後藤さんからところてんを買い、帰路についた。改めて、現状について整理してみることにした。
今の世界は約3年前から新手の感染症が流行していた。前の世界でも私が死ぬ3年前から新手の感染症が流行していた。それにより、結束バンドは活動を自粛しており、最後の活動は文化祭で終わっている。(喜多ちゃんのイソスタ調べ)
最近感染症のワクチン接種も進み、ライブハウス等も活動再開し出していた。
肝心のSTARRYだが潰れてはいなかった。しかし、経営は芳しくなく、SNSの宣伝が頻繁に増えていた。
イソスタ大臣の喜多ちゃんは大学に進学し、陽キャライフを送っていた。
GuitarHeroの活動はかなり、と言うかバンド活動出来ない鬱憤を晴らすかのように、投稿頻度が上がっていた。と言っても最後に投稿されたのは3月で、忙しさ故に投稿出来ないのだろう。
私が収集出来た情報はこれくらいだ。
しかし、気になることがある。
後藤ひとり…彼女、何かおかしい…彼女の挙動は一挙手一投足がおかしいと言っても過言では無い。しかし、たかが、ところてんを買ったくらいで土下座+神様呼びはどうなんだ?ギリギリやりそうだがどうだろうか…まぁ、考えても仕方ない…明日、会って聞くか…
―翌日―
「昨日売れたからって調子乗ってすみません…」
はぁ…昨日六つも売れたからって今日も売れるわけなんて無いよね…すみません…浅かはな考え方ですみません…
「おいおい、こんな所でスライムになっていると、車に轢かれてしまうよ?後藤さん。」
「き、聞き覚えのある声…?」
「やぁ、昨日ぶりだね後藤さん。たまたま見かけたものだから、つい話しかけてしまったよ。」
「か、神様…」
「おいおい…神様はやめてくれよ。今日はところてん売れなかったのかい?」
「え、い、いやちょっとは売れました…」
「それは良かったな。ならば、残っている物を全て貰おうか。」
「え!?そんな今日もなんて…」
「その代わりと言っちゃアレだが、ちょっとお茶でもしていかないかい?」
―喫茶店―
「ご注文は?」
「お任せで。」
「承りました…」
「えっ、あのマスターさんとは付き合い長いんですか?」
「そうだね。僕が子供の頃から通ってるかな。」
「一人称昨日と変わってますね…」
「人によって変えるのさ。後藤さんは注文何にするの?」
「え、あっ、その…」
どうしよう…こんなレトロな感じの喫茶店なんて入ったことないから何頼んで良いのか分からない…ど、どうすれば…
「迷っているなら僕と同じものにするかい?」
「あ、はい。お願いします。」
「承りました。」
「それで、最近どうだい?」
「え、最近って…会社の事しかないですけど…」
「職場は良い職場かい?」
「あ、はい!こんな駄目な私を雇ってくれた素晴らしい会社です!」
「それじゃあ普段は何してるんだい?」
「あ、最近営業部に異動になったので、普段はところてん売ってます…」
「へぇ…今の上司とかはどんな人?」
「とても良い人です!使えない私に構ってくれるし、私を教育してくれた人で、今回の異動何ですけど、本来はクビにされる物を異動にしてくれたんです!それに、私が入社した時からずっと親身になってくれて、異動する時も一緒に来てくれたんです!」
「それは凄いじゃあないか。どんな事を教えてくれたんだい?」(一緒に異動…?)
