メリークリスマス!

 エヴァンゲリオンANIMAのクリスマス短編です!

 ぜひぜひ、ご笑覧くださいね♪

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エヴァンゲリオンANIMAクリスマス短編 夜空のプレゼント

 

 2017年12月22日。碇シンジ、16歳の冬である。といっても、季節は夏。セカンドインパクトによって地軸が傾いた世界は、日本を常夏の島国へと変貌させていた。

 常夏の島国。なんて魅力的な響きだろうか。この字面だけを見れば、万人が南国のリゾート地を思い浮かべるだろう。しかしながら、今のシンジにはまったく魅力的に感じない。むしろ『冬』という季節があるならば、今すぐにでも訪れてほしいと心から願っていた。

 

(あ、暑い・・・・・・)

 

 暑さで意識が朦朧とするなか、夏の日差しに焼かれながら、シンジは足元に群がる子供たちにチラシと風船を渡していく。子供たちがシンジに群がる理由は、シンジの格好にあった。

 赤い生地に白いラインの入った分厚いコート。まったく同じ配色のモコモコのズボン。分厚いブーツに手には手袋。頭には帽子を被り、顔には白いモコモコの立派なヒゲを蓄えている。

 

 そう、サンタクロースである。

 

「サンタさーん!風船ちょーだい!」

「ふ、フォッフォッフォ!ほーら、メリークリスマス!」

 

 暑さで半ばヤケクソ気味なシンジが、なけなしの体力を使ってサンタを演じ切っている。

 

「ありがとー!」

「ずる〜い!サンタさん、オレも!オレも!」

「こ、こらこら。ケンカしてはいかんよ〜?順番に並ぶんじゃ・・・」

「あ、風船無くなりそう!」「ちょーだいちょーだい!」

「あ、ダメだよ!?順番に・・・」

「わーーーい!!」

「うわああああああ!?」

 

 殺到する子供たちにもみくちゃにされ、シンジサンタは地面に引きずり倒された。手に持っていたたくさんの風船とチラシの束がバサッと空に舞う。

 

「あ!こいつニセモノだ!ヒゲがズレてるぞ!」

「し、しまった・・・!」

 

 一人の目ざといガキンチョが、ヒゲのズレたシンジを指差す。

 

「ニセモノサンタだ!ニセモノサンタをやっっけろーッ!」

「わーーーッ!」

「な、なんでそうなるの!?うああああああああ!?」

 

 子供の心理というのは本当にわからない。テレビ番組の影響だろうか。小さい子供、特に男の子には「正義の味方ごっこ」が楽しくて仕方ない時期があり、何かにつけて悪者を見つけてはやっつけようとする。そして、悪者を発見した子供たちの連携速度は恐ろしく速い。

 地に倒れていたシンジに、正義の味方軍団が次々と襲い掛かる。シンジの上に子供たちがおしくらまんじゅうをしながらも乗っかっていったところで、

 

「こらーッ!ガキンチョども、散れ散れ!プレゼント、届けてやんないわよ!」

 

 サンタとしてこれ以上ない殺し文句が、子供たちに雷となって降り注いだ。

 

「まずい!ニセモノサンタの仲間だ!逃げろーッ!」

「わーーーー!」

「オンナのサンタクロースだ!悪のオンナ幹部だぁ!」

「みんな!仲間を呼ぶんだぁ!」

「やかましいッ!さっさと家に帰りなさい!マジでプレゼントあげないわよ!?」

 

 オンナのサンタクロース、惣流・アスカ・ラングレーの一喝により、子供たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げ出していった。

 

「ちくしょー!おまえらなんかネルフのエヴァンゲリオンで一発だからなぁ!バーカ!バァーカ!」

 

 ガキンチョの1人が悪役もかくやといった捨て台詞を残して走り去っていく。

 

「・・・・・・バーカ。アタシたちがそのエヴァのパイロットだっての」

 

 ふぅっとため息を吐いたアスカが、未だ地面に倒れ込んでいるシンジに視線を下ろした。

 

