再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました   作:DXフルーツパフェ

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ファイナルファンタジー14やリムワールドにどっぷりハマってしまい、小説投稿をサボっていて申し訳ございませんでした。

ルイボスティーポッツ様、評価していただきありがとうございます。




第11話 この世に悪は栄えない(前編)

 

 

 

「なっ、何じゃこりゃああ!!!」

 

 ようやくホロライブ事務所に辿り着いたが、エントランスホールに大型トラック一台が突っ込んだ状態にさすがのココも驚きの声を上げた。

 

 一方、ココから降りた鉄平はこの光景を複雑な思いで呟いた。

 

「まさか、令和の時代になってこのような光景を見るとはな……」

 

 そう言いながら、鉄平はエントランスホールの割れたガラス張りの壁から入ろうとするが、ココから注意を受ける。

 

「おっ、おい、テッペー! 敵が潜んでいるかもしれないんだぞ!」

 

「入らなければ分からないじゃろう……。ワシが様子を見てくるから、桐生さんは後から来るといい」

 

 そう言うと鉄平は躊躇することなく侵入して、辺りを注意深く見回した。

 

 受付のテーブルや柱には銃撃戦が行われていたのか、銃弾の跡が生々しく残っていた。そして、黒服を着た人相の悪い男達がズタボロに成り果てて、両腕を拘束されて気絶した状態で横たわっていた。顔や体には鞭で打たれたのか生々しい傷があり衣服も破れ、常人なら目を逸らす有様だった。

 

「如月さん!? その血はどうしたんですか?」

 

 驚きの表情を浮かべながら、こちらに駆け寄ってきたのは鷹嶺ルイだった。

 

「鷹嶺さん。コイツらを仕留めたのは君なのかね?」

 

「いえ、こよりと協力して彼らを拘束しました。ところで、その血は……」

 

「みこめっとの仕事に原宿を訪れたら、ヤクザ崩れとその仲間に襲われたんじゃよ。ワシと桐生さんで連中を叩きのめした時に、返り血でスーツが汚れてしまったんだよ」

 

 普段と変わらぬ表情で談笑する鉄平にルイは戸惑うも、「桐生」の名を聞いて違和感を覚えてしまい彼に質問する。

 

「すっ、すみません、如月さん。桐生って、まさか……」

 

「何だコイツら!? もう捕まっているじゃないか!」

 

 いくら呼びかけても鉄平の返事が無かったので心配したココはエントランスホールに入り、拘束されている男達を見て思わず声を上げて驚いたのだ。なぜ、彼女がここにいるのか理由が分からず困惑しながらもルイは自己紹介をする。

 

「はっ、初めまして桐生先輩。私はホロライブ6期生の鷹嶺 ルイと申します」

 

「私の名前は桐生 ココだ! ところで、コイツらはお前が……」

 

「私と同期のこよりと協力して、彼らを拘束しました。如月さんの情報のおかげなんです」

 

 昨日の深夜、ルイのスマホに鉄平から連絡があった。内容は輪島重工との協力が得られたので、ホロメンを霞ヶ関総合病院に避難する手筈を整えたことと、自宅が荒らされたので花菱社長が雇った闇社会の人間がホロライブ事務所に襲撃する可能性があるので備えるように指示を出したのだ。

 

 ルイは考えた末に、ラプラスとクロヱの二人を轟専務の護衛を任せて、自分とこよりはエントランスホールで襲撃に備えたのだ。鉄平の予想通りに闇組織は大型トラックで事務所に突っ込み、拳銃を持った黒服達が現れて銃撃戦を繰り広げたのだ。だが、こよりは即席で作ったゴム弾の散弾銃で応戦し、ルイは鞭を巧みに使い相手を気絶させて拘束したのだ。

 

「ところで、やけに静かだけどスタッフ達はどこに避難しているんだ? えーちゃんは大丈夫なのか?」

 

「轟専務が、メールで今日から三日間は休むようにスタッフ全員に通達しているで自宅にいるはずです。えーちゃんは朝に連絡したんですが、安全な場所に避難していると言っていました」

 

 スタッフの無事を確認したココは安堵の表情を浮かべるが、今度は鉄平がルイに質問してきた。

 

「ところで、轟専務はどこにいるんだい?」

 

「確認はしていませんが、ラプとクロヱが護衛しているので無事だと思いますが……」

 

「そうか……」

 

 報告を聞いた鉄平は浮かない表情になってしまい、それを見たココは気になって彼に問いかけた。

 

「どーした、テッペー? 何かあったのか?」

 

