ウマ娘錆銀ダービー   作:存在Y

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桐生院家の解釈に多大な偏見があるかもしれませんがご了承下さい。この世界のトレーナーの名門ってどのくらい大きいんでしょうか。


九話・裏 ミーク/沖野T

〇視点変遷:ハッピーミークの日記

 

十二月三十一日

 今日はトレーナーさんのご実家、桐生院家のお屋敷に到着しました。朝ゆっくり出発したのですが、着いたのはもう日も暮れて夜も遅い時間でした。正門の扉を開けたトレーナーに続いて入っていくと、縁側を歩いていた着物の男性に見つかって、あれよあれよと気が付いたら、わたしとトレーナーの泊まる部屋に案内されていました。

 トレーナーのお祖母さん、先代の当主さんが来て、今日は疲れただろうからゆっくり休んでねと労ってくださいました。後ろの女性たちが、酔っぱらった男共は見せられないわ、と言っているのは聞こえなかったことにしました。

 思ったよりも長旅で疲れていたのか、暖かいお布団に入ってすぐに眠ることが出来ました。

 

一月一日

 トレーナーさんの親戚一同や、関係者が広間に集まって朝昼兼用のお食事と交流会を楽しみました。周りはもちろん、わたしもトレーナーも着物を身に着けていました。トレーナーは一人で着ていましたが、わたしはお手伝いさんの手を借りてやっとこさ着付けを終えました。

 広間には五十人以上がいて、奥の方の当主さんが座っている席、その奥には、『知識だけではなく身をもって学べ。自らの肉体を育てることも経験である』と草書で書かれた掛け軸が飾られており、桐生院家の家訓の一つなんだとか。ちなみに、最初読めなかったので後でトレーナーに聞きました。『トレーナー白書』にも書いてあるよと言って嬉しそうに見せてきました。

 トレーナーが当主さんや先代さんたちと難しい話をしている間、桐生院家の親戚のウマ娘さんや、その元トレーナーさんたちとおしゃべりをしたり、レースについてのお勉強もしていました。中には過去G1を複数獲った先輩さんもいましたが、<領域>ゾーンは持っていなかったです。

 トレーナーに呼ばれて、当主さんらご家族の中に入って、トリプルティアラを目指すと宣言しました。こりゃあ明日は戦争じゃの、という先代さんの言葉が気になりましたが、午後から桐生院家の持っている練習場でトレーニングをしていたら忘れていました。途中、変な人に絡まれたのでトレーナーに言っておきました。

 夜はお部屋でトレーナーと一緒にゆっくりと晩御飯を食べて、お風呂に入り、そのまま寝ました。

 

一月二日

 朝、トレーナーが、いつものスーツ姿で、ミーク、勝ってきますと言って部屋を出ていきました。何も聞いてないわたしは、親戚の子たちと遊んでいました。遠くの方で何かが壊れるような音が聞こえてきましたが、皆さん気にしていなかったのでわたしも気にしないようにしました。

 昼ごはんの一時間前ぐらいに、いい運動でしたと言ってトレーナーが帰ってきました。どうやら勝って帰ってきたようです。後から聞きましたが、大変なことになっていたんですね。余談ですがこの騒動の中、昨日の変な人は病院に運ばれたみたいです。

 昼からはトレーナーと、親戚の元トレーナーさんやウマ娘さんたちと、レース場の研究や戦術などを学んだり、一緒にトレーニングしたり。みんなと仲良くなれたと思います。

 

一月三日

 明日からはもう、学園が始まるんですね。朝の集まりは一昨日に比べてだいぶ少なくなっていました。先に帰ってしまった方もチラホラいるみたいです。荷物の片付けも終えて出発準備ができた所で、先代さんに呼ばれたので行ってみると、お小遣いといって厚みのある封筒を机の上に置いてきました。G1で二着だから1+2で三個あげようじゃないんですよ。先代の夫さんも、それじゃあ戦績が悪くなるたびに増えるじゃないか、とか突っ込んで笑ってましたけど、13歳に与えるお小遣いじゃないと突っ込んで欲しいです。わたしは全力で首を横に振りました。

 トレーナーが、それぐらいミークならいつでも稼げるんで変なもの与えないでと突っ込んでいましたが、じゃあ三十個でいいかい、じゃないんですよ。トレーナーも悩まないでください。

