【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦   作:きりぼー

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たぶん、不器用な人間は二股をかけるべきでないという話なんだと思う・・・


07 スペンサー家のクリスマス会

 荷物を誰もいない家の玄関に置いて、俺は英梨々の家まで自転車を飛ばした。屋敷の前の道路は高級車が何台か連なって止まっている。大使館関係の車両なので駐禁が切られることはないし、この先は私道しかないので誰にも迷惑がかからない。

 

 門扉は半分開放されていて、入ると右側に受付代が設置されている。もう誰も受付代にはいない、そのまま中に入ると庭の方はバイトのメイドさんが片付けを始めていた。

 

 庭の方から屋敷内の会場に入った。来場者がバラバラに談笑をしているが、雰囲気はもう終わりにさしかかっているのがわかる。時刻は20時の少し手前だった。

 

 英梨々は華やかな真っ赤なドレスに真っ赤なリボンをつけていた。一番奥の壁際にいて、男の人と話をしている。

 相手は僕らよりも年上だと思うが若い男性で、金髪のヘアスタイルにタキシードの正装をしたイケメンだった。

 

 誰だろう?

 

 息を整えて壁際を目立たないように通りながら英梨々に近づく。英梨々は気が付いてない様子で男性と話していた。何を会話しているのか近くまでいったが、外国語を使っている。俺にはぜんぜん聴き取れない。

 

 なんだか会話が弾んでいるようなので声をかけにくい、俺がどうしたものかと考えていたら、スペンサーのおじさんの挨拶が始まった。周りの人が会話を中止してそちらに注目する。

 

 クリスマス会は終わったのだ。俺はとてもじゃないが間に合ったとは言えないだろう。

 

 俺は隅っこでみんながバラバラと帰っていくのを黙ってみていた。会場の片隅には料理が集められ、まだグラスに酒を入れて飲んでいる人たちもいる。

 そういう人は立食をやめて、もうイスを持ち寄っていた。彼らは親しい間柄の人で、この後はスペンサーのおじさんも交えて、21時頃まで過ごすのが例年のことだ。

 

 英梨々へのプレゼントは確かに例年よりもボリュームが足らない。それでも専用のテーブルには積み上げられていて、なかなか壮観だった。

 

 会場を見渡すが英梨々がいなくなっていた。だんだんと会場から人が減るので、俺は目立つのが嫌でバックヤードに移動した。メイドさんが忙しそうに働いている。そこにも俺の居場所がどこにもなかった。

 

 いつもなら、そろそろプレゼントを英梨々の部屋まで運ぶのだけど・・・

 

「あら、トモ君。遅かったわね」

 

 声のする方を見ると小百合さんだった。英梨々のママだ。いつもは和装なのだが、今日は洋装で白いワンピースを来ている。身に着けている宝飾品も豪華で少し重そうなぐらい。

 

「遅れましてすみません」

「私は別にいいのだけど、あの子はコレよ」

 

 そういって、頭の上で両方の人差し指を立てた。やっぱり英梨々は怒っているらしい。

 

「すみません・・・」

「あの子の機嫌は任せるわよ。私はまだ忙しいからごめんなさいね」

「はい」

 

 小百合さんが会場に戻っていった。英梨々の機嫌が悪いのは予想の範囲とはいえ、いったいどこにいったのだろう?

 

 会場からもう一度庭に出て、俺は出口の門へ向かった。スペンサーのおじさんが来場者を見送っている。その横に英梨々と・・・さっきの男性も一緒にいる。妙に距離が近い。

 

 だいたいの客を見送ると、スペンサーのおじさんが会場の方へ戻っていく。俺がペコリと挨拶すると、俺の頭にポンと手を一度置いたが何も言わなかった。

 

 英梨々と男性が門から外へ出て行った。俺はこっそり後をつけていく・・・

 

 何台かの車はもう出発をしていた。車の近くに立っている人たちは運転手だろう。2人が近づくと、後部座席のドアを開けている。

 英梨々は立ち止まって、またその男性と会話をしている。さっきから微笑みを絶やさなかった。そんなに機嫌が悪そうには見えないけど・・・

 

 男性が手を伸ばし、英梨々の手を握る。

 

「あぁ~~!英梨々!」

 

 俺は思わず声を上げてしまった。英梨々が気が付いてこちらを向いた。俺を確認したが表情は何もかえず、また男性の方を向いて何やら話をしている。男性はこちらをみて、にっこりと微笑んだ。なんだその余裕の笑顔は。

