再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました   作:DXフルーツパフェ

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Steamでゲームを買いまくって、投稿が遅れました。

「第9話 鉄平、恩人に会う」の話で、「みこめっとが渋谷で宣伝活動」と書きましたが原宿に訂正しました。

氷川ポテト様、ティンダロスの猟犬様、評価していただきありがとうございます。


第10話 鉄平、ドラゴンと共闘する

 

 

 

 原宿、竹下通り。

 

 日本だけではなく世界が注目する文化の発信地で原宿の中心とも言える350mほどの商店街だ。流行のファッションブランドや雑貨などの若者向けのお店が集まり、国内外問わず多くの人々が訪れている。

 

 そして、今日だけはいつにも増して人々が集まっていたのには理由が二つある。

 

 一つ目は、強面の男達の中心にいる一人の女性だった。

 

「いいか、オメーら! 今日は気合を入れて働けよっ!!」

 

「「「オスっ!!!」」」

 

 彼女の指示に、強面の男達もそれに応えるようにビラ配りを開始した。

 

 強面の男達に指示を出す女性の容姿は、180cmの長身で頭に立派なツノを二本生やし、男性の視線を釘付けにするほどの立派な胸を持ち尻尾を生やしたこの女性は、この世界の人間族ではなく異世界の竜が気合いで人間になっているのだ。

 

 彼女こそは、様々な企画でホロライブを世界に広めた伝説のドラゴン、ホロライブ4期生桐生 ココであった。

 

 そして、二つ目の理由は…………。

 

「ココちゃん、相変わらず元気だな〜。海外旅行から帰ってきたと思ってたら、今度は会社を立ち上げるなんて大丈夫かな……」

 

 竹下通りの中心にあるスタジオビルで待機しているみこめっとの一人であるホロライブ0期生星街 すいせいが、会長の元気な様子を見ながら相方である同期のさくら みこに語りかけるが心ここに在らずため息をついていた。

 

 今日の予定ではえーちゃんと共に宣伝活動をする予定であったのだが、急遽鉄平に変更されてしまい人見知りであるみこが緊張するのは仕方がないことだった。いまだに憂い顔でため息を吐く相方に、すいせいは呆れた表情で口を開く。

 

「まーた、ため息ついて……。しっかりしなさいよ!」

 

「だっ、だって、元刑事の人だからきっと厳しい人だにぇ……。大川マネージャーみたいな人だったら……」

 

「トワは配信で如月さんのことを優しいおじいちゃんって言ってたでしょう。信じてあげなさいよ!」

 

「すいちゃんは怖くないの?」

 

「元刑事って言っても、辞めてしまえばただのおじいちゃんじゃない。ビビる必要ないって!」

 

 ビシッと親指を立てて笑顔で語るすいせいを見て、みこはようやく笑顔になる。コラボ配信ではケンカばかりするのだが、こういう時は頼りになるのでみことしてはありがたかった。

 

 だが、みこの胸中は晴れることはなかった。理由は、これから梅雨の時期になりつつあるのに長袖のパーカーを着ている若者達が数多く、フードまで被り、みこにはそれが不気味に思えてならなかった。

 

 そのことをすいせいに話そうとした矢先に、ノックをせずに勢いよく扉を開く者が現れた。

 

「せっ、先輩方! 無事でござるかっ!!」

 

 現れたのはホロライブ6期生の風真 いろはだった。みこは思わず「ひぇッ!」っと驚いたが、すいせいは至って冷静で彼女に声をかけた。

 

「君は確かホロックスの風真さん、だよね? どうしたのかな?」

 

「如月殿の伝言でござる! 宣伝活動は中止! 今すぐ、この場所から離れて下さい!!」

 

 切羽詰まった表情で話すいろはに、二人は困惑の表情を浮かべるしかなかった。なぜ新人のいろはが、如月の伝言を伝えにきたのか? 二人の関係は? 様々な疑問が浮かび、すいせいが質問しようと次の瞬間……。

 

 

「ドゴォォォォ────ン」

 

 

 激しい爆発音と共に激しくビルが揺れてしまい、みこがバランスを崩し転びそうになるがすいせいが彼女の体を支えた。

 

「危ないじゃないの! しっかりしてよ!!」

 

「ご、ごめんね、すいちゃん……。でも、どうして……」

 

 みこが混乱する中、狂気じみた男の怒号が聞こえる。

 

