第九回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のクリスマス   作:雅媛

6 / 10
『地獄の背走サンタ』って、知ってる?


降臨!聖夜のツイン背走サンタ!(作:嵐山三太夫)

ナリタブライアンは激怒した。必ずこの邪智暴虐の姉を問い詰めねばならぬと決意した。

 

 

 

 

 

 何故、姉の同期2人が自分を探していたのか。

 

 スリーサイズのみならず頭部のサイズを測定することになったのか。

 

 あの会長と副会長が何とも言えない笑みと複雑怪奇な表情を浮かべていたのか。

 

 

 

「ハメたな、姉貴……!!」

 

「すまないなブライアン、どうしても手が足りなくてね」

 

 

 

 怒りに震えるは、腰まであるロングヘアの芦毛のウィッグを付けサンタドレス(ヒシアマゾンとBNW3人の監修)に身を包んだナリタブライアン。

 

 ー今宵、聖夜の街を二人のサンタが『背走で』駆け巡る―! 

 

 

 

 降臨! 聖夜のツイン背走サンタ! 作:嵐山三太夫

 

 

 

 

 

『地獄の背走サンタ』。

 

 トレセン学園においてまことしやかに語られる、都市伝説の一つである。

 

 背走でウマ娘と同等の速度を出し何処までも追いかけてくるというその存在は。

 

 その特異性により、非常に限定的な時期のみの存在なのにも関わらず学園内に幅広く知られている。

 

 

 

 その正体が、同期のイタズラによって後ろ前にサンタ衣装を着せられ後頭部にサンタの顔のような装飾をされたビワハヤヒデだったという事実は。

 

 BNWのナリタタイシン、ウイニングチケットだけが知っていた……去年までは。

 

 

 

 

 

 偶然オグリキャップのクリスマスイベント会場がBNW3人のクリスマス会場と被っていたこと、

 

 そしてその場にビワハヤヒデ用のサンタドレスがあったことで爆誕した『背走サンタ~クリスマスサンタドレスver』により本来トレセン学園内にしか知られていなかった『背走サンタ』という存在が知れ渡ってしまったのが彼女の不運だった。

 

 ──結果、子供達を中心に『ウマ娘のサンタが背走でプレゼントを運んでくる』という、色々当人達にとっては頭を抱えたくなりそうなミームが誕生してしまったのだ。

 

 

 

 そして、トレセン学園で子供向けのイベントとして『背走サンタ』の訪問イベントが提案され……これが通ってしまったのである。

 

 

 

 しかし、予想外に『背走サンタ』の知名度が高かったのはトレセン学園にとっても誤算だった。

 

 結果、このままではハヤヒデ1人では到底回りきれないという数の応募が入ってしまい、しかし子供達のためにも無下にしたくないというハヤヒデを含め学園は対応に頭を悩ませることになる。

 

 

 

 そこで白羽の矢が立ったのが妹のナリタブライアン。

 

 髪についてはウィッグで、尻尾は専用のカラーで調整でき、(身長など一部除き)体格も似通っていて長距離レースをものともしないスタミナを兼ね備え、ぶっきらぼうながらも面倒見も悪くない彼女であれば適任だと思われた。

 

 ──逃げられない状況まで持ち込むことが出来れば承諾するだろうというシンボリルドルフの発案(または悪魔的発想)によって本人衣装はギリギリまで伏せられての段取りとなったが。

 

 

 

 

 

「姉貴、毎度の事だがアンタは人が良すぎる。いくらオグリ先輩のイベントがきっかけとは言え、手が足りなくなっては本末転倒だろう」

 

「まあ、元は私達3人が発端だからな……とはいえ、ここまで知れ渡っているのは私も少々予想外だったよ」

 

「はぁ……こうなったら仕方ない。全て抱え込まれるよりはよほどマシだからな。流石にこの格好までは予想外だったが」

 

 ぼやきながら、ハヤヒデのサンタドレスとほぼ同じデザインのケープを揺らすブライアン。

 

 一応本来のものより丈を短くして巻き込まれや引っ掛かりを防ぐようにしてあるが、勝負服の裾を『邪魔だから』と引きちぎる彼女にとってはまだ違和感があるらしい。

 

