ありふれた錬成師とハイリヒ王女   作:エヒトルジュエの箱庭

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前回は完全にタイトル詐欺でしたが、今回ようやく表題の彼女が出せました。

あとめっちゃ長くなりましたけど、いい区切りがないのでそのままペタリ。

※名前の誤字修正しました。「りりあーな」と打ったら「リリアーヌ」と出てくるってマジ謎……。


2 王女の決意

 ハジメは一命を取り留め、クラスメイトは誰も欠けることなく王都へ帰還した。

 だが、心までは無傷とはいかない。

 トウラムソルジャーに殺されそうになったことで戦いが怖くなった者。ハジメへの誤射をしたのは自分ではないかと魔法を上手く使えなくなった者。

 そして目の前で左足を喰い千切られるというリアリティのある負傷者を出し、魔法でも足を治すことはできないこと。

 魔人族が操るのは魔物という事実。それはあのベヒモスのような魔物も敵にいるかもしれないということ。

 

 これらのことから塞ぎ込む生徒も多かった。これを知って教会と国はなんとか戦線復帰してもらおうと様々な手段を講じた。

 まずは金銭、そして特権だ。相手が子供だということを利用して神の使徒には様々な贅沢を覚えさせる。更に戦争で活躍すればこれ以上の豪遊ができると知らせる。

 後は色を覚えさせること。元々王城のメイドの多くは今回の神の使徒を歓迎するために新規で雇った者ばかり。高貴な家の令嬢を揃えたために色ももちろんだが結婚すれば貴族としての金も手に入ると知った者は何人か戦線復帰した。

 

 女子に対してもイケメン貴族を紹介したり、教会騎士に共に戦おうとか甘い言葉を投げかけさせて弱っている心を勇気付けた。君にはできるよ、一緒に世界を守ろう。君が必要だ。

 そんな言葉は異世界に来て心細かった少年少女のいくらかには効いたようだった。

 思春期の子供なんてこんなものでどうにかなってしまう。

 後は、負傷したハジメへの扱いも大きかっただろう。

 勇者召喚の儀は国と教会が莫大な予算を投じて神に力を借りて為した一大プロジェクト。そんな先行投資をしたにも関わらず実地訓練如きでもう戦場に出れなくなった役立たずを教会の人間は、国民はどう思うか。

 

 ハイリヒ王国はその性質上国民のほとんどが教会の信者だ。特に王都は教会の総本山にも近いので信者の数は多い。

 国民のほとんどから無能の誹りを受けたらハイリヒで生きていけるのか。

 心が成熟していない高校生では、耐えられるはずがなかった。

 ハジメは教会と国が王都に残るように言っても聞かずに迷宮に赴き、そこで負傷したということになった。その事情の真相を知っている者はごく少数で、国民にとってはイシュタル教皇の言葉は神エヒトの言葉と同じだ。

 すぐに王国内では神の使徒の錬成師は愚かだったと認知されていく。

 

 この発表に怒った少数もいたが、少数の声とは権力に握り潰されるものだ。ある一名はここで対立を深めるわけにはいかなかったのである程度の譲歩はしたが、ハジメの立場が回復するほどではない。

 ハジメを攻撃した者が公になることもなく、神の使徒一行は訓練を再開させる。教師はハジメの悪評の撤回を求めて作農師としての力を使う遠征という名の厄介払いをされた。戦争に参加したくないと願った何人かは彼女についていき国のために働いていますとアピールすることになる。

 

 

 そしてハジメは、まだベッドから起きれなかった。

 

 

 いくらレアな天職とはいえ、治癒魔法も万全ではない。無くなった足の断面をどうにか取り繕うことしかできず、失った血を回復させることもできない。死の一歩手前だったこともあって衰弱していたことと、純粋に血が足りずに意識を覚醒させることはできなかった。

 既に遠征組が旅立って、迷宮攻略組という名の前線組ももう一度オルクス迷宮を攻略するために王都から出発してから、ハジメは目を覚ました。

 汗をかいていたからか、服がへばりついて気持ち悪かった。近くのテーブルに水差しが用意されていたのでその水を飲み、手紙があったのでそれを読むことにする。

 

 左足がないことは、メルドに抱き止められるまで意識があったためにわかっていた。幻肢痛のような症状もないものの、あまり見たくないものだったので意識的に視界に入れないようにした。

 手紙は白崎からのものだった。

 ゆっくり休んでいてというものと、治癒魔法を極めれば足を元通りにできるかもしれないから迷宮を攻略してきますと書いてあった。

 足を元通りにしたいということも本当だが、もう一つの目的はハジメは凄いのだと、ベヒモスは強すぎたのだと、ハジメに乗せられた無能という言葉を払拭したくて迷宮攻略に出向いていた。

 

 勇者というステータスから技能から装備から、何もかもを恵まれた存在が何もできなかったモンスターをたった一人で止めたハジメがこんな扱いを受けるのが我慢ならなかったのだ。だから彼女は前を向いて歩き出した。

