再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました 作:DXフルーツパフェ
新入社員である神威を事務所の施設を案内を終えた岩田は、休憩をしようと事務所の一階に一般客でも利用できる喫茶店に入った。
本来なら昼時なので二人で社員食堂で食事を食べるつもりだったが、先ほどの神威の態度が気になり問いただす。
「お前、どう言うつもりだ?」
「はい? どう言うつもりとは……」
神威は質問の意味が分からず聞き返すと、岩田がイラつきながら口を開く。
「惚けるつもりか? 彼女達を卑猥な目で見ていたことだ!」
「ひっ、卑猥な目だなんて……。そんな目で見ていませんよ!」
「嘘をつくな! 男のオレでも分かったんだぞ!」
「いっ、言い掛かりです! しょっ、証拠はあるんですか?」
神威は反論するも明らかに動揺していたのを見た岩田は、ため息を吐いて答える。
「獅白さんと雪花さんの二人はお前を警戒しているぞ。どうして雪花さんの表情が真っ赤になったのはわかるか?」
「そっ、それは、僕に見惚れていたからですよ」
神威の言い訳を聞いた岩田は渋面なり、思わずため息をついて怒気を孕んだ声を発する。
「彼女の表情が真っ赤になったのは、お前が胸を凝視していたからだよっ! 気付かなかったのか?」
厳しい口調で問い詰めると、思い当たる節があったのか神威は反論出来ずにいた。注文したコーヒーが岩田の元へ届くと、一口飲みながら自分の容姿に自信を持っている神威を注意する。
「それになぁ、スタッフのお前を見て見惚れるわけないだろう……」
確かに神威は学歴や容姿も良く、一般女性ならモテるだろう。だが、彼女達はアイドルをメインに活動しているネット配信者だ。その気になれば自分達同レベルのネット配信者や企業案件で知り合った社長など異性として付き合う対象はよりどりみどりだ。間違っても安月給で働くスタッフを彼女達は異性の対象として見ないだろうと説明するも、神威は納得しておらず口を尖らせる始末だ。
(高学歴だから即戦力として期待していたんだが、ここまで酷いとはな……。先が思いやられるな……)
神威に失望した岩田が心の中でそう呟き、これからのスケジュールを伝える。
「社員食堂で食事を食べたら、マネージャー室に戻ってお前の仕事内容を伝える。そして、最後に社長相談役に挨拶して一日は終了だ」
一方、もう一人の新人柏木 蓮は教育係兼6期生のマネージャーの渋沢とホロックスの沙花叉 クロヱ共に、社長相談役のいる部屋に向かっていた。
最初はホロックスのメンバーがいる楽屋に行き、お互い自己紹介をしていたのだが、途中で渋沢のスマホから鉄平から連絡が入り、クロヱを自分の部屋を連れてくるように指示が出されたのだ。そして、ついでに社長相談役に柏木を紹介しようとクロヱと一緒に部屋に向かっている。
「私を呼び出すだなんて、何かあったのかな……。渋沢さん、如月さんは何か言わなかったの?」
「そう言えば、沙花叉さんに会わせたい人がいると相談役は言われていました」
そう言われて、クロヱは全く心当たりがないので誰が会いに来たのかを思案していると、新人の柏木が戸惑いながらも口を開く。
「あっ、あの、僕も一緒に行ってもよろしいんでしょうか?」
「今日は柏木君を社長相談役に挨拶する予定があったので、ついでに済ませようと連れて来たんですよ」
「そうですか……」
なぜ、社長相談役という重役に会わなければならないのか理由が分からず、思わずため息を吐いたらクロヱが微笑みながら口を開く。
「緊張しなくても大丈夫だよ、新人君。如月さんは気さくな人だから」
「ええ。沙花叉さんの言うとおり、優しい人ですから安心して下さい」
そう会話をしていたら、いつの間にか部屋にたどり着き、渋沢はドアをノックする。
「相談役、渋沢です。沙花叉さんと新人の柏木君を連れて来ました」
「お入りなさい」
そう優しい口調で語りかける老人の声で部屋に入るように促されると、ドアを開いて三人は部屋に入る。そこにはオフィスチェアに座る老人と、白髪でメガネをかけた中年の男性が応接ソファに座っていた。
「おおっ、待っていたよ沙花叉さん。それと……」
そう言うと鉄平は立ち上がり柏木の元へと歩いてゆく。
「ワシは社長相談役の如月 鉄平。今日からよろしくな、柏木君」
鉄平は頭を下げて挨拶すると、柏木は慌てて自己紹介を始める。
「はっ、初めまして。柏木 蓮といいます。よろしくお願いします」
「ところで、如月さん。私を呼んだ理由は……」
「うん。こちらの方は警視庁刑事部長の林さん。私の昔の上司でな、沙花叉さんに会いたいと言ってきたんじゃよ」
そう言うと林は立ち上がり、クロヱに警察手帳を見せて挨拶をする。
「君が沙花叉 クロヱさんだね? 私は刑事部長の林というものだが、君に用事があってね……」