 

 だいたい容姿がずるい。2人して童話の中の王子と王女みたいだ。金髪の美男と美女。しかも正装。そこだけ空間が日本じゃない。時空がねじれておかしなことになっている。

 

 俺がいるのをわかっているのに、2人はまだ話を続けている。やっと男性が車に乗り込むと運転手がドアを閉めた。とっと帰れ。

 

 英梨々が手を軽くふって、車が走り去るまで見送っている。俺の方には背中を向けたままだ。赤いドレスには大きなベージュのショールを肩から巻いていると言え、寒そうにも見える。

 

 車が走り去ったのに、英梨々はずっと立ったままだ。

 

 俺は近づいて、「英梨々・・・ごめっ・・・」と声をかけたら、英梨々は振り返ると俺と目をあわさずに屋敷の門の方へ向かった。

 

 ああっ・・・ほんとだ。機嫌が悪い。

 

 ノコノコと俺は後ろをついていく。英梨々は機嫌悪い時はツンツンとして、口悪く罵ったり、人をバカにしたりするが、基本的には明るいと思う。こうして無視するようなことはしない。

 

 会場に戻るとプレゼントの箱のいくつかを抱えて、自宅側へと入っていった。俺もプレゼントいくつか抱えて黙って後についていく。後ろでスペンサーのおじさん達が「がんばれー」と声を出して笑っている。いい見世物だ。

 

 2階に上がり、英梨々は部屋の扉を開けて中に入り、そして扉を閉めた。俺は扉の外でプレゼントを抱えたままだ。

 

「英梨々・・・開けてくれ」といっても返事がない。しょうがないので扉の前にプレゼントを置いておく。それから一度深呼吸をして、とりあえず会場と往復してプレゼントを運ぶことにした。

 

 会場にはいると酔っ払い組がバカ笑いをしている。さっきまでのクリスマス会とはちがって、こちらはスペンサーおじさんのプライベートな飲み会に近いのだろう。俺はこっそり気配を消してプレゼントを手にもったが、やっぱり後ろから「がんばれ少年」と声をかけられて、その後の笑い声が聞こえた。まったく、いい大人が子供を冷やかして何が楽しいのか・・・

 

 がんばる少年の俺は英梨々の部屋の前にプレゼントを置く。英梨々は俺がいなくなった後にプレゼントを部屋にしまっているようで、扉の前には何もない。

 そんなことを3往復ほどしてプレゼントを運び終えた。

 

「これで最後だぞ」部屋の中に声をかける。しばらくして英梨々が扉を開け、俺と目をあわさずにプレゼントの山を受け取ると、扉を閉めた。

 

「英梨々。悪かったって謝ってるだろ」部屋を軽くノックしながらとにかく謝る。

 

返事がないので扉をガチャリと開けて、部屋の中に入った。英梨々は後ろを向いている。

 

「ごめん。英梨々」

「あら、倫也いたの?レディーの部屋にノックもしないで入ってくるなんてサイテーね」

「ノックしたよねぇ!?」

「許可もないのに、勝手に入ってくるなんてサイテーね」英梨々が振り向いていった。

「それは認める。ごめん。遅刻した」

「何のことかしら?」そういいながら、英梨々がイスに腰をかけた。

「何のことって、クリスマス会を遅れてしまっただろ」

「あら、そう?倫也のことも招待してたかしら?もうクリスマス会はお開きだから、さよなら」

「あのなぁ・・・ごめん」

「別に謝らくていいわよ?倫也は倫也で楽しいクリスマスを過ごせてよかったじゃない?あたし疲れているのよね。早く部屋から出て帰ってよね」

「ごめん」

「ふん」

 

 ああっもう。根に持つタイプだな。これ以上どうやって謝っていいかわからない。こうなったら、あれだ。土下座しかない。

 

「ごめんなさい」

 

 俺は土下座した。額をふわふわのジュータンにつけた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あんたねぇ・・・プライドってものはないのかしら」

「今はプライドよりも謝りたい気分なんだよ」

「だから別に怒ってないわよ」

「怒ってるだろ」

「怒ってないわよ」

「じゃあ、機嫌直せよ」

「いやよ!」

「怒ってんじゃねーか」

「で、なんなのよ。何の用かしら?あたしを襲うつもり?」

「ちげーよ」

 

