第九回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のクリスマス   作:雅媛

7 / 10
2本目を書いてしまいました。後悔はしていません。


メジロマックイーンのクリスマスドタバタ大騒動(作:BuddPioneer)

 メジロマックイーンのクリスマスドタバタ大騒動

 

 いつものように平和なトレセン学園。今日はクリスマス・イヴで身にしみる風が吹いて寒いが、今日も練習トラックでは数多のウマ娘たちが練習に励んでいた。

 

「スイーツ! スイーツ! スイーツ!」

 

 そんな中に、スイーツと連呼しながら走るウマ娘が1人。芝の名優、メジロマックイーンである。彼女もトゥインクル・シリーズを制するべく、鍛錬に励んでいた。アスリートには休日なぞ存在しない。たとえそれがクリスマス前後であろうと、毎日変わらず鍛錬に励むのだ。

 

「ふう、ここで少し休憩ですわ」

 

 ランニングが一段落したマックイーンはベンチに腰掛け、休憩に入った。が、彼女が普通に休憩を終えられた試しはない。何故かというと……

 

「よーマックイーン! ヒマだからきてやったぞー!」

 

「ゴ、ゴールドシップ……」

 

 他でもない、このゴールドシップの存在があったからだ。何故か、マックイーンが練習を終えた瞬間どこからともなくやって来るのである。しかも、気配は一切感じさせず、だ。

 最初の頃なんか、急にやって来たゴールドシップに何度も驚かせられたものだったが、今ではもう唐突にゴールドシップがやって来ても特に驚くことなくなっていた。慣れとは怖い物である。

 

「それで、今日はどのような要件でして?」

 

「おっし話が早くて助かるぜマックイーン!」

 

 クールダウンをしたかったマックイーンだったが、ゴールドシップはそんなことを気にせず、マシンガントークを繰り出していく。

 

「実はな、昨年ムー大陸の秘宝が隠されたって噂の宝の地図を発見してな、面白そうだから探しに行っていたというわけよ。で、ついさっき戻ってきたのだぜ! お宝を見つけてな」

 

「それは面白そうですわね。で、箱の中身は確認したのです?」

 

 確かに、彼女は脇に宝箱のようなものを抱えている。だが、マックイーンは完全に疑っていた。何故なら、制服が全く汚れていないからである。普通お宝探索をするなら、服の一つや二つ、汚れていてもおかしくない。が、ゴールドシップにはそれがない。まあ、このようなことは今に始まったことではないので、マックイーンはクールダウンをしながら箱の中身について質問した。

 

「いや、中身はまだ見ていないんだ。で、マックイーンに日頃の感謝を込めてプレゼントしちゃうぜ!丁度今日はクリスマスだしな。 あ、アタシは今からアトランティス大陸のお宝を探しに行くからここで失礼するぜ!」

 

 が、当のゴールドシップは箱を開けていないため中身を知らないどころか、アトランティス大陸の秘宝を探しに行くといい、箱の中身を押しつけて何処かに行ってしまった。

 

「……はあ。全く、この箱どうすればいいのですの?」

 

 1人その場に残されたマックイーンは、箱を抱えて呆然としていた。

 改めて、ゴールドシップが置いていった箱を見てみる。箱は木製で、シンプルな金具がついている。ザ・宝箱と言った見た目をしている。そして、見た目のわりに軽い。箱を振ってみるが、何の音もしなかった。『空箱では?』と思うマックイーン。

 

「まあ、考えていても仕方ありませんわ。ちょっと見るなら問題ないですわよね」

 

 そして箱の中身を開けるため、金具に手をかける。……普通のウマ娘なら、気味悪がって開けないだろうが、開けようとするマックイーン。やはり、肝の据わり方が違っているのかもしれない。

 そして、金具をいじってみると、案外すんなり金具は外れた。少しだけ蓋を開けたその瞬間

 

 ボンッ! 

