世界の歌姫は夢の守り人と旅に出る   作:柳瀬悠

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ワンピースの最近の盛り上がりはすっごく嬉しい、アニメの作画も良好だし、このまま突き進んで欲しいですね


衝突

 

「貴方の力が必要なの!」

 

それはいつからだろう‥自由に歌を歌わなくなったのは

 

自分の歌が人の心を掴んだのは、それは最初はタダの弾みだった、悲痛な叫びを出したのは、ある島の町娘だった。

 

大海賊時代になって、多くの海賊がワンピースを目指した。その最中に資金や物資を確保する為に、国や島を襲って、人々の糧を奪っていく。

 

その建前すらも今は嘘くさく自分達が許される「免罪符」を掲げているだけ、本質はただの略奪だ。

 

それは許せない、だって普通に暮らしている人達から、全てを奪って、笑顔や喜びすらも踏み躙る。

 

その女性もその時代の被害者の一人、島が海賊に襲われ、森や家が燃やされて苦しい日々を送っていた。唯一残ったデンデンムシ、そこから流れてくる自分の歌声、それを拠り所にしてくれている。

 

嬉しい、苦しい現実の中で自分の歌がそんな辛い思いをしている人の心さえも癒せる。でもそれは同時に依存させている。

 

「ワンピース、ひとつなぎの大秘宝、あるか分からないそんな代物のせいで、皆んな奪われている!ふざけるな、俺の仲間は‥そんなもんで」

 

それは交易船の船員で、海賊に襲われ仲間を失った人身体中が傷だらけ、腕は包帯で覆われていた。

 

「私達皆んながお腹を空かせてる‥なのに、海賊達は私達の食べ物で宴をして、笑ってる。悔しいよ」

 

それは海賊に食料を奪われ、罪悪感も感じずに笑っている海賊に怒りと恐怖を抱いている子供達

 

「海軍も政府も、弱者の味方だって言いふっている。でも私達が助けを求める時には、全部が終わってる」

 

救いである正義の味方の海軍、でも彼等も100%と救ってくれるとは限らない。その事に不安が募って、泣き崩れる老人

 

そんな不安の声を差別なく聞き続けた。何故って頼れる人間がいない、不安を避けてくれる存在もいない。なら自分が聞くしかない。

 

一人ぼっちのワタシを見つけてくれたのは、彼等なのだ、悲しみや怒りを肩代わりできるなら、手伝いたい。

 

これは見つけてくれた、皆んなへの恩返し!同じ海賊に苦しめられた被害者として、みんなの希望になりたい

 

でも、1つ1つの言葉を聴いていくうちにそれは減ってはいかず、寧ろそれは無数に増えていった。

 

「海賊嫌いのウタ」が苦しみの嘆きを聞いてくれる!いつか解放してくれる存在ではないかと、希望を抱き始めた。

 

それはどんどんと肥大化していった。いつしかそれは狂信へと変貌し、歪で不安定な、大きく膨れ上がってふとした拍子で割れそうな風船の様に、彼女の精神にのしかかってきた。

 

皆んな任せて私の力だったら皆んなが平和で自由な世界を作れる!皆んなが望む救世主になれる。

 

純粋無垢故の慢心か、それとも期待に対する重圧すらも受け入れて、満面の笑みを向け続ける優しさか。完全に自分は望まれる救世主へと変貌しかけていた。

 

そんな矢先にウタはある真実を知った。

 

「それ」を知った彼女は怯え、恐怖、救いを求めた。過去の自分が犯した最悪の罪、今までそれを知らずに平然と生きて、最愛の家族が肩代わりしてくれた事。

 

皆んなを恨む資格なんて最初っからなかった。ずっと自分を捨てて、逃げたと思い込んでいた、利用されたのだと、真相は決して別物であったが為に彼女の精神はおかしくなっていった。

 

以前は人々の救済の願いも苦ではなかった。でも今聞いている自分は、彼等が望む潔癖な人物なのではない事を知ってしまって、心が締め付けられる。

 

皆んな、ごめんね私はそんな資格なんてない。でも、だからこそ皆んなを「新時代」に連れていってあげるから、それが私に出来る罪滅ぼしだから。

 

最愛の家族達に会いたい、罪を償いたい、逃げたい‥

心中にその思いを隠したまま、人々に虚構の姿を見せ続ける。救われる道はそれしかないと、世界を閉ざした。

 

