これはトップハム・ハット卿の大学生時代のおはなし
トップハム・ハット卿は学業とアルバイトを両立する大学生だ。
休日はよくボランティアに参加し、子供の面倒見がよく、おじいちゃん,おばあちゃん達にはしっかり挨拶をする好青年で、近所の人気者だ。
趣味は メガドライブ ガンスターヒーローズ
ある日、トップハム・ハット卿に一本の電話が入った。
バイトの先輩だ。
どうやらバイト先が潰れたらしい。
原因は店長の夜逃げのようだ。
小さな飲食店で、なかなか儲けが出ないと聞いていたが、明るく楽しい職場だった。
トップハム・ハット卿はとても悲しく思ったが、すぐに次のバイトを探した。
先日パチンコで7万も負けてしまったので、すぐにまとまったお金が必要だったのだ。
「ケン○ロウと碇シ○ジは絶対に許さない。」などと呟きながらトップハム・ハット卿は求人案内のページをめくった。
すると、トップハム・ハット卿はページの隅に面白そうなバイトを見つけた。
二週間の短期バイトで、なかなかの好条件だ。
場所は精肉店らしい。業務内容は明記されていないが、その場で説明してもらえるだろう。
早速、トップハム・ハット卿は面接を受けた。
すんなり合格し、店長からは
「明日から来てほしいんだ。」
と言われてしまった。
急なことでトップハム・ハット卿は驚いたが、なんとか予定を合わせ、職場へ向かった。
店長はふくよかでとても優しい人だった。トップハム・ハット卿を店の裏に通すとお茶を出してくれた。
トップハム・ハット卿が
今日は業務内容の説明なのかと尋ねると、店長は
「いやぁ、それがねぇ…」
と妙なことを言い出した。
「実はバイトの枠が全部埋まっててね、君を入れることができなくなっちゃったんだよ。」
トップハム・ハット卿は不審に思った。
求人案内は最新のものだったし、期日までまだ数週間あったからだ。
トップハム・ハット卿が敢えて黙っていると、店長はこう続けた。
「君さえ良ければなんだけど、別の仕事を頼みたいんだ。」
怪しい匂いがプンプンしてきた。
しかしバイトの給与はかなりの給与。しかも店長はこれに上乗せするとまで言ってきた。
来月の生活費がかかっているトップハム・ハット卿は、怪しいと思いながらも承諾してしまった。
「ありがとう!じゃあ説明させてもらうね。」
そう言うと店長は2分ほど席を外した。
「おまたせ。」
店長の右手には謎の木箱があった。トップハム・ハット卿はそれにとてつもない恐怖を感じた。
見ているだけで気分が悪くなるような気さえする。しかし、それが何なのかはわからない。
「これは…なんですか?」
トップハム・ハット卿は恐る恐る尋ねた。
「残念ながらそれは言えない。企業秘密ってやつさ。」
店長は笑顔を絶やさず言った。
すぐにでも逃げ出したかった。
しかし、既に仕事を受けてしまった上、トイレの窓に付着している朝露で喉を潤しているトップハム・ハット卿に選択肢はなかった。
実は、トップハム・ハット卿はシャ◯マスの廃課金者でもある。
当然、水道は止まってしまっている。
大人しく説明を聞こう。そう思った。
「これを隣町のゴミ箱に捨ててくるんだ。そしてそれの報告をして欲しい。もちろん道中で箱を壊したり開けたりしちゃいけないよ?」
店長は強く念を押すと木箱を手渡した。
トップハム・ハット卿は木箱を受け取り、自転車を走らせた。
木箱は大きさの割にとても重く、なんだか少し生臭い。
腐ってしまって商品にできなくなった肉だろうか。開けてはいけないとはどういうことだろう。
そもそも、あの時感じた得体の知れない恐怖は何だ。
いや、余計な詮索はよそう。
トップハム・ハット卿は自分に言い聞かせ、スピードを上げた。
ゴミ捨て場に到着したトップハム・ハット卿は、木箱をゴミ箱に投げ入れ、店長に電話をかけた。
言われた通り隣町のゴミ捨て場まで持っていきましたと伝えると、店長は
「おぉ、OKOK。意外に早かったね。戻っておいで。」と
先ほどと変わらない様子で言った。
電話を切り、トップハム・ハット卿は店へと帰っていった。
店に戻ると店長が相変わらずの気味の悪い笑顔を浮かべ待っていた。
「おつかれ。暑かったでしょ。」と言い
トップハム・ハット卿にタオルとスポーツドリンクをくれた。
「はい、これ今日の分。」
そう言うと店長はよく見る茶封筒をトップハム・ハット卿に手渡した。
かなりの厚みを感じ、トップハム・ハット卿は謎の木箱の事などすっかり忘れ、小躍りしながら帰宅した。
家に帰ると、トップハム・ハット卿はすぐに封筒の中身を確認した。
トップハム・ハット卿はその額に腰を抜かしてしまった。
なんとそこには150万円も入っていたのだ。
上乗せするとは言われていたが、まさかここまでとは。
トップハム・ハット卿はとても驚いたが、すぐに冷静になり、店長に電話をした。
こんなに貰ってしまっては申し訳ない。ただ箱を捨てに行っただけではないか。
そう伝えると店長は普段の姿からは想像もできないような声色でこう言った。
「君はその額に見合った働きをしてくれた。黙って受け取るんだ。そしてこれからも協力してもらうよ。」
電話は切れてしまった。
次の日、トップハム・ハット卿が恐る恐る店へ向かうと、店長は昨日と変わらない様子で出迎えてくれた。
トップハム・ハット卿がバイト代や電話のことを尋ねようと口を開くと、それを遮るように店長は
「今日も頼むよ。」とこちらに目も向けず言った。
正直気が進まなかったが、昨日とは少し形の違う木箱を受け取り、ゴミ捨て場へと向かった。
翌日も、翌々日も、トップハム・ハット卿は、謎の木箱を隣町のゴミ箱に捨てに行き、大金を受け取った。
しかし、トップハム・ハット卿の精神状態はとても良いものとは言えず、徐々に崩れていった。
一週間も経つ頃には、トップハム・ハット卿の脳内を、あの精肉店や店長、何より謎の木箱に対する猜疑心が埋め尽くしていた。
今日も店長から木箱を受け取り、隣町まで行く。
しかし、今日は少しおかしな点があった。
箱が空なのだ。それに何か赤黒いシミまでついている。
トップハム・ハット卿は限界だった。
店長に対する疑いの心に己自身が耐えられなくなってしまったのだ。
箱を開けてしまおうか。
いいや、それだけはいけない。
契約違反だし、そもそも店長にバレたらどんな目に合うか分からない。
大金も貰っているのだ。そんなこと絶対にしてはいけない。
トップハム・ハット卿は自分に強く言い聞かせ、自我を保とうとする。
いや、少しだけなら…
葛藤も虚しく、トップハム・ハット卿はとうとう箱を開けてしまった。
ギシギシと嫌な音を立て箱は真っ二つに割れた。
予想外の開き方にトップハム・ハット卿は困惑した。
前編です。
後編執筆中。