「さっさと出てこいや、如月ぃ! 出てこなかったら、このビルにいるタレントを殺すぞっ!!」

 

「なっ、何よ? どうなっているの!?」

 

 明確な殺意を向けられた男の怒号にみこは怯えてしまうが、気の強いすいせいは臆することなくそっと外を覗き込む。すると、バズーカを抱えたスキンヘッドの男が仁王立ちしており、不敵な笑みを浮かべていた。このスタジオビルが揺れたのは、おそらく彼が放ったバズーカの弾が直撃したのだろうとすいせいは推測する。

 

 突然の出来事に人々はパニックになり逃げ惑う者、呆れたことに桐生会の監視をしていた原宿署の警官達は青ざめた表情で一目散に逃げ出したのだ。遠巻きに様子を見ていた者達は、何かの撮影だろうと勘違いをしてしまいスマホでカメラに収めていたが、警察に連絡するという行動は誰もいなかった。

 

「こっ、殺すって……。けっ、警察に電話しないと……」

 

 みこは恐怖で震える手でスマホを取り出すのだが、スマホの画面を見て異変に気付く。

 

「あっ、あれ? 圏外になってる……。都内なのに、なんで!?」

 

「はぁっ!? 何、寝ぼけたことを言ってるのよ!」

 

 すいせいも慌てながら自分のスマホを取り出し、画面を見るとアンテナは立っておらず圏外となっていた。

 

「谷川さ〜ん、彼女達を殺すなんて勿体無いじゃないっスか。どうせなら、ここで公開レ◯プしましょ〜よ!」

 

 二人が混乱する中、狼の獣人族の男が厭らしい笑みを浮かべながらスキンヘッドの男に話を持ち掛けると、パーカーを着た若者達も下卑た顔で囃し立て、彼女達をさらなる絶望に突き落とす。

 

「な、何で……。みこ、悪いことしてないのに……」

 

 みこは恐怖で怯えてしまい泣き出し、すいせいはどうして自分たちが狙われているのか分からず、困惑した表情を浮かべていた。だが、いろはだけは怯えもせず真剣な眼差しで二人に語りかける。

 

「先輩方、今すぐこのビルの裏口から脱出するでござる!」

 

「バカなことを言わないでよっ! あの連中は私達がこのビルにいること知っているのよ! 裏口にもアイツらの仲間がいるに決まってるっ!!」

 

「こっ、腰が立てなくて……。歩けないにぇ……」

 

 いろはの提案に無謀と判断したすいせいは怒りを滲ませてながら一蹴し、怯えてしまったみこは立つことすら出来なくなってしまった。いろはが再度説得を試みようとすると、メイド服を着た女性が勢い良く部屋に入って来た。

 

「風真様、いつまでお二人の説得に時間をかけているのですか?」

 

 突然のメイド姿の女性の登場にすいせいは不審人物とみなし、キッと彼女を睨み乱暴な言葉を投げつける。

 

「だっ、誰よアンタ……。ガハッ!」

 

 だが、そのメイドはすいせいの問いかけに答えようとはせず、素早い動きで彼女の鳩尾にパンチを喰らわせて気絶させたのだ。突然の出来事にいろはは呆気に取られるが、すいせいが倒れたことによりみこは大声でメイドの行動を非難する。

 

「ひっ、ひどいにぇ! 何で、すいちゃんに……。あうっ!」

 

 みこの怒声で彼等に居場所を知られたらまずいと思ったメイドは、彼女に首に手刀を浴びせて気絶させた。

 

 手加減したとはいえ、説明することもせずに尊敬する先輩達を気絶させたメイドに、いろはは怒りを滲ませながら彼女の行動を非難する。

 

「なっ、なんてことをするのでござるかっ! 気絶させなくても、話せば……」

 

「この街はもう無法地帯なんです! 通信も遮断され、殺傷能力が高い武器も彼等は所持していますっ!」

 

 そう言うと、彼女はいろはに向かって拳銃を放り投げると慌てて受け取った。受け取った銃はおもちゃの銃とは思えないほど重く、冷ややかな感触にいろはの顔が強張る。

 

「この銃って、まさか本物でござるか?」

 

「ええ……。裏口を見張っていた少年達が持っていました。如月様の予感は的中しましたが、敵もここまで備えていたのは想定外でしたね……」

 

 普段は無表情のメイドも今度ばかりは鉄平の身を案じてしまい不安げな表情になるが、ここにいても彼の足手纏いになるので次の行動に移す。

 