 確かに何の用と問われたら返事に困る。クリスマス会は終わったのだ。今から昔のように英梨々と一緒にプレゼントを開けるのも何か違うのもわかる。タイミングを逸したのだろう。

 

「あっ。忘れてた」俺は思い出した。英梨々へのプレゼントを自宅に置いたままだ。玄関に荷物を置いて慌ててきたせいだ。

 

「何をよ?」英梨々がやっとこっちを見た。蔑んだ目で俺を見下ろしている。もうちょいS気質になったら、足の裏で俺を踏みそうだ。ロングスカートだし、白いタイツを履いているので俺から見上げる景観はあまりよくない・・・

 

「ごめん。慌てて来たからプレゼント家に置いてきたままだ。取ってくるから、ちょっと待ってろよ」

 

 俺は立ち上がって部屋から出て行こうとした。英梨々が「別に今度でいいわよ」と行ったが、そうもいかないだろう。往復で10分もかからない。クリスマスのことはクリスマスに終わらすものだ。

 

「いや、取ってくる」

「いいって」

 

 部屋から出て下に降り、靴を履いて玄関から出た。英梨々の家からうちまでは下りなので楽だ。家の電気は暗くて誰もいない。クリスマスも仕事しているうちの両親ってどうなんだろう?と思いながらも、考えてみると毎年英梨々の家で過ごしているので、関係ないのかもしれない。

 

 玄関においてあった鞄を部屋まで運び、デスクの鍵の引き出しを開けて、中から小さなプレゼントを取り出した。ふぅ・・・と一呼吸する。

 

※ ※ ※

 

「英梨々。これ」

「もういいのに。しょうがないから受け取ってあげるわよ」

 

 俺は大げさに跪いて英梨々に小さなプレゼントボックスを渡した。

 

「ほんと、ごめんな」

「もう、いいわよ。はいこれ。あたしからね」

 

 英梨々から渡されたのはグリーンの袋に入ったプレゼントで軽かった。

 

 英梨々はイスに座って机にプレゼントを置いた。それからシールで貼ってあるリボンを外し、丁寧に包装紙を開け、白い箱の蓋を取った。

 中に入っている小さなガラス細工を指でつまみ、照明にかざすとキラキラと光った。

 

「アライグマ?」

「ふふっ、残念だな」

「たぬき」

「ちがう」

「なら、レッサーパンダね」

「正解。わかるもんだな」

「へー。可愛いわね」

「いいだろ?レッサーパンダと言われないと、アライグマにしか見えないけどな」

「そうね」

 

 そういいながら英梨々は立ちあがって、専用の小さなショーケースにレッサーパンダを入れた。外装は木製で暖かい印象をあたえるが、中は奥が鏡になっていて、ガラスで三段に仕切られている。

 英梨々がショーケースの電源をいれるとライトで内部が照らされる。部屋の照明を少し落とすと、そこだけが輝いて見えた。

 

 英梨々がしゃがんでそのショーケースの中を眺めている。

 

「だいぶ増えてきたわね」

「そうだなぁ。コツコツ集めているからな。今年はカワイイのが見つかってよかった」

「そうね」

「ヒトデだけは回避したいと思っててな」

「ふふっ」

 

 哺乳類がやっぱりカワイイ。鳥類も多いが今はまだ選んでいない。海洋生物シリーズも種類が豊富だ。タコはカワイイデザインが多いので、イルカとタコはコレクションに混ざっていた。

 幼稚園頃からコツコツ集めているので、すでに20種類は越えている。誕生日とクリスマスに贈っていて、ホワイトデーはいつも迷うがお菓子にしていた。

 

 まぁとにかく無事にプレゼントは渡せたし、英梨々の機嫌が直って・・・?よかった。

 

「じゃあ倫也。そろそろ・・・始めようかしら・・・今年はつまらなそうね」

「箱が小さいもんな」

 

 英梨々が無造作にプレゼントをとって、リボンをほどき包装紙を開けていく。俺も別のプレゼントをとって包装紙をとり、箱だけの状態にして英梨々に渡す。

 

「服」そう言って、英梨々が箱から出して広げて見せた。オシャレなワンピースだ。選ぶ方も大変だろうなと思う。

 