「あんた、バカぁ?なにガキンチョ共にいいようにやられてんのよ。普通に蹴散らしなさいよね」

「い、いや。それは流石に可哀想だよ。サンタが暴力を振るったら、サンタのイメージが台無しじゃないか」

「ああいうガキンチョ共にはいい薬よ。こういう時にしっかりキッチリ叱ってやれるのが、本当の意味での大人ってやつ!」

「僕たち、まだ16だよ?」

「揚げ足取んな!ほら、手ッ!」

 

 アスカが手を伸ばす。それをシンジはしっかりと握った。

 

「ありがとう、アスカ」

「・・・・・・ふんっ」

 

 助け起こしてくれたアスカに礼を言うシンジだったが、そんなシンジから顔を逸らすようにアスカはそっぽを向いた。

 

「・・・ところで、なんか無いわけ?」

「え?」

「ほら!アタシの格好!」

 

 アスカは自分の胸に手を添えて、どうだ!とばかりにポーズを取った。

 アスカが普段から着用している赤いプラグスーツ。それをもとにデザインされた、あまりにも露出度の高いサンタクロースコスチューム。いや、サンタの要素と言っても、腰の部分にある白いレースと、申し訳程度に被っているサンタ帽くらいしかない。ハッキリ言って、ビキニの水着だ。

 

「いや、何かって言われても・・・。アスカ、恥ずかしくないの?」

「はあ!?このアタシが、なぁんで恥ずかしがんなきゃなんないワケぇ!?」

「い、いや!アスカが良いならいいんだけど・・・」

「ふん!・・・・・・他には?」

「他って言われても・・・。あっ!」

「お、なになに?」

「涼しそうで羨ましいよ!良いなぁアスカ!僕のサンタの格好だと汗とかで蒸れちゃって・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 期待はしていない・・・!

 期待なんかしていない!

 でも、せめてもうちょっとなんかないワケぇ!?

 

 アスカは心の中で思い切り悪態をついた。しかしそれを口にはしない。口に出したら、何かに負けたような気がするからだ。

 

「・・・・・・アタシ、帰る」

 

 完全に興醒めしたアスカが、シンジにふいっと背を向けた。

 

「ええ!?ダメだよアスカ!まだチラシ配り終わってないし・・・」

「別にどーでもいいでしょ。こんなん、ネルフJPNの広報部の仕事じゃない。なんでパイロットのアタシたちがこんな事やらされてるのよ。ちょっとはアピールしたんだからチャラよ、チャラ」

「いや、でも・・・・・・」

「ああああ!鬱陶しい!そんなにチラシ配りやりたけりゃ、アタシのぶんもあんたがやれば!?アタシは帰る!帰るったら帰るの!わかった!?」

 

 そう言い残すと、アスカはその場から颯爽と去っていった。アスカの格好はまさに痴女といっても過言ではなかったが、そんな周囲の視線など完全に無視、いや、向けて当然とばかりに、トップモデル顔負けの堂々とした態度であった。

 

「・・・・・・あの衣装、目の毒だよ。あんまり出歩いて欲しくないなぁ」

 

 アスカの肢体が周囲に晒される。それがシンジには気にかかってしょうがなかった。アスカが美人であることは否定のしようがない。だが、あんな格好のアスカに集まる視線の大半は男からのものだ。そういった視線をアスカが集めてしまう事に、シンジはなんとも言えない、モヤモヤとした気持ちを抱いていた。

 

 その気持ちを素直にアスカに告げていたなら、アスカの機嫌もきっと変わっていた事だろう。

 

 そんなことは露知らず、シンジは道にぶちまけられたチラシを集め始めた。

 

 チラシにはこう書かれている。

 

『クリスマスイブ!第三新東京よりエヴァンゲリオン襲来!』

 

 ネルフJPNが日本政府、および戦略自衛隊から請け負った年末の重要な任務。

 

 クリスマスイベント告知のチラシであった。

 

 

 

──────

 

 

 

「マヤぁ・・・・・・、これ、ほんとに今年もやるのぉ?」

 

 ネルフJPN総司令官である葛城ミサトは、自身の執務室にて日本政府からの依頼書を指先で摘んでプラプラとさせていた。

 

「葛城司令がやり始めたことじゃないですか」

 

 その書類を渡しに来た技術主任の伊吹マヤが、にべもなく答える。

 

