再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました   作:DXフルーツパフェ

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明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

只野 のぶお様・Akila?様、評価していただきありがとうございます。





第3話 鉄平、不穏なれど賑やかな日常を送る

 

 

 

 入社式を終えて、もう一週間過ぎようとしていた。

 

 えーちゃんも初めての部下を持ち、そのうちの一人が自分よりはるかに年老いた人物な上に、元が付くが警視庁捜査第一課の刑事という肩書きを持つ人物だったので、最初は素直に自分の指示に従うのか心配したがそれは杞憂だった。

 

 鉄平は、本名の唯野(ただの)ではなく配信するときの名前である「えーちゃん」と呼ぶようになった。ちなみにのどかは遠慮してしまい、唯野のことを「えーちゃんさん」と呼んでいる。

 

 鉄平は主にパソコンを使う事務仕事を中心に行っており、分からないことがあれば素直にえーちゃんに聞いてメモを取って仕事を順調にこなしている。そのおかげで仕事は滞ることはなく、のどかと鉄平の二人のおかげで残業は深夜までかかることはなくなった。

 

 そして、えーちゃんとのどかが驚いたことがある。それは、鉄平が三人分のお菓子を持参してくるのだ。最初は二人に気遣っているのではと思われたのだが、鉄平曰く

 

「疲れた体を癒すには、甘いものを食べた方が一番良い。若い頃は見向きもしなかったが、歳を取ると疲れたら自然と甘いお菓子に手を伸ばしたよ。遠慮せずに、食べなさい」

 

 と、照れながら話した。

 

 鉄平が持参するおやつは主に洋菓子が中心であり、最初は遠慮がちに二人は食べていた。だが、今ではのどかは美味しいお菓子があるからか仕事を積極的にこなし、三時になると三人分のコーヒーを淹れる。そして、えーちゃんもどんなに忙しくても三時になると手を休めて、嬉しそうにお菓子を口にしていた。

 

 その結果、鉄平が働く部署は良い雰囲気になりコミュニケーションがきちんと取れて、お互いの信頼関係がしっかりと築きつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は昼十二時が過ぎ、社員食堂はスタッフで混雑していた。食堂はカフェテリア方式を採用していて、数十種類の主食・主菜・汁物などの中から好きなものが食べられるようになっていた。

 

 えーちゃんもこの食堂を利用しており、サンドイッチと葉物野菜がメインのシーザーサラダを四角いトレーに載せて、席に座って食べていた。

 

 そこに一人の若い男性が声をかける。

 

「唯野さん、お久しぶりです!」

 

「…………」

 

「唯野さん!!」

 

「えっ、ああ、大川さん。すみません、本名では呼び慣れてないもので……」

 

「ああ、いえっ、いいですよ。少しお話ししたいことがありましたので……」

 

 と、えーちゃんの了承も得ずに笑顔で真正面に座ってきた。

 

 彼の名は大川 清。

 

 今年で三十歳になるが、容姿端麗で清潔感がある男性だ。有名女性アイドルが多数在籍している大手芸能事務所のマネージャーをしていたが、轟専務のスカウトでホロライブプロダクションに移籍してきたのだ。

 

 えーちゃんは、この男が苦手だ。

 

 理由は、人の了承を得ずに勝手に決めたり、自己中心で頭ごなしに決めつけたり、機嫌が悪いと部下に当たり散らしたりと、色々聞いているのであまり良い印象を持って無い。

 

 だが、マネージャーとしての能力が高く、経済界やテレビ業界にパイプを持っているので、重役や若手スタッフからは一目置かれているのだ。

 

 ちなみに、清川に初めて出会い自己紹介をした時に本名ではなく配信名の「えーちゃん」と呼んでほしいと言ったのだが、彼はすっかり忘れてしまい本名の『唯野』呼びになっている。

 

「ところで、如月さんはどうですか? ご高齢だからなにかと扱いづらいでしょう?」

 

「いえいえ、そんなことないですよ。素直に言うこと聞いてくれて、こっちは大助かりですよ」

 

「本当に? 唯野さんは貧乏くじを引いてしまった残念な人だって、みんなはあなたに同情してますよ。まぁ、如月さんとトラブルになったら私に相談してください! 力になりますから!」

 

 爽やかな笑顔で話す大川だが、えーちゃんはポーカーフェイスで淡々と話すが心の中では辟易していた。

 

 大川は鉄平のことを気難しく扱いづらい老人と勝手に決めつけているが、実際は柔軟な思考の持ち主で、ホロメンに自分のことを自己紹介する時も深々と頭を下げるのだ。四期生の常闇 トワは配信でこのことを言及しており、鉄平のことを「最初は気難しい人だと思っていたけど、会ってみたら親しみが持てる優しいおじいちゃん」とリスナーに紹介しているのだ。

