ポケモンホームのSV連携は6月になるかもって噂されてるけど………6月は夏では?
ポケモンホーム「……なんだぁテメェ?」
「……っ‼ノクタス、ニードルガード!」
「ノノッ!」
ノクタスは腕の棘で相手のムクホークの猛襲を防いだ。
危なかったぁ、少しでも指示が遅かったらムクホークのブレイブバードをもろにくらっていただろう。
判断が鈍っているな…否が応でもそれを実感する。いや、そんなことよりバトルに集中しなくては……頬をつねって気持ちを切り替える。
相手のムクホークが命令を受けて再びノクタスに急接近してくる。もう一度ブレイブバードか。
「ノクタス!ふいうちっ!」
「ノクッ‼」
迫りくるムクホークに真正面から駆けて、ノクタスの右ストレートを顔面におみまいする。
「ムグッ!?」
先制をとられたムクホークの動きが鈍る。これなら追撃が可能だな。
「ノクタス!あくのはどうだ!」
「ノノノーッ‼」
ブレイブバードが迫る寸前、ノクタスは両手から黒い波動をムクホークの間近で放った。
あくのはどうとブレイブバードがぶつかり合い、爆発が起きる。爆風でノクタスが飛ぶがひらりと宙返りをして着地。ドヤ顔の様子からダメージはあまり食らってないな、ヨシ。
ムクホークは地面に落とされのびていた。
「ムクホーク、戦闘不能。よって勝者、ユズリハ」
審判を務めていたオモダカさんが満足そうな笑みで頷いてジャッジを下す。なんとか勝利を収めた俺はホッと胸をなでおろし、ジト目でオモダカさんを見つめる。
「ほんといきなり運営委員抜き打ちテストとかすんのやめてくださいよ……」
「ふふふ、流石はチャンピオン。腕は鈍っていませんね、おかげで学生の皆さんは盛り上がっていますよ」
オモダカさんは微笑んで後ろを振り向く。バトルコートの周りには学生や先生、通りかかった街の人達で溢れ、歓声が上がっていた。
これもオモダカさんのいきなりの思いつきで、リーグを盛り上げるために今回はテーブルシティで学生達にバトルの楽しさを伝えるエキシビジョンマッチを開催していた。
が、エキシビジョンマッチというのは建前でオモダカさんの地獄の抜き打ちテストもとい鬼の十人抜きバトルをやらされていた。
ま、まあ盛り上がったのならいいんだけどさ……
エキシビジョンマッチを終えて、バトルコートに残った俺はヨノワール達を出してオヤツをあげたりして労う。
「みんなよく頑張ってくれた。ありがとうな」
リザードン達は満足げに頷くが、ヨノワールは無言で俺を見つめる。
「わかってる、わかってる。判断が遅かったのは謝るって」
バトルの合間、咄嗟の判断ができなくてピンチになったところがあった。
邪念を抱いているわけではないが心当たりはある……ここんところハッコウジムの視察はアマモに代わってもらい、しばらくナンジャモには会っていない。
なぜか胸の中がむんむんもやもやするのだが……これってやっぱり………
「いやいやいや!これは野暮だ。余計な思念だな!」
余計なことを考えるのはやめよう。さぁてオモダカさんの次の思いつきはなんだろうなぁ!
「お疲れさまでしたユズリハ」
「ほひっ!?」
ニコニコと変わらぬ笑みを見せながらオモダカさんがいきなりやってきた。
び、びっくりしたぁ……いきなり現れるなんてこの人ゴーストタイプか何かか?
「素晴らしいバトルでしたね。思わず私も飛び入り参加しそうになりましたよ?」
ストッパーのチリさんがいないからやりかねないよこの人……チリさーん!はやく来てくれー!
