遭難から無事脱出できたウタ楽団、海賊に襲われた交易船を救ったウタ達だったが、その海域を警備する海軍基地大尉に目をつけられてしまう。一抹の不安を抱きながら、彼らは島に初上陸するのだった。
「コイツ‥‥いつまで粘るつもりっすかね」
そこは湿った地下室だった。
石のレンガが粗雑に組み合わさり、湿った苔の匂いと埃の粉が舞っている。
通路は3人ほどが歩いて通れる程の幅で、並んで歩くと肩が当たりそうになる。
廊下は蝋燭で怪しく照らされ、その灯だけが視界を確保できる方法で、彼等はそんな灯りを頼りにある捕縛者専用の牢屋の前でトランプを並べて、コインを縦に積み娯楽に勤しむ。
そんな1人が全然灯りが灯されていないある一室に目を向けた。
壁に蝋燭があるが灯されておらず、暗くて湿りがましていていいものではない。
「彼此一週間になるな。この部屋の主人様はこの基地の隊長様に反逆して、叩き込まれて‥いい加減ゲロっちまえばいいのによ」
「アホか、どっちにしてもあの件を聞かれて。明るい空の下に戻れるかよ‥ある意味ではいけなくはないけどな‥お天道様に、アハハ」
おいっ不謹慎な冗談を吐く同僚を嗜めながら、手のロウ立てを暗い部屋の鉄格子の隙間に入れ目を凝らし、部屋の奥に繋がれている男の姿を捉える
この牢屋に放り込まれた記者と名乗る男、海軍基地の貴重な情報を盗んだ罪で尋問し、時には棒で殴ったり水責めをしている。
しかし一向にこの男は平気な顔で笑うのだ。拷問担当を海兵の話だと額に血を流しながら余裕な笑みを浮かべて、いつもこう言い放つ
「そんなに殴っても『祭り』は始まらねえよ、もう少し待てば面白いもんが見られるぞ。そん時まで俺は逃げねえから。ほっとけ」
捕まって両手を錠で縛られながら何を言ってるんだ。もう逃げられない事を察して自暴自棄で発した狂言と処理する所だろうが、なぜか嘘とは思えない熱のようなものがこの男喋る言葉には乗っているのだ
やっぱり笑ったやがる‥何が始まるって言うんだよ
蝋燭の光は小さく、奥に繋がれている男の姿の全体は見えないはっきり見えているのは靴の足元と傷ついたズボンのあたりで、頭のてっぺんは見えないが
目はギンギンと光を帯びて、笑っている。
それを見た時身震いしてしまう。この男の祭りの意味出来事はどんなものなのか、わからないまま蝋燭の光を牢の外に引っ込めた。
「ついったぁぁぁぁ、エレジアから三日目にようやく到着。うーん海風の匂いと目の前には沢山の人で賑わう街、この感覚は久しぶりって感じぃ」
大きく手を広げて、爛々と輝く太陽に元楽団を結成して初めて上陸した島。10年以上ぶりの大勢の人間が住む街への降り立ちは奇妙だが、ワクワクしていた
サングラス越しの目をキラキラさせながら、横へ前へと流れていく人の流れを目で捉え、耳で聞こえてくる人の声が吸い込まれる様に入ってくる
「そうだな‥多いな、人」
その元気爛々の団長の後ろから歩いてきた青年
前にいる団長とは打ってくってテンション低めで、喉の奥からは枯れた声を鳴らし、手をズボンに突っ込んで明後日方角を見つめる
正反対のテンションUP,Lowがハッキリ分かれている。何故ロケーションも周りでの賑わいも悪くない中でこの男はここまで低飛行なのか
「巧‥久々の人がいる街に来れられたんだよ。もっとリアクションとって、オーバーなアクションでも笑わないよ」
「いや‥そういうことじゃねえ、少しは自分を見つめてみろ。アホ」
「見つめる、何でいいじゃんこの格好。完璧に身バレはしてないし遠くからの観光客って事でさ」
彼らの見た目、厳密には正体がバレないための変装衣装で身を包んでいる。
超絶有名人もウタがいるぞーっとなれば色々と面倒事が起きる、エレジアの交易船員の熱苦しさの比ではない人間が押し寄せてくる
それを進言して言い聞かせた巧も、言い出しっぺと言うこともあり、彼女の選んだ衣装で身を包んで一緒に街を回ることになった
なったのだが‥それがとても奇抜というか、大袈裟というか
街に溶け込めていない、一切、寧ろ視線を全包囲から浴びせられているこの状況
