俺と派手な頭の男は店の表通りに出た。
頭に血が上ったのもあるが、さすがにこれだけ侮辱されて相手をお咎めなしで返すというのは、マハジャン家のメンツにかかわる由々しき事態になる。
貴族というのは面倒なものなのだ。
「最初に言っておく。手の平と足の裏以外の部位が地面についた方の負け。使っていいのは素手素足のみで魔法と武器はなし。助っ人は、誰であれどっちかの味方をした時点でされた方が負け。いいな?」
決闘を始めるにあたっての俺の提案に男は肩をすくめて
「いいのかい、お仲間ぞろぞろ連れ歩いてんのに」
と言ったが
「ぬかせ。直接やりあったわけでもないのに俺を逆恨みしているおっさんを連れてるお前の方が怖いわ。……というわけだ。シンハー、俺が殺されても絶対にそいつに手を出すな。部下の誰かが手を出そうとしやがったら斬れ」
とまず男に、続いてシンハーに言い捨てる。
男が腰の剣をミリンダに預けるのを見た俺は、頷くと服の袂やポケットをひっくり返して何もないことを示し……そのまま無造作に男に向かって歩み寄った。
男は一瞬毒気を抜かれた顔になったが、俺が殺意を隠そうともせずに垂れ流しているのに気づいてか、構えをとる。
俺はそれを気にせず近づき……
手を伸ばせば触れる間合いで、思いっきり地面を蹴り、鳩尾に右の貫手を放った!
「おっ」
男は意外だなという顔をして貫手を受け止め、俺の関節を極めにかかろうとするが、俺はそこから流れるように左手を男の方にかけ、一瞬拘束が緩んだすきに強引に右手を外して体を掴み、投げを打った!
シンハー直伝の、特務部隊流の相手に受け身を取らせず、頭から落として頭部や頸椎を損傷させる「殺し投げ」。
これを受けた男は大きく振り回され、頭を下にそのまま地面に叩きつけ……られなかった!
勢いよく放り出してからぶつかる一瞬で、体重を移動させ、両手両足を四つん這いにして着地!
そのまま起き上がるとお返しとばかりにフェイントからのジャブ!
かわそうとした俺にさらに勢いのある脛蹴りを一発!
強烈な一撃を脇腹にもらった俺は顔をゆがめながらも……
「っらあ!」
蹴り足を掴みながら軸足を払い、
「がふっ!」
男に尻餅をつかせた。
「おーやるねえ、バカ様って評価は訂正するぜ……おい?」
へらへら笑って起き上がってきた男の顔面に、俺はシンハーが無言で渡してきた刀を突きつける。
「で、なんで態々俺を待ち構えて挑発した?ウタってもらうぜ、返答次第では切る」