 

 急に大きな音を立て、蓋が思いっきり開いた。しかも、真っ白な煙がもくもくと立ちこめる。その煙はマックイーンを包み込み、しばらくそのままであった。

 

「ゲホッ、ゴホッ!」

 

 煙が晴れるまでの間、マックイーンはただひたすらに咳き込んでいた。同時に、こんな目に遭わせたゴールドシップを絶対に成敗しようと復讐に燃えていたのであった。

 煙が晴れたあと、マックイーンは頭に違和感を覚えた。何か、おもりがずっしりと頭に乗ったような感覚がしているのだ。

 

「何なのかしら、これ。こんな感覚、初めてですわ」

 

 何が何だか分からないマックイーン。もしやまたゴールドシップがイタズラをしていったのかと思い、周りを見渡すが、誰もいない。しかし、そこで異変に気づいた。

 

「こ、これは……」

 

 なんと、マックイーンの髪が伸びていたのだ。ついでに、毛量も増えている。肩あたりまでだった髪は、地面に少し触れるくらいの長さになっていた。何故分かったかというと、地面すれすれを何か白い物が自分の背後にまるで背後霊かのようにふよふよと付きまとっていたからだ。髪自体はストレートだったが、とにかく毛量が増えたことにより重さを感じていたのであった。

 

「ゴールドシップ……って、まだジャージでしたわね。着替えないといけませんわ」

 

 結局箱をよこしたゴールドシップに恨み節を言いつつ、自分がジャージ姿だということに気づいたマックイーンは着替えに更衣室へと向かった。だが、彼女は知らなかった。マックイーンのことを2人のウマ娘が付け狙っていることに……

 

 

 ひとまずシャワーを浴びて制服に着替え、寮へ向かうマックイーン。が、そこで何者かの気配を感じ、振り返った。

 

「誰がいますの?」

 

 声をかけるが、並木道には誰もいない。……いや、いた。並木道の木をよく見ると、特徴のある白い髪の毛が少しだけ覗いていた。

 

「……誰ですの?」

 

「ちゃんと計算通りに隠れたつもりだったのだがな……」

 

 もう一度声をかけると、隠れていた髪の持ち主が姿を現した。真っ白な芦毛にすらりとした長身。芦毛の怪物、ビワハヤヒデである。

 

「それでハヤヒデ先輩、一体何の用ですの?」

 

 何故ビワハヤヒデがマックイーンを尾行していたのか。マックイーンは全く理解できなかったため、聞くことにした。

 

「……ふむ。毛色、毛量、髪質。どれをとっても不足はない」

 

 しかし、当のビワハヤヒデは何かをブツブツと呟いており、マックイーンの言うことを聞いていないようだったが、急にキラキラした眼をこちらに向け、手を取り、こう言った。

 

「メジロマックイーン、私と一緒にサンタをやらないか?」

 

 と。

 

「はい?」

 

 思わずマックイーンも素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「毎年、寮のみんなが朝起きるとベッドの脇にクリスマスプレゼントが置いてあるのはみんなが知っていることだろう? 実は、それは私がやっているのだよ。毎年1人でやっているのだが、マックイーンを見て確信したよ。『これは間違いなく手伝ってもらえる』と」

 

「いや、私は手伝うと一言も言っていませんわよ?! というか、私以外にも芦毛はいますでしょう?」

 

 何故かマックイーンのいうことなどお構いなしに持論を展開するビワハヤヒデ。呆気に取られるマックイーンを他所に、ビワハヤヒデは続ける。

 

「いや、代々プレゼントを配るサンタには厳密な規則があるんだ。だが、今まではその規則に合うのが私しかいなかった。だが、マックイーンはその規則に見事合致しているのだよ! つまり、これは『プレゼントを配れ』という天からの思し召しなのではないかね?」

 

「いや、なんでそうなるのですの?! というか私、やりませんわよ!」

 

 何故か声高にマックイーンが必要だと声高に叫ぶビワハヤヒデ。もうマックイーンは勢いに完全について行けなくなっていた。

 

「少し、考えさせてくれませんこと? 明日には返事ができると思いますわ」

 