「ショール」「マフラー」「ショール」「ハンカチ」「セーター」「服」「スカート」「ショール」

「ショール多いな、何に使うんだ?」

「肩掛けね。その小さいのがスカーフ」

「へぇ・・・」

「無難なんでしょうね、贈りものに」

「そういうもん?」

「種類を持っていて困るものじゃないから。ハンカチみたいなものよ」

「俺にはよくわかんね」

 

 大きな箱は布製のものが多かった。玩具は0だ。続いて小さな箱を開けていく。

 

「アクセサリーね」

「なんか、もう大人だな」

「これも多くて困るものでないってことでしょうね」

「うーん」

 

 貴金属はどれも小さい宝石が多かった。英梨々によると本物はなくイミテーションが多いらしい。俺には区別がつかない。

 他には手鏡や香水などもある。アロマオイルもあれば、マニキュアもある。やはりどれも女性の喜ぶものなのだろうか。

 

「なんか嫌よね」

「何が?」

「こう・・・無理やり大人にされていくようで」

「邪推しすぎだろ。小学生だと文具なんかでもいいのだろうけどな」

「中学生になったからって、こんなに突然変わらないでしょ」

「選ぶ方も大変なんだろ。同じぐらいの年の子がいればまた別だろうけどさ」

「そうね」

「ほら、これで最後だ」

 

 包装紙もまちまちでチープなものから重厚なものまである。最後のは小さな紙袋に入ったままで、紙袋からして高級感漂う。

 

「やーね・・・」英梨々が呟きながら袋から取り出して、包装紙をほどいた。中には立派な細長いケースがはいっていた。開けてみるとネックレスだった。

 

「はぁ・・・」と英梨々は溜息をついた。

 

「なんか高級そうだな?」

「そうね、こういうのって暗黙の了解があるのに」

「なんだそれ?」

「あんまり高いものはダメなのよ。もらう方も気を遣うじゃない。結局お歳暮でこちらが出費するわけだし、バランスが大事なのよ。1万円以下じゃないと。

 

 英梨々がネックレスを取り出して、留め金部分を顔に近づけている。

 

「ブランドからしてそうだけど、当然偽物のわけがなくって」

「高いのか?」

「これ、ダイヤよ。カラットは小さいけど10万を下るような品じゃないわね」

「高いなっ!」

「まったく、ウィルの悪戯よね」

「ウィル?」

「なんでもない。片付けは今日はいいから、倫也もそろそろ戻りなさいよ」

「ああ、うん。遅くまで悪いな」

「ちょっと今日は疲れてしまったのよね。お風呂入って寝るわ」

「わかった。じゃ、そろそろ帰る」

 

 英梨々がまた大きな溜息をついた。気疲れだな。だいたい英梨々はそんなに社交的な性格ではない。ホームパーティーではスペンサー家のアイドルのように笑顔をふりまくが、その時間は短く、バックヤードに下がってはブツブツと文句をいうのがいつものことだ。まぁ俺がその聞き役だったのだが・・・

 

 今日のクリスマスパーティーがどんなだったか俺にはわからないけど、英梨々はきっといつもよりも笑顔をふりまいてしまったのだろう。それに・・・なんか親し気な男性にも笑顔のまま対応していたし、いつもの英梨々なら考えられない。

 

「そうだ、倫也。レッサーパンダ」

「うん?」

「確かいるわよ」

「どこに?」

「那須動物帝国」英梨々がスマホで検索している。「ほら」といって画像をみせた。

「おお、可愛いな!」

「ふふっ、じゃあ今回は動物王国いきましょうか」

「そうだな!」

 

 口調からして、俺もやっぱり行くことが前提になっているようだ。そりゃそうだろうな。昔からずっと一緒だ。

 

「ごめん。波島と初詣に行くから、今度の那須には一緒に行けない」などと、やっと機嫌の直った英梨々に言えるはずもなく・・・

 

 問題をとりえあえず先送りにして、英梨々の話に合わせて相槌をうっておいた。

 

※ ※ ※

 

 家に帰ると電気がついていた。玄関を開けると美智留がまた出迎えてくれた。えらく上機嫌である。よほど波島家が楽しかったようだ。

 

「トモ、なんか浮かない顔だけど?」

「そう?疲れているだけだと思うが」

「お風呂沸いているから、入ってきたら?」

「ああ、そうする」

 

 美智留はすでにお風呂に入ったようで、パジャマを来ていた。今日も泊っていくようだ。長期休暇の時に俺の家に泊りにくるのは昔からだ。

 

