超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜 作:環 藍河
※原作にないオリジナルキャラクターが登場します。二次創作として許容できない方はご注意ください。
(…うっ…?)
キリエルやナリカ、スバル…ルビーたちの世界にレジェンド戦士を召喚するときは、必ずトキサダやユーノ、あるいはさやかが待ち受け、歓迎する。
だが、ルビーとサファイアが到着した部屋は…
(…真っ暗だ…!)
目を暗がりに馴らし、人の気配がないことを確かめ、携帯通信機をライト代わりに、慎重に周囲を探る。
部屋は…ビートポータルのゲートがある他は電源コンセントやホースの挿入口が壁にあるくらい。まるで病院の手術室のように、殺風景で、中途半端に広い。
(サファイア、さやかさんの指示通り、ビートポータルと通信機、ペアリング設定したよ。)
(…ルビー、こっちに風の流れがある。)
サファイアが隠し通路を探り当て、こちらの気配を消しながら前進。
がががががががっ、びしゅっ。
ぱあんっ。ぼふっ。
がががががががっ…
(!! サファイア…!)
(ああ、この上は…交戦中だ!)
マシンガンの発射音らしき銃声と、断続的に混ざる小さな爆発音。
ぼふっ。しゅうううっ…。
(よおし、自動防衛システム、完全に沈黙! 全フーマンども、突入せよっ!)
(【〘ブブーっ!!〙】)
(…基地が…!)
(侵攻を受けているのか…!)
(研究室を探せえっ! 超昂戦士の力の源、薬か動力炉か、変身装置そのものか、必ず見つけ出すのだっ!)
(【〘ブブーっ!!〙】)
コマンダーの怒号に続き、フーマン軍団が基地荒らしを開始。程なくこの地下通路も暴かれるだろう。
もう猶予ならない。
どごおおおっ。
「ブ〜〜〜っ!!」
床の隠し扉を見つけたフーマンが蓋を持ち上げた瞬間、アッパーカットを喰らったように、真上へ吹き飛ぶ。
(ブーっ!)【ブブーっ!?】
「貴様らっ!! これ以上の狼藉は許さん!!」
「空き巣も火事場泥棒も、ここまでですっ!」
「なっ…、超昂戦士どもっ!」
「アルダーク! 覚悟っ!」
まだこちらの世界の全容はおろか、どこで誰が観察しているかわからない。
ルビーとサファイアは、名乗りを上げず戦闘を開始した。
(ちょ…ちょっと卑怯かな…)
(なりふり構っていられないだろうっ!)
……
「ぐああ〜っ、ショ〜テ〜〜ンっ!!」
ドカアアーーーンっ!
程なくフーマン部隊の鎮圧に成功し、改めて2人は、薄暮に沈むダイビート基地を見渡す。
「…ひどい…。どこもかしこもズタズタ…!」
「自動防衛システムだけで、持ちこたえていたのか…!!」
元の世界のダイビートでは、超昂戦士たちの出撃中に万が一の基地襲撃があれば、整備・輸送・通信・技術・補給・医療…全てのスタッフが武器を取り、自動防衛システムと併せて、戦闘スタッフの帰還まで持ちこたえる訓練を済ませている。
だが、こっちの基地は…無人。
アルダークに屈したのか…全ての灯りが落ちていた。
「サファイア…遅かったのかな、私たち…」
最悪の事態が脳裏をよぎり、ルビーが瞳を潤ませ、弱音を吐いてしまう。
「馬鹿っ、予断や憶測は禁物だ! まだ味方の死体を見たわけじゃない! シェルターや地下…手がかりを探すぞ!」
「う…うん! ゴメン!」
サファイアの一喝に、落とした目線をもう一度上げ、探索活動に気持ちを切り替えるルビー。
そこへ。
「待てええーーっ!!」
「『!!』」
声の主は、並び立つ2つの人影。
「貴様らっ、国衛軍の兵士だなっ!」
「なっ…?!」
「とぼけるなっ! そのADDD、私たちから…沙菜香さんから盗んだくせにっ!!」
「盗んだ…!? ち、違うっ…!!」
「よくも…よくも私たちを、騙したなああーーーっ!!」
「覚悟しろ! ADDDは返してもらう!! そして、沙菜香さんの所へ案内してもらうぞ!」
沈む夕陽を背に、問答無用でルビーとサファイアに襲いかかる、茜と群青、2人の戦士。
その戦いは…
「眠れっ、絶対零度の棺でっ!