「バレちゃいない、バレちゃいない‥暑苦しんだよこっれ、それに何だよコレとこれは」
バサっと体を包む細かい模様が刻まれた全身を包むマントと、日差しを遮る為に帽子の天辺がデカ目の作られた
変装用の衣装の奇抜さと自己主張の激しさは派手と形容できてしまう。そのせいで通り過ぎる住民からの何だこいつらっと怪しい認定されてしまう始末
「確かに大袈裟すぎるよね、大袈裟だけど‥全然バレてないっよ」
まぁ、その派手さゆえかインパクトゆえか有名人のウタだと集まってくる群衆はいない。怪訝な目では見られる事に目と瞑れば、変装という意味では大いに成功している
「アイディアは悪くねぇ、悪くないが‥熱い」
「熱いのは仕方ないと諦めて‥取り敢えず観光は後回しでまずは、航海士を探そう!」
「それなんだな、このまま観光するぞぉって何も考えないで飛び出すと思ってたよ」
「もう迷子はごめん、海で迷子になるって怖すぎだし、先ずは酒場とかで話を聞いて海に詳しい人を雇おう。本当はめっちゃ観光したい!服とか散策したい。だから速攻で終わらせよう」
先ずは方針は決まった。人材確保の重要さを今回の遭難で死ぬほど実感した、次の島への航海の安全を確保しようと歩みを進める
変装を解くのはもう後でいいだろうと、後回しにして人で賑わう商店街へと紛れていく
カパァー、古い木製のスイングドアが開かれ木の擦れあう音が店内に広がった。
モダンな曲が響く店内にはガタイのいい男達が席に座って酒を嗜み、新たな来客に鋭い目を向けてくる
何だあれ‥?店内の客と奥のバーカウンターでコップを拭いていた店主が同時に頭に?を浮かべて、入ってきた珍客を見ていた
乾燥地域で踊り力してそうな衣装に身を包んだ2人の男女が入ってきた。ドカドカと浴びせられている奇異な目を気にせず、奥へ進むとバーカウンターの回転椅子にドカッと座った
変な見た目であろうと、お客様は神様だ。っと平然な顔でバーカウンターに手を置き、注文を聴く
「いらっしゃい、ご注文は何にいたします?三色フルーティカクテル、マッコリーのフラワー酒が今日のオススメだ」
「どっちもいらない、今はチョコパフェと紅茶、砂糖入りお願い」
「いや、ここ酒場だからスイーツ専門店じゃないから」
「抹茶ラテとシュガードーナッツ」
「だからないって、何だアンタら観光客かい、ここはバーだよ。塩辛い奴と酒しかねえ、まぁ水とかならあるけど」
「「じゃあ水で」」
色々と疲れている2人の注文に冷静にツッコミを入れながらも、仕方なさそうに水をテーブルに置いた。
「ねぇ、マスター1つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「何だい、甘いものを出せって我儘言うなら追い出すけど、それ以外ならいいぜ」
「私達船で旅をしていてね、一緒に船で旅をしていいって思っている人を探してるの。今船には航海士がいなくて、仲間になってくれそうな人知らない?」
「フリーの航海士ねぇ‥いや、聞かないね。この島の人間の殆どが地元民だし、この島で職を持ってる。アンタらの船に乗る物好きはいないな」
「こっちは困ってるんだよ。色々とな、些細な事でいい、名も知らない船に乗る様な物好きいないか?」
「フリーじゃないが、ジャーナリストって名乗る奴はいたな」
「ジャーナリスト?それ、関係あんのか」
記者と航海士には接点は感じられない
「いや、1人で東の海を旅してあっちこっちでネタ探しをしてるとか、勝手に語り始めてな。1ヶ月で20島を回ったとか」
『風はいつくるか予想はできない、自由だからって他人は言うが、俺は違うという。俺に当たればそいつらは丸裸、!東の風の風来坊の前ではどんな風だろうが、飼い慣らしてやれる」
酒場で酔った調子にそう宣言した。アルコール度数の高い酒を飲みまくりベロンベロンに顔を真っ赤にしながら、周りの客に向かって言い触らす。
馬鹿みたいな奴だと笑われていたが、店主は男の声の熱の暑さに、本当にできそうだと思ってしまう。
そんな魅力があった。