「おそらくは、こやつらは陽動。本隊は轟専務に向かってるはずじゃよ」

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

 鉄平の言葉を聞いたココとルイは驚くが、それに構わず続けて鉄平が話を続ける。

 

「別に事務所の出入り口はここだけではない。スタッフ専用の出入り口も、連中は知っているはずじゃ」

 

 そう断言すると、ルイは大川の存在を思い出した。

 

 大川は出勤停止になっているが、彼に心酔している人間を言葉巧みに騙して、轟専務や鉄平のスケジュールを聞き出す事が可能だ。そして、ルイ達が拘束した黒服達は人間族で構成されており獣人族は一人もいなかった。おそらく、大川からの情報を得た闇社会の人間が鉄平や事務所の同時襲撃を計画をしたのだろうと彼女は気付いてしまい己自身を悔やんだ。

 

「すみませんっ! 急いで確認を……」

 

「いや、ワシが確認してくるから鷹嶺さんは博衣さんと桐生さんの三人で霞ヶ関総合病院に向かいなさい。ところで、さっきから博衣さんを見かけないんだが、どうしたのかね?」

 

「それが、ここら一帯がスマホやネットが使えなくなって、こよりがスマホが使える場所で110番するって外を出たんですが帰って来ないんですよ……」

 

 ルイがそう言うと、鉄平が確認するためにスマホを取り出し画面を見ると圏外になっていた。

 

「ここもか……」

 

「ここもって……。まさか、如月さんが襲われた場所も……」

 

「ああ、通信の類が使えなかったよ……。とにかく、早く博衣さんと合流して病院に向かいなさい」

 

 ルイにそう言うと鉄平は轟専務の部屋へ向かおうとしたら、ココが複雑な顔で声をかける。

 

「いいか、テッペー! お前は強いんだから、少しは手加減しろよっ!」

 

 ココは鉄平に忠告するとルイと共に事務所を後にした。これは、いくら相手が犯罪者だとしても腕や足を折るような危害を加えれば、警察に逮捕される可能性もあり、もし逮捕されれば彼を慕っているスタッフやホロメンが悲しむだろうと彼を慮る発言だった。

 

 鉄平は彼女達が外を出たのを確認して、歩きながら呟く。

 

「桐生さん。あんたの言うことは分かるが、外道相手に手加減なんかできるものかよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんなはずじゃ……。こんなはずじゃなかったはずだっ!!)

 

 予想外の展開に苦虫を噛み潰したような顔をしていたのは、八人の獣人族の部下を率いて轟専務を拉致しようと計画を立てた花菱総合警備会社の社長である亀沢だった。

 

 計画は完璧だった。妨害電波で通信を遮断させた上で、頼りにならない部下達を陽動に使って大川の案内で専務の部屋の階まで辿り着いたまでは良かった。だが、専務の部屋の扉の前で箒を手にしたフードを被りマスクを着用している少女が行手を阻んだのは誤算だった。

 

「あのさ〜、もういい加減諦めて警察に自首してくれない? アンタ達は弱そうだからさ、手加減するのが難しいんだよね〜」

 

 面倒くさそうに話す少女に対して、亀沢はキレそうになるがグッと我慢するしかなかった。なぜなら、彼が信用する部下達が成す術もなく目の前にいる少女に倒されてしまい、亀沢と大川の二人だけになってしまったからだ。

 

(アイドル事務所だから通信さえ遮断すればどうにでもなると思っていたら、こんな奴がいるとは……。それに、この一帯の通信を遮断しても、いずれは警察も来るはずだ。せめて、オレだけでもここから脱出しないと……)

 

 この状況をどう打開するか亀沢は思考を巡らす中、少女は無邪気に笑いながら彼等を嘲笑する。

 

「バカのくせにいくら考えても無駄だよ。通信を遮断したのは良かったけど、アンタ達のようなザコが私に勝てるわけないじゃん♪」

 

「くそっ!」

 

 癪に障る言葉を投げつけられるも、妙案が思いつかない亀沢は少女を睨みつけるので精一杯だった。

 

「大川ぁ! テメェ、どうしてこんな奴がいることを黙っていたんだっ!」

 

 大川に八つ当たりしても仕方無いのだが、それでも追求せねば気が済まなかった。なぜなら、少女の存在が分かっていたなら対策を講じることも出来たのだから。だが、大川は恐怖で体を震わせながら反論する。

 

「そっ、そんなこと、私が知るわけないだろうっ! それより、アンタが持っている拳銃であのバケモノを仕留めれば済む話だろう! その銃は飾りか!!」

 