「さぁ、彼女達を霞ヶ関総合病院に連れて行きましょう!」

 

 昨日のオンライン会議で輪島重工はカバー株式会社との資金提供が決定した知らせを聞いた鉄平は、二人にみことすいせいを霞ヶ関総合病院に匿うよう指示を出した。メイドはみこを俵担ぎで運ぼうとするが、いろはは鉄平を護衛するために彼と共に戦うべきか、それとも指示通りに二人の先輩を助けるべきか迷いが生じてしまい心の中で葛藤していた。

 

 その様子を見ていたメイドが苛立ち、一喝する。

 

「風真様、迷っている暇はありません! 急いで下さい!!」

 

「でっ、でも……。如月殿を一人に……」

 

「私達ではかえって足手纏いになります! それよりも彼女達を安全な場所に移動すべきです!」

 

 その言葉を聞いたいろはは、ようやく落ち着きを取り戻した。確かにいろはは、剣聖との勝負に勝った実力者だ。だが、多人数との戦いの経験はいまだになく、敵はバズーカや拳銃などの銃火器を所持している。最悪の場合、致命傷を負ってしまってはアイドル活動もできなくなるし、何よりもホロックスのメンバーも悲しんでしまう。

 

 鉄平の護衛を買って出たのにその役割を果たせず忸怩たる思いがあるが、それよりも気絶している先輩二人を危険地帯となってしまった街にいるべきではないと判断したいろははすいせいを担いだ。

 

「迷ってしまって申し訳ないでござる。急いでこの場から離れるでござる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バズーカをぶっ放しても反応ありませんね、谷川さん。タレント達が逃げ出すと思っていたのに……」

 

 表情には出さないが内心では彼女達を犯そうと舌舐めずりする北島に、谷川は鉄平が出てこないことに苛立ち凄みを利かせて言葉を叩きつける。

 

「じゃあ、テメェが彼女達をここに連れてこいよっ!」

 

「へっ!?」

 

「聞こえなかったのか? タレント達をここに連れて来いって言ったんだよ!!!」

 

 谷川の怒号に北島は怯えてながらも、急いでビルに向かった。もし、拒否をしようとしたら殺されると感じたからだ。

 

(タレント達を無理矢理ここに連れて来れば、あの化け物(如月)も隠れてないで彼女達を助けるために出てくるはずだ! そして、彼女達を人質にすれば……。よぉし、勝機が見えてたぞぉっ!!)

 

 北島を追うように、ホロライブを代表するタレント達を犯そうと目を血走らせながら数人の少年達も後に続く。それを見ていた谷川は勝利を確信して自然と笑みを浮かべるが、北島がビルに入ろうとした瞬間に「ぎゃあ!?」と叫んでしまい倒れてしまった。

 

「北島さん!?」

 

「何で急に倒れて……」

 

 いきなり倒れてしまった北島に後を追っていた少年達が様子を見ると、彼は白目を剥いてしまい完全に気絶していたのだ。

 

「おいっ! 北島はどうなっている!」

 

「そっ、それが、気絶してしまって……」

 

「どうして気絶してるんだよっ! 辺りを探ってみろ!」

 

 原因が分からず北島が気絶したことに少年達は動揺してしまい、それを治めようと谷川は原因を探るために指示を出した。

 

(なぜ、奴が気絶したんだ!? 俺も見ていたが何も異変を感じなかったんだぞ……)

 

 最初に考えられることはホロライブのタレントが魔法を使って北島を気絶したのだと考えが浮かんだが、大川の情報によると日本生まれの人間族と聞いていたのでその可能性は消えた。じゃあ、一体誰が……。足りない頭で考えるが一向に原因が分からずにいると、一人の老人がこの無法地帯と化した街に現れた。

 

「よぉ、虫ケラ共! 随分と、はしゃいどるのぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(敵は大体百人近く……。あのスキンヘッドの男は元西城会若頭の谷川じゃないか……)

 

 いろは達がみことすいせいを逃すために、鉄平はあえて彼等に聞こえるように大声で挑発した。案の定、凄まじいまでの殺気の視線を鉄平は向けられてしまい、一人の少年が薄ら笑いを浮かべて叫んだ。

 

「このジジイを殺せば……。一千万は俺が頂くぜ!!」

 