「いや、確かにそれはそうなんだけど、毎年やるなんて聞いてなかったわよ・・・」

「葛城司令が目指したネルフJPNのイメージアップ作戦。ネルフJPNの情報公開と併せて、エヴァを民間と触れ合わせる。結構評判良いみたいですよ?特に子供たちからは大人気みたいですし、今更やめるってなったら評判ガタ落ちじゃないですか?」

「ううう、ちくしょー・・・。安請け合いするんじゃなかったわ・・・」

 

 ミサトは書類を摘んだまま、ゴツンと音を立てて、机に頭を伏せた。

 

 

 

 ネルフJPNの存在する、第三新東京。そして芦ノ湖を囲む箱根山のカルデラ一帯は、ミサトの尽力によって事実上の国連租借地となっていた。いわゆる、治外法権特例区、というやつである。ネルフ本部の戦略自衛隊襲撃を重く見たミサトたちは、二度目の失敗を冒さないよう、日本政府からこの一帯を交渉という名前の恫喝で無理やりもぎ取ったのだ。

 

 しかし過去のネルフと違い、ネルフJPNは国連と日本政府より支援を受けた独立法人として成り立っている。エヴァンゲリオンによる軍事活動以外にも、ネルフの培ってきた最新技術の公開や提供。その他、国民に広くネルフJPNを受け入れてもらえるように様々なイベントへの積極的参加など、その活動は多岐に渡る。

 

 過去の徹底した秘匿主義のネルフとは真逆。『国民を守るためのネルフJPN』という立場を作ることが、なにより重要だったのだ。

 

 そんなネルフJPNの活動の一つに、『エヴァンゲリオンのデザインの商用化』というものがあった。かつて使徒と戦い、人類を守り抜いたエヴァンゲリオン。実在する機体と実際の戦闘をそのまま流用し、子供向けのアニメへと転化したものだ。これがウケにウケた。

 

 もちろん、登場人物などにシンジ達本人が使われることはないし、組織の機密である部分はボカして作ったアニメ作品である。ただ、第三新東京市での死闘は実際に起こった現実であり、エヴァンゲリオンも実在するとなれば、アニメのファンになった子供たちが「実物を見たい!」と言い出すのは必然であった。

 

 実在する兵器を子供たちと触れ合わせる。飛行機や戦車に憧れる子供がいるように、エヴァンゲリオンにも憧れる子供たちは全国にいた。これを商機と捉えた日本政府は、エヴァンゲリオンと触れ合えるというイベントの開催を大々的に発表した。

 しかし、ネルフJPNの治外法権特例区に一般の子供達を入れるわけには行かない。逆に、ネルフJPNのエヴァを特例区から出すことも、ミサトは避けたかった。兵器が国境を簡単に行き来すれば無用な諍いが起こる可能性があったから。

 長い交渉の末、イベントは箱根カルデラのギリギリ外、御殿場にて行われる事に決定した。戦略自衛隊もイベントへの参加という形で兵器の展覧会を実施し、ついでにエヴァが暴れ出さないかを監視する。ネルフJPN側にそういった意図は一切無いが、念のための措置であった。

 

 これが、昨年のクリスマスシーズンに行われたイベントの概要である。ミサトとしては一回参加すれば義理は果たした、と考えていたのだが、甘かった。イベントの大盛況ぶりに味を占めた日本政府は、「今年もやるんでヨロシク!」とほぼ一方通行な通達を送ってきたのだ。しかも「今年は去年よりもハデに!」というオマケを付けて。

 

「ううう、なんか政府の予算案の中にあった支援金がいつもより多いなぁ〜とは思ってたんだけど、このためだったのね・・・」

 

 政府からしてみれば「前金は既に支払った」と言いたいのだろう。

 

「いいんじゃないんですか?うちのスタッフも張りきってましたよ?「今年は初号機にイルミネーションをー!」とか「いやいや!デコトラに!」とか言ってましたし」

 

「あー・・・、そりゃ確かにハデだけど・・・」

 

 派手の方向性が間違っていないか?とミサトは思った。

 

「あと、今年は弐号機や零号機も出そうって案が出てますよ。去年は初号機だけだったから、シンジ君ヘトヘトになっていましたし・・・」

 

