とあるイラストを見て電流走ってささっと書いたお話。
ホントは内容的に11/22とかに投稿したほうがいいんだろうけど、それより後に思いついたので仕方ないね。
あ、初投稿です。
それは、いつも通りのある日の出来事。
そう。いつも通り、秘書艦担当として、遅寝なご主人さまを叩き起こしに行って。
朝はあんましエンジンの掛からないご主人さまと一緒に朝の業務をこなしたり、演習をこなしたりして。
そんなこんなで、お昼休み。ご主人さまも、漣も、半舷上陸。もといお休みターイム。
普段よくだべってる第七駆逐隊のみんなは、今日はお仕事中。……いや、漣も秘書艦業務っていう立派なお仕事はしてますよ?
そ、この時期は毎年恒例秋刀魚祭り。ぼのは毎年恒例本気モード。潮ちゃんはお芋も食べる。
そんなわけで、練度向上も兼ねて、漣以外は矢矧さんに連れられて北方海域に繰り出してるとこ。
他のみんながいないので、ぼっちオブザななく……と、言うわけでは別にないのです。
自分で言うのもなんだけど、漣、結構顔が広い。ま、ここだと一番最初からいますからね。
それは自分の鎮守府でもだし、他のとことのお付き合いも結構ある。
なので、そんな日は、ぶらーっと、どことなく顔を出してみて、他の艦娘とだべったりする。
そんな、ある日の昼下がり。
……うん、そう、だったんだけどなぁ。
「でさー、そこでぼのがさ~。『漣!ぼーっとしてないでアンタもこれで手伝いなさい!』って竿渡すんだよねぇ。いやいやあたしゃまだまだトーシローだっての」
「マ?あははははっ……!。いっやー、曙ちゃんって秋刀魚が絡むとキャラ変わるよねぇ。普段はTHE・真面目!って感じなのにさ、意外だよ、意外」
「ぼのはどうしてああなったのか……、これがわからない。ただまあ、あー見えてなかなかのめり込みやすいタイプでしてなぁ」
そんなこんなで、今日は黒潮ちゃん・親潮ちゃん・早潮ちゃんの十五駆トリオとだべっている。
……あ、正確には十五駆ってもうひとり居るんだよね。夏潮ちゃんって子。まだ見つかっていないんだけど。
んで、主に十八駆だけど、こっちにも縁がある陽炎ちゃんとかもたまーにここに顔を出している。
ま、つまり漣にとっての暁ちゃんや狭霧姉と一緒だった前の十駆みたいな感じだね。艦娘に残っている記憶って色々ってこと。
んで、漣はこの三人とは、昔の縁もゆかりも無いんですけど……。艦娘としては意外と話すことも多かったりするんだよねぇ。
早潮ちゃん。
最近、うちの鎮守府に着任したんだけど、この子、実にフレンドリーで、気さく。
後なんか言葉の波長がなんとなーく漣とあってる気もする。……あってるようであってないときもあるけど。
漣とはなんかこう、ベクトルが違う感じもする。今どきの言葉?で言うなら……『陽キャ』?
