東の海編はオリジナルを交えながら、ルフィ達の足跡を辿る予定、仲間はオリキャラを入れつつ個性的な人物を入れる予定です。
ルフィ達に空白の2年の中で起きたであろう出来事を主軸にしていきます。
そこは無人の教会だった。
外壁はボロボロで所々で崩れて、内装はそれと同様にボロボロ規則正しく並べられていた木の長椅子は既になく、唯一無事と言えるのは、教会の一番な奥に飾られているガラスだけ。
「‥‥‥」
それを無言のまま見上げ、瓦礫に腰掛ける男がいた。年齢は中年程で肩は通常よりも高く、体つきもなかなかでかい、黒いサングラスと顔の切り傷から、最初は悪印象を抱きやすい、フランケンシュタインの様な見た目つきだ。
しかし彼は決して悪い人間ではない。
以前は、このエレジアと呼ばれる音楽の都を収めた王であり、その頃から音楽の師として多くの生徒達に多くの経験と技術を教え込んだ程の人だった。
しかし、今この国はほぼ無人と言っても過言ではない。自分の軽はずみな行為で全ては変わってしまった。以前共に歌を奏でた生徒も同僚も、国民もいない。
後悔だけが残り、今に至る。この協会はそんな過ちで起こった大災害で残った建物の一つだ。
ギーと後方から扉の開く音が聞こえた。来たかっとそちらをゆっくり振り返ると、見覚えのある鋭い目つきの青年が歩いてきた。
お互い顔を向けると少し無言になる。自分から呼び出したのに何故か切り出しにくかった。相手の青年も同じ様な不器用さがある事を知っている。
「忙しい時に呼んで‥すまなかった。そこに座ってくれないか」
気まずい雰囲気のなか自分だけ座っているのはどうかと思い、座れそうな瓦礫の方に手を向けた。彼は別段に気にせず、無言のままどっかと座り込んだ。
また暫く静かになった。何故自分が呼び出されたのかを青年が知らない、思い当たる節はあるが、自分から切り出す気にはなれない、自然に静かにもなる。
「君が来てもう、1ヶ月になる」
「あぁ‥」
先ず切り出したのは張本人であるゴードンだった。
「この島での暮らしはどうだった‥不便ではなかったか?」
この島は便利とは程遠い為ふっと質問をした。この島は確かに世界に名を轟かせる都ではあったが、今はほぼ無人、店もなければ、人も降りない。
唯一の人的交流といえば、定期的にくる交易船だ。外の世界から来た若者が退屈と思っていてもおかしくない、普段から積極的に談笑していないせいで、本音を言っていないかもしれない。
顔の表情はお互い無骨で変化はない。口を開くと普段と同じ様に、彼は頭を掻きながら、余韻もなく応えた。
「いや、別に全然悪くない‥‥寧ろ良かった」
彼自身別段この島の暮らしを不便とは思わなかった。人とあまり交流などせず、一人旅をしてきた彼にとっては別に気にする事でもない
寧ろ感謝をしていた。見知らぬ自分を拾ってくれてあまつさえ城に住まわせてくれて、食事まで提供してくれる、そこに不満を抱く理由がない。
他人であれば警戒される類のガラの悪さを自覚している。深く事情も聞かずに接してくれるゴードンに感謝している。
いざ感謝の言葉を伝え様とすると、喉の奥に引っかかって気恥ずかしくて言葉が出てこない。情けないがこういう性分だ。
その返答に「そうか‥良かった」っと安心した表情で強張った顔が緩む、彼は表情では読みにくいが、嘘がつけない人間である事を知っているからだ。
「君が来てから色々と変わっていった。私とウタだけの時はこの島は静かなもので、いつも彼女は寂しげな顔を見せていた」
此処に巧がくるまではこの島は寂しげだった。そうゴードンは語り始めた。この島で二人っきりになった彼はまだ幼いウタの養父になった。
家族同然の存在に裏切られた彼女は表情を暗くして、笑顔を見せなくなった。悲しみで笑いすらも忘れてしまった。