「はっ、はあ……」
想定外の出来事にクロヱは思わず動揺してしまう。心当たりがあるとすればホロライブ襲撃事件で8人の獣人族を気絶させて、大川の顔面に飛び蹴りをしたことだ。警視庁はこの行動が過剰防衛と見られてしまい、事情聴取をされてしまうのかと警戒するクロヱだが、それを察した林が彼女に声をかける。
「私が来たのは君が捕まえた連中に懸賞金がかけられてて、君の銀行口座にお金を振り込むための書類を渡しに来たんだよ」
「えっ!? 本当ですか?」
「本当だとも。君が捕まえた八人に50万円の懸賞金がかけられて、君は400万円を受け取ることができるよ」
最初は半信半疑のクロヱだったが、林から銀行口座の振り込み用紙を受け取り、懸賞金の額を聞いて思わぬ臨時収入に自然と顔がほころんでいた。
二人の会話を見ていた蓮は、この程度の用事なら部下に任せたらいいのに、どうして刑事部長自らここまで足を運ぶ必要があるのかと疑問に感じていたら、鉄平が林に話しかける。
「林さん、用件はそれだけではあるまい。もう一つ、あるんじゃないのかね?」
そう言うと、林は難しい表情で口を開く。
「うん……。実は、私が懇意にしている和菓子屋の松屋の社長から店の商品をホロライブで宣伝して欲しいと頼まれてここまで来たんだ」
林によると松屋はホロライブに企業案件として依頼したのだが、これ以上タレントに負担がかかる仕事を増やしたくなかったので断ってしまったのだ。どうしてもホロライブに企業案件を引き受けてほしい社長は、ホロライブの社長相談役である鉄平が林の知り合いだと知ると土下座をする勢いで頼み込んだのだ。最初は丁重に断ろうとした林だったが、少子化の影響なのか和菓子の売れ行きが下がり始めてしまい、危機感を持った社長の話を聞いた林は断ることが出来ずに鉄平に相談をしにきたのだ。
「そうか……。だが、老舗の松屋がネットで宣伝するとは時代は変わったのう……」
そう呟きながら、鉄平はどうしようかと思案すると勢い良くドアが開かれた。
「おーい、じいちゃん! お菓子を食べに来たぞー♪」
声の主はホロックスの総帥ラプラス・ダークネスだった。
彼女の姿を見た鉄平は自然と笑顔になりお菓子の用意をするのだが、ネット配信を見たことがない林は立派なツノを生やした幼女に狼狽しながら鉄平に尋ねる。
「きっ、如月さん……。かっ、彼女はいったい……」
「彼女の名はラプラス・ダークネスさん。ホロライブに所属しているタレントじゃよ」
「そっ、そうなのか……」
林は珍しいのかラプラスのツノをまじまじと見ていたが、ラプラスはそんな林を不快に思ったのかムッとした表情で鉄平に尋ねる。
「おいっ、じーちゃんっ! コイツ、いったい何者なんだ!」
「オイっ! 落ち着けって、ラプラス。この人は……」
クロヱが慌ててラプラスに駆け寄り耳打ちすると、ラプラスは声を上げて驚く。
「えっ!? この人が……。はっ、初めまして、林さん。吾輩のお名前はラプラス・ダークネスと申します」
自己紹介をしつつ高級羊羹をもらったお礼を林にすると、首を傾げながらも返答する。
「あっ、ああ。丁寧な挨拶ありがとう。こちらこそ、ツノを見て悪かった……。珍しくて、つい……」
「いえっ、いいんです。こちらこそ声を荒げてすみませんでした」
互いに非礼を謝罪する二人姿を見ていた鉄平は、このまま放置すれば不毛な謝罪合戦になると察してどうしたものかと思案していると、蓮が手を上げて発言を求めてきた。
「どうしたかね、柏木君?」
「あの……。松屋の宣伝をラプラスさんに起用することは出来ないでしょうか?」
蓮の申し出に鉄平は沢山いるタレントの中で、どうしてラプラスを選んだのか興味を示し、目を細めて彼に質問する。
「どうして君はラプラスさんを選んだんだい?」
「彼女の雑談で松屋のことを聞いたことがあるんです。ちょっと失礼します……」
蓮がそう言うと、林に謝罪しているラプラスに近づき話しかける。
「ラプラスさん、ちょっといいですか?」
「なっ、なんだ柏木! こっちは今忙しいんだっ!」
「京都にある和菓子屋の松屋の主力商品は何ですか?」
唐突な蓮の質問にも関わらず、ラプラスは目を見開き熱弁を振るいながら答える。
「そんなの決まっているっ! 栗蒸し羊羹だ!! だが、それだけではないっ! 今の暑い季節におすすめの水羊羹や江戸時代の製法で作られている酒煎餅が主力商品だっ!」
ラプラスのオタク特有の早口にクロヱは呆れていたが、林は驚愕し興奮した様子で彼女に話しかける。
「君は松屋のことを知っているのかい?」
「知っているのも何も、吾輩は和菓子が大好きなんだっ! ネット通販で大抵の和菓子は買えるんだが、松屋の和菓子だけはなかなか買えなくて困っているんだ……」