 白崎にできることはそれだけだったから。

 ハジメはこれからどうしようと考える。松葉杖がないのでベッドから出ることができない。ナースコールもあるわけじゃないので自分が起きたことを誰にも伝えられない。

 王城の自分の部屋にいるということはわかって、メイドがたくさんいたから誰かが自分の部屋に、それこそ水差しの中身を変えるためにでも来てくれないかと考えていた頃。

 部屋の外からメイドのものと思われる話し声が聞こえた。

 

「あーあ、出遅れた。というか、何で私達が無能の担当なの?これじゃあ家から怒られるわ。折角送り出したのに何も成果を上げてないって。こんなくじ引きで決められた担当でどうにかしろって方が無理よ」

 

「ホントよね。他の人達もただ運が良かったか、使徒様方の好みに合わなかったのか相手にされてないだけじゃない。私達なんて最初からチャンスがなかったなんて酷い話だわ。かといって仕事をこなさなかったら家の名誉も傷付けるから最低限の仕事もしないといけないし。王女様が特に目を光らせてるんでしょ?」

 

「そうね。扱いは国賓だもの。あのチビっ子も教会に怒られたくないから私達の行動を監視してるだけ。王族の中で長子って言っても女だから次期国王はランデル王子に内定してる。嫁に行くまで王家の名を守ってるだけ。私達と変わらないわ」

 

「あの子と違って私達は詰んでるのよ。あの無能を籠絡しても家にとって良いことはなし。かといって他の使徒様にちょっかいをかけたら王族に睨まれる。……大人しくメイドとしての奉公に勤めるしかないのよ。実家に掛け合ってすぐに帰してもらうようにするしかないわ」

 

「はぁ〜……。ホントにツイてない。エヒト様が呼び寄せた方なんて初めてのことだから貴族としてこれ以上ない名誉になるってお父様はおおはしゃぎだったのに。まあ、錬成師でステータスも貧弱だったみたいだし?三十人もいたら一人くらい役立たずもいるわよね」

 

 ハジメはその会話で自分の置かれた状況を理解した。

 教会も王国も自分のことを必要としていないこと。無能として捨てられたこと。

 教会と王国の庇護下にいたのに、それは全て白紙に戻っていそうなこと。つまりこの部屋からも追い出され、衣食住を失うことを意味していた。

 一応教師と王族の一人の説得で衣食住だけは約束されていた。教会と王国からしても強制的に呼び出して騎士団という監視役もいたのに神が直接呼び寄せた存在が塵にも等しい無能だったので追い出しましたとなると神の威光に傷が付くとして保護は受け入れられていた。

 

 神のことが全てな教会と王国にとってこんな早期に離脱者を出したことが想定外。自分達の保身と神に不興を買わないようにするための妥協点がハジメへの最低限の暮らしの保証だった。

 今のメイドの会話だけで推察しているハジメにそんな裏事情全てはわからない。

 ではこれからどうするか。

 今までは王国から逃げられなかったが、今はむしろ追い出そうとするだろうと考える。もしかしたら左足を欠損している錬成師として既に名前や似顔絵くらいは流布されているかもしれないが、左足のことを誤魔化せば他の国で生きていけそうだと考えた。

 

 

 ハジメはもう、王国に留まろうとは考えていなかった。

 

 

 国民全員から無能扱いをされ、実地研修に強制的に連れていかれて、その上で足まで奪われた。ベヒモスを止めてこれが結果だとしたら救いがなさすぎる。

 元々神のことだって疑っていた。

 たかだか三十人。しかも戦争も知らない日本人の学生を連れてきて変えられるほどの戦況なら。何も力を持っていなかった子供に天職などを与えられるなら。

 国民に強い力を与えればいいだけ。わざわざ異世界から人間を引っ張ってくる理由がない。

 

 天職の仕組みがわからないのでそんなことができるかわからないが、異世界から人間を連れてくるよりは簡単そうに思えた。

 それに誤射だろうがなんだろうが、自分を殺そうとした人間が近寄る場所に居たくないというのが人間としての普通の感性だろう。四人組による攻撃は健全な肉体の時もされたので左足がなくて走れない今ではどうなるか。

 あとはそう。

 

(トラップを起動させて皆を危険に晒した人間から謝罪がないのはおかしいでしょ。一番被害を受けたのは僕だと思う。起きてないなら白崎さんみたいに手紙でも書けばいいのに。それもないってことは本当に僕のことを嫌ってるんだな。誤射だってもしかしたらあの四人組の誰かかもしれない。……なおさらここに居られないじゃないか。メイドの話だと彼らは無能扱いを受けてない。ってことは神の使徒のまま。ここを拠点にしているなら顔を合わせる機会もあるけど顔だって見たくない。問題は、この足でどうやって逃げるかなんだよなぁ)

 

