再就職先は、ホロライブのスタッフに決まりました   作:DXフルーツパフェ

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二週間前から慣れない仕事が原因なのか、不眠症が続いてますが何とか投稿できました。


Resto様、評価していただいてありがとございます。


幕間 鉄平のいないホロライブ事務所

 

 

 

 平日の午前10時。

 

 この時間帯は、学生は眠い目をこすりながら学校で授業を受け、夫や子供を送り出した主婦はワイドショーを見ながらお茶を啜り、社会人は会社で働いている時間だ。

 

 大神 ミオの場合は、いまだに眠りの中にいた。ペットの猫二匹はエサを求めて、いつまでもベッドで寝ているミオを起こそうと頬を舐めたり背中に猫パンチを繰り出すのだが、一向に起きる気配は無かった。

 

 そうしたなか、スマホに着信が入る。

 

 着信音でミオはようやく目を覚まし、なぜ背中が痛むのか違和感を覚えたが、相手を待たせるのは失礼と思い電話に出る。

 

「もしも……」

 

「ミオしゃ〜〜〜!!!」

 

「うわっ!」

 

 相手の大きな声でミオは思わず声を出してしまった。声の主はホロライブ二期生の大空 スバルだった。狼狽えているミオに構わず、スバルは涙声で訴える。

 

「おかゆの……、おかゆのマンションに来てるんだけど、チャイムを鳴らしても出て来ないんだよっ! メールしても全然出なくて……。こんなこと初めてだから……」

 

「えっ!?」

 

 スバルが言うには、今日はおかゆとコラボ配信の打ち合わせをおかゆの自宅でする予定だったのだ。だが、チャイムを鳴らしても無反応で玄関の扉を開けようとしたら鍵がかかっていたのだ。鍵を開けてもらおうと大きな声で開けるようにおかゆに求めるが、返事は無かった。そして、誰かが通報したのかマンションのオーナーが現れて「近隣住民の迷惑になるから静かにしてください!」と厳しい口調で注意されたのだ。

 

 困ったスバルは今度はおかゆにメールを送るのだが、結果は無反応だったのでどうしようかと迷った末に、同じゲーマーズ所属の大神 ミオに相談しようと電話したのだ。

 

 話を聞いたミオは、おかゆらしくない対応に違和感を覚えながらも、このまま黙っていては埒が開かないのでスバルに話しかける。

 

「もしかしたら、ころねの家に泊まっているんじゃないかな……」

 

「スバルもそう思ってころねに電話したんだけど、全然出ないんだよっ! メールをしても反応無いし……」

 

「そんな…………」

 

「もしかして、あの噂は本当なのかな……」

 

『あの噂』とは、ころねが地上波テレビに出演するために花菱社長の接待を拒否したことを大川マネージャーに叱責されたことだ。

 

 その噂話を思い出したミオは、おかゆがころねを連れ出して逃避行をしたのではないかと考えがよぎってしまい顔を青ざめてしまう。とにかく、二人の安否を確かめようと、ころねの住むマンションに行くことを決意したミオは口を開く。

 

「とにかく、スバルはウチと一緒に「にゃああぁぁぁ……」えっ!?」

 

 ミオは猫の鳴き声がした方を向くと足元にはペットの二匹がいたことに気づき、ここでようやく彼女は、エサをやっていないことに気付いた。

 

「どうしたのミオしゃ!?」

 

「ご、ゴメン……。ウチ、起きたばかりでタイガとたわしにエサをやっていないの……」

 

「えっ、そうだったの? もしかして、ミオしゃも食べてない?」

 

「うん……」

 

「そうだったんだ……。だったら、コンビニでおにぎりを買ってミオしゃの家に行ったほうがいいかな?」

 

「うん、助かるよ……。ありがとうね、スバル」

 

 スバルの気遣いに感謝しつつ、ミオは愛猫二匹のために猫用フードボウルにエサを注ぎ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!? 如月さんは、今日はお休みなんですか?」

 

「そうなんです……。風邪をひいてしまって、今日は自宅で療養しているんです」

 

 昼休みが終わり午後の業務に取り掛かろうとしていたのどかの前に、秘密結社holoX(ホロックス)の女幹部・鷹嶺 ルイが和菓子屋の紙袋を持って鉄平に会いに来たのだ。

 

 えーちゃんは、谷郷社長と轟専務の二人とオンライン会議を行なっており、ルイの対応はのどかとなり小さな応接間で話を聞くことにしたのだ。

 

