「エルザ…まずいよ。
毒がどんどん回ってる……」
目で確認ができるくらいにエルザの右腕は毒に侵されていた。
普通の人の肌色が濃い紫色へと変わっており、今は意識を失っているが戻ればまた苦しみだすだろう
「ヒビキ、ウェンディはまだなの?」
「……それが誰とも繋がないんだ」
「そんな……」
「安心してくれ。必ず繋いでみせる……」
洞窟では…
「……ごめんなさい……ごめんなさい…
この人は…私の、恩人なの……」
「ウェンディ!あんた治癒の魔法使ったの!?」
シャルルはウェンディの魔力が減っているのを見て聞く。
そしてウェンディの目の前に立っ男ジェラールもその治癒魔法によって完全に復活した
「何やってんのよ!その力を無闇に使ったら!」
すると、ウェンディは力を使ってしまったことで気を失う。
それをメリュジーヌは受け止める…まだ完全に使いこなせていない天空魔法を無理に行使すればそれこそ肉体的にも精神的にも負荷が掛かる。
「大丈夫……気を失っているだけだよ」
「なんでお前がこんなところに居るんだよ!!ジェラール!!」
1度倒したはずの男が目の前に居ることに理解できないナツは考えなしに炎を拳に纏わせて突っ込んでいく
「……っ……」
だがそれをジェラールは自身の魔力で簡単にナツを壁へと吹き飛ばす
「相変わらずすさまじい魔力だな…なっ!?」
そしてジェラールに近づいたブレインも同様に、魔力によって吹き飛ばされる
誰彼構わず襲ったジェラールは洞窟の外へと歩き出し、その場を後にした……。
「ナツ!しっかりして!!」
「ぶはぁ!!ジェラール!!どこ行きやがったぁ!!」
「行ったわよ」
「あんにゃろぉ!!もう1回殴ってやらぁ!!」
そう言い、追いかけようとするが…
「あいつは何者かは知らないけど…いまはウェンディを助けるのが先でしょ。エルザを助けるためにも」
「無闇に動かないことだね。
どうせ、君たちと彼の間でなにがあったのかは知らないけど…今の君1人だけで倒せる相手じゃない」
「ぐっ…わかってんよ……行くぞハッピー!」
「あいさー!!」
そう言いハッピーはナツを持ち上げ、シャルルはウェンディを持ち上げて空を飛ぶ
「メリュジーヌはどうすんだよ」
「ボクだって飛べるさ」
そう言い、足から魔力放出を行うことで自在に空を浮く
「かっけぇ!!」
「とりあえず行くわよ!!」
そうシャルルは言い、その場を離れる。
やられたブレインは何とか地面へと潜って回避していた
「…計算外だ。
いや、拘束具を外した私のミスか…」
何も喋らず、こちらへと無闇やたらに攻撃を行ってきた…
「しかし、以前のヤツは私にここまでの敵対心は持っていなかったはず……
眠っている状態でニルヴァーナの話を聞いていたとでもいうのか…」
眠っている状態で聞いていた……そしてジェラールがここからすぐに離れた……
「まさかジェラール!!
貴様ニルヴァーナを独占するつもりか!させぬ!させぬぞ!!あれは我々のもの!誰にも渡すものかぁ!!コブラ!聞こえるな!ジェラールが逃げた。奴が逃げた先にニルヴァーナがある!!」
「オーケー。聴こえたぜ…ついでにジェラールの足音もな」
洞窟から離れていたコブラはブレインの怒りようもジェラールが復活したことも感じ取っていた。
それに答えて、コブラも再びジェラールの後を追う。
そしてナツたちが救出に成功した時、グレイはレーサーを相手にしていた
「くそっ……なんて速さだ。野郎」
「俺のコードネームはレーサー。
誰よりも速く、何よりも速く、ただ走る」
「はっ、女の子に負けてた奴がよく言うぜ」
「よく吠えたな妖精。今度こそ殺す!!」
再び動き出そうとしたレーサーだが、ふと空から気配を感じたレーサーは空を見上げる。
すると先程、洞窟から離れた5人が居たのであった。
そしてそれはグレイも確認した
「助け出したか!」
「馬鹿な!?中にはブレインが居たはずだろ!!どうやって…」
「ブチのめしたに決まってんだろ!!」
「くそっ…行かせるか!!」
そうして加速したレーサーは空へと飛び、ナツとウェンディを打ち落とそうとする
「ナツ避けろ!!」
気づいた時には後ろへとレーサーに回られていた4人……だが……
「悪いが時間を掛けてる場合じゃないからね。3人とも舌を噛まないように!!」
そう言い、メリュジーヌはナツ、ウェンディにハッピーとシャルルを掴むと加速してレーサーの足蹴りを避ける
「また貴様かぁ!!」