 足のことだけがネック。松葉杖でもあればなんとしてでも逃げ出しただろうが、ないものはない。部屋の中を確認するとオルクス迷宮に持っていったポーチが残っていた。腰に付けていたそれは無事だったようで、中身も残っていた。

 あったのは魔物の魔石。魔石は何かとこの世界でも使い道があるようで冒険者ギルドでは買取も行われていると本で読んだ覚えがあった。

 今のハジメには換金もできないので、やることは一つだけ。

 魔物の核だろうが、魔力を帯びた物体だろうが石は石。

 そしてハジメは錬成師だ。

 

「錬成」

 

 ただの物体を変形させるよりはプロセスが気になったが、それでも魔石は姿を変えて杖になった。いくつか魔石を結合させて接ぎ合わせたものの、ひとまず一本の松葉杖が完成する。色は魔石のままだと紫色で不気味だったので色素も弄って木にしか見えないようにした。

 貰えないお金よりは現物だ。ハジメも一応神の使徒としてお金を貰っていたが、買い物もできない状態でお金なんてあっても何もならない。

 魔石の数は少なかったのでもう一本の松葉杖を作ることはできなかった。だがこれで部屋の中くらいは好きに歩き回れる。松葉杖を左脇に挟んで何か無くなっていても大丈夫な物を探し始めた頃に部屋の外からまた声が聞こえてきた。

 他のメイドも合流して悪口の井戸端会議でも始まったのかと思ったら、どうやら違うらしい。

 

「あなた方。ロウファン家の次女とクリアランス家の三女ですね?仕事もせずに雑談などメイドとしてあるまじき醜態ですわ」

 

「リリアーナ王女……⁉︎」

 

「まあ、急に寄越されたメイドなどこの程度だとは思っていましたが。あなた方、もう家に帰ってよろしくてよ?財源も無限ではありません。タダ飯食らいを置いておくほど王宮は優しい場所ではありませんので」

 

 どうやら第一王女にバレて逃げていったらしい。どうして第一王女がハジメの部屋の近くに来ていたのかハジメにはわからなかったが、この状況を第一王女も憂いているらしい。

 

「確かに使徒の皆様の血を取り込めば優秀な子宝に恵まれるかもしれませんが。露骨すぎる上に父上も見過ごす始末。おそらくハジメ様の看病などしてはいないでしょう。へリーナ、お願い」

 

「かしこまりました」

 

 指示を受けたリリアーナの専属侍女であるヘリーナがハジメの部屋の扉を開いた。まさか入ってくると思っていなかったハジメは立ったまま二人を迎えることになる。

 部屋に入ってきた二人としても、ハジメが起きているとは思わなかったのか目を丸くさせる。

 

「ハジメ様⁉︎起きていらっしゃったのですか⁉︎」

 

「おはようございます、で合っていますか?リリアーナ王女殿下」

 

「そんな呑気な挨拶をしている場合ではなく!ヘリーナ、まずはハジメ様の状態を整えてください。食事を用意するように他のメイドに伝えてきますわ」

 

「委細承知です、お嬢様」

 

「へ、うわああああああ⁉︎」

 

 ハジメは抵抗するまでもなく体を拭かれて衣服などを整えられた。着替えなどは苦労しながらも自分でできることはした。思春期なハジメは自分と歳の近い女性に色々とやってもらうのは羞恥心があったからだ。

 松葉杖があればどうにでもなったし、腕や指がないわけではないので着替えに支障は出なかった。

 その後病人が食べるような消化の良い食事を食べて、改めてリリアーナと向き合うハジメ。

 

「ひとまず、意識を取り戻したことは嬉しく思いますわ。カオリがとてもハジメ様のことを心配していまして……」

 

「ああ……。ショッキングな出来事を目の前で見せちゃって、その上僕は何日も目を覚まさなかったらそうもなりますよね。彼女は心配性ですから。……それで、今の僕って教会と王国からしたらどんな立場なんですか?さっきのメイドの話からある程度は予想がついていますけど」

 

 白崎のあの態度を心配性で片付けるハジメに鈍感なのかしらこの人とリリアーナは思ったものの、ハジメの要求である今の現状について話し出した。隠していても無駄なので包み隠さず全てを伝える。

 

 

 

 

 教会と王国はオルクス迷宮にハジメが行くことを止めたが、本人の意志で向かったという風に情報統制が図られたこと。

 

 ()()()()()で迷宮の罠に引っ掛かりベヒモスと戦うことになったこと。

 

 勇者の活躍で使徒一行は無事だったものの、ステータスの低いハジメだけ左足を欠損する無様な結果になったこと。

 

 イシュタル教皇によってハジメが無能だと発表されたこと。なので国民はハジメが無能だと知っている。ただし畑山愛子の嘆願によってハジメの衣食住だけは守られることになったこと。無能という発表の撤回にまでは至らず、撤回させるために畑山と数人のクラスメイトが国内の農地改善遠征に向かったこと。

 