「あの、如月さんに何か御用があったんですか?」

 

 のどかがそう言うと、ルイは神妙な面持ちで口を開いた。

 

「ラプが、如月さん達の羊羹を無断で食べて申し訳ありませんでした」

 

 そう言い終えると、のどかに向かってルイは頭を下げた。昨日、ラプラスが無断でこの部屋に忍び込み、冷蔵庫にあった羊羹を無断で食べたことを鉄平に謝罪するために、ラプラスに代わってこの部屋を訪れたのだ。

 

「あっ、頭を上げてください、鷹嶺さん! 如月さんは気にしてませんから……」

 

「ですが……」

 

「本当に怒ってませんから、安心してください。それよりも、如月さんは胸焼けを起こした状態で走り去ったラプラスさんを心配してましたよ」

 

「そうだったんですか……」

 

 その言葉を聞いても、ルイの表情は固く暗いままだ。

 

 彼女は、ビジネススキルを遺憾なく発揮して企画を考える秀才であり、コミュニケーション能力も高く先輩ホロメンと打ち解けてプライベートでも交流している。また、料理スキルも高くホロライブ二期生の癒月 ちょこと二人で、ホロメンをゲストに招きリクエストに応える「りっちしょこら」という料理配信も好評だ。

 

 だが、今の彼女にはそんな面影もなく、これ以上落ち込む姿を見たくなかったのどかは、どうにか元気付けるために口を開いた。

 

「あの……。私、りっちしょこらをよく見てるんですよ。友達もその配信を見て、料理のレパートリーが増えたって喜んでましたよ」

 

「…………」

 

 だが、返ってきた答えは沈黙だったが、しばらくしてルイは重い口を開く。

 

「実は、ホロックスのメンバーは無期限のスタジオ使用は禁止になったんです…………。りっちしょこらの収録も出来なくなりました」

 

 ルイのあまりにも衝撃的な発言に、のどかは愕然としてしまう。

 

 なぜ、そのようなことになったのか。

 

 理由はラプラスが原因だった。

 

 鉄平が危惧した通り胸焼けを起こした状態で走ってスタジオに入った途端、盛大に嘔吐してしまったのだ。そして、その臭いを嗅いだスタッフ達やプロデューサーも嘔吐してしまい収録が中止となってしまった。

 

 その結果、激怒したプロデューサーがホロックスのメンバーに対して、無期限のスタジオ使用禁止を言い渡したのだ。

 

「そっ、それはあまりにも厳しすぎませんか?」

 

「ラプも猛抗議したんですが、結局は覆ることはできませんでした……。責任を感じてしまって、私たちに謝ってから部屋に引きこもっています……」

 

 ルイは今にも泣きそうな表情でこれまでの語り、のどかは励ますことができずただ黙って聞くことしかできなかった。

 

 スタジオでラプラスが嘔吐しただけであまりにも理不尽な処分に、納得ができなかったのどかは処分を軽くするようえーちゃんに相談しようとするが、勢いよく扉を開き一人の男がこの部屋に入って来た。

 

 

 

 

「唯野さんっ!!」

 

「なっ、なんですか、いきなり……。こっちは、いま仕事を……」

 

「そんなこと知りませんよっ!」

 

 部屋に入って来た男は大川 清だった。普段は女性達に爽やかな笑顔を振りまいているが、今の彼は憤怒の形相でえーちゃんを威嚇するように机をバンっと叩き、彼女に詰問する。

 

「あなた、猫又さんの居場所を知ってますよね! 正直に言ってください!!」

 

「知りません……。仕事の邪魔をしてもらっては困るんですが……」

 

「今日の朝から猫又さんに連絡してますが、応答がないんです!」

 

「だから、どうして私に聞くんですか?」

 

「昨日、猫又さんの担当マネージャーの長谷川と共に会社を出ましたね。どこに行ったんですか!」

 

「彼から相談があると言われて、話を聞いていただけです」

 

 声を張り上げて追求する大川に対し、えーちゃんは表情を崩さずポーカーフェイスで淡々と答えていた。豹変した大川にのどかは顔を青くしただ怯えるしかできなかったが、ルイは大川達に質問する。

 

「あ、あの、おかゆ先輩が行方不明なんですか?」

 

「君には関係ないっ!」

 

 ルイの質問に即座に答えたのは大川だった。

 

