【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦 作:きりぼー
東京駅でのイルミネーションの後、英梨々のケータイに連絡が入り、近くまで執事の細川さんが迎えに来てくれていた。
高級車の後部座席に座り、東京のイルミネーションを眺めながら家へと戻った。細川さんは余計なことは何もしゃべらない人で静かに運転をする。俺は詳しくはないがどうやら少し迂回しながら東京の有名な場所をめぐってくれているようだった。
英梨々は右側の窓からイルミネーションを見つけると俺に教えてくれる。窓を通すとはっきりとは見えない。。ガラスに反射した英梨々の表情の方が気になるぐらいだ。
左側からサンタや小人のオブジェが見えたので英梨々に教えてやると、英梨々はこちら側に身を乗り出して窓から眺めている。
英梨々が近い。
吐息を感じるぐらいの距離で、英梨々の髪の香りがする。
「ぶさいくなサンタ」
と、言っていることは辛辣で口が悪い。「だいたい、小人は関係ないわよね?」とさらに文句を言っているが、俺としては「トナカイの世話役が小人なんだよ」と適当なことを答えておく。
家に着くころには夜の10時に迫っていた。俺が車を降りると英梨々も降りてきた。
「寒いから車の中にいろよ」
「いいのよ。じゃあ、また明日ね」
「ああ、また明日な」
英梨々が笑顔で手を小さく振っている。八重歯少しこぼれるような笑顔だった。
※ ※ ※
家の電気はついていて、両親が帰ってきているのかと思ったが、両親はまだ仕事から戻ってきていないようだ。
変わりにブルーの派手なスニーカが玄関に置いてある。
「トモー!」
玄関まで迎えに来たのは、従姉妹の美智留だった。俺が靴を脱ぐのもまたずに抱きついてくる。
前世は人懐っこい大型犬か何かだったに違いない。それを裏付けるように知能の代わりに体力全振りみたいなステータスをしている。スポーツ万能で音楽の才能にも恵まれている。何事にも器用なタイプで明るい性格。
ベリーショートのヘアスタイルがよく似合っていて、ボーイッシュな印象を与える。中学になって、やっと女性らしい体形・・・胸が出てきたと思ったら、もう結構な大きさなのが服の上からもわかる。
まぁ美人だ。少し離れたところに住んでいて、学校での詳細な評判までわからないが、バレンタインにもらうチョコが俺よりも一桁分多い。
「うさぎの気持ちがわかったよー」
「うさぎ?」
「寂しくて死にそうだった」
「ほぉ・・・」
家中の電気がついていた。リビングはもちろん、キッチン、洗面所、トイレ、風呂。うちの電気代をなんだと思っているのだ?
テレビはつけっぱなしで、大音量で終わり番組が流れている。外からみたら二階も電気がついていたはずなので、上にあがってとりあえず全部を消して回った。
「で、どうしたんだ美智留?」
「どうもこうもないよ。クリスマスなのに家に誰もいなかったの」
「うちの家系って放任主義を通り越して、少しネグレクト入っているよな・・・」
「ネグレ・・・なにそれ?」
「育児放棄」
「もう、育児って年齢でもないじゃん」
「だったら、文句言うなよ・・・」
「だってさー」
美智留が近いというか、俺の腕にまとわりついてくる。
「だぁー。離せ」
「いいじゃん。人恋しい季節だし」
「知るか!」
「で、トモはどこいってのさー」
「うん・・・ちょっとアキバまで買い物に」
「誘ってくれればいいのに」
「美智留が暇だとは思わなくてな」
「暇だよー」
どうやら暇すぎてこっちまで来たらしい。1人で家の中で勉強するとか無理なのだろう。連絡くれたらもう少し早く帰ってきてやれたのに。
「あたしも携帯持とうかな」
「今時、中学生で持ってない方が不思議だぞ?」
「だって、めんどくさそーじゃん」
「お前が今日ボッチなのは、たぶんそのせいだぞ・・・」
「やっぱそうかー」
美智留は俺が戻ってきて、少し落ち着いてきたようだ。
「お風呂はいってくるー」といって、風呂場に向かっていった。その後、すぐ戻ってきて、「一緒に入る?」と聞いてくるあたり、天然なのか、人をからかっているのか不明なところが恐ろしい。
小3あたりまで一緒に入っていたのでしょうがないのかもしれない。俺の方が恥ずかしくなって別々になったのだが、美智留は今でも平気なんだろうか?もしかして犬だから羞恥心とかないかもしれない。
「トモ、パジャマ貸してー」と、風呂からバスタオルを巻いたまま出てきた。タオルが短すぎて太ももがあらわなんだが、俺は誘われているのだろうか?
