【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦   作:きりぼー

17 / 25
英梨々がいるから頑張れた倫也の話


17 つながる英梨々の小さな幸せ

 2月。英梨々は俺の部屋のこたつでマンガを描いている。黄色いドテラが梅の模様で妙に渋い。黒縁メガネに髪はストレートでオシャレにはほど遠い恰好をしていた。

俺も一緒にコタツに入ってノートPCで作業をしていた。

 

 英梨々はネームを描いているので、そんなに集中はしていない。ストーリーを練りながら構図を考えている時もあれば、イラストが先にイメージされて描いてからストーリーを俺に訪ねて来る時もある。

 

「ねぇ倫也。あのサイトだいぶ軌道に乗ってきたんじゃないかしら」

「ああ、そうだな。利用者も順調に伸びてる」

 

 あのサイトというのは、英梨々に提案されたラノベ批評サイトだ。俺がラノベを読み感想を書いている。ネタバレしないことはもちろんだが、販促するための文も書かないし、だからといって悪口も書かない。できるだけ正直に良いところを探して褒めるように心掛けている。

 

「そろそろリンクしたら?」

「そうだな・・・」

「別に迷惑がかかるようなものでもないわよね」

「そうなんだけどな、照れ臭いというか・・・」

 

 リンクというのは、エゴスティック・リリィのホームページのことだ。こちらは老舗同人サイトなのでファンも多い。英梨々は柏木エリの名前でこっそり四コマをのせているし、自身のピクツブやシイッターなどにもリンクを貼っている。

 様々な関連媒体がバナーリンクしているわけで、そんなに敷居が高いわけではない。ただリンクすればこちらにも流れてくるわけで・・・気恥ずかしいのだ。

 

「でも、もう50冊もレビュー書いたのよね」

「まぁな。でも、新作ばかりじゃないし、お気に入りのも多いからな」

「それはそれでいいじゃない。おすすめは自信をもって薦めなさいよ」

「わかったよ」

「相互リンクにしなさいよ」

「ああ。お前のとこにもリンクしておくけどいいか」

「別にいいわよ・・・」

「というか、問い合わせが来てたんだよ」

「何の?」

「俺のサイトの挿絵の作者について」

「なら、ちょうどいいわね」

 

 サイトを立ち上げてから、いろいろとホームページを改装している。まずは本を探しやすいようにタグ分けもした。それから評価もいくつかに分けてソートできるようになっている。それらが終わると、画面全体が寂しいことにやっと気が付いた。

 そこで英梨々にお願いして、挿絵を描いてもらい看板にしている。モデルは英梨々のようで金髪ツインテールの二次元美少女だ。ただメガネをかけている。最初はそれだけだったが、今では週替わりで髪型が少し変わったり、ランダムでメガネも変わる。余計な手間が増えたがそこも好評のようだった。

 英梨々はさらにその二頭身ディフォルメキャラを作って、今では画面のあちこちに登場し少し騒がしい。

 

 制作者の名前に柏木エリの名前を書きリンクで誘導した。絵が気に入った人はこれで英梨々のサイトに行くことができるし、英梨々のイラストも買うこともできる。

 

 自分のサイトからログアウトして、次に英梨々のHPにログインする。そこから俺のサイトにリンクを貼っていく。

 

「ここでいいか?」

 

 英梨々の方にPCの画面を向ける。英梨々が覗き込んでから「一番上のバナーを使いなさいよ」と言った。

 

「んじゃ、お言葉に甘えてっと・・・」

「なんだかあれね。自分のホームページから自分で描いたバナーだと絵柄が一緒で目立たないわね」

「そうだな。まぁいいだろ。そんなに大きく宣伝しなくても」

「次、エゴスティック・リリィね」

「それは小百合さんにお願いしたいけど」

「いいのよ。許可が降りるのは確定しているし、手間なだけでしょ」

「わかったよ」

 

 英梨々のホームページからログアウトし、エゴスティック・リリィにアクセスする。IDとパスワードは英梨々が知っているので、それを入力する。

 

「一番上にしなさいよ」

「嫌だよっ」

「根性ないわね」

「謙虚なんだよ。なんで大手サイトの上にバナーリンクしなきゃいけないんだよ」

「いいじゃない目立って」

「それにふさわしいサイトになったらな・・・、とりあえず末席増やして・・・と」

「ならあたしのホームページの下にしなさいよ」

「ああ、そうだな」

 

 俺は作業を進める。作業といっても数分で終わるような簡単なものだ。動作を確認してログアウトをする。

 今日の作業で俺のサイトは少し信用を得たことになり、検索でも上位にきやすくなってくる。それに恥じないサイトを心掛けたい。

 

 ちなみに俺がサイトを更新すると、英梨々のスマホに通知がいく。真っ先にレスをつけるのもいつも英梨々だ。というか、英梨々ぐらいしか返信がつかない。

 

「これ、あたしもおすすめ」

「わかりやすい、読んでみようかしら?」

「素直につまらないラノベって言っちゃえばいいのに(匿名)」

 

 とか、簡潔に書いてくれる。そんな一言でも何もないよりずっといい。挫折しないで50冊分書けたのは英梨々がいたからだと思う。

 

 英梨々がスマホを取り出して、小さな画面をみながらニヤニヤしている。画面をみなくても何をしているかわかる。相互リンクを確認しているのだ。自分のホームから俺のサイトにアクセスし、俺のサイトから自分のサイトに飛んでいるのだ。

 

 何がそんなにい嬉しいんだか・・・

 

(続き)




ポチッとな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。