暗い暗い深海に沈んでいく感覚、長い時の中、体は少しずつ重くなり、鉛の様、全てを受け入れ、目を閉じようとした時

 

一筋に光が見えた。それは不規則に輝き、安定性のない光、でもそれは少しずつ、自分に向かって光を向けてくる。

 

その正体が何かはまだ彼女は分からない。それから一瞬目を背けた。救われたいでも、縋れば元の自分に戻れなくなるから‥

 

 

 

 

 

「いや、本当に違うの最近ね。新曲作りが忙しくって超寝不足なんだ。いやぁー、「皆んな」が元気になれる曲にしたいのに」

 

此方を見てくる隣人に笑顔を浮かべて、誤魔化した。それはとてもわざとらしく自然にする純粋な笑みとは異なって、笑顔ではあるが、「影」があった。

 

流石の鈍い彼でも、誤魔化されない。神妙な顔つきのまま此方を見続ける。クルリと回って彼から視線を逸らした。

 

見続けると彼は自分の中に踏み込んできそうで、少し怖い。

 

ふと風が髪を靡かせる。二つに結んだウサギ耳の様な髪型が大きくピコピコ上下する。

 

一体どんな仕組みしてやがるんだ、巧は今更だが眉を少し上下した。

 

彼女の感情の起伏に反応して動くらしいが、やはり微妙に動きが大袈裟だ。それを気づかれていないと思っているウタは喋り続ける。

 

「凄いんだよ。私の歌声は今じゃ世界中が聞いてくれてる。皆んながその歌を救いにしてくれてる。最初みたいな気軽に歌っていた時には考えられなかったよ」

 

大きく両手を広げて、海の向こうへと向かってそう言い放つ。この見た事ない海の向こうにいるファン基信者達は今か、今かと自分の歌を待っている。

 

最初の時の唯「歌」を歌いたい、誰かに自分の存在を知ってもらいたい。

 

そんな単純なモノだったでも今はそれは変わり、皆んなを導く「光」の証になってしまった。

 

天使の様な美しい歌声は、人々の歪んだ道標。そんな姿は彼は好きになれなかった。無理をしている、言葉に中身がない

 

「それ、楽しいのか?」

 

彼はふっと彼女に尋ねた。

 

「いや、楽しいとかそんな簡単じゃないんだよ。私は歌で世界を作る事ができるの、だから皆んなを私が作る「新時代」に導いて、幸せにする、絶対に‥だって」

 

私は世界の歌姫、皆んなを導く「新時代」の叶い手、この悪意と混沌が犇く、海賊時代を終わらせる象徴!

 

それを語る彼女の目は黒く濁り、語り口も狂気に染まっていく。

 

再び振り返った彼女の様子に黙ったまま、顔を崩さず巧はズボンのポケットに片手を突っ込んでいた。そんな彼にトコトコと近づくと、その頬に手を添えた。

 

「安心して、巧も一緒に連れていってあげる。私の世界には争いも苦しみもない、私の隣にいてくれた貴方もいれば、きっと私は皆んなに答え続けられる」

 

その手は微小に震えていた。この教祖の様な言葉すらも心の底では、嘘で塗り固められた声にすぎない。

 

唯の自分を知っている存在が支えてくれれば、きっと完璧にそれを演じ続けられる。

 

歌姫である自分に軽口を飛ばして、喧嘩したり、勝負する、時折不器用な優しさで支えてくれる、そんな彼を離したくない。

 

「だから一緒にいて、ずっと‥ずっと‥離れないで、そうしてくれたら私は貴方の欲しいもの、全部あげる‥お願い、お願い」

 

その目は黒く狂気に満ちていたが、何処か悲しげな瞳であった。

 

ここで否定されたら本当に自分は孤独になる、受け入れれてくれば最後まで望む英雄にも救世主にもなれる。

 

しかしその男はそんなものを求めていなかった。

 

「アホか、お前?」

 

「えっ、いた」っと彼が口を開いたと思うと、額にパチンと痛みが走る、慌てて額を抑えて、摩り、目の前を見ていると、片手をデコピンにして、佇む彼がいた。

 

「何する、いきなり」

 

「何するのじゃねえよ。さっきからバカみてえな事ばっか言いやがって、似合わねえんだよ」

 

えっ、何言ってるの。先程まで静かに聞いていた彼は近くの木に寄り添い、呆れた口調でそう言い放った。

 