「黙れよっ!! それが出来るんなら最初から苦労しねえんだよっ! テメェにもチャカを持たせているはずだ! それでアイツを撃てよっ!」

 

 屈強な部下達を呆気なく倒したことを理解出来ない大川に亀沢は苛立ち、ついには我を忘れて彼を罵倒してしまう。だが、この不毛なやり取りは長く続くことは無かった。

 

「仲間割れするとは……。随分と余裕じゃないか」

 

「誰……がぁっ

 

 亀沢が声のする方へ振り返ると、突然右頬に衝撃が走り、吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

 

「ぐっ、クソがっ……。い……いでぇ、一体何が……」

 

 彼は激痛を堪えながら顔を上げると、そこには血塗れのスーツを着た老人が立っていた。

 

「北九州市を根城にしていた元鬼神会の幹部の一人、亀沢じゃないか。白昼堂々アイドル事務所を襲うとは、外道の考えることは常人には思いつかぬよ」

 

 睥睨しながら自分の素性を言い当てた老人を、亀沢は恐怖で震えながら相手に悟られぬように睨みながら口を開いた。

 

「テメェは、まさか……」

 

「ワシか? ワシの名は如月 鉄平じゃよ」

 

 鉄平の名を聞いた瞬間、この時点で谷川の作戦が失敗に終わったと悟り、亀沢は次第に意識が遠のいてしまった。鉄平が気配を遮断して、拳で右頬を殴ったのがよほど効いたのだろう。

 

 鉄平は周囲を見回し、獣人族が倒れているのを確認してから少女に語りかける。

 

「沙花叉さん。お前さんが連中を倒したのかね?」

 

「ひゃい! そっ、そうです! その通りですっ!」

 

 クロヱは鉄平を恐れ、機嫌を損なわないように何度も頷いた。

 

(ウソでしょ!? この私が気付かなかったなんて……。それに、スーツは血塗れだし……。いったい、どうなってるの!?)

 

 クロヱが恐れるのも無理がなかった。彼女はシャチの獣人族で人間より聴力が優れているが鉄平の気配を感知出来ず、そして六十歳の老人が繰り出す拳で人間を吹き飛ばし、挙げ句の果ては血塗れのスーツを着ている姿を見た彼女は戦慄を覚えるしかなかった。

 

 そんな彼女をよそに、ラプラスが勢い良く専務の部屋の扉を開けた。

 

「おーい、沙花叉。やっと、終わった……。おっ、じーちゃんも来て……。おっ、おい、その血はどうしたんだっ!」

 

「ああ、ワシを襲ってきた外道達の返り血じゃよ」

 

「そ、そうか……」

 

 返り血を浴びているにも関わらず世間話をするかのように会話をする鉄平の姿に、表情を引きつりつつも相当な修羅場を潜ってきたのだろうとラプラスは推察した。続けて、轟専務も様子を見ようと部屋から出てきた。

 

「こっ、こいつら本当に沙花叉さんが倒したの……。凄いわね……」

 

 獣人族の男達が白目を剥いて倒れているのを見た轟専務は若干引き気味に話すと、大川が駆け寄って来た。

 

「せっ、専務……。助けて下さいっ! 私は、この連中に脅されて……」

 

 大川は涙を流して弁明するが、彼女は嫌悪の眼差しで彼を一喝する。

 

「黙れ、ペテン師! よくも、騙してくれたわねっ!」

 

「せっ……。せんむ!?」

 

 空気を読めない大川も轟専務の凄まじい怒りに足がすくんでしまい、思わず尻餅をついてしまった。

 

「何が地上波テレビ進出計画よっ! 営業もせずに、嫌がる戌神さんを花菱社長にアテンドさせるなんて、いったい何を考えているの!」

 

「あっ、アテンドだなんて誤解ですっ!!」

 

「連中に脅されていると言ってたわねっ! じゃあ、どうして警察に相談しなかったの!」

 

「そっ、それは……」

 

 普段の大川は冷静で弁が立つのだが、ころねのマネージャーから轟専務が「地上波テレビ進出計画」を引き継いだことを聞き、彼女の追求を上手く誤魔化す事が出来ず、悔しい表情を浮かべてた。

 

「大川よ、お前さんの負けじゃよ。もうすぐ警察も来る。素直に己の罪を告白するのだな」

 

「黙れっ!!」

 

(コイツさえ……コイツさえいなければ……)

 

 もはや言い逃れも出来ず、その上鉄平に苦言を呈されてしまい、大川は冷静な判断は出来ずにいた。どう見ても詰んでいる状態なのに観念すればいいものを、大川は完全に憎悪に支配されてしまい、スーツのポケットから拳銃を取り出す。