 クラスメイトは迷宮攻略組と畑山の護衛組に別れたこと。

 

 迷宮攻略組も既にオルクス迷宮に再アタックをしていること。

 

 ()()()()()を犯した人物は些細な出来事だったので罰則はなし。今も迷宮組として何も枷なく活動していること。 

 

 ハジメに魔法を誤射した人間が誰かという炙り出しも行なっていないこと。これはクラスメイトのメンタルを慮ってとのこと。

 

 国としての決定はハジメにこの一室を与えて、衣食住は完全に援助することにしたということ。その上で錬成師なのでできたら何かしらの作成を行ってほしいこと。

 

 全てを伝えた後、ハジメは額を抑えながら大きく溜息を吐いた。

 

「……なるほど。いかにもな終着点だ。神が選んだ人物が非戦闘天職以外で傷物なのは許さないと。その上で一応は神の使徒だから教会も王国も僕を抱え込んでおこうと。生きてるだけ最悪じゃないと言いたいところだけど、生きている中では最悪に近い状況じゃないか」

 

「王族の名に懸けて、ハジメ様を守ります。それがあなたをこの世界に呼んでしまったわたくし達の責任ですから」

 

「あ、別にいいです。僕、この王宮から出て行くので。教会と王国が差し出す条件が僕に対してメリットがなさすぎる。兆が一の可能性に賭けて人間国家の味方はしますけど、王国じゃないとできないことではありませんから」

 

 ヘルシャー帝国にでも行こうかなと考えているハジメ。人間国家最強の武力を持っているとのことだったので錬成師として食いっぱぐれないだろうというくらいの考えしかなかったが、王国に留まるよりは万倍マシだと考えての発言だった。

 だが、それはリリアーナからすれば止めたいことだった。

 確かに王国がしたハジメへの仕打ちは酷すぎる。その上でまだ働けと言っているのは酷なことだ。

 

 それはわかっているものの、神の使徒が逃げ出したことに付随する王国への求心力の低下、純粋な戦力の低下、そして負い目に対する返済ができないことへの苦心など公人としても私人としてもいくつも浮かぶデメリットにリリアーナは止めたかった。

 それでも、最後に勝ったのはハジメに対する負い目だった。王国に残ってもハジメは苦しむだけ。無能だと思われながら仕事をするなど精神衛生上、絶対に悪い。そしてこの傲慢さを押し付けている国の、特権階級に一番近いリリアーナの言葉では止められないだろうと彼女の頭脳が訴えかけていた。

 だから、彼女は最後の抵抗をする。

 

「……わかりましたわ。ハジメ様、数日以内に王国から出られるように手配を致します。ただお願いがあります。せめて、カオリへの連絡手段だけは残していただけませんか?彼女が知らないままにハジメ様が失踪したとなると彼女は悲しむでしょう」

 

「うん、まあ。白崎さんにはお世話になりましたから。頻度は少なくても連絡くらいはしようと思います。それか、王女殿下が僕の生存を彼女だけに伝えてくれれば」

 

「わかりましたわ。……カオリ()()でよろしいのですね?」

 

「生徒はそうですね。後は先生にも伝えてほしいです。僕のために骨を折ってくれてるみたいですし、先生は最初から僕達が戦争に参加することに反対していましたから」

 

「ええ、ではそのように」

 

 この会話でハジメが白崎以外のクラスメイトを信頼していないのだとわかって、これ以上(きず)を開かない方が良いだろうとクラスメイト関連の話はやめることにする。

 そして、ここからはリリアーナの私人としての話だ。

 

「その、ハジメ様。旅立つために必要な物はありませんか?流石に身一つでは他国に行けないでしょう?王国を出るまでの護衛はわたくしが信用の置く者を手配します。護衛以外に入り用な物をお教えください。せめてそれくらいは、わたくしに用意させていただけませんか?」

 

 王族なのにここまで誠心誠意訴えかけてくるリリアーナの様子に、ハジメは胸を打たれた。ここまで優しくしてくれる人がこの異世界に居ただろうか。メルドと騎士団以外では唯一の人だった。

 そもそも王国から出て行くということを話してしまったハジメのミスでもあるのだが、起きたばかりということとリリアーナの柔和な態度に絆されてしまったが故だろう。

 友達がほぼいなかったハジメにとって、優しい人とはそれだけで心にクリティカルヒットを与えるのだ。

 

 それにリリアーナが一際美少女だったこともハジメにダメージが入った理由の一つだ。

 オタクであるハジメからすれば、美少女で王女で優しい、クソッタレな国の中の数少ない清涼剤というどんなファンタジーの中の王女様だという話だ。この状況そのものがファンタジーだが、その中でもリリアーナは特に輝いていた。

 だから、ハジメは彼女に甘えてしまう。

 

「えっと、じゃあ。僕達が貰っているお金ってどれくらいの生活ができますか?ホルアド以外の町を知らないので金銭感覚が身に付いていなくて……」

 