「ですが、少し判断が鈍っているところがありましたね。心此処に非ずの様子でしたが」
うっ、オモダカさんにもバレてたか……
「ははは、ちょっと考え事が割り込んだだけです」
「ふむ、いつもより覇気がないと思いましたがまあいいでしょう」
オモダカの眼差しがキリッと細くなった。これはお仕事フォルムに入ったサイン。また何か思いついたのだろうか。
「ユズリハ、貴方はバトルが強い。パルデアではトップクラスの実力があります」
「い、いやぁそこまでありませんよ…」
いきなり褒めてきたので謙虚に答える。なんだろう、嫌な予感がするんだが。
「そこで、貴方に提案があります」
オモダカさんが出した提案には思わず言葉を失った。
___________
アカデミーの屋上にあるグラウンドのベンチに座り、生徒達の様子を眺める。
バトルコートでポケモンバトルを楽しむ生徒、ポケモンと戯れている生徒、ポケモンを見せ合い自慢し合う生徒、読書をしたりポケモンと昼寝をしたり静かに過ごす生徒。
皆さんそれぞれ個性があってよろしい。このまま自分達の良いところを伸ばしていってほしいですな。
それにしても……久しぶりかな、彼とこうしてアカデミーの中で話すのはいつ以来だろう。確か、卒業式をすっぽぬかした時だったかな?
「ハッサクさん、忙しいのにすみません」
後ろから小生を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとユズリハくんが申し訳なさそうな表情でやってきた。
「問題ありませんよ。ユズリハくんは卒業してもこのアカデミーの生徒、生徒の相談にのるのも教師の務めです」
アカデミーの時もユズリハくんはよく小生のところへ相談しに来ていましたな。そして運営委員に就任した時も……今回も何か悩み事でもあるようですね。
「何か、思い悩んでいることがおありのようだね?」
「まあ色々と……」
「よければ小生が話を聞きますよ?」
「………うまく例えることができないのですが、ある日やってみたいことが実現できるっていきなり言われたんです」
ふむ、やってみたいこと…ですか。ユズリハくんはバトルが好きで得意のようですし……トップが何かひらめいたのですかね。
「それはユズリハくんにとって好きなことですかな?」
「もちろん……色々と見てみたい、と思ってたことでしたし寧ろ
嬉しいくらいです」
それは喜ばしいことですがユズリハくんは浮かない顔をしている。
「だけど…やりたいことの為に、何か大事な事を捨ててまでもやってもいいんでしょうか?」
「………」
その言葉には小生も少し刺さった。かつて小生も若い頃は……彼と同じような悩みを持っていた。
「ユズリハくん、小生も同じように思い悩んだ時がありました」
「ハッサクさんが?」
自分のやってみたい夢の為に一族の掟を破り、背を向け続け夢にひたすら無我夢中に突き進んだ。
「小生は大事な事を捨て、やってみたいことに必死にやり続けた……しかしそれはとても厳しい道でした」
現実をつきつけられ、どん底に叩き落され、屈辱もたくさん味い、罵られ続けたこともあった。
「後悔の念が過ることもありましたが……」
「今は後悔していませんか…?」
「夢は少し形が変わってしまいましたが、今は美術教師。小生は後悔していませんよ」
「そうですか……」
「やりたいことに突き進んでもいい。小生はそう考えますな……ですが」
ぽんと彼の肩に軽く手を置く。
「これだけは覚えてほしい……君はまだ若い。やり直すことだってできます。一度捨てたものをすくい拾うこともできます。捨てずに抱き進めることも自由自在にできます」
小生のように全て捨ててまでやる必要はありません。
「君にはそれができることを忘れずに、やってみるといいですよ」
「ハッサクさん……ちょっと難しそうな気がするけど、ありがとうございます」
ユズリハくんは軽く微笑んで頭を下げ、立ち上がる。
「ちょっとだけ決心がつきました……」
軽くお辞儀をして彼はグラウンドを去っていった。
彼の力になれたのならいいのですが……まだ少し思い悩んでいる様子だった。
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「にへへ……」
「はぁ、まーたニヤニヤしてるわよ?」
「え?あぁ、ごめんねアマモっち」
視察に訪れた時も、ジムテストの時も、ジムバトルの時もナンジャモは時折ニヤッと笑顔を見せていた。
しかも思い出し笑いというわけではなく、愛らしく照れた顔をした笑みだった。おかげさまで本日の配信はかなりのスパチャと視聴者数だった。
【笑顔たすかる】とか【ナンジャモのあまえる!】とか【♀の顔】とかコメントも多かったわねー…
「何か嬉しいことでもあった?」
「うん!そうなんだ♪」
アラカワイイ。なんちゅう眩しい笑顔なこと。マジカルシャインか。
「実はね……今日ユズリハくんからメールが来ててね?『大事なハナシがある』ってメールが来たんだよ!」
「……ほーん?」
あのユズリハが?あいつここ最近ハッコウジムの視察を私に押し付けて油売ってたくせに……なんだがナンジャモに会うのを躊躇っていた様子だったわね。
しばらく会っていない彼からのメール、そりゃかなり嬉しくなるわな。
「えへへ……」
む……ちょっと待った。どういうわけか私の勘がえらく主張してくる。この様子からして……
「ナンジャモ、あんたもしかして」
「あ、うん、まだ皆のものにはナイショバナシだけど……ボク、ユズリハくんのことが……好き、なんだ」
「ヒューッ‼」
はいナンジャモのてれ顔いただきましたーっ‼写真撮って自慢したいわー!
