【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦 作:きりぼー
この物語は、英梨々vs出海ちゃんという構造をとってそうで、ただ英梨々を愛でるような内容を目指しております。
例によってもう原作からの乖離がひどいです。
舞台は中1~中2ぐらいの予定。
冬休みに毎日投稿できるように創作してきましたが、ワールドカップが始まってしまい、ぜんぜん書けませんでした。
なんといってもアルゼンチンフリークなので・・・優勝後の脱力感もひどい。逆転負けして優勝を逃したら、アルゼンチンのフーリガンと一緒に自殺してたかも・・・いやいやまさか。で、何の話だっけ。
そうそう、というわけで、前回書いた「夏休みちょいエロ英梨々」(題名失念)では、やっぱりけしからん!というわけで、今回は清純派路線ですよ。
正統な幼馴染ヒロインとしての英梨々に期待です。
もちろん、小学生の時に喧嘩していない仲の良い倫也と英梨々になっております。出海ちゃんは2学年したので、一年飛び級させようかな。
途中まで書いてあるので、年末年始ぐらいは毎日投稿します。
本来は、現実の日時と合わせていたのですが、前述したとおりワールドカップのせいで投稿すらできませんでした・・・
今、急ピッチで修正中です。
のんびりと、まだまだ未熟な英梨々を応援していただければと思います。
「ねぇ倫也。今年のクリスマス会のことなんだけど」
「ああ、うん?」
「いつも通り24日が準備で、25日の・・・」
「ちょっとまってくれ英梨々」
「どうしたのよ?」
もうすぐ冬休み。俺と英梨々は一緒に歩いて学校からの帰宅途中だ。英梨々は黒いダッフルコートに真っ赤な長いマフラーを寒そうに首に巻いている。
「今年のクリスマスに俺は参加できない」
「はぁ?なんでよ」
「実はな・・・伊織知ってるだろ?あいつの家のホームパーティーに呼ばれててさ」
「波島伊織よね?えっ、あんたBLに目覚めたの?ホモなの?死ぬの?」
「そんなことでホモ認定するなよ・・・最近じゃLGBTとかでナイーブな話題なんだからな」
「ふーん」
波島伊織。女みたいな名前だけど男だ。同じクラスのイケメン。高身長。成績優秀。スポーツ万能。おまけに女に優しい。とにかくモテるあいつはリア充の化身みたいなやつでオタクの俺とはまったく無縁のやつだと思っていた。
しかし、なかなか話のわかるやつでアニメやマンガにも詳しく、なかなかのオタクっぷりだ。しかもそれを俺と同じでまったく隠さずに爽やかに話題にする。今では伊織と同じ話題が欲しくてアニメを見る女子も増えた。
「あっ、でもさ、24日の手伝いは行けるから」
「来なくていいわよ」
「いや、そういわずに・・・」
24日はクリスマス会前日の会場セッティングだ。英梨々の家の広いスペースを整理して、テーブルを並べ飾りつけをする。オープンバルコニーも使って、なんだかんだで100人近い人が来るからなかなか大変だ。
スペンサーのおじさんがこっそり5千円ほどのお小遣いをくれる。これが小学生だった俺にはお年玉ばりにでかい収入だった。
「だって25日に来れないのに、24日だけきたら、『あら、倫也君は?』って親に聞かれるでしょ。嫌よ、そんなの」
「それ、24日も参加しなくても聞かれるじゃ」
「いいわよ。クラスの男子とクリスマス会するんですって、BLに目覚めたのよあいつって答えるから」
「風評被害甚だしいな!」
「ふん」
英梨々が口を膨らませてすねた。
澤村英梨々。父親がイギリス人外交官でお金持ちの家柄だ。そういうわけで英梨々はハーフだけど、きれいなブロンドの髪とサファイヤブルーの大きな瞳をもっている。
まぁ容姿だけならお姫様みたいなやつで、こうしてちょっとすねた仕草だけでも可愛い。可愛いのは認めるが、性格は腐女子でアニメ好き。マンガも描く生粋のオタクだ。
「で、その波島伊織会は何人の男子が集まるのよ?」
「なんでそんな極道みたいな呼び方なんだよ・・・俺だけだよ」
「うわ・・・あんたホモの自覚ないわけ?」
「ねぇわ!」
英梨々は敵対関係の相手をフルネームで呼ぶクセがある。伊織と英梨々に接点はないはずなので、クリスマス会キャンセルの逆恨みをされているとは伊織も思ってもみないだろう。
「なんかメリットがあるわけ?」
「いや・・・」
正直にいうと、伊織には二つ年下の小学校5年生の妹がいる。これがなかなかもって可愛い上に、俺を尊敬のまなざしでみつめ、非常に懐いてくれている。おまけに絵が英梨々程ではないにせよ上手で、今は一緒にマンガなども描いている・・・
もちろん、めんどくさいことになりそうなので、英梨々には妹のことは黙っている。
