再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました 作:DXフルーツパフェ
試しに書いた小説だったので、お気に入り数は一桁だろうなと思ってましたが33人になるとは予想してませんでした。
正直に言って大変嬉しく思っています。
あと、この小説では友人Aだとやりにくいので独自で本名を付けました。
如月 鉄平の朝は早い。
朝五時に起床して軽く準備運動をしてから、一時間のジョギングを開始する。そして、汗を流すために軽くシャワーを浴びてから朝食を食べて、出勤時間までタブレットでニュースを見るのが日課だ。この日課は、捜査第一課に配属された時から始まった。理由は、衰えた体で若手刑事を指導する事が出来ないためだ。
昔は新聞を読んでいたのだが、ネットで新しいニュースが更新するのを知ってしまってからは、新聞を止めてアパートの大家の許可を得てネット回線を引いたのだ。
「便利な世の中になったものだ」と思いつつ、タブレットで配信されてるニュースを見ていたら、時間は7時26分になっていた。
「もう、行かんとな」
そう呟くとタブレットを鞄に入れて、小さな仏壇が置いてある部屋に行き、亡き妻の遺影に手を合わせる。
「じゃあ、行ってくるよ」
そう言って鉄平はアパートを出て行き、新たなる職場ホロライブ事務所に向かうのだった。
ホロライブプロダクション。
最初のアイドル「ときの そら」から始まり、最初は小さな事務所からの始まりだった。今では、収録スタジオやレッスンルームなどの施設を有する五階建てのビルになり、大きく変貌を遂げていた。
そして、今年も無事に入社式が終わり、興奮しながらもしっかりした足取りで、説明会を行う部屋に向かう新入社員が歩いていた。
(やっと…………。やっと、この日が来たんだ!!)
心の中で喜びの声を上げるこの女性の名は、ネイビー色のスーツに身を包んだ春先 のどかだった。
この事務所で仕事をする時の服装は自由だが、今日は入社式なので無難なスーツを着ているのだ。
彼女は、演劇の道を諦め就活をしていたが、なかなか上手くいかず不安になっていた時に、偶然見たAZKiのライブを見て心が救われたことがきっかけで、ホロライブプロダクションに興味を持ったのだ。そして、ホロメンの配信を見ているうちに「この人達を支えたい」と思うようになり、この会社に就職したのだ。
そして、彼女は説明会が行われる部屋に着き、一呼吸置いて「失礼します!」と挨拶してからドアを開けると、部屋の奥にはラフな格好をしているメガネをかけた女性と、小柄で紺色のスーツを着た老紳士の二人が立っていた。彼女は、この老紳士が自分の上司だと判断してしまい、失礼のないように勢いよく頭を下げて挨拶をする。
「わ、わたし、は、春先 のどかと言います! ご、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますっ!!」
その挨拶に戸惑い困惑の表情を浮かべながらも、老紳士はのどかに対して丁寧に挨拶をした。
「ワシの名は如月 鉄平。中途採用枠で採用された、ただの年寄りだよ」
「へ!?」
その老紳士の如月さんの挨拶に、のどかは思わず間の抜けた声を出してしまった。
(えっ!? こ、この人は私の上司じゃないの!? じゃ、じゃあ、まさか…………)
まさかの展開に私は頭を抱えていたら、ラフな格好をした女性が咳払いをして自己紹介をする。
「初めまして。私の名は配信では友人Aと名乗っていますが本名は
わずかながら頬を引きつらせながら自己紹介する唯野さんに、知らなかったとはいえ上司を間違えるというミスを犯したのどかは、許しを乞おうと必死に謝る。
「も、申し訳ございませんでした! わっ、わたし、知らなくて…………」
「い、いいのよ、春先さん…………。それより、今日のスケジュールを説明するので席に座ってください」
