再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました   作:DXフルーツパフェ

4 / 29


仕事が始まってしまったので、申し訳ございませんが投稿が遅くなります。

としたん様、夜桜 月様、評価していただきありがとうございます。




第4話 鉄平、ころねの窮地を知る

 

 

 

 鉄平たちがラプラスと騒いでいた頃、大川は轟専務の呼び出しを受けて四階の会議室に来ていた。大川は緊張した面持ちで扉をノックをすると、「入りなさい」と女性の声が返って来たので部屋に入った。 

 

 そこには一人の女性が座っていた。

 

 凛とした美しい女性だが、この部屋に入ってきた大川を不機嫌な顔で威圧するように睨みつけていた。

 

「お呼びでしょうか、轟専務」

 

 この女性こそ(とどろき) (かえで)。年齢は三十二歳。ホロライブプロダクションを立ち上げた時の初期メンバーで、アイドル事業の強化目的のために尽力し、50億円の資金調達を成功させた功績により若くして専務へと出世した女性だ。

 

 その女性に睨まれた大川は平静を装っているが、内心は畏怖していた。

 

「あなた、随分と暇なようね」

 

「はぁっ!?」

 

 予想外の言葉に、大川は思わず間の抜けた言葉を発するが、轟は構うことなく彼に厳しい視線を向けて問いただす。

 

「如月さんを誹謗中傷していると苦情が来てるのよ。何を考えているの?」

 

「誹謗中傷って、オーバーな………。私は事実を言っただけです」

 

「事実ね…………。彼は滞りなく仕事をこなしていると、唯野(ただの)さんから報告を受けてるわ。これはどう説明するの?」

 

「そっ、それは、彼女が如月さんを庇っているだけです! きっと、唯野さんのもう一人の部下である新人の春先さんが、彼の分まで仕事をこなしているのかもしれません。お気の毒に……」

 

「バカバカしい……」

 

 大川は力説するが、轟は不快な表情になり彼の言い分を一蹴する。

 

「昨日、社員食堂でその春先さんが如月さんのことを貴方に説明したけど、聞こうとはせずそれどころか『元刑事だから脅している』と公衆の面前で言ったそうね。もし、彼がこのことを知って、名誉毀損で貴方を訴えたらどう弁明するつもり?」

 

「そっ、それは……」

 

 轟の鋭い指摘に、大川はとうとう言葉を詰まらせた。そんな彼に彼女は再度質問する。

 

「それを踏まえた上で、答えて頂戴。如月さんは本当に唯野さんたちに迷惑をかけているのかしら?」

 

「いっ、いえ……。わ、私の勘違いでした……」

 

 悔しさを滲ませながら答える大川に呆れつつ、轟は次の質問をする。

 

「ところで、戌神さんはいつになったら復帰するのかしら? 配信も休んでいるようだけど……」

 

「それが彼女は体調を崩してしまって……」

 

「そう、だったら別の人を……」

 

「それはいけません!」

 

 大川が発案した『ホロライブタレントの地上波テレビ進出計画』の一人目に戌神 ころねが選ばれた。だが、体調不良だと聞いていたので轟は代役を立てようとするが、大川が強く否定してきた。

 

「戌神さんは、テレビ局関係者や花菱(はなびし)商事の社長からの評価は高いので彼女以外は考えられません!」

 

 断言する大川に轟は訝しむ表情になるが、それに構わず彼は力説する。

 

「それに彼女はプロ意識が高く、このホロライブを代表するタレントになると断言します!!」

 

「わかったわ…………。そこまで言うのなら、ひとまず様子を見ましょう…………。もう、出て行ってもいいわよ」

 

「はい! では、失礼します!」

 

 自信に満ちた表情で答える大川に轟は納得せず眉を顰めるが、これ以上問いただしても答えることはないだろうと思い、彼に部屋を出るように促した。彼が会議室から出ても、彼女は思考を止めなかった。

 

(なぜ、大川はここまで戌神さんにこだわるのかしら?)