そんな彼女を必死に励ましながら、この国で娘として生徒として彼女に愛情を持って、音楽の技術と知識を教え込んだ。
心にある不安と罪悪感を押し込めながら彼は彼女の笑顔になってほしいと、最高の歌い手になってほしいと必死になった。
でもいくらその力を身につけようと、何処か踏み込めずに内心は中途半端な情けない想いがある。
そんな彼の心中を察していたのか彼女も、少しずつ笑顔を見せる様になった、どこか暗いモノを閉じ込める様な寂しげな瞳、長い時間でできたのはその程度だった。
どうしたらいいのか、彼女を笑顔にできるのか。彼は苦悩を抱いた。
無意識に膝の上の両手の拳を握った。そこには葛藤を抱いている人間のそれだった。
一番近くにいた自分が彼女の苦しみに気づけなかった情けなさと自分の力不足を呪っているのか。
「‥‥‥」
「私は今までウタを笑顔にしようとした‥でも年月は答えなかった。応えたのは彼女自身の行動だった、世界中に彼女は歌声を届ける様になって、笑顔を取り戻した」
ある偶然の出会い、それが起こした奇跡の様な技術で多くの人間に彼女は歌声を贈るようになった。
最初はほんの小さな「声」がだんだん大きく広がって、涙を流しながら感動したり、共感したり、年齢も性別も種族も関係なく多くの人間の心を癒していった。
ウタはそれに応える様に、元気に咲く花のように笑顔を浮かべる様になった。今まで積み重ねてきた全てを発揮し続けた。
彼らの声に応える為、多少無茶をする様にもなったがゴードンは心の底から嬉しくなった。自分ではできなかった「本当」の「笑顔」をする彼女を見て、隠れて涙を流す事も少なくなかった。
「でも、いつからか彼女の声に救いを求めるファンが集まってきた。ほんの短い期間でそれは爆発的に増えた‥」
この大海賊時代は一部のものには「夢」の時代だ。この海の向こうにある莫大な財宝「ワンピース」それを求める若い海賊が海を駆け抜けていく。
力を持たない市民達にとっては海賊は「恐怖」の対象、奪われる痛みに震える日々誰かに縋りたい、救われたいと思う者達は「偶像」を見つけた。
人は強がろうと弱い部分がある、ただ供与してしまえば他人に縋るしかない。
「‥‥‥」
この世界から見れば自分は異物でしかない。巧は外の世界の住人でしかなかったが、此処での初めての戦闘をした際、海賊の脅威を知ることになった
他人のモノを力づくで奪い、壊して、踏み躙っていく。なんとも野蛮で荒々しく邪悪で容赦がない悪党
全ての海賊はそうとは言うつもりはない。この世界の全て見ていない癖に決めつける人間になるつもりはない。
目の前に現れたそいつらが殴りたいと思える奴等だったそれだけの単純な話だ、でもそいつらを倒せる力を皆んな持っているわけではない。
アイツはそんな奴等の依代になろうとした。その痛みを分かち合い、自分を殺そうとした。
「私は‥何も言えなかった。あの子の幸せを奪うことは私にはできないと、ずっと言い訳し続けた。もしこのまま言わずにいたら、きっと彼女は大変な事になっていた」
ゴードンとウタには血の繋がりがない。どのタイミングで踏み込めばいいのか、そのラインが分からず、彼女の気持ちを尊重したい、でも何かが違う
ずっとこのまま「本心」を隠し続ける意味はない。
しかしそれを言えばどうなるか、彼は恐れて何も言えなかった。せめて自分ではない、彼女を正面で受け止める存在が現れてほしかった。
「偶像」としてではなく「人間」としてみる存在が、卑怯な行為だ、責任放棄だと思われてもしょうがない、願わずにはいられなかった。
「そんな時、君がこの島に流れ着いた」
それはお互いににとって偶然、本来ならあり得ない出会い、その事で大きく状況が変わるとは思わなかっただろう。
「最初はお互いどう話したらいいのかと、分からず戸惑って、他人とまともに接してこなかったウタとは、毎日の様に喧嘩していたね、ははは」
