『は?』
みんな最初に出た言葉はそれだった。
「おい、お前!!!これはどういうことだよ!まさかお前がぼっちちゃんに何かしたのか!?」
お姉ちゃんがあの人の首を掴む。お姉ちゃんは凄い。私は何も動けなかったんだ。ぼっちちゃんの声が信じられなくて。いや、信じたくなくて。
「お、落ち着いてください!店長さん!」
「………」
「おい!なんとか言えよ!ぼっちちゃんに何をしたんだよ!!!」
「後藤ひとりは…今はもう違う何かになっている…」
「どういうこと?もっと詳しく言って。」
その声は異様に震え、潤声だった。
「全ては彼女が勤務している会社が原因だ…」
これまで感情を圧し殺して来た。
「職場の洗脳に近い社内方針…度重なる残業や、ハラスメント放題な環境…それが後藤ひとりさんを会社至上主義へと変えてしまったんだ…」
彼女がもう二度とギターは弾かないです。と言った瞬間から。時間にして約18時間、短いと思う人間が大半だが、私にとっては地獄の18時間だった。その間感情を圧し殺していたのだから。
「すまない…少し、泣いていいか…?」
泣いた久しぶりに泣いた。恐らくこの場にいる誰よりも泣いてしまった。私はただの部外者だと言うのに。
感情を爆発させてしまった。
―私は彼女がギターを弾かないなんて言葉は聞きたくなかったんだ―
―30分後―
「…すまない。もう大丈夫だ。」
「大丈夫か?まだティッシュいるか?」
「あ、1枚だけ…チーン!」
「さっきの話だけどぼっちの会社が原因なの?」
「簡潔に言うとそうです。後藤ひとりさんはブラック企業に入社し、色々あり、洗脳させられてしまった。これが現在の後藤ひとりです。」
「そんな…」
「ひとりちゃんが…」
「気が付かなかった…」
「そこで私は今、ブラック企業を訴える準備をしています。ですが、問題が2つあります。」
「問題?ブラック企業なんだから訴えてそれで終わりじゃないの?」
「まずは今私が持っている証拠は後藤さんに無断に着けたボイスレコーダーにあります。私が録音したとなると違法な証拠として受理して貰えません。」
「えぇ…」
「そして、後藤さん本人が敷いたげられている自覚が無い為、訴えてようにも訴えられないんです。現状の法律だと、洗脳された人物に対しての法律は整理されていません。」
「そんな…」
「そこで考えがあります!」
私は土下座で皆に頼み込んだ。
「後藤さん本人を呼び、貴方達結束バンドがライブをして、後藤さんに眠る魂の叫びを取り戻して欲しいんです!」
「頭を上げてください。」
「…すみません。取り乱しました。」
「後藤さんに魂の叫びを思い出させて、会社をやめさせて、裁判して、彼女を救いたいんです。」
「ぼっちがブラック企業で苦しんでる話。全部信じた訳じゃない。信じられないし、信じたくない。」
「…」
当然だ。なんせ、初対面の奴にこんなこと言われたのだから。
「でも、あなたの結束バンドに対する熱意は伝わりました。」
「!!」
「だから信じます。そしてやりましょう!ぼっちちゃんの魂の叫びを取り戻すライブを!」
「皆さん…!」
「そういうことならアタシも協力するよ。」
「お姉ちゃん!」
「皆さん…ありがとう…」
「お礼を言うのはこっちです。あなたが言ってくれないとぼっちちゃんのことに気づかずにいたかもしれません。」
「あ、星歌さん。こちら色々使わせて貰うための費用です。お受け取りください。」
ダァン!
そこには封筒が置かれていた。
「え!?これいくら入ってるの…?」
「少なくてすみません…30万弱です…」
「え!?ぼっちちゃんの為の身内ライブなんだよね!?だったらノルマとかはいらないんだけど…」
「それでも人件費とか色々かかりますし…少ないですか、私の気持ちです。お納めください。」
「なら私が…」
「リョウは黙ってる!」
目を金にさせたリョウを虹夏が取り押さえる。
「…今、経営が上手く行ってないのも事実だ。これ、本当に受け取って良いのか?」
「はい。」
「それじゃあ、ライブに向けてぼっちちゃんの魂取り戻すライブ頑張ろう!」
「それじゃあ、私はこれで失礼し…!?!?」
決意も固まり、全てが丸く収まりかけたその時奴は現れた。
「やっほぉ!みんなぁげんきぃ?きくりおねぇさんだよぉ!」
「お前…マジでいい加減酒やめろって…」
「え?あんただれぇ?新入りぃ?酒飲むぅ?」
「新しく来た奴に絡んでくるなよ…」
「いただきます。」
きくりさんから酒を受け取り飲もうとしたその時…
「はぁ?おまえアタシの酒を飲むんじゃねぇぞぉ!」
ドゴォン!
おもいっきり酒瓶で殴られた。
「ッ…クソ…痛ぇ…」
「おい!廣井!お前マジでいい加減にしろ!」
「人のぉ酒を勝手に飲むっつぁ良い根性してんなぁおい?」
クソ痛ぇ…動けねぇ…こんなに痛いのか…酒瓶で殴られると…
「お前に酒はやらん!これでも飲んでろ!オロロロ」
痛みで動けない中、最後で見た光景は口を開けた廣井さんが、俺の口をこじ開けてゲロを流し込む姿だった。
そして俺は意識を手放した。
夢ならどれほど良かっただろう…これは現実なんだ…