカ・ルビーは…。

私よりいっぱい、救えなかった人がいて、たくさんの悔しさ、たくさんの悲しみを越えてきたんだ…。)

 

「エスカチームみんな…、ヒサキちゃん、のどかちゃん、リザちゃん…、みんなで泣けば、アケミちゃんの分は4等分だから。ね?」

 

アケミの憂鬱を、少しでも和らげたい。

アカリなりの、先輩戦士としての精一杯の思いやりは…。

 

 

「…ええ〜っ…、やだあ…。」

 

無惨に却下された。

「…はへっ?」

 

「…ヒサキちゃんはともかく。百歩譲ってのどかはセーフでも。

リザは…やだっ! アイツと悲しみを共有する絵ヅラが想像できないっ!」

「え…、えええええっっ!!?」

「だってさあ、アカリっ! 聞いてっ!!」

……

昨晩、談話室に集まったエスカチーム4名は…

記録映像に悶えていた。

 

《司令が欲しいなら、私を倒して、力ずくで奪っていきなさいっ! 私は…負けないっ!》

《私しか、いないんだああーーーっ!!/

司令を、護れるのは!

もう、世界中で、私だけなんだああーーーっ!!》

 

「…うわ〜っ、ガーネットってば、激アツぅ。」

「あ…ああっ…! 何で…!」

「…リザ…、これ、我が貸した、我等の戦闘記録の…切り抜きだよな…?」

「ヒサキちゃんっ!? ず…ズッ友だと思ってたのに…裏切りだああーーっ!!」

「違うっ! ダイビート復活の経緯を学びたいとリザが言うから…!」

 

「じゃあ、じゃあじゃあじゃあ、もう司令くんにはコクったのよね? 返事は? 婚約は? コドモは何人希望?! ベビーベッドを贈らなきゃ〜〜っ!!」

先日参戦した超昂戦士(魔女のリーダーであることは未だ秘密)にして、ミキサダ✕アケミのカップリングをぐいぐい推す、エスカ・スピネルこと氷室リザ。本人いわく、

「自分は正室より、側室の方が燃えるの〜! だってだって、

『ああっ…ダメなのに、大事な友達の、大事な司令くんを…私が…!』

…くうう〜っ、捗るう〜!」

…と、妄想を拗らせている。

元の世界の紫の誰かさんが長官にぐいぐい迫るのと同じ圧の強さで、アケミをぐいぐい司令に絡ませるリザ…どちらも負けず劣らず、困った小悪魔である。

 

「リ…リザちゃ〜ん…! ダメだよお、仲間のまっすぐな気持ちを、話のタネにしちゃ…!」

同じく新規参戦、物怖じが酷いこの子は、エスカ・シトリンこと陽菜のどか。

なお…ヒーローを熱く語ると止まらなくなり、変身すると自分の理想のヒーロー像が憑依する。

《あーーーっ、はっはっはっ、はあーーっ!!

負けない! 退かない! 躊躇わない!

燃える陽射しは不滅の生命! アルダークに地球は、絶対に渡さないっ!!》

…すご〜く、いい子なのだが、豹変のギャップの分だけ、元の世界の黄色い誰かさんよりも面倒な後輩ちゃんである。

 

『ガーネット…あなたはもう、一人じゃないよ…!』

《うわあああああーーーーーっ!!

うぐっ…、ひぐっ、ひぐっ…

うわあああああーーーーーんっ!》

 

「くうう〜っ、ガーネットの心の底からの号泣、いいっ! ご飯何杯でもイケるっ!!」

「や…やめろおーーーっ!! 

リザあああーーっ! 消せえええっ!!

ダメっ、私、死んじゃうっ、

悶えて死んじゃう〜〜っ!!」

 

「リザ! 趣味が悪いぞっ!」

(ぴっ。)

 

《やめて、くれ…っ…。

ガーネット/は…私の…/最後の希望なんだ…。

奪うな…。奪わないでくれえええっっ!!》

 

「な…なあああーーーっ!!?」

「んー、司令くん✕ガーネットに、横恋慕のラズリもかけちゃう?」

「わ…我としたことがあああーーーっ!!」

「へ…編集の悪意が、酷すぎだああ〜〜っ!!」

「あ…あうあうっ、み…みんなあ〜〜っ!?」

……

「…ふ〜っ、ふ〜っ…!