 

「お前さえ邪魔しなければ、全て上手くいっていたんだ! 死ねっ! 疫病神!!!」

 

 迷うこともなく銃口を鉄平に定めてセーフティを親指で外してトリガーを引こうとするが、クロヱが阻止しようと大川に狙いを定めて箒を投げた。

 

「うわっ!」

 

 箒は大川の右肩に当たり、大川はうめき声を上げて拳銃を落としてしまい、クロヱはトドメを刺そうと走って顔面を狙って飛び蹴りを喰らわせた。

 

「疫病神はテメェだろうがっ! くたばれっ!!」

 

「ぐはっ!」

 

 クロヱの蹴りは見事に顔面に直撃。大川は、勢い良く吹き飛んで後頭部を壁に叩きつけられて気絶してしまった。

 

 闇組織の構成員達を倒したが、それでもここは無法地帯であることには変わらず、パトカーも来る気配もないので鉄平は彼女達を安全な場所へ行くように促す。

 

「これで、全員を気絶させたな。君たちは、霞ヶ関総合病院へ向かってくれ。そこが避難場所になっておる」

 

「霞ヶ関総合病院って……。そこは資産家しか相手にしない病院なのよ」

 

「ワシの独断で昨日の夜、輪島重工の会長の邸宅に赴いて資金提供を要請したんじゃよ。会長はその要請を受け入れて、多額の資金を出すと確約してもらえた」

 

「わっ、わじま……。えっ……。ど、どういう……」

 

「すまんが、詳しい話は後にしてくれ。連中を倒したが通信が遮断している以上、ここが危険であることには変わらない。ワシはコイツらを拘束してから行くから、君たちは先に行ってくれ」

 

「拘束って言うが、紐なんか無いんだぞ! どうやって縛るんだ?」

 

「紐が無くとも拘束は出来るさ。そんなことより、早く行きなさい」

 

 言葉足らずの説明に納得する事が出来なかったが、雇い主である鉄平の指示に従おうと判断したラプラス達は、混乱している轟専務の腕を強引に引っ張り、病院に行くためにエレベーターに乗り込んだ。

 

 ラプラス達がエレベーターに乗り込んだことを確認した鉄平は、おもむろに時間を見るために腕時計を見たら午後五時を過ぎていた。

 

(まだ、パトカーが来ないとは……。まさか、東京都全体が通信を遮断しておるのか)

 

 林部長が人を遣わして近くの警察署に赴き、警官達をこの事務所に派遣すると思っていた。だが、いつまでも派遣されないことに不安を覚え、早く病院に行くために、獣人族を拘束しようとまずは近くに横たわる虎の獣人族に近づく。

 

 そして、右足の膝に狙いを定めて渾身の力で踏みつけた。すると、ぐしゃりと不快な音と共に激痛に耐えられず男が叫んだ。

 

「ぎゃああああああっ」

 

「よう、ようやく目が覚めたか」

 

 右足の膝を折られた男は、反射的に目の前にいる老人を殴ろうと体を起こすも激痛でバランスを崩してしまい、無様に倒れてしまった。

 

「お前ら獣人族は縄で縛っても強引に解くだろう。すまんが、動きを封じるために両足の膝を折らせてもらうぞ!」

 

「ふっ、ふざけんな! お、おい、みんな、起き……。ひぎゃああああああああああ」

 

 虎の獣人族の男はみんなを起こそうと叫ぶが、鉄平は躊躇無く左足の膝を折った。

 

 その叫びで他の獣人族は気付き、抵抗しようとするのだが、鉄平を止める事は出来なかった。ある者は泣き叫び、ある者は憎悪の言葉を吐くのだが、鉄平は攻撃の手を緩めず、獣人族の両足の膝を折るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん……」

 

 すいせいが目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。

 

(ここは、いったいどこなの?)