「あれは仕方ねえ。最初はアッチが勝手に因縁をつけてきたんだ。俺は悪くねえ」
「あははは、そうだったね。君たち二人は何処か頑固な所があって、中々仲直りしなかった、でも君が来て彼女は変わっていた」
まともに喧嘩も本音を言い合う相手なんて、エレジアに来て初めてだっただろう。同世代の青年と言葉を交わす事なんて、久々で調子が狂っていた事だろう。
でも暫くしてお互い喧嘩だけではなく、普通に話す様になって、一緒の食卓を囲み、オヤツの取り合いや、釣りやら、仕事の手伝いやらで、交流が自然と増えっていった。
どんどんウタの表情が豊かになってきた。
「前までは考えられなかった‥私だけでは彼女の心の奥底まで踏み込めずに、本音で言い合う事もできなかった‥‥情けない話だが、私は君に感謝してならない」
そして先日ウタがゴードンの部屋を訪れた際、話した事はとても驚きだった。
長い間この島にいたウタが外の世界へ行きたと言い出したからだ。最初は何かの冗談かと思った、でも彼女の目と表情は嘘ではなかった。
「ゴードン、私シャンクスに会いに行く!本当の事を全部聞きたい、それで世界を見て回るの、私の歌を世界の皆んなに届けるんだ!映像だけじゃない、目の前で」
ウタは何かが吹っ切れた様で、胸を張って宣言していた。一体何がキッカケか最初は思いつかなかったが、彼女の何かが変化したのだろう。
その後は急を急いだ。先ずは出発するための積荷の準備、食料、備蓄、船上の映像機器、衣航海のための船選びに時間を
「頭の中がこんがらがっている私は、ウタの元気のまま手伝って、船出の準備をし始めた。彼女を外の世界に向かわせる事に抵抗はあった‥でもその時は純粋び嬉しかった‥‥生き生きしている姿が」
ゴードンと同様に巧自身もその時は同じ様な気持ちであった。
悩む彼女の背を半ば強引に押したのは自分自身であったが、その後ウタの主導の元、船出の準備を手伝わされ、隠れてさぼると「ちゃんと働いて!」っとどつかれた。
前までうじうじしていた癖に、変わりみはえーだろう。っと思い文句を言いながらも、黙々と小箱やら撮影機器などを移動して、船選びにも付き合い、先ずは何処に向かうべきか、目標を決めるため、三日三晩寝る間も惜しんで準備に勤しんだ。
その時のウタの様子は、未だ何処か悩みを抱えている横顔だったが、前に進むべきだと、暗い部屋で一人黙々と机に向かい合っていた。
するとゴードンは大きな体を立てると、巧の方を振り向き、直角九十度の頭を下げた、一体何をしているのかと額に汗を浮かべるが、ポタポタと地面に涙が溢れていく。
「巧君、本当にありがとう。君のお陰でウタは新しい一歩を踏み出せた。育ての親として感謝させてほしい」
「いや‥‥別に俺は何も、して」
「いや、君のお陰だ。君が彼女の横で支え、本音で彼女にぶつかってくれた。それが彼女にとってはどれほど嬉しかったか、どれ程救われたか」
人にこれほど感謝された経験なんてない巧は、ほんのりと頬を赤らめ、顔を引きずりながらゴードンの顔を上げさせようとする。
別に本当に感謝される事をした覚えがない。外の世界に飛び出す決意をしたのはウタ自身、自分は唯心の内側に溜め込んだごちゃごちゃした想いを彼女に言っただけだ。
「顔を上げてくれよ‥‥寧ろ礼を言うのは俺の方だ」
訳もわからず見知らぬ場所に放り込まれた巧は、得体の知れない異物、そんな自分を家族の様に歓迎して、世話をしてくれた彼等には少なからず、感謝している。
大きな「恩」があるのは寧ろこっちだ。っとゴードンに頭を上げてもらいたい、正直気恥ずかしいさで体がむず痒くて仕方がないのだ。
その乾巧の意を受け取ったのか「そうか‥」っと顔を上げてコートの胸ポケットからハンカチを取り出して涙を拭きとった。