まあ、二人してだべってると言葉がくだけまくって、「あんたたち何言ってるのかわかんないわよ」ってぼのとかからツッコまれたりする。そんな仲良しです。
「でも、そこまで鎮守府秋刀魚祭りに真摯に取り組むなんて、流石曙さんですね……私も見習わないと」
「いや、ぼのは見習わなくていいと思うよ、親潮ちゃん……」
「せやで親潮……洋上で秋刀魚釣りとか、効率的にはイマイチやって」
んで、黒潮ちゃんと親潮ちゃん。
黒潮ちゃんはご主人さまの言葉を借りたら『はんなりな子』。
早潮ちゃんとは逆に、漣とはそれはもう、鎮守府出来てからちょっとくらいからの長い付き合い。
昔からご主人さまに一緒にツッコミいれたり、漣にも入れられたり。ツッコミはとっても貴重なんです。
親潮ちゃんはうちの駆逐だと、漣の次……くらいに練度で言えば名前が上がってくる子。うちの駆逐のまとめ役なとこもありますね。
そんなわけで、漣やご主人さまとも一緒にお仕事することも多かったり。
真面目オブ真面目で、でも結構感情的なとこもあったりするし、結構天然っぽいところもあって。
……なんか、からかいたくなっちゃいますよね。とってもいい子です。
まあ、そーいうことで、この三人とは結構話す機会も多かったりするのです。
で、今は秋刀魚のぼののガチっぷりのお話。すまんな、ぼの。いい話のネタっぷりである。
あの気合の入りっぷりは艦娘の中でも随一だもん。仕方ないね。
「最初は釣りの教本を逐一見ながらだったのが、年を経るたびに熟練漁業員になっていきまして……。最近は秋刀魚以外でも大潮ちゃんとか響ちゃんとか連れて釣りに行ってるんだよね~」
「やっば、ガチ勢じゃん。根っからなんだねぇ」
「最近、たまーに漣も巻き込まれたり……まあ実際ぼのと一緒に釣りしてると楽しいのでヨシ!なんですけどね。大体漣も暇な日ですし」
「おー、なんだかんだ合わせてくれるいい子なんだねー、曙ちゃん。……あ、へぇー、そうなんだ。なるほどなるほど……」
なーんて話をしてると、早潮ちゃんが手持ちの携帯端末で何かを見たらしく、なにやら感心をしている。
「ねっ。ねっ。漣ちゃん。今日ってなんの日か知ってる?」
と、何か思いついたのか、早潮ちゃんからの急なフリ。
こーいうとこがなんというかコミュ力高いっていうか。なんというかですね。
「え、今日?藪から棒ですねぇ……何の変哲もない平日ですな?」
しっかし……なんかあったっけ?今日は普段どおりの一日である。
どっちかっていうと明日が……祝日だったっけ、確か……『勤労感謝の日』とかだったような?
漣たちも、ご主人さまも、明日はそういうの関係なくいつも通りの一日だったはずだけど。
「今日はですね~……。『いい夫婦の日』なのです!」
……ナンデスト?
黒潮ちゃんは「あー、そういやぁ、あったなぁ、そんな日」って呟いてる。
「ありゃ、その反応は意外。漣ちゃんだったら知ってると思ったんだけど、よくあたしみたいにネットも見てるし」
「あ、いやぁー。名前だけは聞いたことあったんすけど、そういうの気にもとめてなかったというか……」
そう、名前だけは聞いたことはある。まーったく気にしてなかっただけで。
11月22日。
11(いい)22(ふーふ)。なので、いい夫婦の日。
どっかの人が一昔前に提唱したとか言われてる、別に祝日でもなんでもないけど、そーいう日。
何のための日かは、ぶっちゃけ漣にはわかんないけど、そーいや、そういう日があったとかそんな話だけは昔どっかで聞いたことはあったような……気がする。
……いやですね、そもそも○○の日で覚えてる日って祝日くらいだよ。元々漣達艦娘には祝日とかあんま関係ないけど!
というかこの国、些細なことで○○の日って作り過ぎだよ。
ついでに思い出したけど、11月11日にいたっては棒っぽいってだけで某棒状のお菓子の日じゃん!なんでもありかよ!
「……でさ、でさ」
と、漣が心のなかでこの国の記念日の量産っぷりにツッコんでたら、早潮ちゃんから追撃の一言。
「提督にはなんかしてあげないの?漣ちゃん」
「な、なんでそこでご主人さまの名前が出てくるんですかっ」
ホントだよ。本当に藪から棒だなぁ。
ご主人さまとはちょっと、昔っからのお付き合いってだけでして、そりゃあ、まあ、ケッコンだってしてますけど?