 

 轟も戌神 ころねに関する噂を耳にしているが、ヨーロッパに出張中の社長に代わり仕事をしているので、噂の真偽を調べることができず苦悩していた。

 

 せめて、彼女が唯野に相談すれば必ず自分に報告をするので、大川がどう言おうと代役を立てる予定だった。だが、当の本人は今の時点で相談の報告も無く、配信・レッスンも休止状態であり、轟もどうすることもできないのだ。

 

(もう、三時なのね……。仕事しなきゃ…………)

 

 両腕を組み目を閉じて思考を巡らしていたが、ふと腕時計を見たら仕事の時間になったので、轟は役員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

 鉄平たちは栗蒸し羊羹をつつきながら雑談を交わしていたら、この部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

 鉄平がその音に気付き、扉を開けたら茶髪の男性がそこにいた。

 

 その男性は背丈は170センチぐらいあり、痩せ型。耳にピアスをしている今風の男性だ。お互い初対面だったので、どう対応すればいいのか困っていたら、その男性を見たえーちゃんが声をかける。

 

「長谷川くん!?」

 

「えっ、えーちゃんさん、お久しぶりっス!」

 

 鉄平は彼が何者か知らなかったので、えーちゃんに説明を求める。

 

「えーちゃん、この男性はどなたかね?」

 

「ああ、二人に紹介しますね。この方は長谷川 純さん。ゲーマーズに所属している猫又 おかゆさんのマネージャーです」

 

 えーちゃんは彼の自己紹介を始めると、鉄平も自己紹介をする。

 

「そうだったか……。長谷川さん、初めまして。ワシは如月 鉄平という者だ。よろしく頼むよ」

 

「初めまして。私は春先 のどかといいます」

 

 鉄平に続けてのどかも自己紹介が終わった後、えーちゃんが長谷川に部屋に入るように促す。

 

 えーちゃんは、部屋の隅にパーテーションで区切った小さな応接間に案内して、緊張な面持ちの長谷川をイスに座らせた。えーちゃんも長谷川の対面に座ると、のどかが二人分のホットコーヒーを小さいテーブルに置くと自分の席に戻り仕事を始めた。

 

「久しぶりね、長谷川くん。ところで、今日は何かあったの?」

 

「え……、いやぁ、その……」

 

 普段は陽気で明るい長谷川が表情が固く口を開こうとしないことに、違和感を覚えたえーちゃんは彼に問いかける。

 

「もしかして、ここじゃ言えないことなの?」

 

 すると、彼は首を縦に振ってきた。

 

 この応接間は完全な個室ではなく、仕事をしている二人には聞こえるので、大事な話をするには不向きな部屋だ。しかし、無断で会議室を使えば始末書を書かねばならず、二人の部下も信頼している人間なのでここで相談をさせようと彼を説得する。

 

「ここで働いている二人は私が信頼している人たちなの。だから、安心して話してほしいの……」

 

 そう話すと、長谷川は最初は苦渋の表情を浮かべるが、覚悟を決めたのか意を決した表情でえーちゃんに打ち明ける。

 

「お願いです!戌神さんを助けてください!」

 

「えっ!?」

 

 想定していない言葉に、えーちゃんは思わず目を見開き声を上げた。それに構わず、長谷川は話し続ける。

 

「戌神さんの地上波テレビの出演を止めるように大川マネージャーを説得してほしいって、猫又さんに相談されたんです。猫又さんから聞いた話だと、戌神さんは泣きながら「花菱社長の接待はしたくない!」って拒否したら大川さんに怒鳴られったって……」

 

「私もころねさんが心配で担当マネージャーに聞きましたが、そんなこと一言も……」

 

「アイツは大川マネージャーの言いなりっス! アイツだけじゃない、他のマネージャーも大川さんの顔色を窺って何も言えないんです……」

 

「そ、そんなことが……」

 

「それで、オレは大川さんに戌神さんを外すように進言したら、説教されて「次に意見したら解雇処分にしてやる!」って脅されました……。もう、オレだけじゃあどうすることも出来ないんで、えーちゃんさんに相談しにきたっス……」

 

 悔しい表情を浮かべながら語る長谷川に、えーちゃんは愕然とするしかなかった。

 

「オレには分かりません……。どうして、大川さんが地上波テレビ進出にこだわるのか……」

 