「ふん、もう君に用はないんだけどね」
「いかせねぇに決まってんだろ!」
そう言い、空を飛ぶメリュジーヌに再び近づこうとするレーサーだったが
「アイスメイク…城壁(ランパート)!!」
レーサーの目の前に巨大な氷の壁を作り出すことで進む先を阻止してみせた
「頼んだメリュジーヌ!!お前ならすぐエルザの所に行けるだろ!!」
「グレイ何言ってんだ!!お前も魔力いまのでも使いすぎたろ!!」
「こいつ俺が相手する!!ここは死んでも通さねぇからよ!!」
「わかった。君に任せる」
そう言い、空で更に加速したメリュジーヌは4人を持って駆け出す
「必ずエルザを助け出すからなぁぁぁぁあ!!!!」
「……当たりめぇだ…」
「貴様……二度とこの俺の走りを止めたな…」
「何度でも止めてやるさ。
氷は命の時だって止められる。そしてお前は永久に追いつけねぇ…妖精の尻尾でも眺めてな!!」
グレイとレーサーから離れた所でメリュジーヌは4人を降ろす
「ここからは走るようにしよう」
「このままビューンって飛ぶことはできないのか?」
「そうしたいがボクもそれほど魔力を使えないからね。”この姿”の状態だと燃費が悪い」
「そうなのか…てかあの野郎!なんでこんなところにいやがるんだ!」
『ナツくん、メリュジーヌちゃん聞こえるかい?』
「この声は……」
「ヒビキだね」
ヒビキがアーカイブによって脳内に音声を届けている
『良かった。繋がって良かった…誰にも繋がらなくて焦ってたんだ』
「どこだ?」
『静かに、敵には恐ろしく耳の良いやつが居る。だから君たちの頭に直接語りかけているんだ』
「なんだが頭がフワスワする感じ…」
『メリュジーヌちゃんとも連絡が取れるということはウェンディちゃんも救出成功したんだね』
「ああ。ここに居る」
『そうか。良くやってくれた!
これからこの場所までの地図を君たちの頭にアップロードする
猫くんはダメージと魔力の低下で繋がらない』
すると先程までなかった地図の情報、エルザの位置情報が頭の中にストンと落ちてくることにメリュジーヌは驚く。
「どうしたの2人とも?」
「すげぇ!アップルすげぇ!!」
「こんなすごい魔法もあるんだね。驚いたよ……わかったとなったら行くとしよう」
そうしてアーカイブでこちらに近づいてくることをアーカイブで確認するヒビキ
「急いでくれナツくん…急がないと、もう時間が……」
エルザの方を見ると身体にまで毒がゆっくりと侵食されているのが見てわかる
「エルザ……ナツが戻ってくるまでは私が守るからね。絶対……」
そしてその頃、グレイは…
「さぁ、俺の力を見せてやろうか」
「くそっ……」
ナツやメリュジーヌ達をエルザの元に行かせ、レーサーを相手にしていたがやはりレーサーのスピードは速く、目で追えることもできずに打撃を受けていた。
「ここからだぜ!!”デッドGP”開催!!」
そう天に上げて腕を下ろすと…
「なっ!?魔導二輪だと!?」
「さぁ、地獄のモーターショー!!
こいつは俺の速さに合わせた二輪だぜ。遅せぇやつには乗れねぇよ」
そう言い、レーサーは自身と同じ赤色の魔導二輪に乗り、大地を駆ける
「上等だぁ。その勝負乗ってやれやるよじゃじゃ馬がぁ!!」
「ほう…速ぇな」
「ご丁寧にSEプラグまでついてやがる!」
SEプラグとは
この世界には魔力をエネルギーとして走る乗り物が数多く存在し、魔導二輪もその1つである
その中でも、魔導四輪や魔導二輪などに装備されているSEプラグは操縦者の魔力を内部機関に供給することによって動かすものである。
「(こいつで魔力を削られるのもきついが、そうも言ってられねぇ…)行くぞオラァ!」
「おもしれぇ。
俺とレースで勝負しようと?」
「ルールがねぇんだ!後で吠え面かくんじゃねぇぞ!!」
そう言い、大地を駆ける2つの魔導二輪。
グレイとレーサーによるデッドGPは観客が居なくとも走り続け、ゴールのないレースが始まる。
いや、互いのこのレースのゴールは”相手を倒す”ということがゴール。共に大地を駆け隙を互いに伺う。
「へぇ〜、いい子ちゃんの正規ギルドのわりには、いいセンスしてんな!」
「”フェアリーテイル”をなめんじゃねぇ!アイスメイク”槍”(ランス)!!」
グレイは自身の氷の造形魔法によって複数の槍を生み出し、それをレーサーとバイクを狙い破壊しようとする。
「まだまだおせぇよ!」
「くそっ!やりにきぃな!!」
「お前にこれを躱せる速さがあるかな!!
