ファンタジア-赤の勇者-   作:レイサン

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主人公が勇者になる物語の一番最初、始まりのお話です。
初投稿だから変なところあるかもしれませんがよろしくお願いいたします。


第一章 闇に潜む者
伝説の始まりは突然に


ファンタジアの大陸の真ん中から少し外れた場所に存在するちょっとだけ古臭い村、その名もロッド村。

 

ロッド村は住んでいる人が少なく、この村に住む子供はたった四人だけしかいない。

 

でもこのロッド村にはある有名人がいた。

 

史上最年少で上位魔法を習得した天才少女カグヤだ。

 

魔法道具店の娘として生まれた彼女は、幼少期から魔法道具や魔導書等が身近にあったことがきっかけでその天才的な才能を開花させた。

 

そもそも中位以上の魔法の使用には、専用の資格を取得する必要があり、魔法使用資格を持った十二歳の少女など、それこそ人類で初めて上位魔法を使用した天才魔道士以来の天才だろう。

 

……ですが、この物語の主人公はそんな天才魔法使いのカグヤではなく、彼女の幼なじみで、隣の家に住んでいる少年ケンジです。

 

そう、この物語はただの人間だった主人公が勇者になるまでの物語なのです。

 

 

朝の九時頃、ケンジはまだベッドで寝ていた。その日はカグヤと遊ぶ約束をしていたが、半月ぶりに帰ってきた父親と夜遅くまでビデオゲームで遊んでいたケンジは、完全に寝坊してしまっていた。

 

「…に……ちゃ…。ぉ……ゃん。お兄ちゃん!起きてよもう九時だよ!」

 

「んがぁ?まっ…あと五分だけ寝…zzz。」

 

「お兄ちゃん!今日はカグヤちゃんと遊びに行くって言ってたじゃん!早くしないと遅れちゃうよ!」

 

「ぁぁあ?かぐやぁ……かぐ………やっべカグヤと遊ぶ約束してんだった!」

 

双子の妹アオバに起こされてようやく目が覚めたケンジは慌てて服を着替えてさっさと一階におりてリビングまで来た。

 

「母さん朝ごはん!」

 

「トースト焼いといたから。マーガリンとかジャムは自分で塗ってちょうだいね。」

 

「急いでるから食べながら行くわ!行ってきます!」

「行ってらっしゃい、気をつけてね。」

 

母親に見送られてケンジはトーストを咥えたまま家を飛び出して言った。

 

ちなみに母親の名前はレイサンだ。

 

「待ち合わせ場所はいつもの公園だったよな。五分あれば付くけどそもそも八時半集合の予定だったんだよなぁ。怒ってないといいけど…。」

ケンジの幼なじみのカグヤはいつも笑顔で優しいが、怒る時はちゃんと怒る人物でもあるので、きっと約束の時間に三十分以上も遅れたケンジはデコピンを食らうはめになるだろう。

 

 

ロッド村の公園

そこには恐らく時間通りに来ていたであろうカグヤが立っていた。

 

「ごめんカグヤ!ついうっかり寝坊しちゃって、急いできたけど間に合わなかって!」

 

「……………………。」

 

「ゴメンって!今度ジュース奢るからさ、今回の件はそれでチャラって事でさぁ。」

 

「……………………。」

 

「…カグヤ?」

 

明らかに様子がおかしい。

 

いつもなら『また寝坊したの?』と言って軽くデコピンする程度で許してくれるカグヤが、謝っても何も返事を返さない。

 

家族ぐるみで仲良しなので幼い頃からずっと一緒にいたが、ここまで無反応な事は覚えている限りでは初めての事だった。

 

「……おい、どうしたんだよカグヤ。なんか言えって。いくら俺が遅れたからって無視は無いだろ!おい!」

 

「……………………黙れ。」

 

「へ?」

 

いつもと口調も声のトーンも違う。

 

その異常に気づいた次の瞬間には、予想外のことが起こった。

 

「……ッ!」

 

痛い。

 

皮膚が焼けるような、そして何かに刺されたような痛みが手足に走る。

 