「そんな気がしたのよねーっ!すみに置けんなこのこのーっ!」
ここんところ寂しそうな顔してたり、ため息が多かったり、キュンとした乙女顔みたりとおかしいなぁと思ったら想い人がいたとは……
「ましてやあのバトルバカのどんかんてんねんマイペースのヤドランマンのユズリハをねー。まあそんな気がしたけど!」
「もー言い過ぎだよアマモっちー……でもさぁ、い、いいのかなぁ……」
ナンジャモがチラッと不安気な眼差しでこちらを見つめる。
あぁわかるわ、ナンジャモは今やパルデアで話題の配信者。意中の人とのお付き合いがバレたらパルデア中のリスナー達がブラストバーンする大騒ぎになる。
「……いいんじゃない?確かにあんたは夢をふりまくインフルエンサー。でもさ、それ以前にあんたもひとりの女の子」
動画配信のセカイでは注目の的。だけどリアルは恋する普通の女性。
「恋したって付き合っちゃっていいじゃない」
誰がダメだと勝手に決めたのか。人の恋路をあれこれイチャモンつける筋合いはないのだ。
「あたしはナンジャモのこと応援するわよ!」
彼女のことを悪く言うやつはこのあたしがDDラリアットをぶちかましてやらぁ!
「あ、ありがとうアマモっちー…!」
「ま、こっそりするよりかはあんたらしくさ、んジャカパーンって派手にやればいいんじゃない?」
リスナー達には悪いけど勢いでやればなんだか納得しそうなイメージがあるのよねぇ。
「なるほど!ナイスアイデアだよ。そしてユズリハくんも巻き込めば丸く収まるかも!」
ましてや相手はチャンピオンクラスのトレーナー、実力も認めてくれし無闇矢鱈と手出しはしないだろう。
「それにユズリハはあんたの大大大ファンだし、そんで好意も持ってるわよ」
よくナンジャモの話もするしその楽しそうな顔といったら…ああ口の中が甘くなりそ。
「うん…アマモっち、ボクやるよ。ユズリハくんに告白する!」
「ようし、その意気だナンジャモ!ぶちかましちゃえ!」
不安気だった様子から一変、彼女はきあいだめしてはりきりっている。
これなら大丈夫ね。後はあのバトル好きのてんねんどんかんマイペースヤドキングマンがどう反応するかだ。
きっと顔面クリムガンになって慌てふためくだろうなぁ。そんでこの後は……考えたら口の中がマホイップのクリームまみれになるわこれ。
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もう間もなくユズリハくんがやってくる時間だ。ジムの控え室で時計を何度も見ながら彼が来るの待った。
ああ、き、緊張するなぁ。ボクの手が震えてるし手汗が出ちゃってる。
お、おくびょうになるなボク!ゆうかんになってやり遂げるんだ!ボクは両頬を軽く叩いて気を強く持ち続ける。
今夜……ボクはユズリハくんに告白する。ユズリハくんのことが好きだと真正面から告げる。
ずっと好きだったこの気持ちを彼に伝えるんだ。
全力で打ち明けて全力でぶつかれば想いは伝わる。当たって砕けるんじゃなくて当たってぶち抜く。そうすればきっと……
「えへへ……」
うん、大丈夫だ。そんでその後は重大発表と題して配信で伝える。大炎上は免れないけど本心を伝え続けば皆のものも納得してくれる……それからはカップルチャンネルに切り替えようかな?