「ところで君は、自宅で配信するなりスタジオで嘔吐物を撒き散らしたチビ女を躾けるなり、やるべきことがあるのにどうしてこんな所にいるのかな?」

 

 丁寧な口調だが高圧的な態度で説教する大川に、ルイは言い訳もせず耐えていた。だが、蔑むようにラプラスのことを「チビ女」と称したことが許せず大川を睨んだことで、彼が口を歪ませて口を開こうとしたが先に口を開いたのはのどかだった。

 

「彼女は如月さんに謝罪するためにここを訪れただけです! あと、ラプラスさんのことを蔑むような呼び方で呼ぶのはやめてください! 大切なタレントなんですよ!!」

 

 ルイを守るように前に立ち勇気を奮ってのどかは意見をするが、大川に届くことはなかった。彼は、のどかの意見を鼻で笑い彼女の上司であるえーちゃんに嘲るように反論する。

 

「私は事実を述べたのにすぎませんが? それよりも、新入社員の分際で私に意見するなんて、唯野さんはどんな指導をなさっているんですか?」

 

 だが、えーちゃんは大川と言葉を交わそうとせず沈黙したままだった。その代わり、えーちゃんが使っているパソコンのスピーカーから底冷えするような声が聞こえてきた。

 

「タレントの居場所も把握していない上に、成果も出せない無能の分際で、よくそんなセリフが言えるわね……」

 

「なっ!? せっ、専務!? どうして……」

 

 失望と怒りが混ざった感情で大川に叱責する声の主は轟専務であった。そして、谷郷社長も大川の会話を聞いており、珍しく感情を露わに怒りに任せて怒鳴り散らす。

 

「大川君! 君は、普段から高圧的な態度でタレントやスタッフに接していたのか? 彼女達は、ホロライブにとって大切な人材なんだぞっ!!」

 

 二人の叱責に大川は動揺しながらも言い訳しようとするが、そんな時にえーちゃんのスマホが震え出した。確認すると大神 ミオから着信が来たのだ。

 

「すみません、私のスマホにミオさんから連絡が来たんですが……」

 

 このタイミングでゲーマーズ所属のミオの電話に、おかゆの情報が得られるかもしれないと考えた轟専務はえーちゃんに指示を出す。

 

「もしかしたら猫又さんに関することかもしれないわね……。私達も聞きたいから、スピーカーモードにしても構わないかしら?」

 

 轟専務の提案にえーちゃんは「分かりました」と言葉短めに了承して電話に出た。

 

「えーちゃんですか? ウチです! ミオです!」

 

「落ち着いてください、ミオさん。どうしましたか?」

 

「ウチ、いまころねのマンションにいるんです!」

 

「えっ!?」

 

 想定していなかった言葉がミオから飛び出し、えーちゃんは目を見開き驚くが、ミオは構わず事情を話す。

 

「今日の朝、スバルから電話があってコラボの打ち合わせのためにおかゆの家に行ったんですが、本人がいないんです! もしかしたら、ころねのマンションにいるかもしれないと思ってスバルと一緒に向かったんです。ウチ、ころねがマンションの鍵を隠す場所を知っているので、その鍵を使って玄関を開けたんですが二人ともいないんです! スマホで電話しても二人とも出なくて……。何でこんなことになったのか、分からなくて……。もう、どうすればいいか……」

 

 最後はとうとう泣き崩れてしまい、スバルは必死にミオを励ますのだが泣き止むことはなかった。

 

 ミオの話を聞き終えたえーちゃんは、大川の様子を見ながら泣いているミオに語りかける。

 

「ミオさん、お話は出来ますか?」

 

「すみません、スバルです……。ミオちゃんは泣いててちょっと……」

 

「分かりました。では、スバルさんにお伝えします。スバルさんはミオさんと共にころねさんの家を出て、それぞれのご自宅に帰ってください。私は、如月さんにこのことを……」

 

「やめろおおおぉぉぉ────」

 

『伝えます』と言おうとした時、鬼の形相で大川が叫びながらえーちゃんのスマホを奪おうと彼女に襲いかかった。常軌を逸した行動にえーちゃんは恐怖のあまりに体がすくんでしまい逃げることが出来ずにいたが、ルイの咄嗟の判断でえーちゃんを助けようと大川を取り押さえる。

 

「何をするっ! その手を離せ、バケモノっ!!」

 

「離しませんっ! あなたは、いったい何を考えているんですかっ!!」

 