唯野に促されてのどかは席に座るが、初日で上司を間違えるというミスを犯してしまったので表情は暗く俯くほかなかった。
(ど、どうしよう…………。唯野さん、絶対怒ってるよね…………)
いつまでも俯くことは出来なかったので、のどかは恐る恐る顔を上げるが、唯野は気にすることはなく淡々と今日の予定を話していた。
「それでは、今日のスケジュールですが、午前中は会社の施設を案内します。そして、食事休憩を挟んで午後からは仕事内容を説明しますがよろしいでしょうか?」
「はっ、はい! 分かりました!」
のどかは慌てて返事をして、如月さんもこれに頷いた。
そして、唯野は咳払いをして顔を赤らめながら口を開く。
「あとですね、私のことを『唯野』ではなく、『えーちゃん』と呼んでもらいたいんです」
想定していなかった言葉を言われて、のどかは返答に窮してしまいどう返答していいか分からなかった。これには隣で聞いてた如月さんも困り果ててしまい、唯野さんに質問をする。
「少し質問をしてよろしいかな」
「どうしましたか、如月さん?」
「どうして本名で呼んではダメなのかね?」
「じ、実はですね…………。長年、本名ではなく「えーちゃん」の名で活動していたので、本名で呼ばれてもなかなか反応しづらいんですよ…………」
のどかも最近ではあるが、ホロメンの配信を見ている。だけど、確かに唯野さんのことを『友人A』『えーちゃん』としか言ってないのだ。だが、上司である唯野さんが言っても、私は遠慮してしまい「えーちゃんさん」としか言えないだろう。
だが、問題は隣に座っている如月さんだ。高齢である彼が難色を示し、文句を言うのではないかと心配しながら見守るのだが、意外にも承諾したのだ。
「ならば仕方ない。あなたが言うのであればそう呼ぼう」
「「いっ、いいんですか!?」」
如月の返事に、私と唯野さんは思わず声を上げて驚いてしまった。そんな二人に構わず、如月さんは笑いながら答えたのだ。
「上司の指示なら従うしかあるまい。ワシは長年、縦社会で働いていたからのう」
「えぇっ! 如月さんって元は警視庁の刑事さんだったんですか!?」
説明会が終わり、次はスタジオなどの施設を説明するために三人は歩き出し、その道すがら鉄平はのどかに自分の自己紹介を始めたのだ。しかも、捜査第一課で働いていたと説明したら、さらに驚愕したのだ。
「ぜ、全然、想像出来ません。如月さんが刑事をなされたなんて…………」
「そうかい? まあ、小柄だからそう思われても仕方ないか…………」
のどかの
「如月さんにお聞きしたいんですけど、いつからパソコンを使われるようになったんですか?」
「そうだな…………。かれこれ、十年前に勉強し出したよ。若い連中から馬鹿にされないように、必死になって覚えたんだ」
「そのお歳でパソコンを覚えるのは大変だったんじゃないですか?」
「まあね…………。だが、覚えて損はしなかったよ。おかげでこの会社に就職できたから、ありがたいことだ…………」
そうしみじみ言っているうちに、二階にある収録スタジオに着いた。
この二階の収録スタジオは、大人数対応のスタジオの数は二つあり、その他にもダンスレッスン・ボイストレーニングの施設が有る。
予定表には開始時間と終了時間が書いてあり、それによると今の時間帯は収録は無いが、ボイストレーニングルームではゲーマーズ所属の大神 ミオと四期生の常闇 トワの二人が歌のレッスンを受けてる最中だ。
えーちゃんが「施設の説明をする前に、十五分間の休憩にします」と言うと、鉄平は足早にトイレのほうへ向かった。
「は、速いですね。もう、あんな遠くに…………」
「背筋もしっかり伸ばして歩いているし、本当に歳を取っているのかしら…………」
足早にトイレに向かう鉄平を見て、のどかとえーちゃんは目を見開いて
「あっ、そう言えば今日は入社式だっけか」
「ああ、オレたちも二年前は新入社員だったよな〜。今年も、美人な娘がいんのかな〜」