「走っても支障はないように仕立ててもらった、途中で脱ぎ捨てたりするんじゃないぞ?」

 

「──姉貴は私をなんだと思ってるんだ。そろそろ行くぞ」

 

「ああ、私も行くとしよう。では、また後でな」

 

 

 

 段取りとしては各訪問先の近くで待機しているスタッフからプレゼントを受け取り、訪問先で子供達にプレゼントを配るというもの。

 

 道中のルートは衣装に仕込まれたインカムを通じて運営から連絡されることになっており、訪問先が各所に点在している都合2人は訪問先まで自らの脚で向かう必要があった。

 

 

 

 ──いくらクリスマスシーズンとはいえ、ウマ娘専用レーンを高速で走行するウマ娘は流石に目を惹くわけで。

 

 

 

 ~ ️~

 

 

 

「え、なんか今サンタいなかった? ほらウマ娘レーン走ってって!?」

 

 

 

 ~ ~

 

 

 

「は? 今サンタのカッコしたウマ娘さんが……いや背走してる!?何だアレェ!?」

 

 

 

 ~☕️~

 

 

 

「は? 今のアレサンタ? サンタって実在してたん?コスプレ?」

 

「あ、なんかトレンド入ってる。……背走サンタ? ナニソレ?」

 

「ウマ娘とおんなじぐらいの速さで走れるってヤバない……?っべー、トレセン学園マジパネーわ」

 

 

 

 ~ ~

 

 

 

「おんやぁ、サンタさんかい。そういえばそんな時期だねぇ」

 

「いやばあさん、ありゃウマ娘さんだよほら、道路走ってるだろう」

 

「おじいさんたら、あのサンタさん後ろ向きに走ってるじゃないですか、あんな走り方ウマ娘さんはしませんよ」

 

 

 

 ~ ~

 

 

 

「サンタさんだー!」

 

「うわー、背中に顔がある!」

 

「せんせー! うしろ走りでサンタさんが来たよー!?」

 

「しっぽだー!」

 

「あー!? おねえちゃんテレビで見たことあるー!」

 

「おい、髪を引っ張ろうとするな。大人しくしてなければプレゼントはやらんぞ」

 

「「「えー!? やだー!? プレゼント欲しいー!」」」

 

「ならきちんと並べ、他のやつを追い越したりするワルイコにやるものは無いぞ」

 

「「「はーい、ウマむすめサンタのおねえちゃん!」」」

 

「ふふ、『おねえちゃん』だって。ブライアンちゃん」

 

「……おい、笑ってないで手伝え」

 

 

 

 

 

 

 

「全く、会長め……完全に悪目立ちしてるだろうが……」

 

「あはは、すっかり広まっちゃってるね。ほらこれ、ウマッターでもトレンド入りしてる」

 

「やめろ、それを今見せるな。腹が立つ……!」

 

 ダミーで膨らませた背負い袋を担いで訪問先を巡る最中、

 

 あちこちで視線を集める『背走サンタ』。

 

 ナリタブライアンとビワハヤヒデ、2人が各地を巡る姿は凄まじい勢いで拡散されていた。

 

 サポーターとして訪問先で合流し、自身もサンタに扮しながら

 

 にこやかにウマホの画面を向けてくるサクラローレルを威嚇しつつ、訪問先の施設から出たブライアンは再びダミーを詰めた背負い袋を背負う。

 

「あれ? ここで最後なのにまだ袋背負うの?」

 

「どうせなら最後までやってやる。律儀な姉貴の事だ、恐らくそのまま走って学園まで戻ってくるだろうからな」

 

「……ふーん」

 

「何だ、何か言いたそうだな」

 

「別に♪ ──ねえブライアンちゃん、学園まで私も一緒に走って良い?」

 

「──言っておくが、ただ学園まで戻るだけだぞ」

 

 

 

 残念ながら、そんな宣言が守られることもなく。

 

 煽る様に前を走られたことで鬱憤が爆発したナリタブライアンとそれはそれは愉しそうに逃げるサクラローレルの姿が激写され、後日世間に出回ることとなった。

 

 

 

 ~⏰~

 

 

 

 トレセン学園入口。

 

 レースさながらの速度で走行してきたサクラローレルとナリタブライアンが門扉に寄りかかりながら、息を整えていた。

 