「えー、だって……ねぇ?」
「ええ、そうですよね」
「ねー、ほんまやねぇ」
と、お三方は漣の反応にピンと来なかったのか、揃って相槌をうってる。
……やーな予感します。な、なんなのさぁ。
「漣ちゃん、ここで一番最初にケッコンしたのって?」
「……漣です」
「漣さん、ここで一番鍛えられて、一番練度が高いのは、誰でしょう?」
「………多分、漣です」
「漣ちゃん、ここで最初に司令はんと知り合ったのって?」
「…………アッハイ、漣です……」
……うぐぅ……、なんも言い返せねぇ……。
そうなのか?傍から見たら、漣とご主人さまは、そーゆーことなのか?
まあ、そりゃあ、ご主人さまと……まあいろいろとあったけど、それは別に漣だけじゃあないし。
なんだったらこの3人だって、っていうか親潮ちゃんは、漣から見ても特にご主人さまにかわいがられてるんだけど。
てか、気づいたけど、この空間駆逐隊的にはアウェーじゃん!タスケテ第七駆逐隊!
……いや、居たとしても、なんかみんなあっち側につくのは見える気がする……。
ぼのがいたら、一緒に巻き込めるんだけどなぁ。
「漣ちゃん、これはもう世間一般的には『つーかーの仲』って言うと思うんよ」
「黒潮姉の例え渋いね……。まあ、なにかな、あたしから見ても漣ちゃんと提督って、もー互いに好きピ感マシマシだと思うんだよねぇ」
「わかりみしかないですね、それは。……漣さんがたまにちょっと羨ましくなります。いいなぁ」
なんか羨ましがられた。まあ、最初の秘書艦として譲れねえ!ってとこがあるのは……ちょっと事実だけど。
「ねっ、ねっ、漣ちゃんは提督には何もしてあげないの?」
「何も、って言われましても、ねぇ?……あー、その、もう随分と長い付き合いなので、今になってなんかってのも、こっ恥ずかしいですねぇ……」
漣が何かご主人さまにしてあげるのは、もう既定路線になっちまったので、考えてみるものの。
ぱーっとそう急に簡単に浮かぶものも……ないんだよなぁ。
なんかもう親の顔よりご主人の顔を見てる気がするし、いや艦娘に親もなにもないけど。
「と、ということは、漣さんは、司令とあんなことや、こんなことももう……」
「いや、誰もそんなこと言うてへんで、親潮はん」
そうだぞ。というか親潮ちゃんだって、あんなことやこんなことしてるの知ってるんだぞ。とは言わないでおく。
「……あ、せやぁ」
と、漣がうーんと唸ってると、何か妙案を思いついたのか笑みを浮かべる黒潮ちゃん。
「うち、ええこと思いついたわぁ♪」
「えっ、なになに黒潮姉」
「んっふふー、漣ちゃん。たしか今日、ちょうど秘書艦担当の日やったやんねぇ」
「……そーですけど……?」
「いやねぇ、漣ちゃんって司令はんのこと『ご主人さま』って呼ぶやない?」
そんでもって、黒潮ちゃんが一瞬溜めて、
「そ・こ・で、今日は、特別に『旦那さま』って呼んでみたらどーよ?」
「……へ?」
爆弾をぶち込んできた。
「……だ、だだだ旦那さまぁ!?」
「うっわー、黒潮姉おっとなー」
「でも……確かにこれは効果的でしょうね……普段の呼び方から更に踏み込んで、おしとやかな感じが出るのも、とても、いい……」
う、うぅ、我ながらすっとんきょうな声を出してしまった。
なんか親潮ちゃんに至っては感心している。うぅ、漣はそんなおしとやかな感じが似合うキャラでもないですしー。
「……うぇぇ、漣が、ご主人さまに、『旦那さま』ですかぁ」
「あらら、なんや消極的やなぁ。ウチ的には司令はんのこと『ご主人さま』って呼ぶのもまあまあ攻めた感じやと思うけどなぁ、今更なことやけど」
「う゛っ。……いやまあ、ご主人さまは、ご主人さまですしぃ……」
ドストレートにツッコまれた。そこは自覚してますよ!
