超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜   作:環 藍河

7 / 10
第6章 傷だらけの輝石、最後の輝き

「御大の病を…治せる!?」

 

廃墟の街が徐々に白み、夜が明け始める。

通信に応じて基地に戻ったエスカ・ラズリは、沙菜香の言葉にうろたえる。

「ビートポータルには、もう一つの使い方があるの!」

……

〘ビートポータルは、転送対象を分子レベルまでスキャンして、平行世界で再構成する機械だもの。サブプログラムを組めば、MRI兼、超精密ガンマナイフもびっくりの体内組織イジり放題システムのできあがりー、ってね。〙

「そ…それはそうだけど…そんなシステム、運用のダイナライトが…蝶鉱石が、いくつあっても足りないよ…。」

〘水くさいこと言わないっ! いまこっちの長官さんが、戦士・閃忍さん・神騎さん・魔女さん…総勢160人の戦闘スタッフたちに総動員をかけてるの! 最優先任務で蝶鉱石を、草の根かき分けて調達中よ!〙

「…ああ…っ…!」

〘あーあ、夢の500連イッキ引きはお預けね。その代わり、絶対に司令さん、助けてよっ!〙

「…うん! 絶対…必ずっ!!」

…さやかと沙菜香、平行世界の天才たちに架かった橋が、一縷の望みを力強く手繰り寄せた。

 

……

「では…、では、御大の命は…!」

「司令さんをここに運んできて! ビートポータルにかけて、脳腫瘍を全て摘出するよっ!」

「承知っ!」

告げられた大きな希望に色めくラズリ。

 

だが。

「…ガーネット…?」

ラズリを右手で制止し、黙って首を左右に振っていた。

 

「…信じない。」「『なっ…!?』」

「そんな都合のいい話…信じられないよ。」

「ガーネット!?」

 

「まず…そこの2人、出て来て。」

(…!)

静かだが、怒気を込めたガーネットの言葉。

気圧されながらも、アカリとヒビキがゆっくり前に出る。

「ガーネット…」

「待って、隠れていたわけじゃないよ!」

「沙菜香さん、こいつらは誰?」

「私を助けてくれた、平行世界から来た超昂戦士の2人だよ! 敵じゃない!」

 

「そう…じゃあ、変身してみて。」

「…うん。」

 

 かっ。

 

「やっぱり…お前たちか。」

「…昨日は、問答無用だったからな。」

サファイアは皮肉交じりにガーネットをたしなめる。

 

「沙菜香さん…あなたはこいつらの…国衛軍の責めに屈して…私たちをおびき寄せ、司令の居場所を吐かせて捕まえるためのエサになった。司令が倒れたことさえも、国衛軍にバラして…残念です。」

「なっ…違うわっ! 私は自分の意志で…!」

「あるいは…沙菜香さんをそこの2人が助けたのも、国衛軍の自作自演。沙菜香さんを騙し、私たちが司令を渡したら、みんな用済みのポイ捨て。」

「ガーネットっ! いい加減に…」

 

「…だってっ!」

 

たしなめるラズリを一喝し、ガーネットは嗚咽する。

 

「だったら…私は! 何を、誰を信じればいいんだあああーーーっっ!!」

「なっ…!」

 

「考えてもみてよっ! アルダークが地球人類ぜんぶを滅ぼそうってときに!

国衛軍は私たちを騙して! 

弓張衆は頭領を失ってうろたえるばかりで! 

街のみんなだって、私たちがズタボロになってアルダークを追い払ったって…蔑む目でしか、見なかった! 

どいつもこいつも、自分が生き延びることしか考えない! 

こんな中で、バカみたいにお人好しな…ダイビートのためだよ、司令が助かるんだよ、なんて…こんな美味しそうなニンジンぶら下げて近づく相手、裏があるに決まってるじゃないっ! 

もう…たくさんだ! 戦っても、戦っても戦っても、全部最後には裏切られて、大事なものは全部奪われて…っ!」

「ガーネット…」

 

悲痛に歪むガーネットの表情は、一転、慈愛を込めた柔和な…しかし、とても寂しいものに。

「ラズリ…ごめんね。

でも、私はもう…奪われすぎたから。

これ以上誰かを信じたら…次にまた裏切られて、今度失うのが司令だなんて、耐えられないんだ。

だから…もう私は、何も信じない。」

 

茜の輝石は哀しみをたたえ…、きびすを返したガーネットは再び怒りに燃え盛り、ルビーとサファイアに最後の決意を、戦意を向ける。

 

「お前たちが国衛軍なら、絶対に許さない。

お前たちが本当に助っ人なら、私さえ倒せない助っ人なんかいらない。とっとと帰れっ!」

「ガーネットっ!! お前…!」

 

「司令が欲しいなら、私を倒して、力ずくで奪っていきなさいっ! 私は…負けないっ!」

 

すっ。

宣戦布告に応え、進み出る異世界の紅き戦士。

「ルビー?!」

「今、わかったよ。このまま言葉を尽くしても、あなたは絶対に納得しないよね。

だったら、あなたの全力ガッツ、私にぶつけて!

私は全部…受け止めてみせる!」

「な…なああっ?!」

素っ頓狂な声でサファイアが呆れ返る。

 

「ガーネット…私の力、見極めて! 

ミキサダさんを…ダイビートを救える超昂戦士だって、証明するっ!」

「む…無茶苦茶だああーーっ!!」

 

「…名前を教えて。また私のスーパーノヴァ・エスカレーションを進んで喰らおうとする、バカの名前を。」

「紅蓮の超昂戦士、エスカ・ルビー。

ガッツ全開、全力で行きます!」

「烈火の超昂戦士、エスカ・ガーネット! 

もうこれ以上、誰にも何も、奪わせないっ!」

 

紅蓮と、烈火。

世界線を超え、2つの炎が激しく燃え盛る。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。