コキュートス・エスカレーションっ!」
「あっ…ぐうう…っ!!」
「サファイアっ!」
群青の戦士が放つ冷気が、サファイアの右脚を地に釘付けに。
「(くっ、全身氷漬けにはできなかったか…)だが!」
「爆ぜろっ、星ごと!
スーパーノヴァ・エスカレーショーーンっ!!」
畳み掛ける赤い拳。
戦士の腕に、ボディに、そして踏み抜く脚に漲るエナジー。その源は、右手首に装備したパルシオン。
果たして茜の戦士が繰り出すのは、超新星爆発の名に恥じない必殺技だった。
「ぐはああーーっ!!」
「ルビー!!」
後衛が凍結で動きを止め、前衛が追撃で仕留める…教科書通りのコンビネーションの標的となったサファイアをかばい、咄嗟に割って入ったルビーが、ガードしきれず吹き飛ばされる。
「あぐうっ…ううっ…!」
「立てええっ! お前たちの卑劣は、こんな程度で償えるものかあっ!」
「落ち着けっ! ガーネット、目的はリンチじゃない、沙菜香さんの奪還だ!」
「ラズリっ! こいつらを…国衛軍の手先を! 許せるわけがないよっ!」
(…ああっ…!)
朦朧とする意識を、頭を振って引き戻し、
ルビーは2人をじっと見据える。
茜の超昂戦士は、ルビーと同じくセーラー服がモチーフの戦闘服。だが、プリーツスカート正面の差し色のパールホワイトと、カラーの縁取りのストライプ以外は、チェスト部もブーツもグローブも赤ずくめ。ワンポイントのレザーブラックが、戦士の強靭な意志を暗喩する。
髪は後頭部で纏め、黄色のバンダナで縛ったポニーテール。
群青の超昂戦士も、サファイア同様、忍び装束がモチーフ。ひらひらの裾まで真っ青なのが、かえってVゾーンの純白を際立たせる。サファイアより短く、肩で切り揃えた日本髪と、鉢金代わりに額に巻いた黄色いバンダナ。
(エスカ・ガーネットと…エスカ・ラズリ…!)
この2人が…この世界の超昂戦士…!
(でも…なぜ、こんなに激怒して…私たちを襲うの…?)
「ルビー! 一旦、退くぞっ!」
「サファイアっ?! ダメだよっ、2人は…!」
「その前に同士討ちになるぞ! 仕切り直しだ!」
ガーネットとラズリの隙をつき、脚の凍結をかばいながらサファイアはルビーを抱え、ゲートから基地を後にする。
だが。
(…追って、こない…?!)
サファイアは違和感を覚えたが、今は市街へ。
一方。
「なっ…!?」
いとも簡単に撤退する2人に、虚を突かれるエスカ・ラズリ。
「逃がすかあっ! …っ? うぐうっ!?」
どさあっ。
ヒートアップしたまま、ルビーたちを追撃せんと駆け出すエスカ・ガーネットは…
次の瞬間、力なく前のめりに倒れていた。
「あっ…、あああっ…!」
「ガーネット…エナジー切れだ。無念だが、こちらも立て直すしかない。」
戦闘が長引いたわけでもない。
にも関わらず、D2エナジーがあっけなく枯渇。
「…ちくしょう…」
「ガーネット…?」
「…非力だ…。沙菜香さんも取り返せなくて…、ユーナさんも、基地も、司令も…!」
悔恨を圧し殺すように強く目をつぶる。
「私には…護れないんだ…!
…うっ、…ううう〜っ…!」
どすっ。…どすっ、どすっ…。
握り拳を大地に何度も打ち付け、エスカ・ガーネットは自らの無力を悔やむ。
「…今は、帰ろう。
次に必ずここを…我らの基地を奪還するために…!」
「…ああっ、あっ、うっ…!
うああああああーーーーーっっっ!!!」
もぬけの殻のダイビート基地に、茜の戦士の嗚咽だけが虚しく響く。
平行世界の超昂戦士は、たった2人きり。
そして基地はもはや、彼女たちの帰る場所ではなくなっていた。
筆者の環藍河です。第1章、お送りしました。
平行世界への救援は、原作でも先月(2022年11月)のイベント「煉獄 閃を超えし六連星」で扱いましたね…。このシリーズが二番煎じとなるのは承知で、敢えて書いております。
また、今シリーズではオリキャラの超昂戦士、エスカ・ガーネットとエスカ・ラズリを登場させました。オリキャラは二次創作SSでは拒絶反応をもたれる読者様も少なくない手法ですが、我慢いただけた方にその価値があったと思っていただけるよう、第2章以降も鋭意執筆中です。
では、続きにもご期待を賜りますれば幸いです。