超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜   作:環 藍河

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第3章 氷の牢獄! 志半ばの救世主

ぴぴっ…〘生体認証、クリア。〙

しゅううううっ。

 

ダイビート基地・地下の隠し通路の奥に置かれたビートポータルゲート室の入口を開け、その開発者…こちらの世界のダイビート技術顧問・大道寺沙菜香は、がらんどうの室内を見渡す。

 

「はあっ…はあっ…! 何で…いないのっ!?

…あんな体で…!!」

 

国衛軍の虜囚となっていた沙菜香は、ルビーたちに救助されるや否や、ダイビート長官…こちらでは司令の、救命を要請した。

そしてその直後、思いついたようにきびすを返し、全力疾走で地下のビートポータルを目指し、そして…その場で絶句する。

 

「国衛軍に捕まった…?

いや…、それなら奴ら、私に突き出してDチャージの秘密を吐かせる人質に使うはず…!」

 

「沙菜香さんっ…説明してくださいっ!」

独りごちる沙菜香に、サファイアが問う。

 

「あなたたちっ! この部屋にいたはずの、司令さん…ダイビート司令・猪狩ミキサダさんは、どこっ!? この部屋で生命維持ポッドに容れて、コールドスリープで眠らせていたのよっ!」

「『!!』」

 

コールドスリープ…SF小説で聞くばかりの技術だと思っていたが…。

「私たちが来たときは…今日の夕方には、誰もいませんでした。人はおろか、ポッドなど…。」

「生命維持…って、長官…じゃないっ、司令に一体、何があったんですかっ!?」

色をなすルビー。

 

「…私たちは…ダイビートは、初動に失敗したの。

私は協力要請を受けて、司令さんが未来から持参した設計図と、協力者の君枝くんが調達した資金で、ADDDとビートポータルを造ったの。」

ここまでは、アカリたちの世界とほぼ同じ。

 

「でも…想破弓張衆の協力を求めに、想破の里へ向かった司令さんと副司令のユーミさん、君枝くん、そしてアケミちゃんは…青ざめて帰ってきたわ。」

(アケミ…エスカ・ガーネットは、もうそのとき、ダイビートにいたのか…)

「一体、何が…?」

「交渉の席で、司令さんが…倒れたの。」

「なっ…!?」

 

「その前から…目の霞みや手の痺れを訴えていたのに『今は休むわけにいかない』って、検査も拒否し続けて…。アケミちゃんに担がれて帰ってきたときには…もう半身麻痺、喋ることもできなかった。

そして、検査で…脳腫瘍が見つかった。」

 

「そんな…! じゃあ、入院や治療は…」

「ここの…基地の設備では無理だった。そして、本人が入院を強く拒んだの。『交渉相手に弱みを見せたら付け入られる、隠し通してくれ』って、筆談で…!」 

「そんな…!」

「私にできたのは、コールドスリープで腫瘍の増殖を、進行を抑えることだけ。…悔しいよ…。」

 

医者でもある沙菜香の無念、いかばかりか。

 

「…司令は、自分が作戦指示を出せなくなる前に、その後ダイビートがすべきことを私たちに指示したの。

市民と国衛軍に、録画済のエスカ・ガーネットの戦闘を見せて、一般からは戦士を公募する。

軍にはADDDの技術を提供して味方につけろ。

その後、戦局が安定したら入院して治療を受ける…って。」

 

進む深刻な病状の中、その指示だけでも筆舌に尽くし難い苦痛があっただろうに…。

 

「私たちは、ガーネットがフーマンを叩き潰す戦闘映像を配信し、ガーネットと私とユーミさんで国衛軍に乗り込み、幹部と面会した。

…そして、国衛軍に嵌められたの。」

 

……

交渉を終え、帰途につく3人を包囲し、ことごとく銃口を向ける兵士たち。

「ようし、お嬢ちゃんたち、投降しな。ADDDだっけ? ハードも設計データも運用データも、あるだけ俺たちが接収する。」

「なっ…何だとおっ!!」

「バーカっ、国衛軍はお嬢ちゃんのプチピュアごっこのパシリじゃねえんだよっ! 黙ってハイなんて言うわけねえだろうがあっ!!」

「お…お前たちっ、最初からこのつもりで…!」

 

がばあっ!

「ひっ…ぐううっ!」

「…しまった! 沙菜香さんっ!」

「あ〜、真っ赤な嬢ちゃん、おめえ、戦闘経験はオボコちゃんかい? 喋りに気を取られて周りに注意がお留守だと、こうやって捕虜を取られるんだ、一つ勉強したなあ?」

「動くなよお〜? お前ら2人も捕縛して、こっちの戦闘スタッフに漏れなくADDDをコピーしてやる。そうしたら、お前らは用済みさあ! どうしてもって言うなら国衛軍の下請け、アルダークへの噛ませ犬に使い尽くしてやるがなあ! ヒャハーッ!!」

 

(…逃げるわよ。)

(なっ…! ユーミさんっ!?)

 

  かっ…!