「いや、すまない。君はこういうのが苦手だと知っていたが思わず感極まってしまいって」
「分かってるなら、しないでくれ。恥ずかしくなる」
「あはは‥そうだね、すまなかった‥話を戻してすまないが、君はこれからウタと一緒にこの海を旅する事になるが、君は帰る方法を探したりはしないのか」
あっ、そうだ、ゴードンの指摘に思わず顔が硬直した。帰る方法を考えていなかったわけではない、前の世界には思い残すことばかりが残っている。
居候先のクリーニングの二人組、同じ宿命を背負って戦っている仲間達、やっと見つけた夢。
忘れていたわけではない。この島に来てから生活に慣れるために色々と奔走し、新たな同居人達との生活、悩み、苦悩、そして決断したウタに手伝わされて、忘れていた。
「その顔を見るに、何も考えていなかった様だね。私自身も君が元の世界へ帰れる様に情報を集めてみているが、めぼしいものは今のところは‥」
本来はもっと焦る、故郷へ帰る道も方法も分からないこの状況、でも巧はふっと頬をかくと再びいつもの表情に戻った。
「気にしなくていい、そのうち見つける‥自分で」
じだばたするには性に合わない、これから海に飛び出して世界を回れば何かしら手がかりが見つかるかもしれないし、同居人の生意気な女を一人をほっとけない。
そうか‥ふっと笑みを浮かべるゴードンは浮かべた。
海は危険も未知も多すぎる。昔ほどではないにしろ自分達が想像できない事なんて山程ある、人外的な能力を授ける果実があるのだ。
戻る方法ぐらい、簡単に見つかるかもな
不安があるが娘の様に育てたウタと、共に海に飛び出す友人であり、失礼かもしれないが息子の様に思っている巧なら、何とかやっていける様な気がした。
まだ若々しい小さい背中は危うい部分もあるが、頼もしくも見える。彼の背中を見て口には出さずに思った
プルプルプル、プルプルプル
何処かからデンデンムシの声が聞こえた。それは巧のズボンのポケットからだ。抵抗もなくそれを取り出すと、電源を入れた
「ねぇぇぇ!巧、今何処にいるのぉぉ、またさぼって昼寝でもしてるんじゃないないでしょうねぇぇぇ、仕事をしてよぉぉぉ」
デンデンムシから赤白の髪が生えたかと思うと、ウタの声が協会に響いてきた。苦虫を噛んだ顔になった巧は向こう側にラグがなく返答しようとする
「サボってなんかいねえよ。今ゴードンと話してる途中だ。だからいちいちそんなデケェ声出すなよ。迷惑だ」
「何言ってるの、これくらい普通でしょ。私が目を離すと直ぐに仕事をサボる、常習犯が言える事じゃないでしょ。このサボり魔」
「あぁ〜、分かった。行く、行ってやるからそこで待っとけ!5分で行ってやるから、一々デンデンムシなんて使うな、アホ」
軽い口喧嘩を展開した彼はガチャっと強引にデンデンムシの電源を消すと、待っているであろう待ち人の場所に向かおうと腰を上げた。
「って事で、俺は行く。他に何か言う事とか‥あるか」
「いや、私の事よりウタの方に行ってくれ、レディを待たせるのは男としてはいけないぞ」
「レディっていうには、アイツは凶暴だけどな」
ゴードンはまだ言うべき事や、伝えたい事がある様だが、ウタが同伴している時でもいいと、巧の背を押した。
彼は歩き出すと教会の入り口の扉を片手で開けると、ギーっと木の掠れる音と共に外に行ってしまった。
「彼等は未来に向けて歩き出したか、私も‥歩き出すべきか」
コートのポケットから何かを取り出すと、手のひらを開く、それは鍵だ、所々錆びついているが決して使えないわけではない。
ふっと上を見上げると陽の光が丁度反射し、色鮮やかなガラスは輝きを増す、過去の遺産はまだ残っている、
薬の副作用で心臓の鼓動が早いな。診察してもらった病院は結構親切な人が多くて安心しました。
頑張って投稿していくつもりですが、次はいつになるか‥早く戦闘で変身させたいのにもどかしい