超昂大戦SS 絶望世界の超昂戦士 〜護りたいもう一つの未来〜   作:環 藍河

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第7章 砕けない! 柘榴石が繋いだ煌めき

 

「…名を問おう。」

「…エスカ・サファイア。

ラズリ、これは…お前の望む戦いなのか?」

「…御大を、救う。ガーネットを、護る。

我は…想破を追われ、浮かぶ瀬も無く沈むばかりだった。

そんな我を掬い上げ、再び立ち上がる力と、この命の意味をくれた2人の為に戦えるのだ…。我の信じる大義は、ここに在り!」

 

「そうか…。ならば、私も全力で応えよう。

青嵐の超昂戦士、エスカ・サファイア! 

推して参る!」

「蒼玉の超昂戦士、エスカ・ラズリ! 

この命、只では散らさぬ!」

 

……

「あ…ああっ…。

ダイビート同士で…超昂戦士同士で戦うなんて…!

何で…、何でこんな…!」

沙菜香は自己防衛システムで戦いを止めるべきか逡巡するも…できなかった。

 

ガーネットとラズリの、決死の眼差し。

ルビーとサファイアの、覚悟の眼差し。

4人が自分の全てを賭けて、戦っている。

その重さが、沙菜香の指を端末から離し…。

紅と茜、青と蒼。2つずつの輝石が響き合う。

 

……

「やああああっっ!!」「はあっ!」

手数だけなら攻勢にも関わらず、ガーネットの拳は空を切り、届きかけた一撃すらルビーのガードに阻まれる。これが我流の限界なのか…?

「はあっ…はあっ…」

「そんな戦い方じゃ、エナジーがいくらあっても足りないよ! 確実に当たる一撃にだけ、エナジーを込めるの!」

「黙れっ! 敵のくせに教官気取りかあっ!」

激昂するガーネットが、右手首のパルシオンにエナジーを注ぐ。

「もう一度、爆ぜろっ! スーパーノヴァ・エスカレーション!」

 

 どおおおおおっ…!

 

その技の名は、生命を全うした星の最期の輝き。

ガーネットの全てを…叶わぬ祈りを込めた拳。

 

「ええいっ!」

がっ、ぐぐぐっ…。

 

踏ん張る右脚が、強化された基地の石畳を沈めるほどの凄まじい威力。

それでも、ルビーはその全てを受け止め、なお微動だにしない。

 

(…そんなっ…! 会心の一撃だったのに…!)

バックステップで間合いを取り直すも、狼狽するガーネット。

「立ち止まらない! 効かなければ、効くまで撃ち込むんだよ!」

「っ…!! うるさいっ!!」

 

……

「眠れっ、我が氷の棺で!

コキュートス・エスカレーション!」

 

「喝っ!!」

 ぱりーーーん!!

 

サファイアが強靭な気を放った刹那、ラズリの凍気は一瞬にして、薄氷が砕けるように雲散霧消する。

(なっ…!)

 

「昨日、右脚に受けて理解した。この技は絶対零度の凍気そのものを放つに非ず、放った凍気を絶対零度と錯覚させる幻惑だと。」

「! …ううっ…!」

「幻惑ならば、その喝破は忍びの十八番。」

とりわけ、断絶の力を備えるサファイアには子供だましも同然だった。

 

「ラズリ、とくと見よ。そして、その身で覚えろ。本物の凍気を!」

 

 ぴきいいい…ん…!

 

サファイアが印を結ぶと、手甲のパルシオンが蒼白の輝きを拡げる。

 

「うあ…ああっ…!」

呑み込んだ吐息から、肺まで、心臓まで凍らされてしまいそうな、桁違いの凍気。

ラズリはその実力差を改めて思い知らされ、色を失う。

 

「ブリザード・エスカレーション!」

「あああああぁーーーーーっっ!!」

 

避けることさえ思いつかない。

否、どこに逃れようと間に合わず、回避行動そのものが無為。

強者の練り上げた凍気が、ここまでとは…!

 

遠のく意識の中で、ラズリは自らの尽きた命運を悟った。

(御大…、ガーネット…。無念だ…。)

 

「はあっ!」

しゅっ…すたっ。

 

サファイアは地を蹴り、極点の吹雪に呑まれて宙を泳ぐラズリを受け止め、大地から庇う。

「お前の技も、必ずここまで強くなる。もっと修練に励め。」

(エ…エスカ・サファイア…?!)