 あっけなくルイに腕を捻られて地に伏せられた大川は、痛みに顔を歪ませて悪態を吐くが、彼女は彼を取り押さえて一喝する。

 

 この二人のやりとりを聞いていたスバルは何かあったのかと思い、えーちゃんに状況を聞こうと声を上げた。

 

「何か大川マネージャーとルイちゃんが争う声が聞こえたんですが、いったい何があったんですか?」

 

「こちらのことは気にしないでください! とにかく、このことは如月さんに伝えますので、ご自宅に帰宅してください!」

 

「あの、如月さんって……」

 

「ミオさんに聞けば分かります! 申し訳ありませんが切らせてもらいます!」

 

 そう言ってえーちゃんは有無をいわさず電話を切ると、大川は二人の警備員に拘束されていた。彼女達を憎悪の目で睨みながら「拘束するのは、このバケモノ女だろうがっ!」「俺のバックには花菱社長がいることを忘れるなっ!」と最後まで悪態をつきながら、警備員達と共にこの部屋を退出していった。

 

 自分を助けようと大川を取り押さえたルイがケガをしたかもしれないと思ったえーちゃんは、心配になって彼女に声をかける。

 

「大丈夫でしたか、ルイさん?」

 

「ええ、私は大丈夫ですがあの警備員達はいったい……」

 

「恐らくですが、専務が呼んだのかと……」

 

 えーちゃんがルイと会話していると、轟専務が心配そうな表情で二人の会話に割って入る。

 

「唯野さん。無事なの!?」

 

「はっ、はい。鷹嶺さんが大川さんを取り押さえたのでケガはありませんでした」

 

「そう……。ケガがなくてよかったわ……」

 

 そう言うと、轟専務はえーちゃん達の無事の知らせを聞いて、安堵のため息を吐いた。

 

「それでですね、警備員の二人が大川マネージャーを拘束してこの部屋から出て行きましたけど、専務が呼んだのでしょうか?」

 

「ええ、そうよ。大川があなた達に迷惑をかけてごめんなさい。鷹嶺さん、大川には相応の処分を下した後に正式にあなた達に謝罪させるから、この部屋で起こった出来事を口外しないと約束して欲しいの…………」

 

「分かりました。ですが、私よりもラプには謝罪して下さい」

 

「分かったわ……。私はこれから谷郷社長と一緒に大川に色々と聞きたいことがあるから、後のことは唯野さんに任せていいかしら?」

 

「ええ、分かりました」

 

「助かるわ。じゃあ、お願いするわね」

 

 疲れた表情で轟専務が言うと、えーちゃんは了承してオンライン会議を終了した。えーちゃんはのどかに指示を出そうとするが、二人の先輩が行方不明と聞いたルイが不安そうな表情で口を開いた。

 

「まさかとは思いますが、二人は事件に巻き込まれて行方不明になったんじゃ……」

 

「情報が無い段階では何とも言えません……。取り敢えず、私は如月さんに電話で相談してみます。のどかさん、おかゆさんところねさんのスタジオ収録と企業案件のスケジュール調整を行って下さい」

 

 のどかに指示を出すと、のどかは自分の席に座り二人のスケジュールを確認するためにパソコンを起動してチェックし始めた。

 

 これ以上、自分がいても出来ることがないと判断したルイは、鉄平に手渡すはずだった和菓子を紙袋から取り出し冷蔵庫に置いてから二人に挨拶をして部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホロライブの事務所を出たルイは、まっすぐ新人寮に帰ることなく、心を落ち着かせるために人気のないカフェでコーヒーを飲んでいた。

 

 尊敬する先輩二人の失踪、ラプラスや自分に対する大川の暴言、そしてその暴言をリアルタイムで社長と専務から聞かれて怒りを買ってしまい、挙げ句の果てにはえーちゃんのスマホを奪うために未遂だが暴行を働くという悪夢に等しい一日を過ごしてしまい、思わず深いため息を吐いた。

 

 確実に言えることは、大川は間違いなく失脚をするだろう。

 

 マネージャーのまとめ役であり『ホロライブタレントの地上波進出計画』の発案者でありながら、タレントの管理を怠った上に暴言を吐いたところを社長達に聞かれたのだ。その上、スタッフに暴行を働こうとしたのだから、少なくとも無期限の出勤停止になるだろう。

 

 それより、問題は戌神 ころねと猫又 おかゆが失踪したことだ。

 

