【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦 作:きりぼー
原作では空気だった出海ちゃん。
映画版では恵を煽る役割をしていていいところがあまりない。
中学生編までさかのぼって、倫也を慕いつつ、小学生である幼さを前面に出していきたいが・・・
東京に戻ってきた翌日。
美智留が家族と一緒に着物を着てやってきた。背が高いせいか、これがなかなか様になっていて似合っている。紫ベースで少し古風な着物だ。おばあちゃん物を仕立て直して着付をしてもらったらしい。とても品がある大正美人といった趣がある。
それなのに、「正直、重くって動きにくいし、後悔してるー」と美智留はしきりにぼやいている。
美智留の着物姿で盛り上がり、一通りの撮影が終わったころをみはからって、俺と美智留は外へと逃げ出すように出た。
今日は初詣だ。
といっても4日なのでそんなには混んでいないだろう。ぶつぶつ言う美智留をなだめながら駅まで歩いて、それから電車に乗った。
「トモ。変じゃないかな?」
「変じゃないぞ。似合ってる・・・と思う」
「なんで言葉濁すの?」
「だって美智留の女っぽいところを褒めるのって、あまりないからな・・・」
「うん。自分でもそう思う」
その後も、「変じゃない?」と何度かきいてくる。「カワイイ?」と聞いてこないあたりが実に美智留っぽかった。もう少し褒めてやるべきだろうか。
待ち合わた駅の改札を出た柱の前に波島兄妹が並んで待っていた。伊織はハーフコートを着ていて、同じ中一なのにカッコいい。美智留が俺の影に隠れていたが、ペコリと挨拶をしている。
「倫也先輩、あけましておめでとうございます」と、大きく頭を下げた出海ちゃんはピンクベースのチェック柄のセーターを着ていた。
「あけましておめでとう」と返事をする。
「あけおめー」と、美智留が顔だけ出していった。
「うわぁー。氷堂先輩かっこいいですね!」と褒めるあたりが、出海ちゃんの素直さだ。
「どうかな・・・重くって・・・ははっ」と美智留が照れて顔が赤くなっている。こんな側面もあったんだな。物怖じしないタイプだが、女性らしくあることには慣れていないようだ。
「ねっ、お兄ちゃん?」
「・・・ああ。うん?あけましておめでとう」
「あけおめー」と、伊織と美智留が見つめ合って固まっている。
これはこれで2人はいい感じなのだろう。鈍い俺でもわかる。美智留を連れてきたかいがあったというものだ。
そこから4人で神社まで歩いていく、すれ違う人が美智留を見ている。歩くペースは美智留が一番遅かった。俺がペースを上げると、伊織がちゃんとゆっくり美智留の横を歩いている。
「倫也先輩、早いですよ!」と、出海ちゃんが速足で追いついてきた。
「ほら、なんか邪魔してもな」
「そうですけど・・・倫也先輩はそれでいいんですか?」
「何が?」
「・・・別にいいです。なんでもないです」
「?」
なんだろう。美智留が伊織とくっつくことかな?それなら別にもいいと思うけれど、振り返って美智留を見てみる。別に伊織に対して嫉妬はないな。
やがて人通りが多くなり神社に近づいてきた。まだ出店が並んでいる。
「まずは参拝をすませるか。なんか作法があったような」
「手を洗いに行くんですよね?」
「そうだっけ?鳥居で挨拶したような。ちょっと待ってね」
スマホで検索をかけて作法を調べる。それを出海ちゃんと共有して参拝までを済ませた。少し遅れて、伊織と美智留も参拝している。
それから、おみくじを引いたり、出店を見て回って過ごした。出海ちゃんと並んで座り、たこ焼きを一緒に食べる。伊織と美智留はいい感じでなじんでいる。緊張していた美智留の表情も和らいで笑っていて、なかなか可愛く見えてきた。ショートカットだけど髪飾りが付いているし、首もすらりと長く和装が良く似合っている。姿勢もいい。
「やっぱり気になりますか?」
「何が?」
「氷堂先輩のこと」
「いや?ふたりで仲良さそうでよかったなと思っているけど」
「どういう関係なんです?」
「俺と美智留?」
「はい」
「従姉妹だよ」
「でも、ただの従姉妹じゃないですよね」
「そうだなー。同じ年の同じ日に産まれたしな。縁は感じるよ。その頃から交流もあったから兄妹みたいなところはあると思う」
「それだけですか?でも、従姉妹って結婚できますよね」
「らしいなぁ。だいたいあいつのことを、女だと思ってないからな」
「あんなに美人なのにですか?」
「あいつて美人か・・・?まぁ、最近は女っぽくなって可愛くなっているのかもしれないけど・・・美少年のほうが近くね?」
「ひどいですね!」
出海ちゃんがモグモグとたこ焼きを食べている。5年生の時で比べたら、出海ちゃん方がポテンシャルは美智留よりも高い気がする。美智留はだいたい性格からして男っぽい。
「じゃあ、倫也先輩は氷堂先輩のことを好きではないんですね?」
「好きだよ?」
「どっちですか」
「別に女としてはみれないけど、仲いいし・・・一緒に遊ぶし」
「ああ、そうじゃなくってですね」
「恋愛的には、ないな・・・うん。実感ゼロ」
「そうですか・・・」
出海ちゃんがモグモグとたこ焼きを食べている。俺にも一つくれた。俺は串を指して自分で食べる。モグモグ。
伊織と美智留は向こうで射的をやっている。周りに人が集まっているから、あの年でももう美男美女で注目されているのだろうか。
「倫也先輩は好きな人いるんですか?」
「ん~」
出海ちゃんって恋バナ好きなんだな。小5でも恋バナ好きとか流石女子といった感じだ。
「いない・・・と思う」
「なんですか、その曖昧な言い方は」
金髪ツインテールがこっちを睨んでいる気がした。まさか、そんな。そういえば英梨々は小5の時はぜんぜん恋バナしなかったな。美智留もしなかった。美智留はもうちょい性的なことを質問してきていたが・・・あれはただのバカだし女子枠で扱うべきじゃないのかもしれない。英梨々にいたっては当時から二次元キャラについてしか語らない。
「出海ちゃんは恋バナ好きなんだね」
「恋バナですか・・・?私は倫也先輩のことが気になっただけですよ?」
「ん?」
「別にいいです・・・」
たこ焼きを食べ終えた出海ちゃんは、立ち上がってゴミを捨てに行った。
「倫也先輩。私も射撃してみていいですか?」
「もちろん」
「教えてもらえます?」
「そんな詳しくないけどな」
美智留の邪魔をしては行けない気がしたが、あいつらはちょうど終わったようで離れていく。
俺は出海ちゃんをつれて射的の屋台へと向かい、2人分の料金を払ってコルクの弾を受け取った。
銃の重たいレバーを引いてから出海ちゃんに渡した。まだまだ小さな女の子で、恋バナをされてもぜんぜん緊張しなかった。
台から狙っている姿は文字通りの子供であどけなく普通に可愛い少女だ。
ガシャンという音がして、ポンッ!弾が当たる音がした。
駄菓子を落としてゲットした出海ちゃんは無邪気に笑って喜んでいた。
(続く)
どうなんだろう・・・