「わたくしも市井に紛れていますのでその辺りは詳しいですよ。教会の重職やメルド団長と同じ額の月収ですので、一般家庭でしたら四人暮らしで二ヶ月ほど保つかと」

 

「え、予想以上に貰ってた……。ちなみに他の国でも金貨の価値は変わらないんですか?」

 

「ええ。このトータスでは人間国家で金貨の価値は変わりませんわ。亞人族の国や魔人族の国はわかりませんが……」

 

「さすがに人間国家に留まる予定なので大丈夫ですよ。なら生活費は大丈夫として……。義足ってこの世界だとどうなっていますか?」

 

「義足、ですか」

 

 リリアーナはその質問にも真摯に答える。

 トータスでは義足と呼ばれる物はあるにはあるものの、正直杖と変わらない物だった。欠損部分に木を携えて、その木の部分に一本の太い木を刺しているだけの物で木の先端部分でそのまま歩いているような形だ。ちょっと手を入れて足型の木を更に先端部分に着けている者もいるが、結局木でできた杖の代用品でしかない。

 地球のように歩くことに支障の無いレベルはもちろん、パラリンピックで使われるような走れるような義足も存在しないとわかってそれは求めていた物ではないと理解する。

 ハジメが逃げるために必要な物は足だ。いざという時に走れる、最低でも歩ける物でなくてはならない。

 だからリリアーナに用意してもらう物を追加する。

 

「じゃあロングブーツを用意してください。あと、ブーツの中に入れるある程度の重りになる物も」

 

 それくらいならと、リリアーナはすぐに用意した。茶色の男性用のロングブーツに、重りはどの程度必要かわからなかったのでブーツに入りそうな物はとりあえず用意した。

 ハジメはブーツに重りを入れていき、ブーツを持って重さを調整して左足の近くに持ってくる。何をするのだろうとリリアーナとヘリーナが見守っていると、ハジメは右手で予告もなしにそれを行った。

 

「錬成」

 

 バチッと音がした次の瞬間。

 ブーツの上部が変形してハジメの足に絡み付くようになった。革の部分を錬成で変形させたらしい。太腿まで伸びた拘束バンドはピッタリとハジメの足にくっ付いている。

 そしてハジメは、松葉杖もなしに立った。

 

「「⁉︎」」

 

「おお。まあ、立てるのは想定内かな。歩くのはどうだろう」

 

 そして一歩、二歩と歩き始める。杖もなくバランスを崩して倒れるのではないかとハラハラしながら二人は見守ったが、ハジメは部屋を一周してすぐにベッドに腰を掛けた。

 

「ふう。足首周りの柔軟性があればもっと楽かな。ゴムとか軟体の何かを用意できれば大分歩きやすそうだ。後は膝を再現するために革をもっと柔軟にして、かつ強靭にしないと走るなんて無理。一発目の試作品としては及第点でしょ。王宮じゃ集められない物もあるだろうし」

 

 そんな問題点を挙げていくハジメにリリアーナは驚きを隠せない。トータスの義足は木の棒と言っても差し支えない。

 だがハジメが用意した、ブーツを変形させた物はまさしく脚だった。

 

「ハジメ様の住む世界では、義足はこのように高性能なのですか……?」

 

「え?まさか。こんな駄作じゃなくもっと凄い物ですよ。僕も本物の義足については軽く見聞きしただけなので電気制御とか凄いテクノロジーが使われていて、素材にも拘ったしなやかな義足だっていう知識だけです。地球の義足なら走れますし、歩くことに苦労したりしないはずです。僕達の求める物はゲームで設定なんてアヤフヤにしても良かったので本当に概要しか知らないんですよ。ゲームの中ならトンデモ技術で誤魔化せちゃうので。まさか自分で必要になるなんてなあ……。これだって重りの調整や結合部もしっかりと考えないといけないのでその場しのぎでしかないんですよ」

 

 ハジメはそう言うが、リリアーナの常識からすればその発想だけでハジメの価値が一気に上がった。本人的には失敗作のようだが、技術の進歩という意味ではハジメが知識の源泉に見えた。

 着けただけで歩けるようになって、しかも必要な物はブーツと重りだけ。それ以外にも必要な物はありそうだが、錬成師がいればこの義足の量産も難しくなさそうだ。

 足がないということは、このトータスでかなりのハンデを背負うことになる。肉体労働はできず、かといって車椅子なんて物もないので足を失うことはほぼ同時に人間としての価値を失うことに等しかった。

 

 優れた頭脳があれば文官などにもなれるが、そんな者は一握りもいない。歩くという行為を奪われた人間は脆弱だった。片足の者は杖を使うか貧弱な義足に頼るしかなく、そんな状態で肉体労働などできるはずがない。

 座ったままできる仕事は地球で言うところの中世に近い文化を持つこのトータスではさほど多くなく、その席は貴族などの階級が高い人間か優秀な人間に埋められている。

 