 大川が発案した『ホロライブタレントの地上波テレビ進出計画』とは、ネット配信を中心に視聴している若い世代だけではなく、地上波テレビに出演して幅広い世代に認知されるのが目的の計画だ。大川は、多くの世代に認知されれば仕事の幅が増えると考えたが、現実は遅々として進まず難航している状態だ。

 

 噂より酷い現実にえーちゃんは呆然とするが、それに構うことなく鉄平が現れて声をかけてきた。

 

「すまないが、長谷川さんに聞きたいことがあるんだがいいかね?」

 

「はぁ……‥。立ち話も疲れますから自分の隣に座っていいっすよ」

 

 長谷川にそう言われて、鉄平は「ありがとう」と声をかけて彼の隣に座った。

 

「話の中に出ていた『花菱社長』と言うのは、もしかしたら花菱商事の花菱 栄一じゃないのかい?」

 

「そうっスけど、何か……」

 

 長谷川が怪訝そうな面持ちで答えたら、普段は穏やかな表情の鉄平がみるみるうちに険しい表情になった。

 

 花菱商事というのは、「インスタント麺」から「宇宙船の部品」を多種多様な商品やサービスを幅広く取り扱う日本を代表する総合商社だ。その潤沢な資金でテレビ局の人気番組には、必ずメインスポンサーになっている。

 

 そして、花菱 栄一は花菱商事の会長の一人息子で二年前に社長に就任した男だ。歳は二十九歳と若く、商才もあり慈善活動も積極的に行い、経済界の若きホープとして注目を浴びている。

 

 だが、警視庁に勤めていた頃の鉄平は彼の悪評しか聞いておらず、嫌悪感を抱いていた。

 

 花菱は海外留学中に大麻を嗜んでいたという噂があり、日本でも常用しているのではないかと疑われているのだ。それだけでなく、所有しているホテルで多数の男女を集めて、いかがわしい行為をするときに合成麻薬を使用しているという噂もあり、内偵捜査を行われていると鉄平は耳にしていた。

 

「実はな、ワシが警視庁に勤めていた時に花菱 栄一が薬物所持の可能性があるとして、捜査をしている部署があるんだよ」

 

「「えっ!」」

 

 鉄平の突然の爆弾発言に、二人は同時に驚きの声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと待つっスよ、如月さん! 一般人のオレたちにそんなことを言ったらやばいっスよ! 刑事には、守秘義務が……」

 

「安心なさい、ワシはもう刑事を辞めた身だ。だが、詳しい話は花菱を捜査している薬物銃器対策課の連中から聞き出さないと分からんな……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 会話の流れを制したのは、話しの展開についていけず頭を抱えたえーちゃんだった。『薬物銃器対策課』という日常では聞いたことのない言葉に、自分の範疇を超える事案と判断した彼女は、どうしたらいいかと迷っていたら鉄平が口を開く。

 

「ワシとしては、戌神さんと直接話してみたいんだが出来るかね?」

 

「戌神さんと直接会うんですか!? すみませんが、彼女の居場所は猫又さんしか知らないんで……」

 

「どういうことですか!? ころねさんはご自宅にいないんですか?」

 

「猫又さんが言うには、戌神さんは自宅にいると大川さんがスタッフを使って、強制的に花菱社長の元へ連れていかれると思い込んでいて、ホテルを転々としてるって聞いたっスよ」

 

「そんな……」

 

 ころねがここまで精神的に追い込まれていたのにも関わらず、気づかなかった己自身の不甲斐なさにえーちゃんは落ち込んでしまう。だが、接待をした相手が薬物所持の可能性があるならば、ころねの無事を知るために彼女は決断を下す。

 

「まずはおかゆさんに事情を話して、ころねさんに詳しく話をする必要があります! 長谷川くん、すみませんがおかゆさんのスケジュールを教えてください」

 

「はっ、はい! 確か、今日は一日完全オフっス!」

 

「でしたら、おかゆさんにアポを取ってください」

 

 長谷川に指示を飛ばすと、彼は急いで電話をかけ始める。次にえーちゃんは鉄平に頭を下げて懇願する。

 

「私達の力では、ころねさんを守るにはあまりにも無理があります。そこで、如月さんには彼女を警視庁の方達に守ってもらえるように頼んでもらいたいんです。無理を承知でお願いします!」