二階のトイレ近くの休憩場では、収録スタジオで働くスタッフが仕事をサボりタバコを吹かしていた。喫煙所を設けているのだが、一階に設置されているので行くのが面倒になり、自動販売機で買った缶コーヒーを飲み干し、その缶を灰皿がわりにしてここに居座っているのだ。
「そう言えばよ、入社式って言えば、あの大川マネージャーが反対していたジジイも入社するんだよなぁ?」
「ああ、しかもよ、あのえーちゃんの部下になるみたいなんだぜっ! クソがよっ!」
鉄平がえーちゃんの部下として働くことに二人は不満を持ち、吐き捨てるように言うには理由があった。
えーちゃんの元で働けばホロメンと知り合うことができて、彼女たちと番組や配信に共演もできる。その上、谷郷社長と知り合うこともでき、上手くいけば出世するかもしれないと二人は甘く考えているが、現実は甘くない。
確かにえーちゃんの部下になれば、ホロメンと会えるし共演もできる。だが、彼女たちの仕事や企業案件を全て目を通して仕事を振り分けないといけないのだ。その上、ライブを行うものなら、機材のチェックも欠かさず行い、多忙を極めていることを彼らは知らない。そして、谷郷社長と知り合うことができても、仕事で成果を上げない限り出世することは出来ないのだ。
しかし、そんな現実を知らない二人は止める者がいないので、ますます悪口がヒートアップする。
「ところで戌神さんは、いつになったら地上波のテレビで番組をするんだよっ! 楽しみにしてるのに…………」
「さあな、噂じゃあテレビに出演できるように有名な社長との接待中に逃げ出して、大川マネージャーに説教されたって聞くぜ」
彼らの話に出てきた戌神とは、ゲーマーズに所属している戌神 ころねである。
大川マネージャーは大手芸能事務所で培った人脈を活かし、戌神 ころねを地上波の女性タレントとして活動させようと目論んでいるのだが、なかなか上手くいかず、苛立ちを隠そうとせずに部下に当たり散らしているのだ。
茶髪の男は、タバコを吸い終えてまだまだ物足りないのか、二本目を取り出し火をつけて吸いながら口を開く。
「だいたい、ゲームをやって金になんかなるのかよっ! テレビに出演すれば大金が転がり込んでくるのに…………」
メガネをかけた小太りの男は、一本目のタバコに満足したのかスマホを弄りながら茶髪の男に同意する。
「全くだ! オレたちが給料が低いのも、金にならないゲーム配信なんかするからだっ! ゲーマーズなんか解散して、オレたちのために股を開いてでも、金になる仕事をするべきなんだよっ!」
仕事をサボっていることを棚に上げて、二人は好き勝手なことを喚き散らす。だから、トイレを終えた一人の老人が、休憩室に入ったことに気付こうとはしなかった。
「よくもまあ、この事務所で働くタレントに悪口を言えるものだな」
「えっ…」
「あっ…」
鉄平の存在に、二人はようやく気づき出した。
不快な表情を隠そうとはせず、自動販売機で緑茶のペットボトルを買う鉄平の姿に二人はたじろいでいた。
(な、なんでジジイがここに……。や、ヤベェ、早く誤魔化さないと…)
茶髪の男は心の中で言い訳を考えるが良い案が浮かばず、鉄平に威圧されてなかなか思うように言葉が出せなかった。そして、小太りの男も同様に言葉が発せず、顔から脂汗が噴き出すほどだ。
そして、自動販売機でペットボトルの緑茶を買って取り出すと、二人の顔を見ようとはせず厳しい口調で叱り飛ばす。
「弁明なんて聞きとうないわっ! どうせ、お前たちのような輩は会社をクビにされるのだからなっ!」
二人は言い返すことが出来ずに睨みつけるが、鉄平は構うことなく口を開く。
「大神さんは狼の獣人族じゃ。ワシたち人間族よりも聴覚が発達している。今頃、お前たちの侮辱の言葉に烈火の如く怒っているだろうよ」
「ふざけんじゃねぇぞっ、クソジジィ!」
鉄平にようやく悪態をついたのは茶髪の男だった。
