WARFRAME The Ancient Great War 作:Leiren
二〇二〇年東京。阿藤隆太郎視点。
俺は道中で見つけた例のロボットを車にのせ警視庁本部まで連行した。
とは言うものの、車を降りればロボットは全身銀色に光る鎧のせいでかなり目立つ。
俺と一緒に入るロボットは何も思っていないようだが、会議室まで行くのに他の警察の目線が凄まじかった。
会議室前の廊下まで来ると、丁度多くの黒いスーツを着込んだ一課の警察たちが会議室に雪崩れ込んでおり、俺は全員が入り終わるのを待ってから席に着き、ロボットに関しては壁の方で立ってもらうことにした。
そうして今回の機械人間殺害事件に関する捜査会議が始まる。
捜査会議室の正面にはホワイトボードと、それに貼り付けられた多く資料が並べられ、ホワイトボードの前には白い長机があり、椅子に一課の係長と隣に管理官がいた。
係長の名前は九頭 司(くとう つかさ)で、管理官の名前は阿部 重(あべ しげる)。
九頭係長は、俺ら捜査員の仕事を総まとめで管理する人で、言うなら超生真面目な性格と言っても良い。だから正直信じられないことばかりの今回の捜査は向いていないんじゃないかと思う。
次に阿部管理官は、あまり良く知らない人物だが、常に重い雰囲気の顔でいつも座ってばかりで、会議が終わったら一言で終わる。
上の立場ではあるが、とても近寄り難い人だ。
「それでは。あー……機械? 人間殺人事件に関する捜査会議を始める。
まずことの発端は、近くの警察署で窃盗が発生し、それに関わったのは捜査三課の瀧内正一。
瀧内は一旦窃盗犯を拘束したが、そこで今回の問題である武装した人間が現れる。
瀧内はすぐに我々に応援を呼んだらしいが、その間に同じ警察官がコイツに撃たれて死亡。
そして最後に瀧内の目の前でこの機械人間と呼ばれる彼が謎のロボットに殺されたとのこと。以上だ。他に何か分かったことはあるか?」
そう九頭係長が今回の発端と大まかな状況の説明を終えた後、次に隣に座る佐々木が例の映像を見せるも九頭係長は呆れた表情をしていた。
話をしっかり理解していなければ今回のことは絶対に信じられない。九頭係長があんな顔をするのは仕方がない。
「えーー! なんで信じてくれないんすか!」
「今回は遊んでいる暇は無いんだよ。既に私の知る限りじゃもっと多くの被害が出ている」
「そりゃそうっすけど……」
佐々木はやはり九頭係長に信じてくれないことに酷くしょんぼりした顔で席に着いてしまった。
それから他の人たちが次々と捜査報告と被害報告をし、今現在に起きている被害の数を数えれば既に数十の数百人で全て民間人が射殺されていること分かった。
そうして殆どの報告が終えたところで最後に俺が立ち上がる。
「阿藤か。何か分かったことがあるのか?」
「はい。話は全部コイツにしてもらいます。コイツは今回の機械人間を殺した張本人であり、今回の事件の全てを把握している重要人物だと俺は判断します」
「なんだって……? それはロボットか? 話せるのか?」
「はい。じゃあロボット。みんなに分かりやすく。俺にも分かるように話してくれ」
さてここからの話は俺も初耳だ。どうせSFじみた話しか出てこないのは予想出来るが、一体どんな話をするのやら。
「俺の名はExcaliburだ。ロボットでは無い。元人間だ。
それはそうと俺はこれから真実を話す。でもお前ら人間の考え方をさっきから見ている限り俺の話は信じてもらえない前提で話そうと思う」
「ちょっと待ってくれ」
そこで九頭係長が話をさえぎる。
「なぜこんなロボットが阿藤の所にいるんだ?」
「手がかりは先程佐々木が見せた映像と画像の二つです。
映像に映る彼の舟の形を頼りに画像の公園に調査しにいった所、近くで銃撃戦がありその場でこのロボットを見つけました」
「なるほど。それで? どうしてそんな危険人物を此処に連れてきた?」
「彼は人間を守ろうとしてるようなので。それと我々には信じられない武装もあることから、今回の捜査に最も重要な者では無いかと考えての行動です。