「面白い人だね‥風を飼い慣らせるなんて100パー、絶対に航海術持ってるじゃん!巧早速スカウトしよう、絶対に手に入れようその人」
「面白い奴だな。話聞いてる限り酒癖悪いな」
「あぁ‥酒飲んだまま大声で歌うし、笑うし、客と殴り合いの喧嘩して大変だったよ。酒代無理やり奪って朝日が昇る前に追い出したよ」
「だ、そうだ。っでどうする団長」
「うちは面白い事重視だし、私は絶対に入れたい!団長権限を行使しても、入れちゃうんだから」
その人が行きそうな場所の心当たりはっと聴く前に邪魔が入る
テーブルの上のドンっと手を叩きつける。ギロっと巧がそちらを振り向くと顔を真っ赤にした男が睨んでいた、見るからの不機嫌そうだ
「おいおい、姉ちゃん達。静かにしてくれねぇか、こっちは久々に仕事が上手くいって、景気良く飲んでんのに、あんな野郎の事話しやがって。さっさと店から出てけ」
顔の頬を見てみると打撲した後がある。
あぁ〜昨晩ジャーナリストと殴り合った相手かっとウタは察し、巧は話が途中で遮られた事に眉を顰める
「こっちは話の途中だ。聞きたくないならもっと奥に引っ込めよ。おっさん」
「おい、坊主舐めた口を聞く‥どうなるから分かってのか、あぁっ」
「分かんねえな、知りたくもねえ。こっちも立て込んでんだよ。いい加減どっかいけ」
双方を青筋を立てながら、柄の悪い頬を窄め睨みつける。お互いの気分を害する存在から目を背けない。まさにバチバチだ
「おい、喧嘩なら他所でやれ」っと店の外に向かって手を振る。
全く喧嘩をしにきたんじゃないよっと立ち上がって仲裁に入ろうとウタはテーブルに手をつける
バタンッ
張り詰めた雰囲気の中、再び木の掠れる音が店内に響く、空気はそのままに皆そちらに視線だけを向けると1人の男が顔をキュッと張り詰めてカウンターを睨んだ
「おいおい、お前ら何店の中で騒いでんだよ。此処は美味い酒で楽しく騒ぐ俺達交易員の憩いの場所、それを破るのはダメだって分かったてんだろうが」
黄色と緑のルージュカラーのバンダナをつけた小麦色の肌をした見た目が18歳程の青年は声を荒げる
先程まで巧達の絡んでいた酔っ払いは顔を蒼白にして、あわわっと2人から離れてダラダラと顔から汗を流す
「せ、せんちょう、違うんです。聞いて下さい、此処にいる余所者が、俺を殴ったクソ野郎の事を嗅ぎ回って」
「余所者だぁー、だからどうしたっそんな事は言い訳になんねえんだよ。前の騒動で懲りろ、もう一度一緒の土下座させるつもりなのかロック」
「あ、はぃ、すみませんでした。アンタらも、悪かったな」
酒の余韻がすっかり冷めてしまった酔っ払いは素直に2人に謝罪をして元の席に戻っていた。
その船長と呼ばれた青年は顔を緩ませると、首に手を置いてポキポキっと首を鳴らし、カウンターに座るっと「いつもの」っと軽く呟いた
マスターは何も言わずにボトルと開けて氷をコップの入れていく。
「悪いな姉ちゃん、にいちゃん。普段は悪い奴等じゃないだが、酒を飲むといつもああなってな。機嫌が悪りぃと余計の荒くなっちまう。注意はしてんだが、中々」
ドリンクができるまで間の時間謝罪も兼ねてか彼が話しかけた。
「なら禁酒でもなんでもさせろ。こっちは迷惑だよ」
「うんうん、気にしなくていいですよ。こっちもちょっと騒がしくしちゃったし、それよりもさっき凄かったぁー、さっきの人顔青くしちゃって」
2人は然程気にしていない。余所者である事には変わりないし一々喧嘩もする気のない。
「アハハ、それは言われちゃうな。俺の方でも言い聞かせてるつもりなんだが、中々最近は上手くいかねえ事が続いちまって、漸く今日『成果』をあげたんだがな」
おっと自己紹介が遅れたなっと立ち上がると手を差し出す
「俺の名前はパス、この島の交易船の船長をしてるもんだ。この島で知りたい事があるなら言ってくれ、何でも教えてやるさ。商品の上手い値切りとかもな」
取り敢えず続ける事を意識しなければ、病気を治したし、筋トレしてメンズファッションとか英語の勉強も頑張らないと、下手くそでも小説は書き続けるぞ。