 

……

「ラズリっ、ラズリいいいっ!」

必勝を共に誓った相棒が力尽きる姿に、我を失うガーネット。

 

「左右から、頭っ! 防いでっ!!」

(なっ…!?)

「ストライクーっ、エスカレーション!!」

「がっ! ぐふっ…あああっ!!」

 

もはや条件反射のように、ルビーの叫ぶ指示のまま繰り出しただけのディフェンス。

そのおかげで、急所への被弾こそ避けたものの…

(両腕が…持って行かれそう…っ!!)

身をもってルビーとの実力差を知る。

 

どさっ。

「かはあ…っ、はあっ、〜〜っ…。」

両腕の感覚はもう失われ、体躯を支える脚も既に限界。

ガーネットは震える両膝を大地に落とす。

 

「…ガーネット、あなたの限界はこんなもの?」

「!!!」

ルビーの容赦ない一言が、ガーネットの折れかけた心を甦らせる。

「…言ったよね。もう何も奪わせないって。

あなたの護りたいものは…もっと大きくて、重いんでしょう?」

 

…ぐぐっ。

「知ったような口を…きくな…。」

心臓は、ADDDは、もう全力以上に回り続けているのに。

それでも届かない。絶対に勝てない。

 

(やめろ。)(ムダだ。)

(そのまま倒れて、もう休め。)

…うるさい。

 

(ただのやせ我慢だろ。)

(何もできないだろ?)

…黙れ。

 

(諦めろ。)(もういいだろう?)

(敵わないのに、どうして、戦う…?)

…!

 

「…わたし、しか…!」

「ガーネット…」

満身創痍を振り切り、立ち上がる烈火の戦士。

 

「私しか、いないんだああーーーっ!!

ダイビートを…、ラズリを、ユーミさんを、沙菜香さんを…。

司令を、護れるのは!

もう、世界中で、私だけなんだああーーーっ!!」

 

だだだだだだっ…

「あああああーーーっ!!」

咆哮とともに放つ、自分の全て。

「負けられないっ! 負けられないんだっ!!

スーパーノヴァ・エスカレーション!」

もう限界など、とっくに突破して。

それでも、その先を拓かないと、また奪われるから。

 

ずしい…んっ。

「ぐっ…!?」

受け止めるルビーは、1撃目より強く鋭くなったガーネットの拳撃に気付く。

 

それでも。

「まだまだあああーーっ!!」「ああっ!」

百戦錬磨のガードで、ガーネットを拳ごと弾き返す。

 

「ううっ…はああっ、かはっ…」

何度破られたって…自分には、これしか無い。

もう一度、いや、何度だって!

「があああああっっ!!」

 

超昂戦士は、自身の最高の技を繰り返す。

「スーパーノヴァ・エスカレーション!

スーパーノヴァ・エスカレーション!」

……

 

(…っ、〜〜っ…)

かろうじて両足で直立し、ルビーに正対。

エスカ・ガーネットは、全てのスタミナを振り絞り、ありったけの必殺技を放ち…そして。

 

焼き切れた。

 

拳は上がらず、脚は岩と化し、もうガードすらできない。

その場の誰もが、ガーネットの戦闘不能を悟っていた。

 

(…立つなっ…、もう、立つなあっ…!!)

ガーネットが全てを振り絞り、命の限り撃ち込んだ超新星爆発に、ルビーは吹き飛び、瓦礫にうずもれ、土煙に呑まれる。

サファイア、ラズリ、ガーネット、沙菜香…みんな固唾を呑み、その奥を凝視した。

 

「フラックス、プロージョン…」

だが、ガーネットの願いは虚しく。

「ビート・エヴォリューション!」

プリズムの弾ける光を散りばめた、真紅の輝きが霧を晴らす。

 

(なっ…!)

「凄いよ、エスカ・ガーネット。新人超昂戦士とは思えない…。あなたは、たった1人で必殺技を…こんな威力にまで磨き上げたんだ…。」

 

エスカルビー・アステライズフォーム。

そのまばゆい勇姿は…。

(は…ははっ…ケタ違いだ…。私なんかとは…)

ガーネットの闘志を挫く。

 

(…勝て…ないよ、こんなの…!)

うなだれ、絶望を噛み締めるガーネット。

(私…とんでもないケンカを…売っちゃったんだ…!)

