ウマ娘錆銀ダービー   作:存在Y

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幼女戦記のネタバレを含みます。お気を付けください。



二話・表 日常と三女神の真実(偽)

 どうも皆さん御機嫌よう。今日も今日とてウマ娘、ラスティシルバーです。

 学園生活も始まりまして、勉強の日々が続いております。一般教養であれば半分寝ながらでも満点が取れるぐらいには退屈なのですが、レースやこの世界の歴史については知らないことだらけです。

 取り分けしんどいのが二つ。ダンスレッスン、歌唱レッスンは地獄が続いております。なんせ、

 

「ワン、ツー、ワン、ツー。ラスティシルバーさん、胸を張ってもっと堂々と、動きにキレを持たせて。ワン、ツー、ワン、そこっハッピーミークさん、……」

 

 傍から見れば可愛らしいウマ娘だが、その中身は精神年齢アラサー以上 おっさん 。他のウマ娘たちに囲まれて踊っている鏡の中の自分が浮かべる笑みが、どこか引き攣っているのは気のせいではないだろう。

 一つの曲で最低でも三つ、多いものだと十を超える振り付けを覚えなくてはならないらしい。メイクデビューを乗り越えた先、出場レースによってはもっと地獄を見るだろう。まあ、ウマ娘の半分以上が一つの曲すらも踊ることができない現実がそこにはあるのだが。

 

「……ラスティさん、汗一つかいてない」

 

「ああ、ミークか。ミークも疲れてるようには見えないな」

 

「……ぶい。トレーナーの指導のおかげ」

 

 誇らしげに二本の指を立てる彼女。やはり名門トレーナーともなれば、既にこの程度は予習済みという訳か。聞けば、歌もダンスも、トレーニングも既に始めているとか。未だに歌のレッスンカラオケしかしていない私のとは大違いだ。

 

「トレーナーとの仲が良くて何よりだ」

 

「もちろん。……その言い方だとラスティさんは」

 

「いや、茜とは別に仲が悪いわけでは無いぞ。ただなんというか、トレーナーとしてはどうなんだと首を傾げることが多いというか」

 

 トレーニングよりも、まずはやる気アップでしょ。どこ遊びにいく?カラオケいく?という幻聴が聞こえてくる。飴をくれるのは構わないが、鞭が一度も出ていないのと、あのカラオケ推しは一体なんなんだろうか。

 しかも行ったら行ったで、やっぱ自分から行きたいって言わないと上がんないのか!とか一人で悩み始めるし。

 

「……きっと、彼女なりの何かがあるんだと」

 

「だといいがな。未だに本格的な練習はお預けで、ひたすらに自主トレだ」

 

 さて、休憩時間ももう終わりだ。再び地獄に戻るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三女神像行きましょうラスティ!」

 

「脈絡が無いぞ、茜」

 

 恒例となりつつある、校舎の昇降口での出待ち。クラスメイト以外にも揶揄われたりするぐらいには知られており、少し気恥しい気持ちもある。ブームでも来ようとしているのかトレーナーにお願いしてまで真似するウマ娘もいるのだというから、すぐに落ち着くだろうが。

 

「ほら、あれですよあれ。ご先祖様にお願いしますって願掛け。恒例行事らしいですけど、私たちではまだしてなかったなって」

 

「授業で行ったことはあるが」

 

「ウマ娘はトレーナーとの絆で強くなるって言うから、きっと一緒の方が効果があるよ!」

 

「そういうものか。まあ、願掛け程度なら構わないだろう」

 

 三女神像、ウマ娘を常に見守り、導くと言われている三柱の神々を象った像。王冠、海、太陽、それぞれをモチーフにした彼女たちは、全てのウマ娘の始祖とされている。

 授業のオリエンテーションで案内されたときに祈りはしたが、アレ存在Xとは違うとはいえ、祈りという行為はどこか忌諱したいものが少なからずある。

 茜との会話を楽しみながら歩くと、いつの間にか三女神像の前に到着する。

 

「考えたこともなかったが、私の先祖はいったい誰なんだろうな」

 

