超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜 作:環 藍河
(1)平行世界のキャラについての描写が中心の章です。この二次創作SSのオリジナルキャラクターです。
可能な限り「序章」からお読みいただき、背景をご確認いただいてからこちらの第4章をお読みいただければ幸いです。
また、原作登場キャラの偽物に見えて嫌悪感を催す場合はご容赦ください。
(2)Dチャージに関する間接的描写を含みます。R-15未満です。
それでもダメな方はご注意ください。物足りない方は…ごめんなさい。
(…ああ…っ…、息が…っ…)
谷崎アケミは、深く、昏い水底をさまよい…
ゆっくりと沈んでいった。
先月末、とある日。
ハンドボール部の自主トレを終え、河川敷を一人、家路を急ぐ中で。
とぷん。
確かに聞こえた、水の音。
(…!! 子どもがっ…!)
ためらい無く飛び込み、救助に向かう。
だが、アケミには着衣水泳の経験も無ければ、溺れる子どもが救助者を引く力の恐ろしさ…救難の知識も無かった。
(…しまった…っ!)
どぷっ、どぷっ、どぷっ…
(ああ…、また、こうなるんだ、私…。
できっこないってわかってても、いつも動いて、自分がピンチになって、迷惑かけて…。)
今度ばかりは、もう、ダメだ。
きっとこれが、向こう見ずな自分の性格の代償。
アケミは絶望に沈み、命の灯火も今際と諦めた。
…どくん。
…どくん、どくん。
どくっ、どくっ、どっどっどっどっ、どどどど…
(…?! …あ…、熱い…っ?
何、これ…唇から、胸が、体が、みなぎるっ…!!)
ぎゅおおおおおおおおおっ…!!
…
……
「ミキサダっ! こっちの子どもは息を吹き返したわっ!」
「…ダメだ。自発呼吸が戻らない! ユーミ、心肺蘇生、代われっ!」
「ミキサダっ! それは!」
「イチかバチかだ! この子にADDD適性があれば…!」
この直後に地球防衛組織ダイビートを立ち上げ、最高司令となる青年・猪狩ミキサダは、溺れた少年と、二次遭難したアケミを川から引き上げる。
通常の心肺蘇生で甦らない瀕死のアケミに、ミキサダはADDDを装着し、Dチャージを強行。
人工呼吸と異なる、力強いブレスと熱い血潮が伝播する…!
…
……
「超昂、戦士…?」
「俺たちは、このADDDの力で来月襲来する異星人の侵略を阻止するため、破滅した未来から来たんだ。アケミ君が超昂戦士第1号なら心強いが…危険だし、強要はしない。」
「…やります…。」
「…!」
「やります! ミキサダさんに救われたこの命、御恩はこの体で返しますっ!」
「なっ…!」
「ミキサダ…セクハラとパワハラ、ダイビート第1号よ?」
これが、烈火の超昂戦士、エスカ・ガーネットが誕生した瞬間だった。
だが、その戦いの軌跡は…苦難と絶望に満ちていた。
…
……
「ぐっ…うぐ〜っ!! …がああああああっ!!!」
「司令っ! 司令いっ! ここは基地です! もう大丈夫ですからっ!」
「ミキサダっ! しっかりしなさいっ!」
…
「…MRI、出たわ。
小脳に…ピンポン玉大の腫瘍。左半身の運動神経や視神経、顔面神経…みんな冒されている…。
もう、この基地では…治せない。」
「そ…そんなっ!! にゅ…入院は!? 手術は!!」
「…ミキサダが拒絶したの。病院はどこも想破や国衛軍の息がかかっている。俺の病状は隠せ、って…。」
「バカなっ…! 司令が倒れたら、ダイビートは崩壊ですよっ!?」
「…わかってる。でも、アルダークの侵攻開始が迫る今は…隠し通すしかない。」
「うっ…、ううう〜〜〜っ!!」
…
……
「ユーミさん…っ! どうしてっ!
どうして沙菜香さんを、見捨てたんですかあっ!!」
「沙菜香さんを切る判断は、副司令である私の決断よ。これから呼び掛けに応えてやって来る戦士にADDDの使い方を伝えるには…導く超昂戦士…ガーネット、貴女が必要なの。
だから…共倒れは、許されない。」
「そんな…っ!
私っ、そんな力、持ってないっ…!!」
「…わかって。貴女が国衛軍の手に落ちたら、本当に世界が終わるの…!」
「…!!」
…
……
「我には…、この、加茂野ヒサキには…。
もう…ここしか、居場所が無い。」
「ヒサキちゃん…」
「お前達が、倒れたミキサダ御大を連れ帰った直後…我の兄が弓張衆頭領を暗殺した。龍の者を失い、閃忍様が戦えなくなった弓張衆は…今や機能停止だ。
そして加茂野家は…父上と母上は内通の嫌疑で投獄され、我も追われる身となった。
閃忍失格のこの身だが…お前の戦う姿に一筋の光明を見出し、郷を抜け、ここに来たんだ。」
「…でも、ここも絶望しか無いよ…? 司令も倒れて…沙菜香さんも囚われて…。ヒサキちゃんは、それでもここで戦うの…?」
「…ああ。御大の慈悲に縋りたい。
どうせ我の末路は…アルダークに蹂躙されるか、弓張衆に抜け忍として…それも頭領殺しの妹として、誅伐されるか…。
ならば最後はせめて、自分の信じた正義の行末を確かめねば、死んでも死にきれない…!」
(戦士志願者…結局、ヒサキちゃん一人だった…。やっぱり…戦士が私一人の組織なんて、誰だって嫌だよね…。)
それでも。
(…ヒサキちゃん、ユーミさん、私…。
この3人で、戦い抜くしかないんだ…!)