 

 そんな話をしていると、大川はメールが来たのかスマホを取り出してチェックすると眉を顰めた。

 

「すみません、唯野さん。専務に呼び出されたので……」

 

「どうぞ、私のことは気にせずに…………」

 

 えーちゃんのそっけない言葉にも大川は笑顔で返して、その場を後にした。

 

 遠ざかる大川を見て、やっとゆっくりできると思い深いため息を吐いた。

 

「どうした、えーちゃん。大きなため息をすると幸せが逃げていくよ」

 

 声の主の方向へ振り返ると、そこには緑茶のペットボトルを持って立っていた鉄平の姿があった。

 

「隣に座ってもいいかい?」

 

「あっ、いいですよ」

 

 鉄平はえーちゃんの了承を得て「失礼するよ」と言葉を交わして、おもむろに座った。

 

「ところで、あの人は誰だね? 随分とワシのことを嫌っているようだが…………」

 

「聞こえていたんですね…………。彼の名前は大川 清マネージャーです。人の話を信じようとはしないので、私も困っているんですよ…………」

 

 大川と聞いて鉄平は入社式の日に休憩室でタバコを吹かしながらしゃべっていた男達の会話で、戌神 ころねが社長の接待中に逃げ出して、大川に説教されたと聞いたのを思い出した。少し気になって鉄平もころねのことを調べてみたが、配信も一ヶ月も休みダンスレッスンの予定も取り消されていたので、心配になりえーちゃんに聞こうと話し出す。

 

「ところで、戌神さんは元気なのかね? 配信も休んでいるようだし……」

 

「私もころねさんが心配で、担当のマネージャーに聞いたんですが「大川さんを通してください」の一点張りで話にならないんですよ……」

 

 えーちゃんも大神 ミオのメールを読んで、ころねの現状を知ってしまい心配になってメールを送ったが、返事は返ってこなかったのだ。これ以上の詮索は、大川の後ろ盾になっている轟専務に知られると睨まれることになるので、打つ手がないのが現状だ。

 

 谷郷社長が日本にいれば相談できるが、現在はヨーロッパに出張中なのでどうすることもできなかった。

 

「せめて戌神さんが、こちらに連絡すれば安心するんだが……」

 

「ころねさんにメールを送ったので、あとは返事を待つしかありませんね」

 

 二人は安否が気になるが、これ以上考えても名案も浮かぶこともなく時間は空しく過ぎるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えーちゃんと鉄平が社員食堂でころねの身を案じていた頃、のどかはホロライブ事務所の一階に一般客でも利用できる喫茶店で昼食を食べていた。

 

 実は、昨日の昼休みに社員食堂を利用していたら大川に話しかけられたのだ。そして、のどかの了承を得ずに真正面に向かい笑顔を浮かべて、鉄平が気難しい老人で迷惑をかけているんじゃないのかと聞いてきたのだ。鉄平は迷惑をかけておらず、誤解を解こうと必死に説明するのだが、全く聞く耳も持たずそれどころかこう言うのだ。

 

「春先さんは優しいなぁ。それとも、如月さんは元刑事という立場を利用して君を脅しているのかな?」

 

 と、悪びれることなく笑顔で言うので、会話が成立しない大川に恐怖を覚えてしまい、食事を半分以上残して顔を青ざめながら逃げ出したのだ。

 

 それ以来、社員食堂を利用するのは苦手になってしまい、この喫茶店で昼食を食べているのだ。

 

 昼食を食べ終わったのどかは大川との接触を避けるために、足早に部署に戻り扉を開けようとしたら部屋の中から咀嚼(そしゃく)音が聞こえてくるのだ。

 

 のどかが恐る恐るドアを静かに開けて、足跡を立てずに部屋に入ったら、頭に二本の立派なツノを持つ幼女が24センチもある大きな羊羹(ようかん)を両手に取ってムシャムシャと音を立てて食べていたのだ。

 

「らっ、ラプラスさん!? 何をやっているんですか!」

 

「うわー!? びっくりした!」

 

 羊羹を食べてた幼女の名はラプラス・ダークネス。

 

 秘密結社holoX(ホロックス)の総帥で、去年の11月にホロライブのアイドルとしてデビューを果たし、順調にファンを獲得している。

 

 そのアイドルがどうしてこの部屋に忍び込んでまで羊羹を食べたのか、理由を聞くとラプラスは悪びれることもなくその問いに答えた。

 

「いやあ、今日は吾輩(わがはい)を含むホロックス全員で収録日だったのだ。だけど、お腹が空いていたから食べ物を漁ろうとこの部屋の冷蔵庫を見たら、大好物の羊羹が置いてあったから食べたのだ!」

