ギリギリだった。
本当に刹那よりも短く、シエルの倍率数十億の『思考加速』を使って尚僅かしか引き延ばせないほど一瞬、俺はシャドウがあの技……唇の動きを信じるなら『アイ・アム・イレイザーアドミック』を放つよりも先に時間を止めた。
ダサい名前に反して恐ろしい技だ。ただの攻撃なら身体を粉々にされた所で俺は復活できる。しかし、あの技は俺を構成している『情報子』を塗りつぶそうとしていた。世界最強の
あれは俺だったから死ななかったが、仲間や他の魔王では耐えられないし対策も練れない。俺はヴェルドラとお互いにバックアップを取っているが、それも修復に時間がかかるレベルの破損を受けているためヴェルドラの復活はしばらくできない。シャドウに弱みを見せないために外見は元の状態に戻してあるものの、使える
シャドウは殺さなければならない奴だ。俺とヴェルドラの不死性を理解した同時撃破を実行する度胸、目的のためなら他人も巻き込む冷酷さ、シエルでも見極められない力、どれを取っても見逃せない。
現に転移した俺の攻撃をシャドウは事もなげに受け止めた。クソが、時間が止まった世界で転移できるのは『瞬間移動』とシエルがいる俺だけだぞ。もう自分達が『情報子』になって動き回っているのだから予兆も何もない。なのに何故これを予想できる!?
「――そこだ」
「くっ!?」
奇襲が失敗した俺はシャドウとの斬り合いを開始したが、ハッキリ言って押されている。初めての『
停止世界での戦いはどれだけ上手く身体を動かせるか、どれだけ相手のエネルギーを削れるかが勝敗を分ける。前者は動ける者は全員『情報子』になるため身体能力に差は一切なくなるからであり、後者は停止世界で動いているだけでもエネルギーを消費していき、足りなくなれば動けなくなるからだ。
停止世界で『情報子』になって動く感覚はスライムの俺にとって慣れたもの。なにせ細胞の全てが脳であり筋肉である。思考と身体の動きに一切のラグがなくなる停止世界での活動は俺にとって普段と変わりがない。エネルギーだって世界トップ。停止世界でも使える『スキル』が盛りだくさん。負ける要素がなかった。
なのに今はそのアドバンテージが潰されている。
(『未来予測』を欺くってなんだよ本当に――)
《マスター、後ろに!》
「――くそっ!」
シャドウの横薙ぎを防ぎながら懐に潜りこんで”
ぶっちぎりで厄介なのがシエルすら欺くシャドウの偽装能力が停止世界でも使えたこと。『未来予測』も『万能感知』も役に立たず、シエルがあらゆる可能性を導き出してから対処しなければならなくなり後手に回ることを余儀なくされていた。
あの『アイ・アム・イレイザーアトミック』を使わせないために時間を止めたけど失敗だったか? さっきから俺の攻撃は当たらず一方的に削られている。削られるエネルギー量がやたら多いのも痛い。止まった世界の維持は止める瞬間に比べればエネルギー消費は少ないが今の俺にはそれすらキツイ。
(過去に戻っても俺のダメージはそのまま残るし、使えるエネルギーじゃあのふざけた技を喰らう前に到底戻れない。……結局シャドウを倒すしかないんだよなぁ!)
諦めることは微塵も考えずに剣を振るい続けるリムル。それでも勝利の天秤は彼とは逆方向へゆっくりと傾いていく――。
♦♦♦
勝ったな、風呂入って来る。
いやー、いきなり大魔王に襲われた時は「やっべ、これマジやっべ」って思ったよ。偶々剣振り回してなかったらバッサリいかれてたし、傷も全回復してるし、武器だけじゃなく手足からも掠りでもしたらヤバそうな気配するし。おまけに時間停止の影響でアトミックシリーズもほとんどが使えなくなるしで。
でも忘れてた。大魔王の正体はめっちゃ強いけどスライムだ。そして僕はスライム限定で超有利になれる『スキル』を持ってる。
そう、エクストラスキル『
ダメージ増加はスライム相手じゃ素の攻撃でオーバーキルだし、プルプル震えるだけのスライムに『未来予測』とか使わないし、『思考支配』しようが『思念読破』しようがプルプルしか思ってないし、『一撃必殺』を使ったら自分の使ってるスライム諸共木っ端微塵に弾け飛ぶから意味ないと思ってた。
ごめんよ、今までイプシロンの偽乳爆発スイッチって思ってて!
テンションが爆上がりだ。世界最強と呼ばれる存在を手玉に取れるって超『陰の実力者』っぽい。できれば誰かに見てもらってシャドウがリムルより強いってことを道行く人に声をかけるレベルで言いふらしてほしいけど、余計な観客がいない場所での決着も悪くない。
よっしゃー、このまま大魔王ぶっ殺しちゃうぜー!
シド。
対リムルに関して最もいい組み合わせの『スキル』を手に入れていた男。マサユキ以上の豪運を素で持っている疑惑が浮上中。
リムル。
強すぎチート大魔王。あからさまにリムルよりキャラを作ろうとしたら萎えてしまうため作者はとても苦労させられる。
他作品同士の最強論議は争いしか生みません。全王とボボボーボ・ボーボボ、ユーハバッハとでんじゃらすじーさん、悲鳴嶼行冥と坂田銀時のどっちが強いかを聞くようなものです。