 

「ああ、ワシもそのつもりさ。そのためにも、戌神さんに接待をした日のことを詳しく聞かないといけないんだ。まぁ、警視庁が協力できなくてもワシが出来る限りの手を打って、彼女を守るつもりだよ」

 

「ありがとうございます……」

 

 無茶苦茶な要求にも怒るどころか、一度も会っていないころねの身を案じている鉄平に、えーちゃんは涙ぐみながら感謝の言葉を述べて頭を下げた。

 

 そして、長谷川は電話を終えてえーちゃんに報告する。

 

「猫又さんからOKもらえたっス! まずは、えーちゃんの話を聞いた上で考えるから、仕事が終わったら連絡してほしいと伝言っス!」

 

 長谷川の報告に、取り敢えずおかゆと話せることが出来ることに、えーちゃんはホッと胸を撫で下ろした。

 

「あの質問があるんですけど、戌神さんとの話し合いはどこでするんっスか? 目立つ場所はちょっと……」

 

 長谷川の質問にえーちゃんは思案をするが、彼女達は人気が高く人目がつかない場所でなければならないが、冷静になれず思うような場所が考えられなかった。

 

 その様子を見ていた鉄平が助け舟を出す。

 

「それなら良い場所がある。ワシの行きつけの喫茶店のマスターに事情を話して、貸し切りにしてもらえばいい」

 

「すみませんが場所を教えてくれませんか」

 

 えーちゃんがそう言うと、鉄平はスマホを取り出し、その喫茶店の住所を教える。

 

「ここからバスに乗って十分、徒歩五分の雑居ビルの三階にその喫茶店があるんだ。道楽でやってるから客も滅多に来ないよ」

 

 えーちゃんが確認のために、地図アプリを使ってその場所を調べたが、その周辺に人気のスポットや飲食店が無いのを確認して、人目がつかないだろうと判断して鉄平の提案を承諾する。

 

「如月さんのおかげで、なんとか目処がつきました。何から何までありがとうございました」

 

 なんとかころね達の話し合いの場所が決まり、気を引き締めるえーちゃんの元にのどかが現れた。

 

「お願いです! 私にも何かお手伝いさせてください!」

 

 涙目で必死に頭を下げるのどかに、えーちゃんはどうするべきかと思案する。鉄平達の話を聞いていた彼女が、ころねを心配する気持ちは理解できるが、今回は危険が伴う可能性があるので諦めさせようと諭すように語りかける。 

 

「春先さん、貴方の気持ちはとても嬉しいんだけど、今回は危険すぎます。私と如月さんで対処しますので、貴方はここで仕事を……」

 

「イヤですっ!!」

 

 大声で拒否をするのどかは必死に言葉を紡ぎ出し、えーちゃんに訴える。

 

「わっ、私はホロメンの皆さんを支えるために、ここに入社してきたんですっ! 如月さんやえーちゃんさんが、必死になってころねさんを助けようとしているのに、私だけここで仕事するなんて出来ません! おっ……おねがい……じます…………」

 

 最後は嗚咽混じりの声で訴える姿を見たえーちゃんは根負けしてしまい、のどかにハンカチを渡して優しく語りかける。

 

「貴方の覚悟は分かったからもう泣かないで……。大変なことになるけどいいのね?」

 

「は、はいっ……、わたし、がんばります!」

 

 えーちゃんから貰ったハンカチで涙を拭うのどかに、今度は鉄平が声をかける

 

「二人とも、そう心配しなさんな。面倒ごとになったらワシがどうにかするよ」

 

 力強い声で励ます鉄平の姿に、二人は安心したのか笑みを浮かべて返事をした。

 

 そして、定時である夕方五時には長谷川とえーちゃんはおかゆが住むマンションへ行き、その十五分後には鉄平とのどかは喫茶店へと向かった。

 

 四人一緒に行動すれば大川に疑いを向けられるために、別々に行動したのだ。

 

 こうして四人は、戌神 ころねを助けるために行動を起こすのだった。

 

 

 

 

オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?

  • はい。お願いします。
  • いいえ。結構です。
  • それよりも、小説を優先して投稿してくれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。