”ハイサイド・ラッシュ”」
そう言い、魔法陣を展開するとそこから複数のタイヤがグレイをターゲットに弾のように放たれる
「タイヤッ!?」
だがグレイはなんとかそれをバイクに乗って避ける
「やるじゃねぇか!!
だがな、デッドGPはここからが”本番”だぜ!!」
すると、グレイトレーサーはバイクで樹海の洞窟へと入っていく。
すると、レーサーのバイクに装填された魔導弾を一気にグレイへと放つ
「さぁ、これも躱してみな!」
「クソ、めちゃくちゃしやがる…」
「どうしたよ!!色男!!」
魔導弾を無数にグレイへと放ち、それを逃げるようにグレイはバイクで躱していく。
その途中、グレイは逃さなかった……
通り過ぎる瞬間に自身と組んだ連合軍の一組であり、兄弟子でもある存在を
「リオン!!」
「なっ!?グレイ!!」
「いい所に居たぜ。乗れ!!」
「リオン様!?」
「心配するな!お前は待機していろ!!」
そう言い、再びレーサーの元へと駆けるグレイとリオンであった
「待機……と言われましても……」
と、取り残されるシェリーであった
再び、戦いはレースの中に戻り、魔導二輪でなんとかレーサーを追いかけるグレイ
「リオン。あいつをやってくんねぇか?
運転しながらじゃ、うまく魔法が使えねぇんだ」
「そういうことか…ならよく見ておけ。俺が造形魔法の手本を見せてやろう!」
「一言余計だよ!」
「さぁ、いくぞ!!」
かつえはウルの元で氷の造形魔法を教わった。
だが、ウルはデリオラを封印という形で、デリオラを氷に閉じ込めた
そのウルでさえ完全に滅ぼせなかったデリオラを倒せれば師を越えた事になると考えたリオンはかつては片手のみで氷の造形魔法を扱っていたが…
『話にならん。造形魔法に両手を使うのも相変わらずだな!』
そう言っていた……だが
「リオン…お前、両手で魔法を!?」
「ふん…ウルの教え…だろ?」
「アイスメイク”大鷲”(イーグル)!!」
リオンの氷の色は薄緑色。グレイが非生物の造型「静の氷」を得意とするのに比べ、動植物を模した「動の氷」を多用する。
彼の魔法は限りなう生物に近い動きと強力な動物を造形可能だ
複数の氷の大鷲によって的確な狙いでレーサーとバイクを狙い、見事にバイクを破壊した
だが
「やったか!?」
「いや、手応えがなかった」
本人のレーサーは居なくなっており、
「遊びは終わりだ。」
「「アイスメイク…」」
「”大猿”(エイプ)!!」
「”大槌兵”(ハンマー)!!」
「中々素早い造形魔法だな!!
速ぇことはいいことだ。だがまだだ!!」
いとも容易くレーサーはグレイとリオンの造形魔法を躱し、彼らの肉体へと蹴りを放ちダメージを与える。
「俺の速さには到底追いつけねぇな」
「くそっ、当たらねぇ!!」
「落ち着けグレイ。
四時の方向だ……集中すれば捉えられん相手ではない」
「集中か……よし」
「行くぞ!リオン!」
「俺の合図で打て、全力でな!!」
そう言い、2人は自身の上半身に来ていた服を脱げ捨てる
「(なぜ服を脱ぐ!?そして速い!)」
「(なぜ服を脱いで……いえ、それも”愛”)」
追いついたシェリーもレーサーと同じように考えていた。(後半は別の意味で)
「今だ。正面50メートル先!」
「見切った!!”氷欠泉”(アイスゲイザー) !!」
地面から大量の氷を間欠泉のように噴き出させ…
「白竜(スノードラゴン)!!」
上へと上がらせてからリオンも同時に氷の造形によって竜を作り、逃げ場所を失わせて襲わせるがそれでも避け続けるレーサー。
「くそっ!更に、スピードを上げた!?」
「どうした!こっちだ!!」
「くっ!!」
見切ったはずのスピードも攻撃は当たることすらなく、レーサーの思うように攻撃を受け倒れる2人。
だがその瞬間、リオンの目にあるモノが映る……それを見てリオンは一つの違和感を感じ取った
「テメェらの攻撃なんぞ、一生かかっても当たらんよ…俺の速さには誰も追いつけん!!そろそろテメェらにトドメさして娘を連れ戻しに行くか」
「ふっ……耳を貸せ、グレイ。
奴の”弱点”を見つけた」
グレイはそれを聞き、リオンへと近づくと耳元でその”弱点”を聞く。
「……なるほどな。それが本当ならその作戦はアリ…だな」
「何を2人で言ってやがる」
「ああ、行くとするか」
「こっからが本番だぜ!!」
2人は互いに拳を合わせて鼓舞し、レーサーを再び相手にする
第2ラウンド開始であった。