彼は嘘をつけない。つまりそれは本心からの言葉、彼女に言う救世主に救いなんて彼は求めていない。その証拠に鋭い目は揺れていない。

 

どうして否定するの、彼の目を見ながら彼女は困惑した。自分を支えてくれる存在、「自分」の素顔を晒せる人間なんて、この場にはいない、だから彼に支えてもらいたい。

 

でもそんな彼は自分の計画を否定した。彼女は冷や汗を流しながら彼に尋ねる。必死に訴えれば分かってくれる、理解してくれるはずだと

 

「なんで‥なんで否定するの、だって皆んなが平和に暮らせるんだよ、誰かが死ぬ事がないんだよ。最高の世界じゃん、理不尽な暴力もない、そんな新時代をなんで拒むの、私の「夢」が気に入らないの?」

 

「その夢っていうのは、本当にお前自身のもんなのか‥」

 

ふっと言葉を溢した。変わらずその表情は無愛想でまま、海の方を見ながらふっと尋ねた。

 

えっ一瞬返答ができなかった。そんなの「yes」に決まってるそれ以外の回答なんて、ない、ない、絶対に

 

「えっ、何って、当たり前じゃん。だってそうじゃん。私の力が有れば皆んなが平和で自由に暮らせるんだよ。病気だってイジメだって起こらない。皆んなが幸せになれる。そうに決まって「嘘だな」えっ」

 

「見りゃ分かんだよ。お前それ言ってる時嘘くせぇ顔じゃねえか」

 

巧は以前の同居人達の夢を聞かされてきた。それを語る彼らは現実に夢を描き、苦しみ、戦いながら毎日を生きていた。

 

あるものはそれは呪いだと言った。夢を持っていても必ずしもハッピーエンドになるわけではない。結局叶わず夢に縛り付けられる人間もいる。

 

でも彼らの目には「夢」を語る時に共通するものがあった。

 

暖かさだ、それが彼にとっては眩しく見えて、うっとしくて、憎らしくて‥それ以上に羨ましかった。

 

でも隣の彼女が今「夢」を語った時にはその暖かさがない。

 

今まで感じてきた自分が守りたいと思う願いとは違って、誰かに押し付けられた中身のない願い‥

 

それがとてもイラついてしょうがない。

 

どうして彼女はそこまで本心を隠してありもしない救世主を演じようとするのか、分からない、だからこそ否定するのだ。

 

「アンタに何が分かるの‥‥」

 

「あぁー、分かんねえな。自分を騙して、逃げようとしている奴の気持ちなんて、考えたくねえ」

 

自分でもこのイラつきを他人に押し付けたくない、でも一度でたモノは戻らない、此処で言わなかったら彼女はきっと引き返せなくなる、自分も後で馬鹿みたいに後悔する。

 

なら言いたい事を声にする。それでウタに嫌われようと蔑まされようと彼は引く気はない、嫌われてでもやらなければならない事は見定まっている。

 

「ふざけないでよ。これは本当の私だよ。世界の歌姫、海賊嫌いの歌姫、世界の救世主で‥‥だから私は「責任」を背負って皆んなを導く存在に」

 

本当は違うそれを名乗る事、事態資格なんてない。去勢を張り続けるしなければいけない理由があるから‥なのに、何で否定するの、何で止めようとするの

 

ウタは受け入れて欲しいと願う、彼は変わらずそれを跳ね除ける

 

「良い加減に目を覚ませよ。お前神様にでもなった気か、なら役不足だな」

 

「五月蝿い!何よ、人が頑張って色々と言ってるのに偉そうに説教?。私は今の自分に満足してるのよ!凄いんだよ私は、救世主になれるんだから」

 

自分の意見を真っ二つにしてくる彼にウタは半ば奴当たり、先程までの冷静さが抜け落ちていく、虚勢で固められた姿は崩れていく。

 

「口が悪いだけのアンタに偉そうに上から目線で言われる女じゃないの、良いから黙ってよこのアホ、ガキンチョ、猫舌」

 

最後のフレーズが聞こえて、彼の血管が切れた。少女に目線を向けた。

 

このくらいの煽りで反応する彼も同レベルであった。

 

「誰が猫舌だよ。この脳みそすっからかん女がさっきから人が聞いてればなんだよ救世主、世界を救う神、餓鬼みてぇな事ばっか吐きやがって、どっちがアホだよ。この脳みそお花畑のゴリラ女!」

 