「んんん・・・そうね。今年はアスカやレイにも頑張ってもらいましょ。ただし・・・」

 

 ミサトの人差し指が天井を指す。

 

「宙の上のあの子たち(三人の綾波レイ)には、引き続き監視を頑張ってもらうけどね」

 

 

 

──────

 

 12月24日。クリスマスイブ。

 

 『エヴァンゲリオン襲来』イベントは、昨年以上の盛り上がりを見せていた。御殿場の町には屋台が立ち並び、芳しい香りが周囲を満たす。街の至るところにイルミネーションが施され、まだ昼間だというのに街を明るく照らしていた。

 

『うーん。イマイチね』

 

『何が?』

 

 イベントの中心地である、御殿場プレミアアウトレット。その場外駐車場にて鎮座するのは、イベントの目玉である3体のエヴァンゲリオン。そのうちの1体であり、クリスマスにふさわしい赤い色をした弐号機が、顎に手を当ててボソッと呟いた。

 

『いや、頑張ってはいる方か・・・?』

『いや、アスカ。だから何がそんな気になるのさ』

『クリスマスマーケットよ。知らないの?』

『なに、それ?』

 

 アスカが自信満々に答え、それを知らない綾波レイ・トロワが質問を返す。

 

『あら?あんた本当に知らないの?』

『しらない。クリスマスマーケットって、なに?』

『ドイツのクリスマス市のことよ!ドイツではこの時期になると、どこの街でも大きなマーケットが開かれるの!クリスマスの飾りやプレゼント、お菓子なんかのお店も並ぶわね。すごく煌びやかで、もうスンゴイのよ!』

『そうなの?でも、ここもすごく煌びやか・・・』

『こんなもんじゃないわ!ちょっと画像送るから見てみて!』

 

 喜色満面のアスカが端末を操作し、レイとついでにシンジの端末に画像を送った。そこには確かに御殿場のアウトレットとは比べ物にならない、煌びやかで情緒あふれるドイツのクリスマスマーケットの様子が映し出されていた。

 

『・・・きれい』

 

 レイの素直な感想に、アスカはふふんっと得意満面に鼻を擦った。

 

『クリスマスはドイツで1番重要なイベントだからね!一ヶ月近くはお祭り騒ぎが続くのよ!』

『わぁ、ホントに綺麗だ。いつか行ってみたいなぁ』

『・・・・・・!その時はアタシが案内したげるわ!』

 

 シンジの何気ない呟きに、ここぞとばかりに先手を打つアスカ。近い将来、この時の約束を振りかざしてクリスマスマーケットをシンジと2人で歩く。そんな光景を思い浮かべていた。

 

(人混みもすごいから、「はぐれないように!」って事で腕を組んでも問題ないわよね!!)

 

 そんなアスカの期待と妄想をことごとく裏切るのが碇シンジという少年であり、

 

『そうだね。綾波も一緒に行こうよ』

 

『ほんと?うれしい・・・』

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 アスカの機嫌は最高潮から最底辺へと一気に急降下したのだった。

 

『あれ?どうしたのアスカ?』

『うっさい!話しかけんな!!バカ!グズ!ほんっと信じらんないッ!!』

 

 アスカが弐号機ともども、暴れ出そうとした矢先であった。

 

『シンちゃんも大概罪な男よねぇ〜〜〜』

 

 大変楽しそうなミサトの声が通信に割り込んだ。

 

『あ、ミサトさん。そろそろですか?』

『そうね。そろそろチビッコ達の入場の時間よ〜。若干、大っきなお友達も混じってるけど・・・。気合い入れていくわよ!』

 

 ミサトが苦笑まじりに、メインイベントの始まりを告げたのだった。

 

 

 

──────

 

 日が沈み、夜の帳が下りると、御殿場のイルミネーションは一層街を彩った。

 

 仕事を終えたシンジ達チルドレンは、クリスマスイブの御殿場アウトレットを練り歩く。

 

「ああ〜!なんか思ったより疲れちゃった。ガキンチョどもを握り潰さないようにするのって、結構気を使うわね・・・」

「むずかしかった・・・」

「でも二人が手伝ってくれたから、去年よりずっと楽だったよ。ありがとう、二人とも」

「ふふんっ」

「どういたしまして」

 