 少年はズボンのポケットから拳銃を取り出し発砲しようとしたが、鉄平がそれを許すことはなかった。鉄平は、ズボンのポケットから小石を素早く取り出し、少年の右目に狙いを定めて放つと見事に当たり、少年は激痛にうずくまりのたうち回った。

 

「ぎゃああああぁぁぁぁ……。いてぇ、いてぇよぉ……」

 

「おいっ、大丈夫か!? げっ、目が潰れてやがる……」

 

「なっ、そんな……。嘘だろ……」

 

 少年達が鉄平の攻撃に戦慄してしまい動揺するが、彼は気にする事なく朗らかな表情で谷川に話しかける。

 

「それにしても、元西城会若頭だった男も地に堕ちたのぉ」

 

「な、何だと!!!」

 

「昔のお前だったら手練の男達を引き連れていたはずなのに、今のお前はワシが石ころをぶつけただけで気絶するような情けない男を引き連れているとは……。よほど人望がないのじゃな……」

 

(じゃ、じゃあ……。北島が気絶したのはまさか……)

 

 鉄平のことを所詮は年寄りと侮った谷川は、衰えていない彼の戦闘能力に今更ながら戦慄してしまい恐怖した。

 

 だが、もう後戻りは出来ない。谷川は、自分達を追跡していた数台の警察車両をバズーカや手榴弾で躊躇無く破壊したのだ。そして、鉄平を確実に殺すためだけに金を惜しむことなく銃火器を買い込んだ。その上、妨害電波を発生しており警察も介入することも出来ず、ここまで優位なのに鉄平を殺すことが出来なければ、闇社会の世界で笑い者になる。

 

 谷川は自分に鼓舞するように怒号を放つ。

 

「やかましい! お前を殺して名を上げるために、危険を冒しているんだ! もう、後戻りは出来ねぇんだよ!!」

 

「そう、吠えるなよ……。それにしても、こんな子供達を頼るとは、ワシは随分と舐められたものじゃな……」

 

 吠える谷川に、鉄平は怒りを通り越して呆れていたが、ふと空を見上げたら側頭部の両角と尻尾を生やした女性が憤怒の形相で谷川に向かって来たのだ。

 

 だが、谷川はそんなことに気付かず、鉄平を睨み再び吠える。

 

「よく聞けよ、化け物! オレは……」

 

「誰がバケモノじゃ!!!」

 

「ガぁッ!?」

 

 空から現れた突然の乱入者の蹴りに、谷川は防御することが出来ず、まともに攻撃を喰らってしまい5メートルほど吹き飛ばされてしまった。

 

「テメーら! いったい、どういうつもりで私達の邪魔をするんだ!!!」

 

 少年達に睨みながら怒りのオーラを纏い怒号を放つ乱入者の正体は、元ホロライブ四期生桐生 ココだった。

 

 これには鉄平も驚き、どうしてココがここにいるのか意味が分からず、彼女に質問する。

 

「桐生さん!? どうして、貴方がここに……」

 

「あ? 誰だ、テメーは?」

 

「ワシは如月 鉄平というホロライブの社員じゃよ。今日はみこめっとの活動を手伝いに来たんだ」

 

 鉄平にも殺気を放つココだったが、彼が社員証を見せたことでようやく思い出したのか、怒りをおさめてしまい笑顔で語り出した。

 

「お前がウワサのテッペーか〜。いや、お前のことはトワ達から聞いてるよ。元刑事だってな♪」

 

 彼の正体が分かりフレンドリーに話すココに、鉄平は面食らうも再び問いかける。

 

「も、もう一度聞くが、どうしてここに?」

 

「今日はな、私がヤクザ達を更生するために桐生会っていう会社を立ち上げたんだ! だけど、コイツらが……」

 

 そう言うと、ココは白目を剥いて気絶している谷川と少年達に殺気を向ける。

 

「今日はこの街でビラ配りをする予定だったのに、コイツらが騒ぎ出したおかげでめちゃくちゃだ!! おい! テメーら覚悟はできてるんだろうなぁ!!!」

 

 ココの怒号に少年達の大半は恐れをなして怯えてしまうが、強面の少年が不敵な笑みを浮かべて口を開く。

 

「こっちはなぁ拳銃やスタンガンもあるんだ! テメェらなんざ、怖くねぇんだよっ!」

 

「そうかい。なら、お前らを()()()()()として処理するしかないのぉ」

 

 銃火器を所有しているのか余裕の笑みを浮かべる少年達に、鉄平は無表情で宣告して気配を消して少年達に向かって走り出した。

 

「あのジジィ、急に消えて……。うっ、おえええぇぇぇ」

 

「クソがっ! いったい、どこに……。ぐぎゃああぁぁぁ」

 

 一人、また一人と鉄平に殴られて吹き飛ばされてしまい、ある者は溝尾を殴られてしまい吐瀉物を撒き散らしながら倒れ、ある者は顔面に拳を叩き込まれて血塗れになり次々と少年達は倒されてゆく。

 

(な、何だあのジイさん……。本当に、ニンゲンなのか!?)