一番気にしてる事をこの女が言いやがった。弱点の一つで一番克服したい一つをこの女は悪口に使った。

 

もう止まらない、やってやるよ‥

 

お互いの口から飛び出してきたのはまるで子供のレベルの悪口だ。お互い子供っぽく頑固な部分があるのは知っている、どっちが大人にならなければいけない事。

 

でも今は言いたい事を言い合った方が人間らしい、そんな事を考えてはいないであろう二人はお互いの顔を睨みつけ、大声で悪口を言い放っていく。

 

「何よこの甘党、馬鹿、アホ、鼻くそ、猫舌、不良、チンピラ男!」

 

「何だと、この、めんどくせぇ、変な髪型、ガキ、ゴリラ、五月蝿い、妄想大好き女」

 

「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!」

 

「アホアホアホアホアホアホアホアホアホアホ!」

 

「この!」

 

「この!」

 

大きく息を吸うとお互いの顔に唾が飛ぶ距離で、口を開き

 

「アホ男!」

 

「馬鹿女!」

 

胸の内に溜め込んだ思いを、やけくそな悪口で吐き出し尽くして、はぁはぁっと荒い息を出し続ける

 

「「はぁ‥‥はぁ‥‥」」

 

暫く吐息以外の言葉はなく、お互いが息を整えようと木に手をかけて落ち着こうとする、しばらくはそれ以外の音は聞こえなかった。

 

「じゃあ‥どうすれば良いの」

 

最初に呟いたのはウタだった。

 

「あぁ?何だよ」

 

「私はっ!どうすれば良いのよ‥皆んなが今まで、私を支えてくれたんだよ。いっぱい歌を聞いて、応援してくれた‥それなのに今更、どうすれば良いよ、何をすれば「正しい」の‥」

 

答えが欲しい、自分が逃れる術が欲しい。幸せと思っていたそれを否定されて、怒られて、皆んなを導くっていたのにあんな煽りで、崩してしまった。

 

ならどうすればいいのか、下に向いていた顔を上げるその顔は涙でぐしゃぐしゃで、涙で目が真っ赤になっている。

 

強引な押し付けだ。情けなく誰かに聞きたい、何が正しいのかを、こんな口の悪い男に聞くなんて、完璧に非の打ち所のない返答なんて返ってくるはずがない。

 

彼も同様に顔を上げると、不貞腐れながら

 

「正しい事より、やりてぇ事じゃねえのか」

 

「えっ?」

 

「俺は歌は上手くねえし、話すのも下手くそだ‥お前みたいに何千万の奴らの気持ちなんて、全て受け止めきれない」

 

でも、ふっと空を見上げた。そんな身の程知らずな馬鹿でもできる事がある。夢がない自分だからこそ守りたいものがある。

 

この島の外の世界中の人間じゃない。隣にいるたまにうっとしくて、頑固で、意地っ張りで、でも歌を歌って皆んなを救いたいという「夢」を持つ一人の女の夢、それをどうしようもなく守りたい。

 

「でもな、お前はそういう奴等の支えになりてぇんだろう、お前の歌はもう、「笑顔」とか「希望」になってる、だから神になんてなるなよ」

 

その顔ははあいも変わらず強面で無愛想、海賊みたいな柄の悪さ、でも真っ直ぐ向かれた目はしっかりとウタを視界に収めて、決して逸さなかった。

 

「お前が笑顔にした奴らを数えりゃいい、全部背負って自分を殺して閉じこもんな‥馬鹿」

 

彼の言葉にウタは心が揺れた。エレジアの真相を知った時、どうやって罪を償えばいいのか、どうやって逃げればいいのか、そればっかりを考えていた。

 

もうそれしかないと思った、人殺しの自分には選択肢なんてないっと、でも今まで考えなかった。

 

今まで歌ってきた人達の笑顔を、心の支えになって、生きる意味を見出せたって、喜んでくれる人達の笑顔を。

 

「過去」は消えない、でも「今」を生きる皆んなは数えていける。

 

「誰かの笑顔を数える、でも私は世界を救わないと‥」

 

それでもまだ迷う、迷ってしまう。ウジウジしている事はウタも自覚しているが、直ぐには切り替えられない。

 

そんな彼女にイラついてしょうがない。巧本人は人に説教できる程の自分が立派な人間だとは思ってない、でも今、目の前の彼女程決断できない奴がいるとイラついてしょうがない。

 