ユズリハくんと一緒にいられて一石二アーケオス。うん、きっと大丈夫。
そんなことを考えたら扉をノックする音が。はっとなったボクは気を引き締める。扉が開いてユズリハくんが入ってきてきた。
「よっ」
ごくりと息を飲む。大丈夫、ボクらしくやれば問題ない。
「悪いな、準備してたら遅くなっちまった」
「う、ううん!ボクもさっきついたばっかりだから……」
なに意味の分からないこと言ってんだボクは!?緊張し過ぎじゃないか!?
「そ、それよりも久しぶりだね……ちょっとゆっくりする?サイコソーダあるよ?」
お、お、落ち着けぇぇっ!ちゃ、ちゃんと伝えるんだ!
「いやそう時間はとらない」
「そ、そうなの?あ……あのね!」
精神統一、心を落ち着かせて……ユズリハくんにボクの気持ちをぶつけるんだ。
「ぼ、ボクも話したいことがあるんだ……実はね」
「俺、パルデアから出ることにした」
「……………え?」
ユズリハくんの一言にボクは止まった。強い衝撃を受けたかのようにボクの思考が固まる。
「い、今……なんて……」
「来週、パルデアを出る船に乗ってシンオウ地方へ行く」
ユズリハくんがパルデアを出る……?この事実にボクは血の気が引き、好きという気持ちが掻き消えて絶望がのしかかった。
「な、なんで……?」
「トップの提案だ。パルデアのジムチャレンジは容易だったり難しかったりバラバラでチャレンジを受けるトレーナーが少ない。そこで参考のために各地方のジムに赴き体験して学ぶんだ」
パルデアのポケモンバトルを盛り上げるため、とユズリハくんは話す。でもボクにはそんなことどうでもいい。ユズリハくんがパルデアを出る、という話に打ち付けられている。
「で、でも……ユズリハくんがやらなくてもいいんじゃないかな?」
「バトルが好きだし、それに他の地方のトレーナーとバトルしてみたかったんだ。俺にはもってこいの話だったよ」
そんなことを言わないでよ……ボクは、ユズリハくんがずっといてほしいんだよ……
「し、シンオウ地方を巡ったら帰ってくるんだよね?」
「いや、次にガラル地方へ行く。ジムチャレンジだけじゃなくてチャンピオンリーグも受けるつもりだ」
「じゃ、じゃあその後に……」
「その後はイッシュやカロス、アローラ、カントー……色んな地方を巡るつもりだ。そして……運営委員やめて地方のジムリーダーとか目指そうかな」
いやだ……やめて、やめてよ、そんなこと言わないでよ!
「なんで、なんでボクに話すんだよ……」
「……勝手にいなくなったら嫌だろ?」
それも嫌だけど、ユズリハくんがいなくなるのがもっと嫌だ。
「……こ、断ってもいいんじゃないかなぁ?ユズリハくんならパルデア最強のトレーナーを目指してもいいんじゃない?」
「ごめんな……やってみたいことなんだ」
ユズリハくんはすまなそうに苦笑いするとこの場を離れようとした。
ダメだ……ダメ……いかないでユズリハくん!
ボクは止めようとするが、体が震えて動けないでいた。
「わるい、準備しねぇといけないから帰る……じゃあな」
「あ……え……?」
振り向かず出ていこうとする彼を止めようとするも、絶望で頭が真っ白になったボクは声すら出せなかった。
待って、行っちゃダメだ……イヤだ行かないで!ボクを置いて行かないでよ!ボクから離れないで!
まだ伝えてないんだ!ボクの気持ちを、ユズリハくんのことが大好きだという気持ちを……!
為す術もなく、ユズリハくんは扉を閉めて出ていった。
「………」
取り残されたボクは………ただただ立ち尽くしたままでいた。
いちゃラブって書くの難しい……(吐血