 

 桐生 ココが驚くのも無理はなかった。鉄平は気配を完全に消して容赦無く少年達に攻撃を仕掛けていく。対する少年達は、鉄平の気配すら感じることも無く、ただのサンドバックに成り下がるしかなかった。闇バイトで働く少年達は所詮は弱者に暴力を振るい金品を強奪するが、強者とは戦ったことはないのだ。事実、谷川は少年達に鉄平がヤクザ相手に暴れていたことを伏せて、年老いた元刑事と伝えたのだ。事実を知れば、ほとんどの者達が尻込みしてしまい逃げ出すだろうと考えていたからだ。

 

「なっ、何だよあのジジィ……。あんなに強いって聞いてねぇぞ……」

 

「おいっ! 今のうちに、逃げようぜっ! 前金は貰っているんだ!」

 

 ひとり、また一人と少年達は鉄平になす術もなく倒され、恐れをなした少年達は逃げ出そうとするがココが彼等を阻んだ。

 

「おい、テメーら! なに、逃げ出そうとしてるんだ!」

 

「じゃ、邪魔すんじゃねーよクソ女!」

 

 行手を阻んだココに苛立った少年達は一斉に彼女に銃を向けて発砲するが、放たれた弾は彼女の身体に傷を負わせることは無かった。

 

「何で、平然と立っているんだよ!? 撃たれたのに!!」

 

「何でって……。気合いで人間になっているが、私はドラゴン族だ。そんなチャカで撃たれても死ぬわけねぇだろう……」

 

「ドラゴン族!? そんな……」

 

「それより、どうしてお前らはテロを起こそうとしたんだ?」

 

「はあっ!? オレらは一千万円をもらうために、ジジイを殺しに来たんだよ! くそがっ!! もうメチャクチャだ!!!」

 

「なぁ、あっ、アンタ。10万渡すから、オレ達を見逃してくれよぉ……」

 

(コ、コイツら……)

 

 少年達の身勝手な言葉を聞き、ココは怒りに震えていた。彼等は罪悪感も無く大金を貰うためだけに人殺しに加担し、自分達の未来を捨てたことを理解している様子が無いからだ。

 

「バカか、お前ら! ケーサツに捕まったらどうなるか分かっているのか!!」

 

「オレ達はなぁ、ショーネン法に守られているから死刑になることは無いんだよ、バーカ!!」

 

「それになぁ、もしケーサツに捕まっても谷川さんが優秀な弁護士をつけるって言ったんだ!」

 

「何とも、度し難いバカ共じゃな……」

 

 悪びれも無く得意げの語る少年達の背後に、返り血を浴びた鉄平が現れた。少年達は驚くのだが、それに構わず真剣な表情で口を開く。

 

「よく聞けよ、クソガキ共! 少年であろうとテロリストと認定されたら、タダでは済むまいよ!」

 

「待てよっ! オレ達はテロリストじゃ……」

 

「拳銃やバズーカを用いて街を騒乱している時点で、テロリストに認定されるとなぜ分からんのじゃ!」

 

 無知な少年達に鉄平は一喝するが、逆上した少年が鉄平に向けて銃を構えた。

 

「うるせぇよ、ジジイ! テメェを殺せば大金がもらえるんだ! くたば……。グハッ!?」

 

「させねーよっ!」

 

 発砲しようとしたが、先にココが素早く動き少年の顔面を殴りつけた。

 

「おっ、おい、桐生さん。貴女の加勢は有り難いが、ワシが一人で……」

 

「お前の動きを見れば、修羅場を潜り抜いた強者だって分かる! だがなぁ、歳を考えろよっ!!」

 

 そう鉄平に言うとココは憤怒の表情になり、残りの少年達を倒そうと動き出した。

 

「桐生さん!? ええい、ワシ一人でも十分だと言うのに……。仕方無い、ワシも動くか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