「まーまー黒潮姉、そこはそんだけの長いお付き合いってことで……で、どうすんの?漣ちゃん」
……早潮ちゃんがまとめてくれたとこで、自分でもなんかないか考えてみる。
考えども考えども、黒潮ちゃんの案以外に目新しいことが浮かぶわけでもなく。
と、いうより、色々思い出してると、漣、ご主人さまといろいろとやってきるんだなぁ……。
「……ご主人さま、喜びますかねぇ……?」
数分くらい唸って、ギブアップ。
漣にゃ、黒潮ちゃんの案以上のことはなーんも浮かびませんでした。
「間違いなく、司令なら絶対喜ぶと思いますよ」
「尊みマシマシだと思うよ、多分」
「……うぅ、そうですなぁ。そこまで推されては、頑張らないと、ですなぁ」
正直ちょっとこっ恥ずかしいけど、ご主人さまが喜ぶなら……ガラじゃないけど、まあ、いいかなぁ。
と、お墨付きももらったとこで、ふと疑問。
「ところで、何故に、お三方は漣の後押しをしてくれるので……?」
「ん?そりゃあ、あれよ、漣ちゃん。こういうのは漣ちゃんからまずやらな、みんな出来ひんやないの♪」
「順番制なの!?」
思わずズコーってなった。みんな野心あるなぁ!
いや別に漣としては、別に他の艦娘がそんな事したってさほど気にしないけど、……多分!
「わ、私も司令のこと、いつか……そんな風に呼んでみたいですけど、やはりここは、まずは漣さんから言っていただいてですね」
「まーそこは、『先輩』の特権ってことで。ね、漣ちゃん♪」
うぬぬ……なんか丸め込まれてしまった。
まー、確かにこういうので気を遣わせちゃうのも悪いですし、漣から頑張りますかぁ。
しっかし、確かに普段『ご主人さま』なんて言ってる漣が、いきなり『旦那さま』なんて言ったら、ご主人さま、どんな反応するんだろうか。
親潮ちゃんの言うとおり、普段とは違うギャップはあるのかもなぁ……。
――とか考えてると、漣に電流走る。
「……あ、……そうだなぁ、漣も閃きました」
そうじゃん。
自分で普段言ってるからまーったく意識してなかったけど、黒潮ちゃんの言うとおり、客観的に見たら『ご主人さま』だって結構攻めた言葉ですな?
と、なればですよ。
「逆に、親潮ちゃんが『ご主人さま』って言うのも、……なんかすっごいご主人さまにぶっ刺さるんじゃないですかな?」
そうですよ。漣以外がこの呼び方を使うことで、また違った見え方があると思うし。
この3人の中でいっちばん、そのギャップって言うか破壊力?を生み出すってなると、親潮ちゃんっしょ。
「……え、えええっ!わ、私が、し、司令に『ご主人さま』って、ですかぁ……!?」
「おぉ~……、親潮の目がぐるぐるや。せやけど……確かに、それは破壊力すごそうやなぁ~。多分、司令一撃やろ」
「ふっふっふ……。ね。ほら、親潮ちゃんみたいな真面目な子が、っていうギャップもありますし、漣とはまた違った魅力がですね」
「おー、それいいねぇ漣ちゃん。親潮姉ガンバガンバ~」
……はーっはっは。漣、ただではやられないのです。旅は道連れ、ってね!
なーんて色々突発女子会めいたことをやってる内に、休憩のお時間が終わってた。
最終的に、完全に真っ赤になってダウンしてる親潮ちゃんと、それをからかう黒潮ちゃんと早潮ちゃんに見送られて、漣はお仕事お仕事っと。
……まあ、そんな事があった後、いざ、ご主人さまと顔を合わせるとなると、そらもう緊張もするわけでして。
――『旦那さま』、かぁ。
自分で言うのもあれなんですけど、確かに『ご主人さま』ってのもかなり攻めてるっていうか特殊な言い方だとは思うんですよ?
