「おぉ〜...すごい賑わってんな」
12月25日、クリスマス。
この日トレセン学園では生徒会主導でイベントが開催されていた。
校内は煌びやかな装飾が施され、生徒達も大いにはしゃいでいる。
中にはサンタ帽やトナカイの角のカチューシャをつけている生徒の姿も見られる。
「こっちだよ、トレーナー君」
ふと自分を呼ぶ声が聞こえた。声の主は俺の担当ウマ娘、シンボリルドルフだ。
今日のイベントでは生徒会長である彼女は同じく生徒会であるエアグルーヴとナリタブライアンと共に行動するのだが、空き時間に二人でイベントを回る約束をしてもらったのだ。
それに生徒会3人は”クリスマスならでは”の衣装を着ると聞かされている。
正直めちゃくちゃ楽しみだ、担当のサンタ姿とか浮かれないトレーナーの方がおかしいまであるだろう。
「見回りとかご苦労さん、楽しんでる...か...」
停止。
この瞬間、自分の中で確かに思考と時間が停止した感覚があった。
「おかげさまでね、ってどうしたんだい、トレーナー君?」
「あぁ...いや...その...似合ってんな、それ」
「そうかい?君にそう言ってもらえるなんて、張り切って選んだ甲斐があったな」
どうして俺の受け答えがこんなにもぎこちなくなっているのか。
それはルドルフの衣装が想像を絶するほどの衝撃を持っていたからだ。
可憐なサンタ?否。もふもふしたくなるトナカイ?否。
ーーーそこにはルドルフの顔と耳の生えた喋るクリスマスツリーがあった。
(なんでクリスマスツリーになってんだ....!?)
疑問が尽きない、尽きるわけがない。
二十数年生きているがクリスマスのイベントでツリーの格好をしている人を見たことがないからだ。
目の前に佇むクリスマスツリーが本当にルドルフなのかと疑うが、どう見てもルドルフなのだ。
というかルドルフはこういう時率先してこういう衣装を着るタイプだ、先ほどの発言からも自分からこの衣装を着たのだろう。
「現体制になってから初のクリスマス、不安もあったがみんなに楽しんでもらえて本当に嬉しいよ」
「そうか、ここ最近ずっと遅くまで仕事してたもんな」
「あぁ、グルーヴやブライアンもそうだが君にもずいぶん助けられた、感謝しているよ」
「大したことはしてねぇよ、担当が頑張ってんのにトレーナーが何もしないわけにもいかないしな」
なんて会話はしているがその強烈なフォルムに気を取られて割と頭に入ってきてはいない。
クリスマスツリーと会話をするなんて後にも先にも今日だけだろう、これもクリスマスの奇跡ってやつだ、うん。
それになんかめっちゃ似合ってるのだ。なんでこんなに似合ってるんだ皇帝さん。
「それに...今回のイベントを通して生徒達との距離が縮まったように感じるんだ、欣喜雀躍...小さな一歩だがとても嬉しいよ」
そういって照れくさそうに頬を赤らめるルドルフ。
同じ学園の仲間と仲良くなった、威厳と風格に満ちた彼女が感じる年相応の少女の喜び。
それがとても愛おしくて思わず頭を撫でてしまった。
「っ...!トレーナー...くん...?」
困惑しながらもより頬を赤らめ嬉しそうにはにかむルドルフ、その姿により愛らしさが込み上げもっと頭を撫でる。
ああもうなんでこんな可愛いんだうちの担当は!
「トレーナー...くん...そろそろ...」
「うぇ?あぁすまん...」
上目遣いの困った猫のような表情で静止を求められ我に返り、ルドルフの頭から手を離す。
「ふふ...これはすごいプレゼントを貰ってしまったな、あとでしっかり”お返し”しないとな」
そういう彼女の目には悪戯っぽく、何か恐ろしいものを感じさせるような怪しい光を感じる、しまった、ちょっとやりすぎちまったか...でも可愛かったし...!
「お手柔らかに...頼む」
「全く...困ったトレーナー君だ」
気づけば窓の外では白い雪が夜を彩っている。
これからもこんな風に彼女と過ごせたら...それ以上のプレゼントはないな。
そんな風に幸せを噛み締めながらルドルフと聖夜を過ごしたのであった。
ちなみに後日クリスマスツリーとイチャつくトレーナーがいるという噂が広まったりしたとかしなかったとか。