「ちょっと待ってろ」
二階に上がって、母親の部屋のタンスから美智留の下着とパジャマを取り出す。美智留はよく泊りにくるので、服は用意してある。
「ほらよ」と服を渡してやる。
「ありー」
「服ぐらい用意してから風呂にいけよ」
「ほら、トモが女子の下着を合法的に触る機会を作ってあげてるんじゃん」
「いらんわ!」
俺も風呂に入ろうと移動する。
「そうだ、明日のことだけど・・・!」
俺が振り返ったら、美智留がソファーに座って、巻いているバスタオルを外して頭をガシガシ拭いていた。
なんか、ちらっと見えた気がしたが、気のせいだろう。悶々とする前に俺は風呂に入った。
※ ※ ※
「あのなぁ・・・」
「いいじゃん。寂しいじゃん」
「よくないわ!」
「ほらほら、もんでいいから」
「もむか!」
「なんで、そんな我慢するかなぁ」
「むしろ、お前はなぜそこまで我慢しない?」
「あっ、我慢するのは認めるんだ?」
「寝ろ!」
ベッドに入ったら、美智留が入ってきた。まぁ予想の範囲だけど、年々辛い。隣の部屋だと流石に可哀そうなので、俺の部屋に布団は敷いてある。
しょうがないので、俺がベッドから出て布団にもぐりこむ。せっかく冷たい布団を温めたのに、また1からやり直しだ。
「ねぇトモー」
「ん?」
「精通した?」
「ぶっ」
はぁ。。。
前からバカなやつだと思ったが、いよいよ第二次成長期を越えて、バカが隠しきれなくなってきたようだ。
「あたしはね。生理きたよ?」
「そんな話聞きたくないんですけど・・・」
「だから、トモが精通したら、子供作れるじゃん?」
「俺の話聞いてる?」
「トモ、童貞こじらせそうだし、さっさと卒業した方がいいと思う」
「ほっとけ」
「あたしも早く処女捨てたいし、ギブアンドテイクじゃん?」
「彼氏作ればいいだろ」
「トモはあたしが他の男に寝取られてもいいんだ?」
「ああ、かまわん」
「あたしがトモの童貞を卒業してやらないと、トモはずっと童貞だと思うけどー」
「ああ、それでけっこうです」
「ヘタレだなー」
「倫理観が普通なだけだろ・・・」
童貞卒業もなにも、まだ中1なんですけど。美智留の脳内ではどうなっているのだ。
「あっ、そうだ美智留」
「何?」
「明日だけどさ、クリスマス会参加する?」
「そのつもりできたけど」
「わかった、じゃあ明日連絡しておく」
「間に合うの?」
「さぁ、ホームパーティーだし、人が1人増えるぐらい問題ないだろ」
「問題大有りじゃないの?」
「えっ、そうなの?」
俺の中のホームパーティーの規模が英梨々の家だから、感覚がにぶっているのだろうか。ダメならダメで明日考えよう。
「そういえばトモってさ、昔は澤村ちゃんの家のクリスマス会に参加してなかったっけ」
「ああ、そんな時もあったな」
「あたしも一度参加させてもらったんだよね」
「ああ、そんな時もあったな・・・」
「いやな感じだった」
「だから、その後は誘ってないだろ」
「今年は行かないの?」
「そろそろ寝ろ」
そう、確か小3ぐらいの時だったか。英梨々のクリスマス会に美智留も連れて行ったら、英梨々のがすごく機嫌が悪い日で、美智留とは挨拶しないし、部屋には入れないし、プレゼントも触らせないし、あげく美智留にジュースぶん投げて、2人でケンカしてたからな。
いそいそと途中で逃げ帰ってきたんだ。思い出してきた。なんであの時、あんなに機嫌が悪かったんだろうな・・・
「なぁ美智留。明日のことだけどさ」
「うん?」
眠たそうな美智留の返事だ。ベッドで横になるとすぐ寝るタイプ。
「波島ってヤツの家に行くんだけどさ、その内容は英梨々には内緒にしておいてくれ」
「内緒もなにも、あたし澤村ちゃんと交流ぜんぜんないし」
「なら別にいいんだけどな」
「トモ。何かやましいことあるわけ?」
「ない」
「変なの」
「・・・そうだな」
19時までに英梨々の家にいけばいいんだ。同じ学区内、自転車で10分もかからないだろう。
なんだか胸がもやもやする・・・
さっき、美智留にエロいことをされかかったからだろうか・・・
ベッドの上から小さな寝息が聞こえてきた。俺も布団をかぶって目をつぶった。
※ ※ ※
「うぃ・・・・・・さびぃ・・・・・・」
ふと、夜中に寒くて目が覚めた。掛け布団がない・・・
上半身を起こして横を見ると、美智留が俺の布団で寝ている。しかも、俺の掛け布団にくるまっていた。
「たくっ・・・しょうがねぇなぁ・・・」
美智留が布団に入ってくるのはいつものことだ。予想はしていた。ただ、今日は俺が寝てしまうのが早かったらしい。
立ち上がってベッドの方で寝ようと思ったが、ベッドの掛け布団が床に落ちていた。布団もベッドも冷たい・・・
とりあえずトイレに行って、それから部屋に戻って考える。ベッドに掛け布団を戻してみるが、どうにも今から冷たい布団に入る気がしない。
しょうがない。
俺は美智留の方にベッドの掛け布団をかけ、美智留がくるまっている暖かい掛け布団を返してもらった。美智留が寝ぼけて寝返りをうっている。
もふもふと暖かい。そして美智留の匂いがする。すぐ隣に美智留が寝ているが、あまりドキドキはしない。昔から一緒に寝ていたせいだろう。
あくびを一つして、俺が目を閉じると、また美智留が俺の布団に入ってきた。しかも寝ているままだ。こうなると俺の布団にはいってくるのは本能のなせる技なのかもしれない。
俺の左腕にまとわりついてくる。前世が犬なのだからしょうがない。起こしても可哀そうだしほうっておいた。
腕には美智留の膨らんだ胸が押し当てられている。柔らかい。だんだんと女になっていくのは不思議だなぁと思いつつ、そのまま目を閉じて再び眠りについた。
(続く)
春休みあたりに美智留中心の物語を作りたいと思ってはいるが、まずはこれを完成させないとな・・・
エロ担当。