 

ユーミはボディチェックをかいくぐって持ち込んだらしい、閃光弾を起動。

「ぐあああああっ!?」

「撃つなっ、友軍撃ちになるっ!」

「畜生っ、逃がすなあっ!」

 

……

「その後はご想像通り。私は国衛軍の尋問を受け続けた。」

とつとつと…悔しさを込めて語る沙菜香は。

 

 

「…まあ、どのみち軍の戦士にADDDは供与するつもりだったから、屈服して協力するフリして、わりと誤魔化せたけどねえーっ!」

一転、ハイテンションへ。

 

「な…なっ…?!」

「そんな…それで悪用されたらっ!?」

 

「あ〜、ノープロブレムっ! 司令さんでないとロクにDチャージなんかできないから、悪用できないのはわかってたもん。

あいつら、【ヤルトラマンより短い変身じゃねえかっ!】【騙したなっ!】なーんて狼狽えてさあ〜。だから、こっちも『へっぽこ戦士しかいないからでしょお〜?』とか『ヘタクソなんじゃないの〜?』なんて、わりとのらりくらりかわせたけどねえ〜。

昨日なんか、男にまでADDD付けてたくらいだものー、バーカ、バーカっ、傑作よねえーっ!

はあーっ、はっはっはあっ!」

 

(…豪放、磊落…。)

(…この人…凄い…のかなあ?)

 

ぎゅっ。

 

「だから…貴女たち2人は…、ADDDを正しく、スペックを出し切って使える貴女たちは、間違いなく平行世界の超昂戦士。

向こうの私の最高傑作に力を貸してくれた、こちらの私の救世主さんたち。…ようこそ。

そして…ごめんね。こんな朽ち果てた世界に呼んじゃって…!!」

 

歓迎のハグは、力強くも、わななきを含んで。

「あいつら、アルダークに先を越されそうになって、なりふり構わなくなったのね。

今夜の尋問は…いきなり拷問になった。

『基地を占拠した。データや設備を接収するから、付いてこい』って強制連行されて…

そこを貴女たちに救助されたの。」

 

沙菜香は不意に表情を歪める。

「沙菜香さん…?」

「…この基地の壊滅ぶり…、わかるでしょう?

こちらの…私の超昂戦士、エスカ・ガーネットが…無事のはずがないもの…。」

 

「…えっ?」「どうして…?!」

「ガーネットは…超昂戦士歴1ヶ月。その上、司令さんが倒れて、ろくに戦闘訓練もできなかった。ずぶの素人…新米戦士なんだ。

配信したガーネットの戦闘だって、司令さんが弱らせたフーマンにとどめを刺しただけの、やらせ動画もいいところなの…。

そんな子が、あの戦火で、無事なはずが…。」

 

「…沙菜香さん!」

「私たちが今日交戦したエスカ・ガーネットは…立派で強い、一人前の戦士でした! やられてなんか、いません!」

 

「…交戦? 今日っ!?」

 

だっ! かちゃかちゃかちゃっ…。

部屋を観察し、ビートポータルに残されたデータ…司令室のメインコンピュータのバックアップデータを確認し、沙菜香が、気付く。

 

「…そっか…。スタッフは戦闘スタッフ以外、全員いったん解散、在野に戻して、この基地を空っぽにしていたのね…。基地そのものを囮にして、自動防衛システムで抗戦しながら、立て直しの時間を稼ぐ作戦かあ。きっと、立案はユーミ副司令ね。

あとは…移動司令室と、ポッド用の冷却エナジーパックが持ち出し中…。

2人が…ガーネットとユーミさんが、司令さんをポッドごと移動司令室に運び込んで、ゲリラ戦に切り替えたんだ…。それなら、合理的説明がつく…!」

 

「移動…司令室…?」

「うん、大型トレーラーに基地の機能を最低限装備した、可動拠点。戦闘指揮用の戦局分析コンピュータ・キュアユニット・寝室・糧食…。ユーミさんが運転して、市内のどこかに潜伏してるはずよ。」

「では…その位置を辿れば合流できますね。」

「いや…それはダメ。位置情報を切ってる。

…基地を攻め落とされたとき、足がつかないように…だね。」

 

「あの…沙菜香さん。

昨日のガーネットの戦闘記録、観てください。」

 

ルビーが映し出すガーネットの勇姿。

必殺技・スーパーノヴァ・エスカレーションの破壊力。

何より、戦士の決意と覚悟を秘めた眼差し。

…みんな、沙菜香の知らない姿だった。

 

「ユーミさんがいるとはいえ、こんなに…たった数週間で、こんなに強くなっていたんだ…!!」

 

(じゃあ…あの子は…、エスカ・ガーネットは…!)

(たった一人で、誰からも教わらず、あの戦闘力を身につけたというのか…!)

 

「アケミちゃん…ありがとう…。

生き延びていてくれて…ありがとう…っ!」

 

そして。

「…この、青い戦士は…?」

 

次の瞬間、沙菜香は戦士の登録情報を参照して。

 

「…ううっ…!」

不意に、涙ぐむ。

 

「沙菜香さん…?!」

「私が捕まった後、登録されたんだ…。

たった一人だけど…。配信動画、届いてた…。

ゼロじゃ、なかった…志願してくれた子が、いたんだ…!!」

 

エスカ・ラズリ。

アケミとユーミ…二人きりのダイビートにとって、どんなに心強い援軍だったことか。

 

これで、この世界線で起きている事態が見えた。

だが、それでも孤立無援の大勢は変わらない。

ミキサダの生命も、ダイビートの命運も、今や風前の灯だった…。

 

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