手や足を見ると火傷のような跡ができていた。

 

痛みの直前に光が見えたような気がした。

 

そして今目の前にいるカグヤの手の上にも、小さな光の玉が浮かんでいる。

 

ケンジは一ヶ月ほど前にカグヤからその玉が何なのか教わっていた。

 

ケンジの記憶が間違っていなければ、それは怪人に襲われた時の護身術の一つとして習得した、攻撃用の魔法弾だ。

 

「お前…それ…魔法弾…。」

 

「私に近寄るな。」

 

「待てって……事情を説明してくれ…。」

 

「消え失せろ!」

 

その言葉の直後、何か強い光が見えた。

 

そして、そこから後のことはよけわからないが、次に目覚めた時には自室のベッドの上にいた。

 

「………………痛ぇ。」

 

「あ、お兄ちゃん。目覚めたんだね、とりあえず一安心だね。」

 

「……アオバ……俺は。」

 

「ここはお兄ちゃんの部屋だよ。お母さんは下でカグヤちゃんのお父さんと話してる。」

 

「……そうか。」

 

しばらく沈黙が続いた後、またアオバが話を始めた。

 

「お兄ちゃん体の色んなところを火傷してるんだって。それに右腕の骨が折れてるんだって。カグヤちゃんのお父さんがくれた魔法薬のおかげで一週間安静にしてれば治るんだって。火傷跡残らないといいね。」

 

「…………カグヤはどこ行った?」

 

「…………人の心配しないで自分の心配しなよ……お兄ちゃんのばか。」

 

アオバが泣いているような気がした。

 

後から聞いた話だが、どうやらカグヤは中位魔法である爆炎を発生させる魔法を、あろうことかケンジに向かって使用したらしい。

 

ケンジとカグヤはどちらも十二歳の子供だし、子供じゃなくても中位以上の魔法の使用は危険が伴うため資格が必須なのだ。

 

カグヤはその資格を取得していたはずだ。

 

そうでなくとも、元々優しかった彼女が単なる遅刻に対しての仕返しで、こんな危険な事をしでかすはずが無い。

 

聞いた話ではカグヤはまだ家に帰ってないんだそう。

 

家に帰って親に怒られるのが嫌なのか、それとも他に理由があるのか。

 

どちらにせよ今のケンジに出来ることは一週間安静にしていることだけだった。

 

友達の様子が明らかにおかしかったのに、何も出来なかった自分が不甲斐ない。

 

そんな事を考えながらその日はさっさと眠りについた。

 

 

三日後、どういう訳かケンジの怪我は完全に治っていた。

 

今までほとんど怪我などした事がなかったので気が付かなかったが、どうやらケンジは他の人より怪我の治りが早いようだ。

 

魔法薬を使っても一週間掛かる怪我が三日で治るなんてちょっとおかしい気もするが、そういう体質なのだ。

それはそうと。

 

カグヤはこの三日間一度も地元の人に姿を見せていないそう。

 

しかも今朝はカグヤの妹セーヤが『お姉ちゃん探しに行く』と言って一人でどこかに行ってしまって見つけられないんだそう。

 

「カグヤもセーヤも行方不明……俺の力不足でこんな事に。」

 

「お兄ちゃん、ホントに行くの?いや提案したのは私だけどさ。相手にされないんじゃないかな?」

 

「そんときゃそんときで何とかするさ。どっちにしてもこのままカグヤを放っておけないだろ?」

 

「そりゃそうだけどさぁ、何もお兄ちゃん一人じゃなくて良いじゃん。」

 

「いや、元はと言えば俺が遅刻したのが事の発端だ!この責任は俺が取らないといけない気がするんだ!」

 

「えぇぇ……。」

 

「そんじゃ行ってくる。隣町、デイバータウンの隅の方にある家。『勇者の家』。」




ケンジ「この状況どうしよう」
アオバ「勇者さんに相談だ!」
ケンジ「それだぁ!」
アオバ(冗談のつもりで言ったんだけどなぁ)


次回 紅色の勇者レティー
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