…
……
「基地を…捨てる…!? ユーミさんっ! 本気で言っているんですか!?」
「…もう、これしか、無いの…。」
「空城の計、ですね。」
「ヒサキちゃん…?」
「ダイビートに真に必要なのは、戦士と…御大。基地は飽くまでその2つを護るための城。逆に、御大を…ミキサダ殿を護るために必要な代償として、敢えて城を空け、敵の目を欺く戦略…。」
「…ごめんなさい…ユーミさん、ヒサキちゃん…!」
「違うわ、アケミちゃん。本当なら、ルーキー超昂戦士のあなたをちゃんと護って育てるはずだった! 落ち度は、私とミキサダにあるの…!」
「…私の非力で、私たちは…また一つ、大事なものを失うんですね…。」
「アケミ…!」
…
……
「うっ…ううん…!」
アケミは、山奥に逃れた移動司令車のキュアユニットで、束の間のうたた寝から目覚める。
(…また、この夢…。)
家出同然にダイビートに身を投じ、まだ1か月足らず。
それなのに、新人超昂戦士にはあまりに荷が重い、過酷な現実ばかりを矢継ぎ早に突きつけられる。
悪夢…いや、いっそ本当に夢ならどんなにか…。
(司令…ごめんなさい…!)
目の前のポッドに横たわる男こそ、ダイビート司令・猪狩ミキサダ。
進行の早い脳腫瘍を遅らせるためのコールドスリープ…だが。
ピピピッ。
〘患者様の冷蔵を解除しました。自発呼吸再開、血流回復、バイタル正常、現在体温34度7分。〙
その眠りを、アケミは覚ます。
シュウウッ…。
「御大は起きたか…。アケミ、始めよう。」
「…うん。」
ヒサキとアケミは、動けないミキサダを広いベッドに移し、そして下着まで脱ぎ捨て、左と右に横たわる。
凍えきった司令は、意識もおぼろげ。
耳元に頬を寄せられ、吐息をかけられても、反応はわずか。
「んっ…んうっ…くふっ…!」
「御大…、御大っ…!」
アケミは、麻痺で動かないミキサダの左手を、胸で、お腹で、股で包み込む。
ヒサキはミキサダの胸板を、腹筋を、大きな背中を両手でさすり、時折乳房を当てて体熱と鼓動を移していく。
「ああっ…司令っ…司令いっ…、ごめんなさいっ、ごめんなさい…!」
「主の命を…くうっ、さらに危機にっ、晒す所業…。主へのっ、あふっ、裏切りですっ。
我は…、御大の忍、失格、ですっ…うう〜っ!」
今、この世界で超昂戦士として戦えるのは、ガーネットとラズリ、ただ2人だけ。
そして、アルダークにも国衛軍にも、想破弓張衆にもない、ダイビート最後のアドバンテージ…Dチャージ。
捕虜となった沙菜香が国衛軍に口を割ることなく、この秘密は守られている。万一バレたなら、アルダークも国衛軍も血まなこでミキサダを探し出し、アルダークなら暗殺して超昂戦士のエナジー源を絶つか、国衛軍なら拉致してエナジーパック扱いすることだろう。
だが、ダイビートでも…危篤のミキサダからのDチャージは、その都度コールドスリープを解除して行う必要がある。
文字通り、命を削る補給手段であり、窮余の策。
ガーネットとラズリは、既に自習も試した。
2人の…超昂戦士同士での勉強会も試した。
〔あっ、くうっ、アケミっ、指っ、胸っ、…ああっ…!〕
(ひっ…ヒサキちゃん、ヒサキちゃんもっ、んうっ、くふっ、〜〜〜っっ!!)
…
(はあっ…はあっ…、くうっ…)
「…ユーミさん…、獲得エナジー量は…?」
『…ダメ…。これで得られたD2エナジーじゃ、ものの1分も戦えない…。』
「…っ…、そんなあ…。」
自給自足のDチャージは、あまりにも効果が薄く、到底、激闘に耐えるものには及ばなかった。
…
……
だから…残る手段は、これしか無かった。
「御大っ…我に、我とアケミに…」
「力をっ、ください…!
あいつらを、打ち破るっ、力を…。
司令を、ダイビートを、地球を護るっ、力を…!」
「ああっ、あっ…あっ!」
「ああ…っ! もう…もう、〜〜っ!」
「『くはあああーー〜〜〜っっ!!』」
2人は、半死半生のミキサダを熱く抱き締める。
この悲しみに、絶望に打ち勝つ力を求めて。