 林部長と近衞警部補は、桐生会の従業員達と共に原宿にいた人達の避難誘導を終えて、騒乱の中心となったスタジオビルに向かっていた。

 

 本来なら原宿署の警官達がやるべき事なのだが任務を放棄してしまい、仕方無く二人は桐生 ココに身分を明かし協力を求めた。事情を知ったココは快諾し、最初は率先して避難誘導に協力したのだ。だが、途中で彼女は「嫌な予感がするから、スタジオビルに行ってくる!」と林部長達に言い残し、真っ先にスタジオビルに向かったのだ。

 

 だが、いつまで経っても戻ってこないココを心配した林部長と近衞警部補は桐生会の従業員達と共に、危険を承知の上でスタジオビルに向かうことにしたのだ。

 

 そして、ようやくスタジオビルに着いたのだが、現場は想像を絶する光景だった。

 

 スタジオビルの三階はバズーカの弾が打ち込まれて窓ガラスが破壊されており、拳銃を持った少年達の顔面を殴られ、足や腕が折られて血塗れで倒れていたのだ。また、血と糞尿と嘔吐物が混ざった悪臭が漂い、血生臭い現場に慣れていない近衞警部補の顔が真っ青な顔になり、吐かないように必死に口を手で抑えるのがやっとだった。現場に慣れている林部長も凄惨な光景に言葉を失い、元ヤクザである桐生会の従業員は顔を青ざめてしゃがみ込んでしまい嘔吐するが、元西城会の組員だった者達は慣れているのか気にする事なく社長であるココを探していた。

 

「姐さーん、一体どこにいるんですか?」

 

「んっ!? おい、竜也。この人は……」

 

 元西城会の組長の子飼いであった朝比奈 竜也がココを探そうと呼びかけるところに、親友である安達 一虎が呼び止めた。

 

「どうした、カズ?」

 

「この人、若頭じゃないか。どうしてこんなところに……」

 

 一虎の指さす方を見たら、そこには白目を剥いて気絶していた谷川が倒れていた。

 

「谷川じゃねぇか……。どうしてここに……」

 

 谷川の近くにはバズーカが置かれており、おそらく彼がこの騒動の首謀者だろうと推測した竜也は自分達も疑われるのではないかと顰め面になった。そうしたなか、二人の人間が言い合いながらスタジオビルから現れた。

 

「テッペー、お前はやりすぎだ! 気絶させるだけでいいのに、ガキ達の腕や足の骨を折る必要はあるのか? 絶対、オーバーキルだぞっ!!」

 

「相手はテロリスト。こうでもしなければ、人質を取って面倒なことになる。あんな連中に情けをかける価値もなかろうよ」

 

「如月さん!?」

 

「如月のおじさま!?」

 

 残りの少年達は鉄平とココに抵抗するためにスタジオビルに立て篭もろうとしたが、二人は返り血を浴びながらも殲滅したのだ。だが、容赦無く少年達を攻撃する鉄平にココは苦言を呈しながら話す二人を見た林部長と近衞警部補の二人は驚き、事情を聞こうと駆け寄って来た。

 

「如月さん、どうしてここに……」

 

「仕事じゃよ。タレント達の宣伝活動の手伝いに来たんじゃが、こやつらが襲って来たんじゃよ」

 

 鉄平の指差す方を見たら、気絶している谷川の方へ向けた。だが、気絶させるのはともかく腕や足の骨を折る必要はあったのか疑問に感じた近衞警部補は、吐くのを抑えて彼を問いただす。

 

「事情はわかりました。ですが、おじさまのとった行動は明らかに過剰防衛……。いえ、下手をすれば暴行罪の罪で逮捕されますよっ!」

 

「言っておくが、連中は拳銃や手榴弾を所持しておる。そんな物騒な武器を持つ相手に手加減するほどワシは優しくはないよ」

 

「拳銃!? まさか……」

 

「いや、刑事さん。この人が言っていることは本当ですよ……」

 

 鉄平の衝撃発言に近衞警部補は怪訝な表情を浮かべて信じられなかったが、二人の会話に竜也が割り込んできた。

 

「谷川の近くに置いてあるバズーカは本物ですよ。それと、ガキのズボンのポケットに拳銃がありました」

 