 子供達を手の上に乗せたり、大きなお友達相手にポーズを決めたりと大忙しだった三人であったが、今年の任務もどうにか無事に終われたようだ。任務を終えた三人は、年相応の少年少女として、クリスマスイブの街並みを楽しんでいる。

 

「あ、そうだ。あんた達にこれ」

 

 そう言ってアスカが二人に赤と緑色の包みを渡す。

 

「はい。メリークリスマス!」

 

 アスカの用意したクリスマスプレゼント。緑色の包みにはマフラーが、赤い包みには手袋が入っていた。

 

「え!?これってもしかして、アスカの手編み?」

「そうよ?意外?」

「暖かそう・・・」

「ありがとう。とっても嬉しいよ」

 

 アスカからの思いがけないサプライズに、二人の顔にも笑みが広がる。

 

「わたし、何も用意してない・・・」

「う・・・!ごめん、僕も・・・」

「別に。あんた達にそんなサプライズ、期待してないわ。ただしバカシンジは、帰ったらとびきりのディナーを用意する事!」

「もちろん。腕によりをかけて」

「よろしい!」

 

 箱根の夜の冷たい空気とは裏腹に、街並みは暖かさに満ちていて。

 

「ところで、このマフラー。ちょっと長すぎないかな?二人分はありそうだけど・・・」

「その長さをうまく使いこなせるようになったら、あんたを一人前の男として認めたげる」

「・・・?わ、わかった」

 

 平和な日常の1ページとして、彼らの思い出に残る。

 

 ふと、レイが夜空を見上げた。綺麗な満月が星空に浮かんでいる。

 

「どうしたの?綾波」

「・・・・・・ううん。なにも」

「その顔で『何も』って言っても、説得力ないわよ?」

「・・・わたし、変な顔してた?」

 

 シンジとアスカが同時に頷く。一見無表情なレイの顔に微かに浮かぶ感情を読まとれるくらいに、彼らの関係は改善していた。

 

「・・・・・・妹たちに」

 

「うん?」

 

「妹たちにも、何か贈りたい、と思って」

 

「カトル達に?」

 

「ええ・・・。でも、ここから妹たちに、なにを贈れるかしら・・・?」

 

「・・・そうだね。難しいかもしれないけど、僕も何かプレゼントしたいな」

 

「アタシ達の代わりに、いつも地球を見守ってくれてるもんね」

 

 少年少女は知恵を振り絞る。ここには居ない、でも、確かに今も夜空で自分たちを見守り続ける、彼らの仲間へのプレゼントを考えて。

 

 そして、彼らが導き出した贈り物は・・・・・・。

 

 

 

──────

 

 

 

 青く、丸い地球を見上げるように、三機の0・0エヴァが軌道を回る。

 それに乗っているのは三人の綾波レイ。ナンバリング・カトル、サンク、シスであった。

 時間が止まったような静謐な世界の中で、彼女たちは静かに微睡んでいる。なら今は平和。とりあえずそう言うことだ。

 

 そのエントリープラグ内に、微かに流れる小さな音。それは地球から贈られてきた、ささやかなプレゼント。

 

 唄、であった。

 

 

 

 宇宙(ソラ)に赴く妹たちに

 この欠片には大事な想いが詰まっています

 一度も会った事もない、見知らぬわたしの想い

 日を追うごとに、託されたものは深く溢れてきます

 創られた命でしかないわたしでも

 魂は受け継がれていくものだろうか?

 もし、そうであるならば、妹たちよ

 あなたたちは孤独ではありません

 2番目のわたしの想いが

 きっと守ってくれる

 いつの日かわたしの魂も

 受け継がれていくのだろうか

 さようなら、星の海に漂う妹たちよ

 いつの日か、命の旅路で再び巡り合う事を

 わたしの魂は、願い、歌いつづける

 

 

 

 綾波レイ・トロワの声が奏でる子守唄。

 

 その唄に、三人の妹たちは反応しない。

 

 ただ、母の子宮で目覚めを待つ赤子のように、ゆったりと。

 

 だけど、その口は。

 

 確かに、微かに、安らぎを得たように、小さく笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

終劇


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