20XX年10月
19歳の誕生日。私は死亡した。
何故そのことを私が知覚しているかは、言うまでも無い。
転生である。
ここまでが半年程前の話だ。
2004年4月
20XX年10月なのに半年後が200X年4月というのはおかしな話だが、赤ん坊の体に転生した。
私は歓喜した。当然、死から逃れられた―という側面もある。しかし、それだけではない。
私は生前、様々な物に触れていた。所謂サブカルチャーの類いである。そう、私はオタクなのだ。
今、この状況は2010年代から流行り始めた異世界転生物というものである。
赤ん坊の私ではこの世界を満足に見渡すことは出来ない。
私は心踊らせながら、不自由な体でできる限りこの世界を見渡した。
――――――――――――――
一緒である。
この上なく、一緒だ。
私の元いた世界とほとんど同じ。
同じ様な企業、同じ様な政治家、同じ様な土地、出来事…
名前がちょっぴり違うだけでここの世界は私のいた世界と同じだった。
私は絶望した。
私が想像していた世界等どこにも無いという事実に私の心は打ち砕かれた。
――――――――――――――――
幼稚園時代
絶望していた私はとりあえず青春を謳歌しようと思った。
幼稚園から青春と喚く自分に嫌気が差すが、私は生前19歳までは普通の大学生として暮らしていた。つまり、中身を見ると累計年齢22歳のよくわからないものが少年少女と一緒になって遊んでいるというなんともまぁ、ヤバイ状況なのである。
――――――――――――――――
小学生時代
私は生前より、友達を作ることに決めた。
低学年の頃はとにかく友人を作ることに力を費やした。
クラス内外問わず、友人を作った。
中学年の頃は勉学や、習い事に手を出した。
違う点と言うと勉学はそこそこ先の事をやり、習い事はパソコン教室に通った。生前、ブラインドタッチが出来なかったので、パソコン教室はブラインドタッチを取得しに行った。
勉学では元々苦手だった英語の勉強を勤めた。私は頭が悪い方だったので、苦戦した。
高学年の頃は株やTCGに手を出した。
TCGは元々やっていたこともあったが、普通に将来高騰するカード等を集めた。株は親に相談したら割とどうにかなった。未来での出来事は知っているので結果クソ儲けた。
―――――――――――――――――
中学生時代
習い事を辞めたのと、部活は陸上部に入ることにした。それと後の高校生生活の為にひたすら話すことでコミュ力を磨いた。
後、株で儲けた。
―――――――――――――――
高校時代
バイトを始め、友達を作り、友達を遊びに誘い、最初の1年目はかなりのペースで遊びに回った。
567警戒で遊んだのだが、マジで567が来た。こういうところも前にいた世界とそっくりである。製薬会社の株をちょこちょこと買いまくっていたのでクソ儲かった。
幼稚園、小学校、中学校、高校どれも人並みに楽しみ、大いに謳歌した。
―そして現在―
大学1年の秋頃
現在の私のスペックは…
そこそこ良い高校を出て、運転免許を取った大学生。
未来予知と言うか未来を見てきたことと株によって富(かなり大量)とその過程で手に入れた人脈とノウハウを手に入れた。ここから先は私の知らない未来だが、既に巨万の富を手に入れている私は齢19歳で労働というものから解放されたのである。
まぁ、株なんて地雷原の中でタップダンスするくらい危ないので完全に解放されたとはならないが。
現在、私は大学生だ。上に書いてある通り青春を謳歌した。前世で謳歌しきれなかった青春を満喫したいと思った。だがそろそろ青春も終盤に差し掛かる大学生ともなると…
「確かに楽しかったが…私が前世から恋い焦がれていた青春とはこんなものだったのか…」
言い表せぬ何かを抱えながら毎日を過ごしていた。
酒はまだ飲めない。今は1年なので来年を待って飲みサーでも参加してバカ騒ぎってのが私の今後なのか―
そんなことを考えていながら歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ、あの…ところてん…いりませんか…?」
その声は確かに聞き覚えがあった。
その声の主は紛れもなく彼女はぼっち・ざ・ろっくの主人公、後藤ひとりだ。私はてっきり前世の世界とそっくりな世界に転生したと思い込んでいた。彼女との出会いがゆっくり死んでいくはずの私の心を生き返らせたのだ。
―――――――――――――
「また、門前払い…」
営業部に異動になって三ヶ月目。そして社会人としては10ヶ月目の今日この頃。
入れる会社はここしか無く、上司にも同僚にも煙たられ、色々とネチネチ言われる日々が続く…そして今日もストロングで嫌なことを忘れようと帰路に着くのだった。
「またみんなにところてん食べてもらわなきゃなぁ…捌けなかった物は自分持ちだからなぁ…」
ギターも社会人になってからは一度も触ってない…はぁ…
するとそこに…
「ほう…捌けないところてんは自腹なのか…ヒドイものだな。それは…」
「え?え!?あ、どなたでしょうか…?」
「驚かせてすまない。私はそのところてんが欲しいだけだ。買わせてくれないか?」
時が止まった。初めてのお客さん。初めて会社に貢献出来た。その事実に堪らなく嬉しくなり、私は泣き始めてしまった。
「ぐっ…えっぐ…ありがとう…ございます…」
そう言いながら鞄からところてんを一つ取り出すと…
「持っているところてんは一つだけではないだろう?後幾つあるんだ?」
「えっ、その残り五つです…」
「ならば残り五つも貰おう。」
「!?!?!?!?」
その言葉を聞くと後藤は…
「…何をしているんだ?」
「貴方は私にとっての神です。お客様は神様なので貴方は神様です。それに合計六つもお買い上げに…」
「成る程では、会計を頼む。2万あれば足りるか?」
「あっ、いや、そんなにかからないです…」
「では、釣りは君の懐にでも入れてくれ。」
―神だ―
間違いない。神が降臨なさったのだ。
「お、お買い上げありがとうございました!!!」
私は神に精一杯のお辞儀をし、神が姿を隠されるまで、背中を見送り続けた。
この世界のひとりちゃんはえらい目にあってます。