WARFRAME The Ancient Great War 作:Leiren
二〇二〇年東京。阿藤隆太郎視点。
俺は本部の喫煙室で佐々木が教えてくれた画像の場所に訪れていた。
ここは自然公園に指定されているだだっ広い平原で、一般人でも誰でも立ち入り可能の場所。ただ例外はある。
何もない平原でもあくまでもここは私有地であり、ヘリコプターの着陸などで軍事利用することは緊急時以外禁止されている。
というか、所有者がいる時点でそんなことを簡単に許す人も少ないだろう。
「確か舟が降りていたのはこと辺りだ……。あぁやっぱり……何がしたいんだあいつは」
俺が調べに来た自然公園のロボットがいたであろう場所の地面を調べれば、恐らく舟のエンジンのせいか。その辺りの地面が真っ黒に焦げていた。
下手すれば火事になりかねないことなどお構いなしだったのか。それともここが草原だと言うことに気が付かなかったのは知らないが、まったくもって迷惑極まりない。
「あとは何かあるか……?」
俺はその辺りを注意深く調べる。相手は人型のロボットだ。
どれくらい頑丈なのかは知らないが、部品くらい落ちていれば最高なのだが……。
佐々木が見せてくれた画像の通りでロボットがただ休憩していただけなのか。それ以上は何も見つからなかった。
「はぁ〜めんどくせ。あとは捜査会議でなんとかなるか」
機械人間が殺された事件はあれからすぐに本部の全体に情報が行き渡った。
さっき休憩に本部に戻った時は既に多くの人間の中で見たことのない変死体の話題で持ちきりだった。このことについておそらく既に会議の準備が始まっているだろう。
最初は現場に立った警察が各々捜査進めるが、会議が始まれば本捜査が始まる。
そうすれば俺だけではなく、多くの警察の協力があるため、一気に捜査は進行するはずだ。
だから俺はとりあえずもう手がかりは見つからないとして本部に戻ろうとしたその時だった。
ここからすぐに近くで銃声がした。
それも一発ではなくアサルトライフルのような連続した発砲音。
そしてその直後に響くのは叫び声と子供の鳴き声まで聞こえる阿鼻叫喚の様子。
俺はどっと冷や汗を掻きながら、煮えたぎる怒りが込み上げてくる。
「ふざけやがって……ッ!」
俺はすぐに走り出し、銃声が鳴り響く場所を特定する。
そうして到着したのは滑り台や砂場がある子供の公園だった。しかし時は既に遅く、吐き気を催す程の死屍累々が広がっていた。
またその公園にいるのは、あの殺された機械人間と全く同じ見た目をしていた者達だった。
「っ……!?」
すぐに飛び出そうとしたが、彼らは既に完全武装をしており、その手にはアサルトライフルとライトマシンガンという重火器の数々。
俺は息を殺して隠れ、スマホを取り出して録画を始める。
まさか殺されたあの機械人間はこんなにもヤバい組織で、最悪な連中だったのかと今までの認識をその場で改める。
彼らは何やら鉄の小さなコンテナを運んでは、複雑な機械を操作する者もいる。
おそらくここを拠点とするつもりなのだろうか。
今すぐ、今すぐに飛び出したい。そのような焦りに駆られるが、今俺がここから飛び出せば地面に転がる遺体と同じ羽目にされるのは一目瞭然。俺は心をとりあえず落ち着かせて冷静に録画を続ける。
すると、今一番探している舟が突然真上に現れる。そしてその舟の真下には大の字で例のロボットが張り付いており、スタイリッシュに舟から機械人間達のど真ん中に飛び降りる。
「あいつは!?」
「この雑魚共がぁ!!」
ロボットは叫ぶと、問答無用に機械人間は手に持つ銃を乱射し始めた。
その弾幕に思わず当たりそうになり、俺はより深く身を潜めながら、スマホを物陰から出して録画を続ける。
物陰からその先の光景を映すスマホの画面を見ると、ロボットは目にも止まらない速さで次々と機械人間を切り裂く姿が映し出される。
「なんなんだよこれ……こんな兵器……いつ開発されたんだよ!」