 先輩達が失踪した理由があるとすれば、ころねが大川マネージャーに叱責されたという噂があり、それが引き金となってしまったかもしれない。もし、こんなことが表沙汰になったら信用を失ってしまい、企業案件も他事務所に流れてしまうだろう。

 

 そんなことを考えていたら、陰鬱になってしまい自然とため息を吐いた。

 

(これからどうなってしまうんだろう……)

 

 ブラック企業に勤めていた経験を持つルイでさえ、ホロライブの今後の見通しが見えず心の中で呟いた。

 

 しかし、いつまでも暗い表情のままではホロックスのメンバーに心配されるので、しばらくの間はこのカフェで時間を潰すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、ルイは夕暮れになるまでカフェにいてしまい、今頃ラプラスがお腹を空かせているだろうと慌てて新人寮に帰っていた。

 

 新人寮はホロライブの新人タレントが一年間限定ではあるが格安で住むことができ、二階建ての中古のアパートを買い取って一階には管理人の部屋や談話室が改装しており、二階にはそれぞれの部屋があるという造りになっている。

 

 ルイが新人寮に入ると、この時間帯は各々が個室でサムネイル作業などの裏作業をしているのだが、今日に限って談話室で彼女達の騒ぐ声が聞こえてきた。

 

「いやあ、まさか松屋の栗蒸し羊羹が堪能できるなんて夢にも思わなかったぞ♪」

 

「私もその栗蒸し羊羹を食べたかったのに……。どうして、真っ先に食ったのさ!」

 

「まぁまぁ、ラプちゃんが元気になって良かったよ。それより、このマカロンすごく美味しい」

 

 ラプラスは歓喜の声を上げて喜び、クロヱはジト目でラプラスの行動に怒り、こよりはクロヱを宥めつつマカロンを食べていた。

 

「みんなで分けようとしたら、ラプラスさんが即座に頬張るとは思わなかったよ。その代わりといっては何だが、デパートで買った洋菓子で勘弁してほしい」

 

「頭を上げてください、如月さん。たくさんのお菓子を持って来てくれて、こよは嬉しいです」

 

「吾輩もすごく嬉しいぞ♪ 今度はこのチョコプリンを食べよう」

 

「まるまる羊羹一本食べて、まだ食うのかよっ!?」

 

(えっ!? 如月って…………)

 

「ルイ姉、ぼーっとして、どうしたのでござるか?」

 

 ルイに声をかけて来た人物は、私服を着て買い物袋を持ったホロックスのメンバーの風真 いろはであった。

 

「いろは、ここに如月さんが来てるの?」

 

「来てるでござるよ。お菓子をたくさん持って来て、わたし達に挨拶に来たのでござるよ。本人はペットボトルのお茶で良いと言ったんでござるが、それだと失礼と思って、遠いスーパーまで行って奮発して高級な緑茶を買って来たでござる」

 

(風邪を引いて自宅で療養中って聞いていたのにどうして……)

 

 怪訝な表情で考えるルイの前に、一人の年配の男性が現れる。

 

「あなたが鷹嶺さんだね。えーちゃんから聞いたが、散々な一日だったそうだね……」

 

「ええ。のどかさんから風邪を引いて自宅で療養していると聞いたんですが、お元気なんですね……」

 

「そう睨むなよ。事情は話すから、まずは汗を流しなさい。では、談話室で待ってるよ」

 

 血色も良く風邪を引いた様子も無い鉄平を見たルイは風邪が仮病だと分かり、彼女はどうして嘘をついてまでここに来たのか真意が分からず鉄平を警戒してしまうが、疑われた本人は困った表情で話すと談話室へと消えて行った。

 

 不穏な空気が漂う中、いろはは困惑な表情を浮かべながらも自分の意見を述べる。

 

「ルイ姉、如月殿と何があったかは知らぬが、あの人は悪い人ではないでござるよ」

 

「それは、私も分かっているのよ。ただ、今日は色々あってね……。取り敢えず、シャワーを浴びてくるわ」

 

 そう言うと、ルイは自室に戻りシャワーを浴びるために脱衣所で服を脱ぎ始めた。

 

 なぜ仮病して休んでまで鉄平が自分たちに接触してきたのか、理由を知るために冷静になろうとシャワーを浴びるのだった。

 

 

 

 

オリキャラの設定集を書いた方が書くべきなのか迷ってます。書くべきなのでしょうか?

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