とりあえず、話だけでも聞きませんか?」
「はぁ……分かった。良いだろう」
そういうと九頭係長はロボットに向き直り、話を聞く姿勢に入る。
「先ず、俺はそもそも宇宙から来た。正確には時空が捻じ曲がった先の宇宙だな。
そこには今回の被害が多発しているグリニア帝国兵、またどこかで隠れて活動しているであろうコーパス、そして今回の事故に巻き込まれているであろうオロキン。
その三つの勢力が恐らく現在此処に潜んでいる可能性がある。
そして俺は、それらを潰すのが目的だ」
これで話は終わりなのだろうか……? 辺りが一瞬だけ沈黙に包まれると、九頭係長が鼻で笑う。
「すまない。君の言った通り全く話は理解できなかったよ。
まぁ、それで? 君が本当に宇宙から来たとして、その三つの勢力はどんな奴らなのかな? それが分かればこちらの対処も変わる」
「基本、殲滅だ。どうせあいつらには平和的交渉をしても帰るつもりはないだろ。むしろ、自分勝手にルールや新たな組織を作ることでやがて手に負えなくなる。
俺は全員殺す。まぁ、殺したくなければ一応教えよう。
先ずグリニア。グリニアは向こうでは既に帝国を築いている巨大勢力で、見た目は全身完全武装で俺が最初に殺した……この写真の奴と同じような見た目をしている。
こいつらに関しては殺すことはやむを得ないと思え。話は通じると思うが、問答無用に処刑、拷問、洗脳をするやつらだ。絶対に生かしてはおけない。
次にコーパス。彼らは最も話の通じる者たちだが、金が全てとして動き、それら全てを支配しようとする奴等だ。
こいつらと貿易すれば一時的に停戦は出来るだろうな。でもそれだけだ。必要とあらば簡単に戦争を吹っかけてくるし、戦争をゲームとして扱うなどかなり腐ってる。
特にそれ故に技術力が向こうではトップレベルに高く、様々な強力で高度なロボットを製造出来るやつらだ。
見た目はグリニアほど完全武装ではないが、全兵士に標準装備があり、見た目ですぐにロボットだと分かる奴もいる。
最後にオロキンだが。正直こいつらの正体は分かっていない。ただ技術に関しては全勢力がコイツらが元になっている程で、技術における先駆者だってことは分かる。
それと……オロキンは出来れば最も速く消したい。まだ確認できていないが、もしオロキンも今回巻き込まれたとならば高確率で感染体と呼ばれる化け物もいるはずだ。
感染体は人なのか動物なのかさえも分からない原型をとどめていない化け物で、焼却処理する事で基本なんとなるが、喰らって、感染させて、暴走する。もし一匹でも混ざっていれば此処にいる人間が化け物に変わるのも時間の問題だ。以上だ」
辺りはまたしてもしんと静まり返る。あまりにも突拍子が無く、あり得ないような話が長々と続いていたからだ。
グリニア、コーパス、オロキン、そして感染体。ロボットが言うこれらが本当に全ているならば最早そんなもの一課だけが背負う問題じゃない。
特に戦争なんて、この国では絶対に起こしてはならない。いや、二度とだ。
そう話が終わると最後まで黙って聞いていた九頭係長が静かに口を開く。
「全く……全く笑えない話だったな。こんなの私にどうすれば良いと言うんだ。
全員、話は分かったな? 人間ではない彼らは皆武装している。しかも、問答無用に撃ってくるらしい……。これは本来の拳銃を持って犯人を射殺する理由にある『やむを得ない』という言葉のレベルを遥かに超えている。
私からの方針は、とにかく民間人を守れ。以上だ」
犯人を殺せでも、銃を持てでもない。民間人を守れ。九頭係長から発せられたその言葉は、捜査一課という一つ括りに対して、そこまでか限界であると、かなり苦し紛れの発言に聞こえた。
相手は人間ではないが、動物でもない。ロボットを破壊しろとも言えなくもないが、あえてそう言ったのだろう。
正直、俺もこのロボットの発言に対して何も言えることが無い。どうすれば、どうすれば穏便にことを済ませることが出来るのだろうか? 俺は頭を抱え、暫く動くことができなかった。