「ふーん・・・」
英梨々が怪しい目で俺を訝しがっている。まぁそうだろう。何しろ英梨々のクリスマス会に参加すれば前日の5千円だけでなく、当日もかなり良いプレゼントがもらえる。最新のゲームやマンガ全巻セットなどだ。英梨々が選んでいるので、もちろん俺の持っているものとかぶらないどころか、俺の欲しいものを的確にプレゼントしてくれる。
「波島伊織って金持ちなの?」
「あのな・・・」
「だって、倫也がうちにこないメリットがないじゃないの?」
「まぁ、そうなんだがな・・・誘われたら断れないだろ?」
「なんでよ」
「理由聞かれるじゃん」
「ああ、あたしのクリスマス会に参加していることは内緒ってことね」
「まぁ、そうだろ・・・」
俺と英梨々の関係は学校では秘密だ。ほとんど他人で口も聞かない。これは小学生時代に英梨々がオタク疑惑(真実なのだが)でいじめの対象になった時からの流れだ。俺はオタクは隠さないので、俺と一緒にいると英梨々にもオタクの疑いがかかる。
「なら、しょうがないか・・・」
「悪いな」
「いいわよ別に、あたしが倫也に来てほしいわけじゃないし」
どういうわけか、俺はスペンサーのおじさんと小百合さんに気に入られている。自分に記憶がないぐらい昔から英梨々の家に通っているせいかもしれない。
「そうだ。英梨々」
「何よ」
「伊織が女子を連れてきていいっていってぞ」
「男子はダメなのね」
「まぁそういうやつだし」
「で、倫也に誘える女子がいるのかしら?」
俺は英梨々を指さした。
「あんたねぇ・・・あたしはクリスマス会のホステスでしょ」
「だよな」
「はぁ・・・」
英梨々が大きな溜息をついた。
「ああそうか、波島伊織はあたし目当てで倫也を誘ったのね?」
「はっ?」
「じゃないと、男子なんてクリスマス会に誘わないでしょ。遠まわしな誘い方ね」
「あのなぁ。自意識過剰にも程があるだろ」
「ちがうのかしら?」
「ちがうだろうな」
英梨々はもてる。そりゃもうびっくりするぐらいモテる。英梨々とクリスマスを過ごしたい男子は直接は無理なのは自覚していて、クラスでクリスマス会を企画し英梨々を誘うが、もちろん英梨々はすべて断っている。英梨々はそれ程甘くない。
伊織が英梨々を誘いたいから、俺を誘ったというのは、いくらなんでも邪推しすぎだ。だいたい・・・
俺を誘ったのは伊織でなく、出海ちゃんなのだから。
※ ※ ※
波島出海。伊織と同じで少し赤茶けた髪の色をしている。小五にして胸がすでに英梨々より大きい・・・いや、英梨々が0なだけか。
きっかけは、夏休みに伊織の家に遊びに行った時のことだ。宿題をしている真面目な出海ちゃんが、わからない算数の問題を伊織に聞いていた。
「うーん。見た瞬間に答えのわかるような問題が、どうしてわからないのか、俺にはわからないな」
という、実に伊織らしい感想を述べた。妹の勉強を見る気がないのか、それが素なのかわからない。
俺はみかねてその問題を見た。
「あれ・・・これって、小6の受験用レベルの問題じゃね?」
「はい。そうです」
「えっ、小5だったよね?」
「はい。今は小5です」
「倫也君。出海はね、飛び級試験受けるんだってさ」
「飛び級?」
「そう、小6を飛び越して、来年には中1になる」
「なんでまた?」
「ほんとだよね。そんなに生き急がなくてもいいと僕も思うよ」
「焚きつけたのお兄ちゃんじゃん・・・」
「はははっ」
「出海ちゃんって天才児なの?」
「ただの凡人です。」
「努力家なのさ」
伊織もなんだかんだで妹を高くは買っているらしい。
小6問題とはいえ、受験問題レベルだと難易度は高い。中学生はおろか高校生でも解けない人は解けない。
俺は見かねて声をかけたものの解けるか不安だった。伊織が初見で答えがわかるレベルなら大丈夫と思ったが、思いのほか難しい。
「伊織。一目で答えがわかるというのは嘘だろ」
「はははっ」
あっ、こいつ笑ってごまかしやがった。どうやら伊織もわからないらしい。性格的にプライドが高いので、あとでこっそり解答を見て、自分で理解してから教えるつもりじゃないかな。めんどくせぇやつ。
俺としてはなんとなく、かっこつけたかった。
「出海ちゃん。これ、難しい問題だから一緒に考えようか。紙とエンピツ貸してくれる?」
「はい、どうぞ」
俺は問題文を咀嚼しながら数字をまとめ、時には図解する。まずは手順良く自分で解いた。
「ごめん、自信ないから解答みてくれる・・・?」
「はい。えっと・・・大丈夫です。合ってます!すごいです」
「いやぁ・・・でも、今のじゃわからなかったでしょ?」
「はい・・・すみません」