 

 だがこの義足があれば。

 

 

 足を失った者は希望を見出し、仕事に有りつければ国の生産力も上がる。

 無能と呼ばれる()()()()()()()()()を救うことのできる逆転の一手だった。

 自分が王女だという立場もかなぐり捨てて、リリアーナはハジメの両手を掴んでいた。その突然の行動に異性への耐性がないハジメは「うへぇ⁉︎」と情けない声を上げてしまった。

 

「ハジメ様、無礼を承知で申し上げます。王国に残り、その力を奮っていただけませんか?」

 

「……僕には王国に残るメリットがないと思ってる。それに王女殿下に言うことじゃないですけど、僕はこの国が好きじゃありません」

 

「はい。重々承知です。ですが、ハジメ様。不躾な質問をさせてください。──あなたは元の世界に帰りたいのでしょう?」

 

 そのハジメの本心を、リリアーナは外さなかった。

 リリアーナは神山での出来事をその場にはいなかったが聞いていた。最初は地球への帰還を理由に、そしてエヒト神が戦争に勝ったら戻してくれるかもしれないというイシュタル教皇の言葉に乗せられる形で戦争参加を決めたことを。

 今、それを本当に望んでいるクラスメイトがいるかは定かではない。色に溺れた者、異世界を純粋に楽しんでいる者、強力な力を手に入れたことで有頂天になっている者。正しく帰るために戦っているのはどれほど少数か。

 

 だが最初は、地球への帰還だったはずだ。

 そしてリリアーナは白崎や八重樫とお茶会をするような仲だったために地球でのハジメの様子も聞き及んでいた。

 既に手に職を身に付け、将来的にそれで食べていこうと決めていたこと。両親の仕事の手伝いをしていたこと。それは睡眠時間を削ってでも熱中する大事なものだったこと。その仕事にしようとしていたことは、このトータスには一切ないこと。

 十六年という年月をかけて決めた仕事を奪われた少年がどんな風に考えるか。それに気付けないほどリリアーナは王女としても人としても盲目になった覚えはなかった。

 

「今からわたくしは身勝手な憶測を語ります。イシュタル教皇は現状唯一エヒト神のお言葉を授かることのできる人間です。もし戦争に勝利し、エヒト神が願いを叶えてくれることになったとしても、国外にいてはその場に立ち会えないのではないでしょうか?教会から逃げ出した元神の使徒を、同じように戻してくれるでしょうか?」

 

「…………その可能性は、もちろん考えていました。ここで逃げたらもしもの場面で元の世界に帰れなくなるんじゃないかって」

 

「たとえエヒト神が全員を帰すつもりがあったとしても、イシュタル教皇を通してトータスに干渉しているのだとすればイシュタル教皇の匙加減一つで帰れるかどうかも左右されると思います。そしてイシュタル教皇はその匙加減を行える人物です。教会での立場と、我が国と聖教教会の関係性を鑑みれば彼の癇癪一つで変わります」

 

「……」

 

 イシュタルが自分達と初めて会話した時のことをハジメは思い出す。誰を動かせばクラスの全員を操れるのか、戦争に反対している人間は誰かを老獪に確認していた。エヒト神の言葉を授けたのに不満そうな人間をありえないものでも見たかのように睨みつけていた。

 そんな狭心の人間だ。

 国外にいることと、国内にいてある程度貢献すること。どちらが良いかと言われたら確実に後者だ。

 

「ですので、この義足のように何かを産み出してハイリヒ王国に貢献していただきたいのです。我々は神の御業の再現などできません。元の世界に帰る手段など、神エヒトの御業以外に思い付かない蒙昧な子供と罵ってくれて構いません。わたくし達は勝手な事情であなた方から平和を奪い取った簒奪者です。そんな愚かな国の、愚かな小娘の身勝手な願いでしかありません。あなたの願いを叶えるためと嘯くわたくしを許さないでください。──それでも、あなたの力を、知識を。ハイリヒ国民のためにご教授願えませんか?」

 

 恨んでくれても良いと、リリアーナは思う。むしろ恨まれて当然だ。こんな脅しとも取れる話術で丸め込もうとして、リリアーナはハジメのもたらそうとする利益を搾り取ろうとする国の癌そのものにしか見えないという自覚があった。

 だが、リリアーナ如きには元の世界への帰還方法など思い付かず。現状取れる唯一の手段は神の御業のみ。

 その御業を受けるためには、ハイリヒ国に滞在している必要があると告げ。

 

 

 

 

 

 巻き込んでしまったがために様々なものを奪ってしまったありふれた少年のありふれた願いが叶いますようにと祈り。

 

 

 

 

 

 相手にとっての最善の手を利用する王女(悪女)となることを決めた宣言だった。

 

 

 

 

 

 