 サクラローレルは荒い息をつきながらも満面の笑み、対してナリタブライアンはどこか不満げ。

 

 

 

「はぁ……はぁ……あー楽しかった!」

 

「……ハッ……ハッ……クソ。おい、もう一度走るぞ、こんな燻ったままで終われるか……!」

 

「一体何をしているんだ……ローレル君、ブライアンの性格は君も良く知っているだろう。あまり煽らないでやってくれ」

 

「ふふ、ごめんなさい。つい、ね?」

 

 

 

 少し先に戻ってきたビワハヤヒデが呆れたように声を掛けると、いたずらっぽい笑みで応えるローレル。

 

 

 

「それで煽った結果専用レーンでレースと同等の速度を出して2人とも走行した、と。ローレル、お前というやつは……」

 

「あれ、エアグルーヴちゃん。運営の方はもう良いの?」

 

「お前達サポーターのお陰もあって無事訪問は全て終了、サポーター達も全員戻ってきたところだ。子供達は皆とても喜んでいるそうだぞ」

 

「──そうか」

 

「うんうん、ハヤヒデさんとブライアンちゃんのおかげだね」

 

「しらを切ろうとするんじゃないローレル。お前はこれから今回のレーン走行について反省文だ。……ブライアン、ハヤヒデもご苦労だったな。これでイベントは終了となる。お前達の友人達が食堂でパーティーの用意をしているから行ってやると良い」

 

 

 

 あ~れ~とエアグルーヴに引きずられながらもどこか楽しげに去っていくサクラローレル。

 

 そして門にはハヤヒデとブライアンが残された。

 

 

 

「お疲れ様、ブライアン。今回はとても助かったよ、私一人ではどうにもならないところだった」

 

「……普段の恩を返しただけだ。今度はきちんと全部相談しろ」

 

「そうだな、次はそうするよ。──どうやらパーティー会場の方も準備が整ったようだし、行こうか」

 

 ハヤヒデェェェェェ! ブライァァァァン! と、何処からか聞こえてくる大声に苦笑しながらハヤヒデは食堂へ向かおうとする。

 

 

 

「待て、姉貴」

 

「……ブライアン?」

 

「サンタクロースはプレゼントを貰わんかもしれんが、姉貴は受けとるだろう。持っていけ」

 

 

 

 そう言ってブライアンはラッピングが施された小箱を取り出し、押し付けるようにハヤヒデに渡した。

 

 

 

「それは私個人からだ。交換会だと手元に届くか分からんからな、直接渡させて貰う」

 

「え、あ、おいブライアン?!」

 

 

 

「Merry Christmas、だ。姉貴」

 

 

 

 そうして呆然と立つハヤヒデを追い越して、ブライアンは大声の出所へ向かっていく。

 

 

 

「全く……本当にお前には驚かされるよ」

 

 困ったように、しかし幸せそうにハヤヒデはその小箱を抱き締めるのだった。

 

 

 

 なお、中身はヘアスプレー(マヤノトップガン監修)であり、大いにハヤヒデは喜んだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談。というか、今回のオチ。

 

 

 

「スイープさん、やっぱりやめましょう? そもそも怪しい噂話ですし……」

 

「何言ってるのよキタサン! サンタは空を飛べるのよ、絶対に空を飛ぶ魔法も知ってるはずだわ!」

 

 

 

「背走でウマ娘を超えるほどの速度を出せるサンタ……どんな肉体構造をしているのか、興味深いねぇ!」

 

「……そもそもサンタは実在しねぇだろ」

 

「諦めてくださいシャカールさん、こうなったら飽きるまでタキオンさんは止まりません……」

 

 

 

 今回のイベントで背走サンタの知名度はますます増してしまい、背走サンタの正体を暴こうとするとする輩も現れ。

 

 張本人であるビワハヤヒデとナリタタイシンはしばらくウイニングチケットがいつ口を滑らせるか気が気でなかったとか。

 

 

 

「疑問ッ! 背走サンタの出典はそもそも何処からなのだッ?」

 

「理事長……!?」

 

 

 

 悩めるビワハヤヒデの明日やいかに。

 

 どっとはらい。




煽るだけ煽って連行されるローレルさんが楽しすぎました。うまよんは良いぞ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。