とても人間には見え無い人型のロボットだが、滑らかに動く肢体は人間そのもので、ロボットではなく、もしかしたら中に人間がいるのではないかと思わされるようなアクロバティックな動きでさらに機械人間を切り裂いていく。
だからこれは俺はいつのまにか開発された新兵器だと予想した。
そうして機械人間とロボットとの戦闘が終わるのはものの五分も経たなかった。
俺はもう安全だろうと思って意を決して前に出る。
「そこで手を止めた方が良いぞ? ロボット」
この出会いは決定的瞬間だ。本部が現在騒つかせている事件の容疑者を特定できたんだ。
俺はロボットと目があった瞬間に、最初に口を開く。ロボットが機械人間たちの物資を探り始めていたからだ。
「……」
「そのまま動かずに手を後ろに組め。お前を銃刀法違反と殺人の疑いで現行犯逮捕する……」
ロボットに言葉は通じているだろうか? 無言で黙っているが何を考えているのだろう? お願いだ。抵抗しないで大人しくしてくれ。
「それは俺がお前に拘束されろってことか? それなら断る。
お前は人間だろ? 俺はお前らを守るから、出来れば良い関係でいたい。最悪なタイミングの出会いだがな」
俺がゆっくりとロボットに近づくとロボットは喋った。そして俺の申し出を断った。
突然喋ることに一瞬反撃されるのかと驚いたが、以外と理性的なロボットのようだ。
「いや、そうはいかない。でも反抗しないでくれ。お前が何者か知らないが、こんな惨状。この国では放って置けないんだよ。
でも安心してくれ。拘束と言っても乱暴にするつもりはない。署まで来てもらうだけで良い」
「はぁ……俺はここのグリニア兵どもを全員殺す。今もどこかで人間が襲われているかもしれない。だから無理だ」
ロボットのさらに断る発言に俺は少し語調を強めて言う。
ロボットが人間を助けたいのなら尚更こっちに従ってほしいと。
「それはこっちのセリフだ……! いいから一緒に来てくれ。
俺たちを守りたいなら、これ以上迷惑をかけないでくれ。お前が殺したこいつらをどう思おうが勝手だが、俺たちを無視して守ろうするとは許さない。
お願いだ。協力しよう。急ぎたいのは山々だが、一緒に来るんだ……!」
俺がそう言うとロボットは一瞬明後日の方向を向いて何かに頷く。
誰かと通信をしているのだろうか?
「しょうがない……分かった。じゃあどこに行けばいい?」
するとすぐに承諾してくれた。俺はとてつもない安心で胸を撫で下ろす。
と思ったら舟の方へ向いて移動しようとするのですぐに止める。
その舟の方が早く行けるんだろうが、既にこの舟はSNS上で話題になりまくっている。今は車で大人しく移動した方が良い。
「その舟は置いていけ。今は勝手な行動を一切許可しない。お前は今容疑者なんだよ」
「分かったよ。じゃあ案内してくれ」
「あぁ……」
そういうとロボットはようやく大人しく俺についてきてくれた。
すると舟の方を振り向くとロボットは叫ぶ。
「Ordis! もうバレバレらしいぞ。次はもっと高く飛んで追いかけてくれ!」
「おい……! ってな!?」
何をしているんだと軽くため息を吐きながら俺はロボットに声をかけた瞬間、ロボットが叫ぶと舟が独りでに動き出し、エンジンが起動する爆音が鳴り響くと、辺りに砂塵を撒き散らす程の突風と共に舟は真上上空に向かって真っ直ぐに空の彼方まで一瞬で飛んでいった。
舟の速度は戦闘機よりも速く、見えなくなる前に二秒も掛からなかった。
あんな速さで掛かるGなんて人間じゃ決して耐えられる訳がない。と俺は目の前の光景に絶句する。
そう考えれば、やはりこのロボットはそのまま純粋なロボットなのだろうか?
「置いていくと言ってもこの舟は俺のだからな。放置は出来ない」
「そ、そうか……分かった。じゃあいくぞ」
そうして俺はようやくロボットを自分の車に乗せ、これから本部で始まるであろう捜査会議に急いだ。