 

「…やめろ…。」

「ラズリ…!」

「やめて、くれ…っ…。

ガーネットを、潰さないでくれ…っ!」

 

まだ意識もおぼろげなエスカ・ラズリが、溢れる涙も拭わず懇願する。

「そいつは…私の、私たちダイビートの、最後の希望なんだ…。

奪うな…。奪わないでくれえええっっ!!」

 

(…!!)

 

その声が届いたのか。

絶望を払うように首を二度振り、喉を振り絞り、上がらぬ両腕を、せめて指だけでも。

無我夢中のガーネットは…微かに吠える。

(…まも、るんだ…。たすけ、るんだ…。

わたし、が…!)

「ガーネットおおおっっ!!」

 

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ…

(あっ…、ああっ…!)

ルビーはガーネットに、無言で歩み寄る。

 

(ダメだ…。もう、もう…!)

 

ざっ。

遂に、胸どうしが触れ合う間合いを許し。

 

(ああっ…。司令…司令いっ…!)

 

最期を…永遠の別れを、覚悟した瞬間。

 

 ぎゅうっ…。

 

戦士は戦士を讃え、抱擁する。

「私も…もう何一つ、あなたから奪わせないよ。

あなたが全力で護り抜いたもの、全部。」

(…えっ…?)

 

「ここからだよ、ガーネット。

奪われたもの、私と一緒に取り返そう。全部。」

「な…何で…? 私、あなたに拳を…」

「言ったでしょう? 私とサファイアは、ダイビートを救援するために来た、超昂戦士だって。それとも私は、まだガーネットに認められるには足りないかな?」

「エスカ・ルビー…!」

 

「さっきは、あなたを試すようなひどいことを言っちゃったね…ごめんなさい。

でも…わかった。エスカ・ガーネット、あなたは凄いよ。最高の…最強の超昂戦士だよ…!」

 

だが、ガーネットは肩を震わせ、ルビーの最高の賛辞を拒絶する。

「私…私は…。ダイビートで、何一つ、護れなかった…。閂市も、司令も、沙菜香さんも、基地も護れなかった…。

そのくせ強がって、弱いくせに出しゃばって…。

最初から、何もしない方が、まだマシの…。

最低の…、最弱で、最悪の…、

無様で、惨めな戦士なのに…!」

 

「違うよ…っ!」

抱きしめる両腕に力を込め、ルビーは戦士の卑屈を否定する。

「私の憧れるレジェンド戦士さんが教えてくれたんだ。『あなたが自分の護りたい人を護って、あなたを護りたい人があなたを護る。ヒーローの戦いなんて、それでいいんだよ。』って。

弱くても、ヒーローにふさわしくなくてもいいの。

カッコ悪くても、身の程知らずでもいいの…!」

 

その腕から、両胸から、吐息から。

ガーネットの全てを受容し、肯定するルビーの熱が、鼓動となって伝わる。

 

「だから…お願い。力が足りないからって、自分が弱いからって…そんな理由で、誰かを助けたい気持ちを、我慢なんかしないで…! 

だって私、今のぼろぼろの…それでも立ち向かうガーネットを見て、全力であなたのこと、応援したいって思うもん…!」

 

ハグを解き、ルビーは勇者の両肩を力強く掴み。

「ガーネットは、何度負けても、戦い続けた。奪われても、追い詰められても、諦めなかった。

そして…私たちが来るまで持ちこたえた。

こんな強い超昂戦士、見たことないよ…!」

 

(ル…ビー…!!)

こんな凄い超昂戦士が。

こんな情けない、無鉄砲なだけの私を。

認めているなんて…!

 

「ガーネット…これからもあなたは、自分の思う人を護り続けて。

もうあなたは、一人じゃないから…!」

(!!!)

 

 一人じゃない。

 たったそれだけの一言。

 

「う…、あぐうっ、ぐすっ…。」

 

 それが、やっと。やっと。

 

「〜〜〜〜っっ…!」

 

 孤立無援のガーネットに届いた、最高の救援。

 

 

「うわあああああーーーーーっ!!

うぐっ…、ひぐっ、ひぐっ…

うっ、ううっ…、〜〜〜っっ、…!」

 

迷子の子どもが、やっと母の胸に帰ったように。

 

「うわあああああーーーーーんっ!」

 

暁の朝陽に包まれ…

エスカ・ガーネットは、心の限り泣いた。

 

 

 




筆者の環藍河です。年の瀬迫るご多用中、お読みいただきありがとうございます。
この後はエピローグを2章に分け、予告通り明日とあさってお届けの予定です。
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