 手を握り締めたまま、リリアーナはハジメの目を見て視線を切ることはしなかった。涙を見せるなんて失態はしない。

 たとえ相手の境遇を想って悲しんでも、こんな手段しか取れない自分が悔しくても。今だけは涙を見せてはいけないと王族としての意地で涙腺を食い止めた。

 しばらく時間が経って、ハジメが視線を下にするのと同時に息をゆっくりと吐く。

 

「……本当に、小さな可能性だと思う。戦力比、イシュタル教皇の態度、エヒト神のおかしな行動。どれを取っても、地球に帰れる可能性はとても低い。あんなイシュタル教皇の口約束を信じられるほど、僕は人間ができていない」

 

「……はい」

 

「クラスの皆は魔法なんて変な力のせいで、そして実際に異世界に来たせいで思考が止まってるんだと思う。世界の移動が一方通行の可能性もある。エヒト神が戦争以外の目的で僕達を召喚した可能性もある。本当は教会に言い伝えられている帰還のための魔法もあるのかもしれない。教会ではわからなくても、この世界のどこかにはそんな魔法が残っているのかもしれない。……けど、その全てを確認するには僕はこの世界では弱すぎる。ベヒモスっていう個の魔物にやられる程度の力しかない僕は魔物が闊歩するこの世界を歩けないし、戦争に巻き込まれれば死ぬと思う。そして、あの時神山で戦争参加を決めてしまった時点で選べる手段は一気に狭まったんだ。僕達がこの世界について無知すぎたからある程度は人間国家の保護がないと生きていけないことと、戦争に参加すると言ってしまったことで監視下に入って軍事力として組み込まれた時点で僕達は教会と王国の鎖に縛られたようなもの。奴隷と変わらなくなったんだよ」

 

 ハジメは敬語が取れていた。

 そう、召喚された段階でほぼ詰み。たとえレアな天職をその時に付与されていようとステータスプレートもない時点で把握できない力なんて宝の持ち腐れ。教会という世界でも頂点に立つ権力者と教会騎士という戦力に囲まれた時点で逃げられるはずもなく。

 そこからは話術で教会の望む地点へ誘導されて逆転の芽はなくなった。いくら畑山の性分が愛され教師だとしても曲がりなりにも教師の言葉を無視してクラスのカリスマの言葉を優先した時点で正しい意見というものは封殺された。

 

 畑山がダメだったことを、スクールカースト最下位のハジメが言っても無駄だっただろう。

 最悪に近い状況で最悪手を選んだハジメ達に、明るい未来なんてあるはずがなかった。

 だから、リリアーナの言葉は全く悪く聞こえない。

 自分にできることをしっかりとして、その上で自分の身を犠牲にしようとしている。こんなまともな人間を嫌いになれるはずも、恨むこともできるはずがなかった。

 

「確かに君の力を借りれば国外には逃げられると思う。けど、僕の第一目標はやっぱり元の世界に戻ることだ。英雄だの勇者だのにはなりたくないし、戦争なんて断固反対。この世界で華々しく短い人生を送るよりは、元の世界で長く生きたいよ。帰る手段があるなら藁にもすがりたいけど、自分で探しに行くには僕は弱すぎる。なら、今のところ唯一示された方法に便乗するしかない。本当にそれが唯一の方法だったら、僕は希望を捨てる真似はできない。……僕は王国に残るよ。僕が取れる手段はやけっぱちの逃走か、恭順して可能性に賭けるか。命と人生を賭けるなら、圧倒的に後者だ」

 

 そう言ってハジメはリリアーナの手を解く。

 危険人物や国と教会への不信は残るものの、自暴自棄の逃走劇なんてしたら日本に戻れないかもしれない。

 この世界に骨を埋めるつもりのなかったハジメの取れる選択なんて、一つしか残っていなかった。

 リリアーナに言われなくても恭順するしかなかったのに、左足を失ったこととクラスメイトの一部に対する不信から逃げ出したかった。楽になりたかった。

 それが自分の地球での人生を否定することだと気付かないまま実行するところだった。

 だから、ハジメはリリアーナへ感謝の意味も込めて言葉を繋げる。

 

「リリアーナ。国外に逃げる話は白紙に戻そう。その代わり、僕をこの王宮から出してほしい。クラスメイトは王都に戻ってきたらここを拠点にするんでしょ?会いたくない人が多いから僕は王都で適当に部屋を借りるよ。それと、錬成師も紹介してほしい。僕の価値を教会と国、そして神に知らしめる必要がある。無能じゃないって教えてあげないとね」

 

 リリアーナからすれば簡単すぎることだ。市井に出ていることから借家などにもアテがある上に国お抱えの錬成師にも覚えがある。国に従順な狗ということもなく、技術の発展を願う職人としての志を持った集団だ。

 リリアーナが紹介状を書けばすぐだろう。

 

「──それに、僕より歳下の女の子を泣かせたまま逃げるなんてカッコ悪すぎる。一応男として、ちっぽけなプライドが許さないかな」

 

「ぇ」

 

