赤の勇者は白の英雄と出会う。
雲が少し浮かんだ青く晴れた空模様。
その日、ケンジは修行の合間の休日に少し大きめの街、ロスケイレスに来ていた。
「せっかくの休日だしな。お小遣いも貰えたしたまには都会に出てショッピングでもするかなぁ。」
ロスケイレスは他の街と比べても特に色々なお店が立ち並ぶ町であり、ぶらぶらと歩きながら気になる物を探すだけでも楽しい街だ。
街を歩いていると、何やら近くのお店が騒がしい事に気がついた。
「騒ぎの現況はあれだな?」
どうやら凶暴化したゴブリンが暴れ回っているようだ。
様々な種族が共存するこの世界ではゴブリンが街中にいるのは何ら珍しくもない光景なのだが、妙なのはゴブリンが明らかガタイが良く、そして理由も無く暴れていることだ。
ケンジは修行の成果を確かめるべく、暴れるゴブリンを止めに入った。
他の人々が呆然と見ている中、素早く近ずき強力な打撃を繰り出した。
速さも力の強さも12歳とは思えないもので、暴れていたゴブリンは倒れた。
「あれ?そんな強くやったつもり無かったんだけど…明日は力を抑えるトレーニングからやる事になりそうだなぁ。」
そんなふうに独り言を言っているケンジだが、背後から別のゴブリンが接近していることに気がついていなかった。
「グオァー!」
「げ!まだ居たのかよ!」
ケンジが後ろを振り返ったその瞬間、既に後ろに誰かがいた。
強烈で尚且つ素早い蹴りがゴブリンの頭部を直撃し、一発で気絶させた。
見たところゴブリンを倒したのは白髪のポニーテールに長い前髪で右目が隠れた青い瞳の少女だった。
「……すっげー、すっげぇ!ワンパンで気絶させた!まぁ俺もワンパンで倒したけど!」
「いや、すげぇじゃ無くて!いきなり突っ込んで行ったら危ないですよ!」
「ごめんごめん。てか普通に話してっけど俺たち初対面だよな?まずは自己紹介しようぜ。」
「え?まぁ良いですけど。」
「俺の名前はケンジ!こう見えて勇者の弟子やってるんだ!ここで会ったのも何かの縁だ!よろしくな!」
「はい、僕の名前はミズキです。一応ボランティアでヒーロー活動をしてるんですけど、まだまだ未熟者ですので日々精進しているって感じですね。よろしくお願いします。」
出会ったばかりだが、ケンジは既にミズキと仲良くなれそうな気がしていた。
その反面ミズキからケンジに対する第一印象は『相手の数も把握していないのに突っ込んでいく危なっかしい人』と言ったところ。
ケンジとミズキの出会いが、この後世界に大きく影響を与えるのだが、それはまだしばらく先の話。
まずはおお互い友達と呼べるような間柄になる所からだ。
二人はちょっとした世間話をしながら街中を歩いていた。
「そういえば、ケンジさんは勇者の弟子なんですよね?この街に来たのは何か理由があるんですか?」
「ん?いやぁ理由とかは無いかな。強いて言うなら今度実家に帰る所に妹にお土産でも買おうかなって思ってさ。ミズキの方こそこんなとこで何してたんだ?」
「実は僕も妹にお土産でも買おうかと思ってまして。」
「ミズキも妹いるのか。で、何人いるんだ?」
「えっと、四人…ですかね?一応は。」
ちょっと歯切れが悪く答えた。
「四人もいるのか!?てことは五人姉妹かぁ。五人も養うの大変そうだな……。」
「男……。」
「え?」
「僕……男……。」
「えっと…え?」
「あの、僕こんな見た目だけど男なんです。だからあの、下の方も」
「ごめん!マジごめん!確かにそう言われると男だわ!めっちゃ男!どっからどう見ても男!いや〜何で女だと思ったのかな俺!」
「そんな無理に誤魔化さないで良いんですよ!僕もその……自覚はあるので……。」
気まずい。
実際ミズキは誰が見ても女の子だと思う見た目をしていた。
髪型や顔立ちは勿論、服装も声色も体型もどこをとって見ても男には見えない。
彼と向き合って話をして男だと気がつく方が難しいだろう。
「……あ〜っと……とりあえず携帯番号交換する?」
気まずい空気に耐えられず意味不明なタイミングで謎の提案をしてしまったケンジ。
「あ、はい。交換しましょう是非とも。」
わけも分からず番号交換に応じるミズキ。
その日は番号交換をした後直ぐに帰ったという。
ちなみに後日ミズキが送った彼の妹とのツーショット写真が、ケンジとの最初のメールのやり取りだったそう。
ミズキ「僕の妹めっちゃ可愛くないですか?」
ケンジ「ぐぬぬ、正直俺の妹より可愛いかもって思ってしまった。」
アオバ「この世界の何処かでお兄ちゃんにバカにされたような気がする。」
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