【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦 作:きりぼー
2月。英梨々は俺の部屋のこたつでマンガを描いている。黄色いドテラが梅の模様で妙に渋い。黒縁メガネに髪はストレートでオシャレにはほど遠い恰好をしていた。
俺も一緒にコタツに入ってノートPCで作業をしていた。
英梨々はネームを描いているので、そんなに集中はしていない。ストーリーを練りながら構図を考えている時もあれば、イラストが先にイメージされて描いてからストーリーを俺に訪ねて来る時もある。
「ねぇ倫也。あのサイトだいぶ軌道に乗ってきたんじゃないかしら」
「ああ、そうだな。利用者も順調に伸びてる」
あのサイトというのは、英梨々に提案されたラノベ批評サイトだ。俺がラノベを読み感想を書いている。ネタバレしないことはもちろんだが、販促するための文も書かないし、だからといって悪口も書かない。できるだけ正直に良いところを探して褒めるように心掛けている。
「そろそろリンクしたら?」
「そうだな・・・」
「別に迷惑がかかるようなものでもないわよね」
「そうなんだけどな、照れ臭いというか・・・」
リンクというのは、エゴスティック・リリィのホームページのことだ。こちらは老舗同人サイトなのでファンも多い。英梨々は柏木エリの名前でこっそり四コマをのせているし、自身のピクツブやシイッターなどにもリンクを貼っている。
様々な関連媒体がバナーリンクしているわけで、そんなに敷居が高いわけではない。ただリンクすればこちらにも流れてくるわけで・・・気恥ずかしいのだ。
「でも、もう50冊もレビュー書いたのよね」
「まぁな。でも、新作ばかりじゃないし、お気に入りのも多いからな」
「それはそれでいいじゃない。おすすめは自信をもって薦めなさいよ」
「わかったよ」
「相互リンクにしなさいよ」
「ああ。お前のとこにもリンクしておくけどいいか」
「別にいいわよ・・・」
「というか、問い合わせが来てたんだよ」
「何の?」
「俺のサイトの挿絵の作者について」
「なら、ちょうどいいわね」
サイトを立ち上げてから、いろいろとホームページを改装している。まずは本を探しやすいようにタグ分けもした。それから評価もいくつかに分けてソートできるようになっている。それらが終わると、画面全体が寂しいことにやっと気が付いた。
そこで英梨々にお願いして、挿絵を描いてもらい看板にしている。モデルは英梨々のようで金髪ツインテールの二次元美少女だ。ただメガネをかけている。最初はそれだけだったが、今では週替わりで髪型が少し変わったり、ランダムでメガネも変わる。余計な手間が増えたがそこも好評のようだった。
英梨々はさらにその二頭身ディフォルメキャラを作って、今では画面のあちこちに登場し少し騒がしい。
制作者の名前に柏木エリの名前を書きリンクで誘導した。絵が気に入った人はこれで英梨々のサイトに行くことができるし、英梨々のイラストも買うこともできる。
自分のサイトからログアウトして、次に英梨々のHPにログインする。そこから俺のサイトにリンクを貼っていく。
「ここでいいか?」
英梨々の方にPCの画面を向ける。英梨々が覗き込んでから「一番上のバナーを使いなさいよ」と言った。
「んじゃ、お言葉に甘えてっと・・・」
「なんだかあれね。自分のホームページから自分で描いたバナーだと絵柄が一緒で目立たないわね」
「そうだな。まぁいいだろ。そんなに大きく宣伝しなくても」
「次、エゴスティック・リリィね」
「それは小百合さんにお願いしたいけど」
「いいのよ。許可が降りるのは確定しているし、手間なだけでしょ」
「わかったよ」
英梨々のホームページからログアウトし、エゴスティック・リリィにアクセスする。IDとパスワードは英梨々が知っているので、それを入力する。
「一番上にしなさいよ」
「嫌だよっ」
「根性ないわね」
「謙虚なんだよ。なんで大手サイトの上にバナーリンクしなきゃいけないんだよ」
「いいじゃない目立って」
「それにふさわしいサイトになったらな・・・、とりあえず末席増やして・・・と」
「ならあたしのホームページの下にしなさいよ」
「ああ、そうだな」
俺は作業を進める。作業といっても数分で終わるような簡単なものだ。動作を確認してログアウトをする。
今日の作業で俺のサイトは少し信用を得たことになり、検索でも上位にきやすくなってくる。それに恥じないサイトを心掛けたい。
ちなみに俺がサイトを更新すると、英梨々のスマホに通知がいく。真っ先にレスをつけるのもいつも英梨々だ。というか、英梨々ぐらいしか返信がつかない。
「これ、あたしもおすすめ」
「わかりやすい、読んでみようかしら?」
「素直につまらないラノベって言っちゃえばいいのに(匿名)」
とか、簡潔に書いてくれる。そんな一言でも何もないよりずっといい。挫折しないで50冊分書けたのは英梨々がいたからだと思う。
英梨々がスマホを取り出して、小さな画面をみながらニヤニヤしている。画面をみなくても何をしているかわかる。相互リンクを確認しているのだ。自分のホームから俺のサイトにアクセスし、俺のサイトから自分のサイトに飛んでいるのだ。
何がそんなにい嬉しいんだか・・・
(続き)
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