「はい!まず、入社して、セミナーに参加して、三日三晩不眠不休で教育を受けました!でも、他の人と違って私だけ使えないゴミ社員で…でも上司さんだけ、私に寄り添ってくれたんです!怒鳴られたりすることもありますけど、それは愛なんです!」
「…」
「それに、私には良くして貰っていて、土日とか、たまにある残業がない仕事終わりにお酒誘われたりして良くされているんです!」
「おい、ちょっと待てそれじゃあその上司はアレか?君に酒を飲ませたということか?君は未成年だろ?」
「あ、知らないんですか?成人の年齢が引き下げられて18でもうお酒飲めるんですよ!」
「……まぁ良い。最後に結束バンドについて聞かせてくれないか?流行り病もそろそろ控えるし、活動再開しても良い頃だと思うんだ。僕はライブには行ったこと無いんだが…生で君達の演奏を聞いてみたいんだ。」
「結束バンドですか?」
―――――――――――
それから二日後、私は女子大に足を運んでいた。
中性的な見た目をしているので、見た人によっては混乱を招くだろうが、関係無い。私はある人物への接触を図ろうとしている。喜多郁代である。彼女のイソスタを監視すれば彼女の行動の大体は把握出来る。今日は必修の講義がある。絶対に来る筈だし、本日の講義はそれだけなので、終われば友達とどこかへ行くだろう。ほら来た。
「アハハ!それでね~」
「ご歓談の最中申し訳ないが貴方は喜多郁代さんですか?」
「え、そうですけど…」
「喜多ちゃんその人誰?友達?」
「私は喜多さんのファンです。高校生の頃、バンドやってましたよね?私、喜多さんのファンなんですよ。」
「へぇ~そうなんですね~流石喜多ちゃん!ファンがリアルに会いに来るなんて凄いね!」
「えぇ…」(なんで今頃来たのかしら…何かの罠?もしかして新手のストーカー!?)
「まだSTARRYでバイトはしているんですか?」
「えぇ…していますが…」
「おっと、警戒させてしまいましたね。私はこういう者です。」
そう言って私は自前の名刺を見せる。
「え!?企業の人!?喜多ちゃんをスカウト!?」
「まぁ、そのような所です。なので出来れば…」
「わかりました!喜多ちゃん!モデルとして頑張ってね!」
そう言うと喜多ちゃんの友達は走り去って行った。
「…彼女、想像力豊かなんです…」
「なるほど…まぁ、今回は助かりました。」
「で、改めて何の用ですか?まさか本当にスカウトですか?」
「貴女はモデルや女優として充分輝けますが…もっと輝ける場所があるでしょう?」
「結束バンドですか?」
「…ここでは少々語るには騒がしい…STARRYでお話しても?」
「えぇ良いですよ。ちょうど今日はバイトでしたし…」
「では、STARRYで待ってます。お先に失礼します。」
―STARRY―
「伊地知先輩、リョウ先輩それに店長さん来てたんですか?二人は今日はバイト入ってないハズじゃ…」
「みんなソイツに呼ばれたんだよ。大切な話があるって。」
「金積まれたから来た。」
「あれ?ひとりちゃんは…」
「今日は平日だぞ?ひとりちゃんは社会人なんだ。易々と来れる訳じゃない。」
「今日ここに皆様をお呼びしたのは他でも無い『結束バンド』についてです。単刀直入に聞きます。何故活動を再開しないのですか?」
「そりゃ、お前…」
「ぼっちは社会人。忙しい。」
「私達は練習続けてるし、ぼっちちゃんのお仕事が一区切りついたら、活動再開するつもりだけど…」
「そういう事。お前大体何なんだ?ただのファンか?ならバンド内の問題に首を突っ込むのはお門違いって奴だぞ。」
「彼女が今、何をしているかご存知で?」
「は?そんなもん頑張って仕事してるに決まってるだろ。今はまだ仕事に慣れないだけで、ぼっちちゃんはきっと帰ってくるよ。」
「お姉ちゃん…」
「…今から録画した音声を流します。覚悟して聞いてください。」
「それって…」
「どういう意味?」
「今の後藤さんについてです。」
端末を取り出し、ボイスレコーダーを再生した。
近くの椅子に腰掛け、私にとって忌々しい、彼女から絶対に聞きたくなかった声を再生する。
――――――――――――
『最後に結束バンドについて聞かせてくれないか?流行り病もそろそろ控えるし、活動再開しても良い頃だと思うんだ。僕はライブには行ったこと無いんだが…生で君達の演奏を聞いてみたいんだ。』
『結束バンドですか?』
『いやーもう興味が無いっていうか…今は仕事の方が楽しくて…今の職場はたまに殴られたりしますけど、最後には誉めてくれるし、良い職場なんです。だから―』
『もう二度とギターは弾かないです。』