夢は呪いと同じだ、っと誰かが言った。コイツ自身の本当の夢、どんな重荷を背負っているのか分からないし、知らない、でもだからこそ一緒に背負いたい

 

「はぁ、だからっお前は無理すんなよ。何にも知らねえまま10年もこんな島で引きこもってる癖に、それで世界を救う、寝言は寝て言え」

 

「それはそうだけど、今更、積み上げてきたものを失いたくないし、それに怖い、一人でこの海を旅するなんて考えられない。孤独はもう嫌なの‥」

 

凶悪な海賊がひしめき合う大海、そこに一人で行くなんて無謀すぎる、怖い怖いと彼女の表情は恐怖に震えていた。

 

はぁ〜この女は‥っと頭をかきながら、よしっと何かを無理やり決心した。

 

「あぁー、もう分かった!行く、一緒に行ってやるよ。そうすればお前は一人じゃない。それでいいな」

 

「えっ、でも、巧だってこの外の世界なんて知らないじゃん。海賊だっていっぱい、いる海なんだよ。そんな場所に行くなんて」

 

「別に此処にずっといたいとは思ってねえ、お前が世界を変えたいんだろう、なら一緒に行ってやる、お前が嫌だって文句言っても聞かねえから、覚悟しとけ」

 

背中を押したのだ紛れもない乾巧自身である。

 

なら彼女が夢を叶える為にこの海を向かうなら構わない、この世界に来た理由も意味もわからない、でもやるべき事は今見定まった。

 

計画なんてものは白紙だし、航海術も船もクルーもいないゼロからに出発だ。この世界の事で知らない事は多すぎる。

 

でもだからこそやる意味はある。

 

「それに会いたい奴がいるなら早く会いに行け、死んだら‥‥二度と会えねえんだ。世界の前に自分で自分を助けろ、手伝ってやるから、仲間として‥」

 

そういった彼の横顔はどこか寂しげで、いつもの強がったセリフを吐いている人物とは思えなかった。誰かを亡くした経験がある物言いに彼女は黙った。

 

「私‥会いたい」

 

心が少しずつ熱くなる、頭に思い浮かんだのは長い時の間会えなかった家族や友人、姉の様に慕った存在ととても温かい場所

 

「シャンクス‥赤髪海賊団‥ルフィ‥マキノ‥風車村のみんなにも会いたい」

 

まだ見たこともない国や街、島、未だ見ぬ海の向こうへ行ってみたい、自由な世界を見たい

 

「世界を見てみたい、ここじゃない場所に行ってみたい、だからお願い‥私と一緒に来て‥」

 

崩れ落ちる様にその場に座る。それにつられる形で巧も身を屈める。返答はないでも、返す必要もないからだ。

 

そうポツリポツリと欲望を連ねていく、涙が情けない弱音が流れてもう諦めて消し去ろうとした本音からの「願い」グッと巧の服の袖を掴んだ。

 

その手は少し震えていたが、先程の怯えではない事は分かった、そこにいたのは唯の女性の手だ。世界を救う英雄ではなく、唯の世界を知りたい一人だ。

 

「ありがとう‥巧」

 

ボソッと声が聞こえた、返答はしない。今にも崩れてしまいそうに見える彼女、虚構に満ちた姿を崩して今は唯泣く

 

彼はそんな彼女の横顔を見て、ふっと視線を逸らしてドッカと座り込んだ。涙が全て流れ落ちるまで余計な言葉を述べず、ずっと黙って隣に座っていた。

 

天の月はあいも変わらず夜の空を照らして、草が風に靡き、通り過ぎていった。今宵の月はウタには余計に眩しく見えた。

 

 





たっくんの表情とか心情とか書くの難しい、ツンデレモンスターは書くの苦戦する。

たっくんはウタの事が嫌いじゃないです、内心は嫉妬に似た感覚かな。皆んなを笑顔にする夢を持つ彼女を横で見ていて、時折それが羨ましくて、つい悪態をついてしまう。

そんな彼女がよく分からないあやふやな存在になって、消えてしまいそうな感覚に襲われて、無理やり腕を掴み取るように引き戻したって感じですね。

身近な人間には笑顔でいて欲しいと思っているからこそ、彼は自分が嫌われようとウタにぶつかったんです。妄想してると、「ツンデレたっくんカッケェェ」っと内心でガッツポーズをとってます。

次回はまた少し先になるかも、文才があればもっと早いペースで書けるのに、自分の凡才に少し、むかつきます。
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