「大神さんはなぁ、今頃はボイストレーニング中なんだ! あそこは防音室になっているから、オレたちの言っていることは聞こえてねぇんだよ!」
「そ、そうだった。残念だったな、クソジジィ!!」
小太りの男も茶髪の言葉を聞いて安心したのか胸を撫で下ろして鉄平に悪態をつくが、当の本人は物怖じせずに口を開く。
「じゃあ、お前たちは大神さんのボイストレーニングの終了時間は覚えておるのか?」
「そんなの知るかよ!」
「終了時間ってそんなの…。あっ…………」
茶髪の男は知らなかったようだが、小太りの男は思い出したのか顔色が青ざめていた。
「だったらワシが教えてやろう。終了時間は10時20分。今の時間は10時37分。今頃、部屋も出ているだろうよ!」
鉄平の言葉に茶髪の男はようやく事態を把握してしまい、小太りの男よりも顔色が青ざめて今にも倒れそうだ。
「お前たちはもう大人じゃ! さっさとケジメをつけなければ、碌な結果にならんぞ!」
最後は諭すように叱り、鉄平は休憩室を後にした。
鉄平が去った後、二人の男たちの怒号が飛んでいたが、気にすることはなく二人が待っている場所へ向かった。
鉄平がトイレから帰って来た時、えーちゃんとのどかの二人は、黒髪でケモ耳をした少女とツインテールをした紫髪の少女と楽しく会話をしていた。
「やあ、遅くなってすまんかった」
「別に遅れていませんよ、如月さん。それより、この方達の自己紹介をしますね。こちらの方はゲーマーズ所属の大神 ミオさんです。隣の方は四期生の常闇 トワさんです」
えーちゃんが二人の自己紹介をすると、二人は鉄平に対して軽く会釈をする。
「そうか。ならば、ワシも自己紹介をしよう。ワシの名は如月 鉄平という者だ。よろしく頼むよ」
穏やかな表情で挨拶をして深々と頭を下げる鉄平の姿を見て、トワはその姿に面食らい目を見開いていた。鉄平の素性を聞いた時、警視庁の刑事だから横柄で威張っていると思っていたからだ。
だが、ミオは慈愛の目で鉄平を見つめて、感謝の言葉を述べる。
「如月さん、ありがとうございました」
「別にいいよ、社員として当然のことをしたまでだ。あとは大神さんの好きなようにするといい」
二人の会話についていけない三人だが、気にすることなくえーちゃんに声をかける。
「えーちゃん、そろそろここの階の施設を案内してもらおうか」
「えっ…………、あの何かトラブルでもあったんですか? よければ、私が対処しますが…………」
何かを察したのか、心配そうな表情でえーちゃんはミオに申し出る。そして、ミオもその申し出に迷うことなく決断をする。
「分かりました。後でメールで伝えます」
言葉短めだが、自分が所属するゲーマーズを侮辱した男達を許すことが出来ず、怒りが込み上げてしまいトゲトゲしい雰囲気を醸し出していた。
「ね、ねぇ、ミオちゃん、何かあったの? 相談に乗るからさ」
「いや、ははは…………」
トワに無用な心配させたくなかったのか、ミオは笑って誤魔化した。彼女は、これ以上追求してもミオは話さないだろうと思い、今度は鉄平に聞こうと追求する。だが、帰ってきた答えは「いやあ、ワシは知らぬ。知らぬよ」と、とぼけて答えた。
これはゲーマーズの問題であり、トワのような少女に汚い言葉を聞かせたくない鉄平の配慮だった。
だが、トワがしつこく聞いてくるのでミオは根負けしてしまい、掻い摘んで話すと鉄平以上に激怒した。
そして翌日、茶髪と小太りの二人の男は懲戒解雇を言い渡され、二度とこの会社で働くことはなかったという。
オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?
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はい。お願いします。
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それよりも、小説を優先して投稿してくれ