「いやいや、今のは教えるようじゃないから。じゃ、もう一度解いてみよう」
「お願いします」
俺は少しずつ解き、その都度理解したかを確認した。出海ちゃんは飲み込みが早い。もう一度丁寧に解き終わった。
「わかりました。なるほど、焦らなければ・・・なんとかなりそうです」
「じゃあ、今度は出海ちゃん1人で解いてみて」
「もう一度ですか?」
「そう。同じ問題を何度も解くのは、無駄なようですごく有効な勉強方法なんだよ」
「はい!わかりました」
素直ないい子だった。
出海ちゃんがノートに解き始める。計算は早く途中式や筆算をあまり必要としない。この辺の基礎の高さは伊織仕込みといったところか。
途中、戸惑うこともなく出海ちゃんは問題を解き終えた。文句のつけようもない。素晴らしい飲み込みの早さと理解力である。
これなら飛び級したいのもわかる気がする。
「あの・・・お名前、もう一度教えてもらっていいですか?」
「俺の?安芸倫也」
「字は・・・」
「えっとね・・・」
俺は紙の隅に自分の名前を書いた。
「あき ともや・・・倫也先輩」
「先輩!?」
なんだかとてもくすぐったい感じがした。生まれて初めて先輩と言われた気がする。小学生時はパソコンクラブに所属していたが、部員は3人だった。話した記憶がほとんどない・・・
先輩か。2つ上だとけっこう年上に見えるものな。俺も先輩と呼ばれて恥ずかしくないようにしよう思った。
「クスクスッ」と、伊織が意味深に手で口元を隠しながら笑っている。なんだか伊織の陰謀にはまった気がしなくもない。
「倫也先輩」
「はい」
「もしよければ、また勉強教えてください」
出海ちゃんがペコリと頭を下げた。肩ぐらいまで伸ばした髪は後ろで結っていて、控えめなヘアゴムで留めている。英梨々の華やかなリボンとはぜんぜん違っていた。
「ああ、俺で何か役立つなら」
「ありがとうございます!」
素直で元気で明るい子だ。
その後、お茶を出してくれて休憩をした。伊織はソファーに座って足を組みながらラノベを読み始めた。俺とゲーム等で遊ぶ気もないらしい。
出海ちゃんはまだまだ課題があるらしく、引き続き勉強をしている。俺は伊織から借りたラノベを読みつつ、出海ちゃんにときどき勉強をみてあげた。先輩と呼ばれるたびに、にやつきそうな顔を抑えるのに苦労した。
※ ※ ※
そういうわけで、先日伊織の家に行ったときに、手製のクリスマス会の招待状を出海ちゃんから受け取り、俺は断ることなどできるわけもなく、その場で快諾してしまった。
いったんは保留して、英梨々と相談すべきだったかもしれない。英梨々がすねるだけでなく、英梨々の両親にも申し訳ない気がした。
「ねぇ倫也」
「ん?」
「あたしが行かなくても、あんたは伊織のクリスマス会に行くの?」
「そのつもりだが・・・」
「ふーん。じゃあね、さよなら」
英梨々が俺から離れて早歩きをし始めた。俺は追って止めようと思ったが言葉がでない。やっぱりまずったかなぁ。すねるだけでなく怒るとは思わなかった。女心は難しい・・・
「・・・英梨々」
俺が何もできずに呆然とその背中を見ていると、英梨々が立ち止まった。何やら鞄をゴソゴソとしている。振り返って、顔を下を向けたまま俺の方に戻ってきた。
「これ、・・・捨てといて」
英梨々が招待状の入った封筒を両腕を俺に押し当てるように渡してきた。
「いや、ちょっと待って・・・」
「バカ倫也!」
英梨々がその後は駆け足で帰っていった。・・・もしかしてちょっと泣いていたかも?気のせいかな。
俺は少しクシャクシャになった封筒を手に取る。毎年もらっていた。小学生の時も、幼稚園の時も・・・
落ち着いた紺色の封筒で中身も立派だ。案内状には挨拶と場所と時間が書いてある。可愛いクリスマスカードも同封されていて、開くとオルゴールが鳴る。
クリスマス会では英梨々はお姫様みたいになる。綺麗なドレスに身を包み、いろんな人から挨拶とプレゼントを受け取る。会場の片隅のテーブルにはプレゼントが山積みになる。リボンのつけたぬいぐるみもたくさん飾られる。
クリスマス会の片付けを手伝ったことがない。いつもプレゼントを英梨々の部屋まで何往復もして運び、それから一緒に箱を開けるのが楽しみだった。
リボンと包装紙をそこら中に放りだしたまま、英梨々は八重歯を見せて笑っていた。英梨々に欲しいものなんてなかったから、ぬいぐるみも洋服もほったかして、時々入っているボードゲームを開けては2人で遊んだ。
広い英梨々の部屋をぐちゃぐちゃに散らかして、その中に俺と英梨々がいた。
クリスマスというと、そのイメージが強い。
(続く)
出だしから不穏じゃん・・・(書いている内容を忘れている)