 

 ゆっくりと体を起こして辺りを見回すと、豪奢な調度品が置かれており、テーブルには様々なケーキが盛られたケーキスタンドと紅茶が入ったポッドが置かれていた。

 

 ここはどこか確かめるために、この部屋から出ようとしたが、部屋の外からドアをノックする音が聞こえた。

 

「すいせいさん。無事ですか?」

 

「えーちゃん!? うん、いまドアを開けるから!」

 

 予想外の人物の声を聞いたすいせいは慌ててドアを開けたら、そこには心配げな表情を浮かべたえーちゃんが立っていた。

 

「大丈夫でしたか? ケガはしていませんか?」

 

 えーちゃんはすいせいに駆け寄り、ケガをしていないかチェックし始めた。すいせいは恥ずかしつつも、真剣に心配してくれる彼女に照れながらも感謝を述べる。

 

「あっ、ありがとう、えーちゃん。ところで、ここはどこなの?」

 

「そうでした。今から説明するので、部屋に入ってもいいでしょうか?」

 

 そう言うと、すいせいは頷いて部屋に招き入れた。互いに椅子に座るとえーちゃんが口を開く。

 

「先にこの場所を言いますね。ここは、霞ヶ関総合病院です」

 

「びょ、病院!? 病院なの? ホテルじゃないの?」

 

「はい。如月さんの知り合いが経営している病院なんです」

 

「そう……」

 

 一流ホテル並みのスイートルームの病室なんかあるのかとすいせいは突っ込みたが、真剣な表情で説明するえーちゃんが嘘をついてるとは思えず、腑に落ちなかったが彼女は納得するしかなかった。とにかくここが安全地帯だと知った彼女は、同期のさくら みこと新人の風真 いろはを思い出し、どうなったのか聞こうとすると突然勢い良くドアが開かれた。

 

「すいちゃーん! 目が覚めたかにぇ〜?」

 

 部屋に入ってきたのはみこめっとの相方、さくら みこだった。いつものように能天気な顔を浮かべて、小腹が空いていたのかケーキスタンドに手を伸ばしケーキを口に運んだ。

 

「このケーキ、ほんのり甘くて美味しいにぇ〜♪」

 

「みこち!? アンタ無事だったの?」

 

「うん! 最初、目を覚ました時は混乱したけど、えーちゃんが説明してくれたから安心したにぇ」

 

 すいせいの質問に元気よく答えるみこの姿に安心した彼女は、今度はいろはのことを聞こうとしたら、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「すみません。よろしいでしょうか?」

 

「はい、いま開けますね」

 

 すいせいの代わりにえーちゃんが応対してドアを開けると、そこには姿勢を正した女性がスーツの懐から警察手帳を提示した。

 

「すみませんが、ここに星街さんとさくらさんはおられますか?」

 

「はい、ここにいますが……」

 

「お疲れのところ申し訳ありませんが、お二人にはお話を伺いたい事があるので、病院の会議室に来てもらえないでしょうか?」

 

「申し訳ありませんが、彼女達は疲れているので明日にしてもらえませんか?」

 

 いろはから事情を聞いたので、二人の心情を考えたえーちゃんは丁重に断るが、二人の会話を聞いていたすいせいが割って入ってきた。

 

「いいよ、えーちゃん。私は大丈夫だから」

 

「無理をしなくてもいいんですよ。日を改めて、お話しすれば良いんですから」

 

「別にやましいことをしてないし、それに明日は仕事があるから、さっさと面倒事は片付けたいんだけどね」

 

 あっけらかんと話すすいせいに、えーちゃんは眉をひそめて考え込んでいると、いまにも泣きそうな表情を浮かべるみこが口を開いた。

 

「そう言えば、会長は無事なのかにぇ……。もし、会長がケガをしていたら……」

 

「会長は人の形をしているけど、ドラゴンだから大丈夫よ! 心配しないの!」

 

 みこを励まそうとすいせいは話すが、それよりもココが怒りに任せて大暴れしたのかと危惧したが、女性刑事が笑み浮かべて口を開いた。

 

「会長って、桐生 ココさんの事ですよね? 桐生さんは無事で、この病院の会議室で待っていますよ」

 

「ほ、ほんと!? 会長、ここにいるのかにぇ!?」

 

「はい。彼女は、かすり傷も負っていないので安心して下さい。すみませんが、これ以上ここでお話しする事はできないので、会議室に来てもらえませんか」

 

「行く! 行くよ! 久しぶりに会長とお話したいし! ねっ、すいちゃん!」

 

「うん」

 

 ココの無事を聞いたみこは泣き顔から笑顔が戻り、すいせいもココもこの病院にいるのが分かり自然と表情は綻んだ。

 

 だが、この部屋ではなく会議室で話す必要があるのかすいせいは疑問が浮かぶのだが、女性刑事に質問しても答えないだろうと思い、ここは大人しく従いえーちゃんに「行ってくるね」とひとこと言ってこの部屋を出た。

 

「すっ、すいちゃん!? 待ってよ〜」

 

 すいせいに続き、みこもえーちゃんにお礼を言ってこの部屋を出て行き、彼女達の後を追うように会議室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?

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