【全25話】出海ルートに気付かないポンコツ英梨々 前哨戦 作:きりぼー
クリスマスの日。恵は少し楽しかった。いや、思ったよりもずっと楽しかった。最初に部活の仲間に「クリスマス会」を誘われた時は正直断りたかった。また愚痴を聞かされるかと思うと、とてもじゃないがクリスマスまで一緒にいたいとは思わなかったからだ。
でも友達が友達を呼び、クラスの垣根を超えて学年の女子会のようになった。とあるケーキバイキングのお店を貸切ることになり、それが恵にはケーキバイキングの初体験になった。
自分が会話なんかしなくても開場は盛り上がっていたし、誰かの企画したビンゴ大会も面白かった。何よりも驚いたのは、いつも愚痴っぽい部活の仲間がとても明るい性格で、会場のあちこちの席を回って気を配っていたことだ。
中学1年生。小学生の時に比べてずっと大人になった気持ちだ。自分はこんな風に参加するだけでも成長した気がするが、こういうことを企画して準備したのはすごいと素直に感心した。自分ではどうやっていいか見当もつかなかった。
恵のテーブルでは恋バナがされはじめていた。といっても対象はクラスメートなどでなく、テレビの中の芸能人だ。聞いたこことあるグループ名もあるが、知らない子もいた。みんな付き合えるわけでもないのに、好き勝手に評価している。
「あたし〇〇の××君が好きだけど、〇〇の△△はナシ~」
(相手も眼中にないんじゃないかな)
「でも、××だったら付き合ってあげてもいいと思う」
(無理だよね)
「あ~、一度でいいから、□□に会いたい。会ったら即効でコクる」
(絶対できないよね。固まるだけじゃないかな)
恵は周りの発言に心の中でツッコミをいれておく。もちろん口には出さない。恵に話を振られても、「ああ、うん・・・」といいつつジュースを吸ってごまかす。別に好きなアイドルはいない。周りもどんどんしゃべりたいから、恵を深く追求なんてしなかった。
クリスマス会の3時間はあっという間にすぎた。会恵が幹事の1人に会計のお金を渡す時に思わず、
「これだけいても、男子を誘える人いなかったんだね」
周り中が凍てついてた。
※ ※ ※
家に戻ると、姉の宏美とその彼氏が遊びに来ていた。帰ってきた恵に「ハッピークリスマス!」といってクラッカーを鳴らすなど、無駄に明るい。恵は無言で会釈をする。
「これ、恵にプレゼント」
「わたしに?」
「そそ。彼と選んだけどどうかしら?開けてみて」
「・・・うん。でもちょっと・・・手とか洗ってくる」
「うんうん」
今日の宏美はご機嫌でテンションが高い。恵は手を洗って一度部屋に戻って、コートをハンガーにかけた。少し疲れている。正直あまり姉と話したくはなかった。
6つ上の姉は今は大学1年で、バイトをしつつ遊び回っている。彼氏も少しチャラい感じがしてあまり好きではなかった。
とはいえ無視もできないしリビイングに戻る。
「どうぞ」といって、彼氏がグラスにコーラをいれて渡してくれた。それから3人で乾杯をする。恵のクリスマス会の様子を宏美が訪ねてきたが、恵は「うん、楽しかったよ」と一言だけで終わらせた。
渡されたプレゼントは『白いベレー帽』だった。
「なんか、恵に似合うものないかなって探してきたんだけど、どう?」
「うん。ありがと」
「気に入った?」
「よくわかんない」
「かぶってみなよ」
恵は手で髪の毛を梳かし、そらからベレー帽をかぶった。自分の趣味じゃないから、正直いらなかった。
「可愛い。ねっ?」
「うん。とても似合ってて可愛いよ」
「ちょっと、私とどっちが可愛いの?」
「そりゃ~宏美だよ。はっはっはっ~」
(なんだこのバカップル?)
と恵は思いながらも口に出さず、コーラを手に持ったまま部屋に戻った。
(続く)
原作に申し訳ない気持ちなるのはあいかわらずだな・・・