 リリアーナはハジメの言葉で咄嗟に目元へ指をやった。絶対にバレるわけにはいかないと思って我慢していたのに漏れてしまったのかと不安になって即座に行動したが、濡れているという証拠はなかった。

 王女としての仮面は完璧だったと、騙されたとリリアーナは頬を膨らませる。

 

「……カマをかけましたね?ハジメ様」

 

「いいや。オタクを舐めないでほしい。声を聞いていれば相手がどんな感情なのかなんて大体わかるんだよ。そんなに辛そうな声を出して、でも表情だけはなんとか我慢しようとしている様子を見て、取り繕ってることくらい見抜けるさ」

 

 隠していたことが筒抜けで、リリアーナは恥ずかしくなった。

 オタクがどういう言葉なのかわからなかったがおそらく読心術を使えるということだろうと納得した。

 意地で、涙だけは見せない。

 リリアーナは本当に、ハジメに酷いことをしていると自覚しているから。

 

「うん、まあ。色々と話したけど僕は僕なりに王都で頑張ってみるよ。国のために働けば文句も出ないと思う。だからその、王宮から出る手続きだけはお願いしていいかな?さっきのメイドの人達といい、ここじゃ安らげないから」

 

「ええ、わかりました。そのことも含めてすぐに父上へ直訴いたします。へリーナ。あなたはハジメ様が王宮を出るまでハジメ様付きの侍女として動いて。あなたが一番信用できる。わたくしの周りは誰かにやらせますので」

 

「はい。お嬢様」

 

 現状ハジメ付きのメイドはいなかった。その立場の人間は先程リリアーナが解雇してしまった上に義足があるとはいえハジメにはハンデがある。汗だくのベッドのシーツを本人に直させるのは酷だろうと判断してのこと。

 王宮のメイドだって貴族から奉公に来ている者や、教会から派遣されたメイドもいる。誰が突拍子のない行動に出るかわからなかったので一番信用できるヘリーナを置くことにした。

 そんな決定をしてリリアーナは部屋を出て行こうとする。へリーナも引き継ぎのために一度退室しようとした時にハジメがリリアーナの声をかけた。

 

「リリアーナ。大事な意思決定の際に後先考えず自分の主張を押し通すのは悪だと僕は思う。多数決とか、協議とか、そのためにあるんだから。でもね、国の決定を王女だからってなんでもかんでも背負い込むのも違うと思う。王女(キミ)の一言で僕達の召喚が止められたとは思えないよ。キミが僕達のことを真剣に考えてくれることは本当に嬉しい。けど、僕達を巻き込んだと思い詰めないで欲しいんだ。召喚の責任はキミにはないよ。もしキミにも責任があるってなったら、ランドル王子にも責任があるって話になる。第一王子だから、王位継承者だから。そんなことで巻き込まれるランドル王子が可哀想だよ。この失敗を繰り返さなければそれで良い話じゃないかな?」

 

「……王女であるからと、自罰的になるなということですか?」

 

「うん。責任感が強いことは王族として素晴らしい美点だと思う。暗君にはならないからね。けど、国王だって孤独な訳じゃない。宰相や他の大臣もいるんだから周りに頼れる時は頼るべきだよ。僕も、地球の知識で役に立つなら教えるからさ」

 

 その言葉を聞いて、リリアーナはハジメへ小さく頭を下げる。が、その礼は短い時間だった。

 

「ご助言ありがとうございます。ではハジメ様、早速準備をしてきますので失礼します」

 

「うん、お願いね」

 

 リリアーナは早足で去る。そして自分の部屋についてすぐ、自分の天蓋付きのベッドへ飛び込んでいた。

 ドレスがシワになることも御構い無しに、彼女は顔を伏せていた。

 

「……へリーナ。引き継ぎをしたメイドに一時間だけ休むと伝えて。後、服の替えも」

 

「かしこまりました。お休みなさいませ」

 

 へリーナは意図を察してすぐに出ていく。

 リリアーナは今だけは、溢れてくる涙を堪えられなかった。

 

「うぅ……!自分が嫌になる……!なんて子供で、なんて悪逆な……!自分の欲望を押し付けて、あの方を縛り付けて。自分の本心に気付いてもらえて嬉しいなんて自分勝手すぎる……!あんな優しい人を巻き込んでしまったなんて……。本当に王族(わたくし達)は悪辣で傲慢な生き物なのね……。……今だけは、ごめんなさい……っ‼︎」

 

 へリーナの配慮で一時間の間リリアーナの部屋に近付く者はいなかった。誰も一人の女の子の啜り哭く声なんて聞くことはなかった。

 そしてきっかり一時間後。彼女はハジメへ聞き取り調査をした結果を文書に纏め教会と国王に提出。

 ハジメが王都で一人暮らしをすること、そして錬成師としての師を紹介することを勝ち取っていた。

 




クリスマスイブになんて重いものを投稿しているんだ私は……。
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