「そのことなんだが、ネット通販で栗蒸し羊羹が買えるように大量生産は可能になったんだ。そのことをこの事務所のタレントに宣伝してもらおうと、松屋の名代で私が来たんだ」
そして、林は熟考した末に鉄平の方へ振り向き、まじめな表情で頼み込む。
「如月さん。松屋の宣伝はラプラスさんに頼みたいんだが……」
「もちろん可能だが、それは松屋の総意と考えていいのかね?」
「ああ……。松屋のことを知っている彼女に任せるように社長に説得してみるよ」
二人の会話を聞いていたラプラスは事情が分からず呆然とするものの、6期生のマネージャー渋沢が声をかける。
「やりましたね、ラプラスさん。6期生初の企業案件ですよ」
「えっ!?」
「林さんは松屋の宣伝を頼みに事務所に来たんですよ。そして、柏木君の進言が決め手となり、ラプラスさんに決まったんです」
そう言うと、ラプラスは蓮の方に駆け寄り手を握って感謝の意を述べる。
「あっ、ありがとうな、柏木っ! お前のおかげで松屋の企業案件を貰えた」
企業案件は配信者にとっては貴重な収入源の一つだ。
そのことを知っているラプラスは何度も蓮に頭を下げるが、蓮はまさか自分の意見がきっかけで決まるとは思わずただ呆然としていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「岩田です。相談役、入ってもよろしいでしょうか?」
鉄平は部屋に入るように促すと、神威の教育係兼5期生のマネージャー岩田と新入社員の神威だ。
「相談役、新入社員の神村を連れてきました」
「君が神村君だね。私は、社長相談役の如月 鉄平だ。よろしく頼むよ」
鉄平は蓮と同様に頭を下げて挨拶をすると、神威は真面目な表情で自己紹介をする。
「神村 神威です! よろしく、お願いします!」
自己紹介を済ませると、鉄平同様に神威は頭を下げた。
(社長相談役は経営陣に対して助言が出来る偉い立場の人間じゃないかっ! ここで好感度を上げたら、ホロメンを紹介される確率がぐーんと上がるぞっ!!)
あれだけ岩田に説教をされても懲りなかった神威は、鉄平の機嫌を損なわないように自己紹介をしたのだ。
そして、クロヱとラプラスには爽やかな笑みを浮かべて自己紹介をする。
「初めまして、クロヱさん、ダークネスさん。神村 神威といいます。よろしくお願いします」
今度は彼女達の胸を見ることなく挨拶が出来て、内心喜んだが彼女達の反応は今ひとつだった。
クロヱの場合は、神威の笑みは胡散臭さを感じてしまい、彼に声をかけることなく頭を下げることしかしなかった。
ラプラスに至っては「よろしくな」の一言で終わり、一瞥することなく林や蓮に何度も頭を下げていた。
神威は丁寧な挨拶をしたのにどうして自分をぞんざいに扱うのかと内心不満だったが、そんなことを知らない岩田は見知らぬ中年に何度も頭を下げるラプラスを疑問に思い、鉄平に質問する。
「相談役、こちらの方は……」
「ああ。こちらは警視庁刑事部長の林さん。ワシの元上司で、今日は京都の和菓子屋の松屋の宣伝を頼みにきたんじゃよ」
「そっ、そうですか。私はホロライブプロダクション5期生のマネージャーを務めている岩田といいます」
どうして刑事部長が京都の有名和菓子店である松屋の宣伝を頼みにきたのか理解出来ずにいたが、それでもこの案件を引き受けようと名刺を渡そうとするのだが渋沢が口を挟む。
「悪いけど、岩田さん。この案件はラプラスさんが引き受けたよ」
「そうだったのか……。一足遅かったな……」
「この案件は新人の柏木君が相談役に進言したおかげで、ラプラスさんが引き受けることが決まりました」
「なんだとっ!?」
新人である蓮の言葉がラプラスの企業案件が決定したことになり、岩田は驚くも蓮は困った表情で口を開く。
「俺はたまたまラプラスさんの雑談を聞いただけで……」
「謙遜しなくても良いですよ、柏木君。新人でありながら相談役に進言出来るのは、勇気がいることなんですよ」
にこやかに話す渋沢に蓮はどういう反応をすればいいのか分からず、ただ苦笑いをするしかなかった。
だが、たった一人だけ蓮の活躍を認めようとはせず、彼を憎悪の目で睨みつける人物がいた。
(お前は引き立て役なのに、なんで俺を差し置いて活躍してるんだっ! くそがっ!! 調子に乗るなよ、腐れ凡人がっ!!!)
その人物は蓮と同じく転生者の神村 神威だった。
(まあ、いいさ。俺は転生者だ! いつかはご都合主義が発動して、オレが活躍してホロメン全員は自分のモノになるんだ! せいぜい今のうちにはしゃいでおくんだなっ!!!)
不敵な笑みを浮かべながら、どうやってホロメン達と関係を持とうかと考える神威だった。
オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?
-
はい。お願いします。
-
いいえ。結構です。
-
それよりも、小説を優先して投稿してくれ