 風呂からあがって、リビングにいくと美智留はテレビもつけずにソファーに座っていた。鼻歌を歌っている。

 

「妙にご機嫌だな」

「うん。なんかすごい褒められちゃってさー」

「歌?」

「そう!あの後もずっと歌ってた」

「はははっ。良かったじゃん」

「おかげ様だよ。トモもいてくれたらよかったのにー」

「・・・」

「トモ、どうした?さては・・・二股かけたことが澤村ちゃんにバレた?」

「人聞きの悪いこというなよ・・・」

 

 出海ちゃんがいたことを知ったら、英梨々は怒るかな?怒らないんじゃないかな・・・なんていうかもっと・・・こう・・・致命的なことになりそうな気がする。

 

「だって、トモがそんな顔して悩んでいるのって、欲しいものがあるのにお金がない時か、澤村ちゃんのことぐらいでしょ」

「あのなぁ・・・別に英梨々のことで・・・悩んでねぇぞ・・・」

 

 そう、俺が悩んでいるのは、那須の別荘と都内の初詣をどうやって両立させるかであって、俺の体が一個しかないのが悪いのだ。英梨々は関係ない。・・・無理があるな。

 

「相談には乗ってあげるけど?なんなら童貞をもらってあげてもいいしー」

「あっ、そうだ。忘れてた。もらうといえば、お前にも渡すものがある」

 

 俺は二階にあがって、美智留のプレゼントを取りに行った。

 

「これ、たぶん使う時がくるんじゃないか?」

「ずいぶんと軽いね」

「ああ、重さはほとんどないからな」

 

 美智留がプレゼントを開けた。中にはギター用のピックセットが入っている。アニメ柄だ。

 

「あっカワイイ。これってピック?」

「ああそうだ。美智留ならいずれギターも弾くだろ」

「うちにギターあるからねー。ありがとートモ」

「つまらないものだけどな」

「ううん。大切にするよ。あたしからはプレゼントないけど・・・」

「別に気にするな」

「なんなら処女あげるー」

「断る」

 

 まったく下ネタの好きなやつだ。案外、俺が童貞を捨てれずに悩む年になる前に、美智留が処女を捨てられずに悩む方が先な気がする。そしたら助けてやるか・・・・・・なんてな。

 

「代わりにアイデアをくれ」

「よしきた。トモの悩みを話してごらんなさいなー」

「ああ、年末はコミケがあるだろ?」

「らしいね。あたしはいかないけど」

「で、正月からは例年澤村家の別荘にそのままついていってたんだが」

「うんうん」

「今年も行くようなんだ」

「それってトモが決めればいいんじゃないの?」

「いやまぁそうなんだが、事前に断ってなかったし、計画がだな・・・」

「それで?」

「出海ちゃんと初詣に行く約束をだな・・・」

「なるほど。トモはどうやって二股をかけるか、知恵が欲しいわけね」

「・・・いや、二股じゃない」

「それならトモ。簡単に解決する」

「ほんと!?」

「うん。だって、トモ」

「はい」

「あ~、『教えてください美智留様』って言って」

「教えてください美智留様!」

 

 俺は美智留に土下座した。慣れると楽。便利。プライド?お腹膨れないよ?

 

「トモ・・・プライド持った方がいいよ」

「今はプライドよりも、胃が痛くなる前にすっきりしたい!」

「あとで、もっと胃が痛くなると思うけどなー」

「なぁ、どうしたいいと思う?」

「トモ。初詣はね・・・」

「初詣は?」

「別に元旦に行かなくても初詣だと思うー」

「・・・っ!!」

 

 目から鱗だ。これで1月1日に体が二個ある必要はなくなった。

 

「美智留!ありがとう!」

「様をつけよっか」

「いやだ」

「すぐに、また様をつけることになると思うのに、そんな態度とっていいの?」

「どういうこと?」

「だって、あたしは伊織ちゃんと元旦に初詣いく約束したもん。出海ちゃんもそうおもっているんじゃない?」

「美智留!」

「様は?」

「美智留様!そこはなんとか、ならないでしょうか」

「うーん」

 

 美智留がいて良かった。波島家とのやり取りに美智留が取り持ってくれそうだ。俺は出海ちゃんとの約束も守りたかったし、英梨々に機嫌を損ねてほしくなかった。これのどこが二股だというのか・・・

 

(続く)




そりゃ、出海ルートらしいからね・・・(不安
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