でも、『旦那さま』ってなんていうかもっとこう……、鳳翔さんとか、そんなカンジの人が言ってこそってカンジもするといいますか。
あ、あと旦那ってことは、つまりまあ……そういうことですよねぇ、うん……。
それに、いざ、漣が『旦那さま』だなんて、いつ言おうか、どう言おうか、そんな事を悶々と考えて。
そうこうしている内に、執務室の扉の前。
日常のように見ているこの扉、今日はなんというか……反り立つ壁のような圧を感じますね。
………ええーい!ままよ!考えても仕方ねえ!
なるようになれー!
――ガチャリ。
「おっ、おかえり漣」
「た、ただいま戻りましたぁ!ご主人さまァ!」
……いきなりなにやってんですか漣。
も、もちつけ漣、いくらなんでも帰ってきていきなりそれは不自然ですよ!
「うおっ、きゅ、急にどうした」
「な、なんでもありませんぞ!さ、さぁ午後のお仕事も頑張りましょうぞ!ご主人さま!」
「……?お、おう……」
うわーい、ご主人さま、めっちゃ「なんかあったのか」みたいな視線で見てきてますよ。
……うっへー、先行き不安だなぁ……。
と、まー、スタートダッシュからいきなりズコーとやってしまったんだけれど。
いざ、お仕事が始まってみると、年末年始、冬季、春季に向けての資材の備えの手配とか、今やってる秋刀魚漁の進捗とか。
そこらへんのお話とかで、それなりに真面目モードに入れたおかげで、いつもどーりに。
進捗自体は概ね良好ってやつです。漣たち、やることはやってますからねぇ~。既に秋刀魚の方のノルマも達成できてますしね。
んで、たまーに世間話とかでだべったりもしてます、いつも通りですね。
……いや、その、いつも通りといいましても、あんな感じの話をしちゃっただけに、ですね。
普段から見てるよーく見てる、ご主人さまの顔も、いささか見づらいといいますか。
そういうのは、あったんですけどね、あははは……。
――ゴーン、ゴーン、ゴーン。
そんな風に、真面目にお仕事してますと、執務室に時鐘の音が静かに響く。
「あ、ヒトハチマルマルですよ、ご主人さま」
気づけば、こんな時間。お腹の虫もなってくる時間帯。
……結局、いつも通りということは、そういうことでして。
ここまでは、そう呼べずじまいですよ、ハイ。
「お、もうこんな時間かぁ。……そろそろ、飯にするかぁ、漣」
何気なく出てきた、ご主人さまの一言。
そう、秘書艦って言うとですね、ご主人さま。つまり、提督のご飯も用意するのも立派なお仕事でして。
まあ、漣も……他の七駆のみんなとか、おっとなーな方々とか、それに比べたら……まあそんな得意じゃないけど、頑張って作ってます。
長い付き合いですし、ご主人さまがどーいうの好きだーとかも、まあ基本知ってます。
そう、いろいろ考えてるとですね、また昼間の出来事を思い返してきてですね……。
こういうのを、好きな人に作ってあげるって、やっぱ基本的にはそう言う仲だったりするじゃないっすか、一般的に。
……かーっ、今までそーゆーの、あんま意識してこなかったけど……。
――あ、でも……そうか、ある意味……チャンス?なのかな?
「……あの、ですね、ご主人さま」
そう、漣の中で、意を決して。
「き、今日、漣が出来る範囲で、リクエスト、ってありますか?……だ、旦那さま」
――言っちゃった。
言っちゃいましたよー。うぅ、なんだかむずがゆい感じが自分でもしますよ。
……悪くない、かも。多分。でも、恥ずかしくて、前は見れてない。
……ご主人さまは、何も言わない。
いきなりこんなこと言っちゃったから、びっくりさせちゃった、かな。
……ご主人さまは、まだ何も、言わない。
……あれ?これは、もしかして漣、やっちゃった系?