 

「その羊羹、如月さんが私達のために用意していた今日のおやつだったのに……」

 

 普段は洋菓子なのだが、今日は珍しく和菓子である芋羊羹を持って来たのだ。だが、盗み食いしたラプラスは無邪気に口を開く。

 

「そうだったのか? すまなかったな」

 

 ラプラスは素気なく謝るのだが、羊羹を食べる姿が可愛く見えてしまい、のどかは苦笑いを浮かべる。

 

 だが、問題はこの羊羹は鉄平が自分達のために用意したおやつだ。それを黙ってラプラスが食べたことを知ったら、温和な鉄平でも流石に彼女を叱ると思い、のどかは心配しているとドアが開く音が聞こえた。

 

「いま、帰ったよ」

 

 声の主は難しい表情をした鉄平だった。続けて、えーちゃんも部屋に入るが鉄平と同じくらいの表情をしていた。

 

「お帰りなさい……。あ、あのですね、実は…………」

 

 のどかが説明する前に、鉄平は両手で羊羹を持って夢中に食べているラプラスの姿を見ると難しい表情から一変して笑顔になった。

 

「おう、あなたがラプラスさんだね? この芋羊羹は美味いかい?」

 

 ここでようやくラプラスは鉄平に気付き、最初は怒られるのかと焦ったが、相手は笑顔で接しているので安心して素直に頷いた。

 

「そうか、そうか。喜んで貰えばありがたいよ。だが、両手で羊羹を食べれば手がベタベタするだろうから、あとで濡れタオルを用意するよ」

 

「おお、気が()くじゃないか♪ じーちゃん、ありがとなー♪」

 

 その様子を見ていたのどかとえーちゃんは、鉄平はラプラスを叱るだろうと思っていたが、予想外の行動に呆気に取られていた。

 

 だが、そんな二人をよそに鉄平は自分が愛用している鞄から小さな箱を取り出した。

 

「二人とも、安心しなさい。ワシたちが食べる羊羹はこの鞄に入れていたんだよ」

 

 実は、鉄平は収録スタジオの予定表を常にチェックしており、ラプラスの名前があったのを覚えていた。彼女は配信で「和菓子が好き」と公言していたのを鉄平は知っていたため、念の為にラプラスに食べられてもいいように冷蔵庫には近所で買った安い羊羹を置き、自分たちが食べる羊羹は鞄に隠していたのだ。

 

「こ、これって京都の有名和菓子店の「松屋」の栗蒸し羊羹じゃないんですか?」

 

「私も聞いたことがあるわ。人気がありすぎてネット予約もできないって聞いたんだけど……」

 

 のどかとえーちゃんは驚きの声を上げて、その表情を見て鉄平も満足げに微笑む。

 

「二人が喜んでくれて何よりだ。実はワシの知り合いから貰ったんだよ。小さいが三人分あるから、三時に食べよう」

 

 珍しい羊羹が食べられると知って二人は喜ぶが、一人の幼女が不満顔になり文句を言い出した。

 

「ずっ、ずるいぞ、じーちゃん! 吾輩も、食べ……うっぷ…………」

 

 ラプラスは、今度は珍しい羊羹を食べようと鉄平に抗議するが、大きな羊羹を食べ切ったので胸焼けを起こし気持ち悪くなり口元を手で押さえた。

 

 鉄平は心配そうな表情を浮かべて、ラプラスの背中をさする。

 

「ラプラスさん、お前さんは大きな芋羊羹を食べ切ったんだからもう諦めなさい」

 

「そっ、そんなぁ…………。吾輩も食べたい…………」

 

 珍しい羊羹を食べたいとラプラスは目を潤ませて頼み込むが、鉄平は彼女の体を気遣い諦めさせようと説得をする。

 

「これ以上、甘いものを食べたら吐いちまうよ。この栗蒸し羊羹はワシたちが責任を持って全部食べるから…………」

 

 そう言った途端、ラプラスは不機嫌な表情になり鉄平をキッと睨みつけた。

 

「もういい! こうなったら幹部に美味しい羊羹を作ってもらって、貴様たちの目の前で食べてやるぅ!!」

 

 最後は捨て台詞を残し、悔し涙を流しながら「かんぶぅぅぅぅぅ────」と泣き叫んでラプラスは走り去ってしまった。

 

「あーあ、あんなに走っちまったら絶対に吐くぞ。大丈夫かね?」

 

「た、多分ですけど大丈夫だと思いますよ。ルイさんがいれば介抱しますから。さあ、そろそろ仕事をしましょうか」

 

 部屋を飛び出したラプラスを心配する鉄平をよそに、えーちゃんは二人に仕事をするように促すと二人は席に座りそれぞれの仕事を始めた。

 

オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?

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