 結局何も受け取らず、トレーナーの手を引っ張って脱出しました。ミークちゃんは謙虚だねぇと言われましたが、自分が普通だと信じたい今日この頃です。

 濃い年末年始を過ごして、トレセン学園に帰ってきたら少しホッとしました。ラスティさんは茜トレーナーの家でのんびりと過ごしたらしいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇視点変遷:沖野T

 

 先日、おハナさんに言われたことが気になったのもあって、いい機会だと思い。チームスピカみんなで有望な後輩の見学にでも行ってみようと提案したんだが。

 

「正月太りを……治さなきゃいけないんです」

 

「すみませんトレーナーさん。スペちゃんの練習に付き合うので今回はパスで……」

 

「なんでわざわざ第二のゴールドシップさんを見に行かなければなりませんの?パフェの恨みもありますし、わたくしもパスですわ」

 

「マックイーンが行かないならボクもパスかな~。スペちゃんに付いてってトレーニングするよ」

 

「え、テイオーさん行かないんですか。じゃああたしもパスで」

 

「マルゼンスキー先輩にバイク見せてもらう約束してんだ、ごめんなトレーナー、んじゃ」

 

「あ、ちょっと待ちなさいよ。それアタシも一緒に行くって言ってたじゃない」

 

 こんな感じでほとんど皆に断られてしまった。俺って、人望無いのかなぁ。

 

「人望なかったらココまで付いてきてねーよ、トレーナー。ほれ、アタシと一緒に行くぞ。」

 

 元々顔出す予定だったしな、と続けるゴールドシップに励まされて。

 結局、彼女と二人で行くことになったのだった。

 

 

 

 

 

「めちゃくちゃ人気じゃないか。いつもこんなに来ているのか?」

 

 口に含んだ飴玉を舐めながら、ゴールドシップにそう問いかける。

 

「いんやぁ、いつもはもっと少ねーぜ。動画の影響だろ、ホレ」

 

 ごそごそとポケットを漁り、ゴールドシップが開いて見せてくれたスマホには、『ホープフルステークス勝利!謎の新人トレーナーの秘密に迫る!』というゴシップ記事のようなタイトルの動画が。

 

「って月刊『トゥインクル』の公式チャンネルじゃないか」

 

 なになに、取材の一部を許可を取り放送しています、か。内容は……練習メニューについてだったが、タイトル通りのゴシップみたいなものだった。

 

「一応聞いておくけど……」

 

「マックイーンにも言ったが、アタシが関わる前からそんなんだったぞ。」

 

「おう、そうか。……そうなのか」

 

 だとすると、元から特異なトレーナーだったってことなのか。養成学校で学ばない我流のトレーニングを初年度から行うなんて新人なのに度胸が凄いな。

 そんなことを考えながら、周りの観衆と一緒に十数分ほどトレーニングを眺めていたわけなんだが。

 

「今日は……ちょっとアレだが、普通にトレーニングしてるみたいだな」

 

 普通の感覚が狂っているかもしれない。ゴールドシップのせいか、さっきの動画のせいか分からないが。

 

「いっつも変なことやってるワケじゃねーのよな。明らかにおかしいのは週二ぐらいか」

 

「週二でも十分だと思うんだが……」

 

 ゴールドシップによると、変な練習をするときは変な場所で行うことが多いとのこと。体育館だったり飛び込み台だったり、たまに外に日帰り遠征もするらしい。今回のようにターフをわざわざ借りてやるときは七、八割ぐらいまともな練習らしい。

 だとしたら、あんまり偵察に来た意味がないんだがなぁ。おハナさんにも報告できそうなことは無いし、どうしたものか。また今度来る、というのも無くはないがわざわざ来るほどのことかと言われると首をかしげたくなる。

 せっかくだし、他に何かないかと周りを見回してみると。お、あのウマ娘、いいトモしてるじゃないか。

 

「う~ん流石はクラシックG1ウマ娘、筋肉のつき方が「キャーーーーー!」どぉあぁぁ」

 

「まーたやってんのかトレーナー、ほんっと懲りねえなぁ」

 

 この後の時間は、ウマ娘とそのトレーナーに土下座で謝り倒して、見学をしているどころではなかったのだった。

 

 

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