あ…アイツに弱いトコ見せたら、喜々としてメンタルえぐってくるから…!

リザにだけはっ! ぜ〜ったい頼らないっ!!」

「あ…あはは…。」

どうやら…こちらのエスカチームも曲者揃い。

(…帰ってから…うららちゃんとエリーちゃんに『ねーねー、あっちのあたし、どんなだった!?』なんて聞かれたら…

どう説明しよう…?)

 

 

「だ…だったら、私に電話して! さやかさんの発明で、平行世界間でも通話できるから! アケミちゃんが辛いときは、その悲しみ、私と半分こしよ? ね?!」

 

「…それもやだ。」

 

 が〜〜ん…!

 

「そ…そんなあ〜! 私は…まだアケミちゃんの信頼に値しないのお〜?!」

 

「だって…決めているんだ。」

くすっ。

 

「アカリへの最初の電話は、この世界に平和を取り戻したときの、終戦報告にするんだって…!」

「あっ…!」

 

がしっ。ぎゅっ。

「私…絶対もっと、強くなる。ルビーに肩を並べて、この世界も、他の世界のピンチも救える、次のレジェンド戦士になってやるんだっ!」

 

力の抜けたアカリの小指を左手で力強く握り、自分の右小指と結ぶアケミ。

「だから、これが私からの約束。

アカリが元の世界に戻っても…。

この指切りげんまん、絶対だから!」

「…うん、吉報、待ってるっ!」

……

平行世界のダイビートの戦士たちは、打倒アルダークを誓い、今日も敵に立ち向かって行く。

その向こうに待つ真の敵の存在も、未だ知らないまま。

だが、それでも。

 

「みんなの想いが世界を創る!

生まれろ、新宇宙! 

ビッグバン・エスカレーションっ!!」

 

エスカ・ガーネットが、胸を張って平行世界にもたらした平和をエスカ・ルビーに報告する…その日は遠くないと信じよう。

そこに至る物語は…別の機会に。

 

【超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 完】

 




超・長文(弊社比)お読みいただき感謝申し上げます。筆者の環藍河です。
2022年の締めくくり、「超昂大戦2周目(鬼ハードEXモード解放)編」お届けしました(違う)。

トキサダ危篤・レジェンド3人不在・上弦衆機能不全・国防軍裏切り…。パワプロの★5シナリオ(最終回で23-2から逆転せよ)もびっくりの極限状況から奇跡を起こす、2人プラス2人の物語でした。救いはルビーもサファイアも★5育成済、くらいで…BADエンド待ったなし。

オリキャラを使うのはイチかバチかでしたが。
うちの子・アケミ(エスカ・ガーネット)…。
読者の皆さまに
「ニセモノーーっ!!」
「アカリの劣化コピーやんけ」
…と取られて嫌われちゃうと辛いのですが。
(うららなら『ニセエスカに黄色いマフラー…お約束があざといのよ!』とか、絶対えぐってくる…)。

作者の思惑は「平行世界の同位存在でも、絶望寸前でも、やっぱりルビーはルビー、アカリはアカリっ!」であります。
再読いただける神読者さまには、アケミにアカリを、ヒサキ(エスカ・ラズリ)にヒビキを投影して、超昂大戦ifストーリーとしてお楽しみいただく読み方を提案申し上げます。
そうでなくとも、時々読み返したくなる息の長い作品でありましたら、幸甚です。

孤立無援の超昂戦士に強力援軍…原作のクリスマスイベント等でもすごく熱いし、やっぱり全国のトキサダさんに響く王道展開なのかなあ、と打算も入れながら、非公認ジェネリックSSであることに甘えて、好き放題書いてお届けしました。

2023年もぼちぼちと超昂大戦でSS書きます。
元旦(つまり明日)も1本アップ予定です。
「報告書シリーズ」の第6弾、先日のクリスマスイベント登場のあの子と、エスカチームの触れ合いを切り抜きチョキチョキ…乞う、ご期待です。
正月ガチャやイベント巡回の合間にでも、お越しを賜れば幸甚です。
それでは、本年中のご愛顧に深謝申し上げ、おいとまいたします。全国のトキサダ様、良いお年をっ!

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