「さあ、……王冠とかじゃないですか。金ぴかですし」

 

「もっとまともな理由は無かったのか。まあ、そうだな……」

 

 もしかしたら王権神授説とかの名残なのかもしれないな、とか考えてみる。海=母なる海=女性、太陽=男性、王冠=神に認められた初代ウマ娘皇帝とか。だとすれば、皆が王冠の血を継いでいることになるか。

 

「まあ、どうでもいいか」

 

「えー、そっちから振っといて」

 

「いいから、さっさと祈るぞ。順調にいきますようにとかでいいか」

 

「ラスティの好きなようにしていいんじゃない?私も好きにお願いするから!」

 

「そうするか」

 

 両の手を、指を交互に絡めて。片膝を付き、頭を垂れる。

 どうぞ三女神像、アレ存在Xとは今後関わりのない生活を送れますように。あと、そこそこの戦績をとってコネ就職まで上手くいきますように。

 

 

 

 

 

 気が付くと、暗闇の中にいた。辺りを見渡すと、一か所から光が漏れている。他に目ぼしいものもないしな、と近づく。それにつれて、光は大きくなり、そこに二つの人影が見えた。

 一つは、恐らく成人男性のもの。髪も服も、そのシルエットに一寸の乱れもない。もう一つは、成人女性のもの。その姿にはどうも見覚えしかない。それを理解して、歩みを進める。懐かしい香りが鼻腔を擽った、そんな気がした。

 立ち止まり、顔を上げる。どこ世界でも変わらない基本、第一印象は大事まずは挨拶から

 

「「「はじめまして、異世界の私」」」

 

 

 

 

 

「……スティ、ラスティ!大丈夫ですか?ずーっと固まって、うんともすんとも言わなくなったから叩こうかと思ってたよ」

 

「私は壊れたラジオでもないし、そもそもそれは間違った方法だ。精密機械はきちんと修理に出すべきだ」

 

「ラスティが解体されるところは見たくないなぁ」

 

「私も解体はされたくないな」

 

 死後に医学の発展のために解剖されるぐらいなら構わないが、なんて冗談で話が逸れてしまったが。

 ……一体何だったのだろうか。幻覚にしては嫌にはっきり覚えている。懐かしい姿が見れたことに嬉しく思う反面、気付いてしまったことがある。

 

 

 

アレ存在Xが関わっているじゃないか!

 

 

 

 過去の私が出てきたのだから間違いない。頭の中でピースが繋がっていく。そもそもがこの世界、ウマ娘という存在自体がおかしいものだと仮定すれば。

 信仰心の収集を目的とするなら、三女神とウマ娘は好都合。人類はレースを見て、ウマ娘を通じて三女神に感謝し祈りを捧げ、ウマ娘は三女神に勝ちを願う祈りを捧げる。よくできた仕組みだ。

 しかし愉快なものだな。自分ではなく偶像、しかも可愛い女の子でしか信仰心を集められないなんて。

存在X偶像アイドルになったようです』とか面白そうな物語じゃないか。あの爺とくるみ割り人形が踊っている絵面だけで笑えてくる。

 

「ラスティ、何笑ってるんですか。ってうわぁ!」

 

 いつの間にか笑いがこぼれていた私をみて、茜が本気でビビっている。そこまで私が笑うのが変か、それとも気持ち悪い笑い方でもしていたのか。流石の私でもちょっとは傷つくぞ。

 

「今日ぐらいは私から誘ってやろう。気分転換にカラオケでもどうだ」

 

 えっマジで、デレ期じゃん!行こう行こう!……とか言って腕を引っ張る茜を見て、愛玩動物みたいなやつだな、と思いつつ。

 寮の門限まで目一杯、一緒にカラオケを楽しんだ。

 

 

 

つい先程出会った成人女性ターシャ・ティクレティウスが、最後は食料ですか?と可愛らしく冗談を言ってくる幻覚が見えたが、彼女はそんなこと言わんし、するわけないだろうが。別世界ライヒの私は帰ってくれないか。

 存在Xめ。精神汚染までしおってからに。絶対に許さんからな。

 

 

 

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