「なるほど、分かった。良い返事を期待している」

 

 少し考えさせて欲しいマックイーンは、考える時間をもらった上でその場を去り、寮へと戻っていった。

 

 

「……はあ、いつにも増して疲れましたわー」

 

 寮に戻り、談話室でぐでーんと伸びているマックイーン。さっきのビワハヤヒデからの誘いをどうすれば断れるのか、策を巡らしていた。が、三女神様はマックイーンに思考を巡らせる時間を与えない。

 

「にょわっ?!」

 

 突如、マックイーンの背中に重量がズッシリとかかる。先ほどの重さが漬物石ほどの重さなら、今度の重さは巨石並のズッシリ感。

 

「さらさら……ふわふわ……さらさら……ふわふわ……さらふわ……」

 

 しかも、謎の呪文が聞こえてくる。

 

「こ、今度は誰ですの?」

 

 またもや後ろを振り向くと、そこには

 

「さらふわ……さらふわ……」

 

 謎の呪文を唱え続けるふわふわソムリエ、アドマイヤベガがいた。目を閉じてマックイーンの髪をまるで抱き枕にするかのように触り続けている。

 

「アドマイヤベガさん、何の用ですの?」

 

 おそるおそるマックイーンが聞くと、アドマイヤベガは眼をゆっくりと開き、

 

「ふわふわ度、9.7点、肌触り、良質。結論、最高」

 

 これまた謎の評価をしていた。

 

「一体何の評価ですの?!」

 

「ん、抱き枕に向いているかの評価」

 

 何を評価しているのかマックイーンが聞いたら、まさかの抱き枕に使えるかの評価をしていたのであった。これにはマックイーンもびっくり。今日は驚きっぱなしである。

 

「マックイーン先輩の髪は抱き枕として最適。よって、今夜一緒に寝てくれませんか? カレンさんも喜ぶと思います」

 

 しかも、今夜一緒に寝てくれと言ってきた。ここまで来るとマックイーンは頭が痛い。

 

「残念ですけど、流石にそれは難しいと思いますわ」

 

 流石に無理だとマックイーンは丁重に断った。そりゃそうであろう。唐突に私と一緒に寝てくれませんか、と言われたら誰だって断るに違いない。マックイーンも断る自身がある。

 

「そう、ですか……さらふわ……さわふら……」

 

 しかし、アドマイヤベガは明らかにテンションが下がってしまった。耳と尻尾はだらんと無気力に垂れ下がり、明らかに悲しい表情をしている。

 この状況を誰かが目撃したら、マックイーンが悪者に見えてしまうだろう。しかも、アドマイヤベガはギュッとマックイーンの髪を掴んで離さない。完全に鋼の意思である。

 

「あーもう! 一緒に寝れば良いんでしょ?」

 

 しばらくの沈黙の後、マックイーンが折れる形で了承せざるを得なくなった。というか、それしか選択肢がなかった。

 

「いいんですか?!」

 

 急に顔を明るく輝かせるアドマイヤベガ。目は完全にキラキラと輝き、耳と尻尾はピコピコと動いていた。

 

「ただ、今夜だけですからね!」

 

「……! 分かりました。じゃあ、今夜私の部屋まで来て下さい」

 

 そう言うと、アドマイヤベガは去っていった。またしても、談話室はマックイーン1人になった。

 

「おーっす! 秘宝探索から今戻ったぜ!!!」

 

 しかし、しばらくしたら当の元凶であるゴールドシップが入ってきた。

 

「……」

 

「ん、どうしたんだぜ? そんなに押し黙って」

 

「ゴールドシップ……」

 

「?」

 

「よくも、こんな目に、遭わせてくれましたわね!!!」

 

 マックイーンは、ひとまずゴールドシップをシメておいた。

 

 

 ちなみに、結局ビワハヤヒデの頼みを聞き入れ、アドマイヤベガとカレンチャンの抱き枕になったのは別の話である。

 




毛量マシマシチョモランマなマックイーンとなってしまいました。
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