と、ご主人さまの方を見やると。
「……だ、旦那さま?あれ?ちょっと?」
ご主人さまは、椅子から立ち尽くして、ぼーっとしてる。
口は半開きだし、目もなんかこう、焦点が、あって、ないよう、な……?
「ちょっ……ご主人さまっ。しっかり!ある意味それベタだけど!」
「危なかった……司令部レベル120じゃなければ即死だった……」
なーに言ってるんですか。なんですか司令部レベルって。
……ご主人さまは漣が揺すってたら、ちょっとしたら戻ってきた。
気が抜けている間、それはそれはめっちゃ幸せそうな顔してたけど。……ちょっと不安になってた漣の時間返してヨ!
「しっかし、まあ……うん、よかった。うん……」
「ご主人さまの語彙力よ」
めっちゃにやけながら、海防艦並の感想を言うご主人さま。……いや海防艦の子でももっとボキャブラリーあるわ。
「しっかし、なんでまた?」
「えっ、あー、そのですね、今日ってほら、11月22日じゃあないですか」
「そうだな?……ん?……あー、なるほど、そういやそんな日あったなぁ……それで?俺のために?」
――無言で、頷きで返事を返す。
乙女に、そういうことは言わせないんですよ、旦那さま。
「……か~わ~い~い~や~つ~だ~なぁ~」
……そう言うと、ギュッと抱きしめてきて、漣の頭を撫でてくる。
「ありがと、めっちゃドキドキしたよ」
――よかったぁ。
うん、ご主人さま……旦那さまに、喜んでもらうために、こんな恥ずかしいことしてるんだもん。
旦那さまが、喜んでくれてるなら……なによりですぞ。
「……えへへへ、そう言ってもらえたら漣も嬉しいです……旦那さま」
「ウッ」
あ、ちょっと不意打ち気味に言ったのがまたぶっ刺さったのか、ご主人さまがいい顔をしてる。
なーんか、こっちまでちょっとにやけて来ちゃうなぁ、もう。
「……あーもう、たまらんなぁ……」
「……で、旦那さま。どうするんで?」
「……ん?」
そう、こんなこっ恥ずかしい空間を作っちゃったけど、秘書艦のお仕事はお仕事でして。
「晩飯ですよ」
「ああ、うーん、そうだなぁ……」
そんな風に、うーん、と悩んだ、ご主人さまの次の一言。
「……漣、とか?」
……はいぃ!?
「あ、あの、旦那さま。それは、あの、そういう意味で?」
ば、晩ごはんが漣って、つまり、よくある、ベタな、そういうので?
「……あー、いや、ごめん、半分、冗談ってことで……」
「半分ってなんですか!」
半笑いでご主人さまが答えてる。
……なんか漣、からかわれてません?ちっきしょー、ぷんすかですよ!
「はっはっは、まあ、とりあえず今は飯だな。……なんでもいいかなぁ、漣作るやつなら」
「出た!それ一番困るんですよぉ!」
何がいいか聞いてるのに、こう返されると、じゃあどうすればいいのさ、ってやつですよ。
……火が出るほどの激辛料理とかでもつくってやろうかな……。
「……そう?んじゃあ……焼き飯で」
このタイミングで女の子に焼き飯って、ご主人さま。
それに、焼き飯って結構その人のセンスとか出たりするので、人によって色々あって、結構難しいとこもあったりする。
……あ、でも……そういえば、ご主人さまが最初に漣に作ってくれたのも、焼き飯だったなぁ。
「こんくらいしか作れんぞー」とか、そんな事を言いながら。
――そうだね、ある意味、今にぴったりな料理かも知んないっすね?
「……ほいさっさー!んじゃ、楽しみにしといてくださいね!旦那さま♪」
んで、まあそれから、なんだかんだご主人……旦那さまも、見てるだけじゃなくて、手伝ってくれて。
二人で一緒に作った焼き飯は、まあ、美味しかったです。
それで、まあ、その、旦那さまと、いちゃこらしてました。ハイ。
……なにもないですよ!いちゃついてただけですからね!