 そう言うと竜也は拳銃を近衞警部補に手渡した。その拳銃はセミオートマチック型のハンドガンと呼ばれている物であり、このような銃やバズーカのような銃火器がどうして彼等が所持しているのか、近衞警部補は理解出来ずに困惑の表情を浮かべるしかなかった。

 

「ところで、いまだにパトカーが一台も来ないとは、警視庁は一体何をしておる?」

 

「それが、ケータイや固定電話が使えないんだよ」

 

「なにっ!?」

 

 鉄平の疑問に林部長は答えると、念のために自分のスマホを取り出して画面を確認するとアンテナは立っておらず圏外となっていた。

 

「どうやら、連中は通信を遮断してまでワシを殺すつもりだったのであろうよ……。バカ共の考えることは今も昔も分からんな……」

 

「如月さん、悠長なことを言っている場合じゃないぞ。もしかしたら、ホロライブ事務所も同じ手口で襲っている可能性があるんだぞ」

 

「おっ、おい、アンタっ! ホロライブ事務所が襲われるってどういうことだ!!」

 

 二人の会話を聞いていたココは、どうして事務所が襲撃されるのか理解出来ず、二人の会話に割り込んできた。

 

「そもそもの話、どうしてテッペーを殺すためにここまでするんだ!? 意味が分からん!!」

 

 ココが混乱するのも無理もなかった。

 

 ころねが大川の指示で花菱社長に接待を強要させた上に合成麻薬まで勧められてしまい、身の危険を感じた彼女はおかゆと共に鉄平に紹介してもらった霞ヶ関総合病院で匿われていることをココは知らなかった。そして、花菱商事の汚れ仕事を引き受けている亀沢が鉄平を内偵捜査を捜査員と判断してしまい、亀沢は大川と共に部下を率いてころねの行方を知るためにホロライブ事務所を襲撃を行い、谷川は闇バイトの少年達を率いて鉄平を殺すために行動を起こしたのだが、今の彼女が知る由も出来ず頭を抱えるしかなかった。

 

 だが、ホロライブ事務所が襲われる理由が分からないが、刑事である彼等が嘘を言う理由も無く、事務所のスタジオで仕事をしているホロメンやスタッフの身の安全を案じたココは決断を下す。

 

「決めた! 今から事務所に行ってくる! テッペー、お前も来い!!」

 

「いや、事務所にはホロックスが守りについているから、桐生さんやワシが行かなくとも……」

 

「バカなことを言うなっ! そいつらは私やお前のように強いのか! それに、スタッフやホロメンが大怪我したらどうするんだよ! つべこべ言わずに行くんだよ!!」

 

 そう言うと鉄平をお姫様抱っこをして、急いでホロライブ事務所へ向かった。

 

「お、おい、よさんか! そんな事をしなくても自分の足で……」

 

「遠慮するなよ、テッペー! お前はガキ達と戦って疲れているんだろう。今のうちに、休んどけ!」

 

「待って、二人とも! 勝手な行動は……」

 

「放っておけよ、近衞警部補。あの二人を止めるのは無理だよ」

 

 近衞警部補は詳しい事情を聞くためにココ達を止めようとしたが、鉄平をお姫様抱っこしているにも関わらず疾風のように駆け抜けていった。

 

「林部長、どうして止めるんですか!」

 

「止めるも何も、もう光の速さで行っちまったじゃないか」

 

(それにしても、桐生さんが加勢したとはいえ疲れを見せないなんて、本当に六十を迎えた老人か?)

 

 林は今年で五十歳を迎えたばかりだが、鉄平の戦闘能力にただただ閉口するばかりだった。一方、近衞警部補は納得することは出来ずに不服そうな表情を浮かべるが、林は気にすることなく口を開く。

 

「それより、谷川を確保して応援が来るまでここで待機しようか」

 

「林部長、せめて私だけでも桐生さん達の応援に向かっても……」

 

「無茶なことを言うな! そんな青ざめた顔で何が出来る!」

 

「でっ、ですが……」

 

「心配しなくてもあの二人は無事に戻ってくるさ。それに、近衞警部補は血生臭い現場に慣れていないんだろう? 今にも吐きそうな顔をしているが大丈夫か?」

 

「大丈夫です……」

 

 そう言葉少なめに感謝を述べると、近衞警部補は再び吐きそうになり口を手で押さえた。自分の不甲斐なさに落ち込むが、取り敢えず自分がやれることをしようと白目を剥いて気絶している谷川に手錠をかけるのだった。

 

 

 

オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?

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