第九回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のクリスマス   作:雅媛

9 / 10
ついてこれる奴だけついてこい、お前があなたちゃんだ


プレゼントはあんぱんの味噌煮が欲しいです。(作:サイリウム)

 

 

 

「ゲート、ゲート……。ニューゲート、白ひげ……、グラグラ……」

 

「ぽけぇ……。」

 

「たいやきそば。」

 

 

トレセン学園、放課後。学生としての本業、通常授業が終わってから少し経ったぐらいの時間。ウマ娘たちが次なるレースに向けて練習をするため部室なのでお着替えをするような時間帯に、三人のウマ娘が部室でうなだれておりました。

 

 

「わ、先輩方死んでますね。邪魔だからどいてくれないかな……。」

 

「ス、スぺちゃん!?」

 

 

三人だけかと思いきやこっちもかなりやばい感じ。憧れのスズカさんと練習するためにスピカの部室にやって来たスペシャルウィークが最初に放った言葉がそれである。もうなんか絶対スぺちゃんが言わなそうな言葉だし、眼がやばいぐらいに淀んでいる。いつもは先頭を走ることしか考えていないスズカさんでも心配になっちゃうレベルです。

 

 

「あ、ぴすぴーす……。スズカ、スぺの奴有馬に向けての減量で何も信じられなくなった闇落ちスぺになってるだけだから気にしなくていいぞ……。」

 

「そ、そうなのね。」

 

「滅びろ体重計。」

 

 

さっきまで燃え尽きた変な髪形のボクサーみたいだったゴルシがちょっとだけ復活して原因を教えてくれます。確かにスペシャルウィークと言えば大食い、三度の飯よりメシが好きと有名な彼女が減量しているとなれば、この世に存在するすべてを恨み破壊してしまいそうな魔王スぺみたいなお目目になっても……、いやおかしい。お願いだからもとに戻ってスぺちゃん! 無言で体重計全力で踏みつけてるの怖いから!

 

 

「まぁ米の収穫にハロウィン、感謝祭と秋の名物全力で堪能してたからね。有馬記念で今度こそグラスちゃんに勝つって意気込んで自分から沖野さんと相談して始めた減量だから……。」

 

 

そう補足してくれるのはお耳がうなだれて明らかに元気のないサクラチヨノオー、この世界に置いていつの間にかスピカに加入してたウマ娘ちゃんである。なんだか体のレイヤーがバグってるのか全体的に透けてるような気もするけど、多分気のせい。

 

 

「まぁ飴ちゃんでもなめさせとけば元に戻るよ、ほやスぺち。ウチのクソ姉謹製の飴ちゃんをお食べ。」

 

 

チヨの手から放たれる桜色の飴ちゃんは狙い違わずスぺのお口に超エキサイティング。彼女がちょっともごもごしていると見る見るうちに彼女のお目目に生気が戻ってきます。さっきまでの闇落ちスぺはどこへやら、普段通りの純粋無垢の彼女が戻ってきました。

 

 

「……あ、あれ。私何してたっけ……、ってわァ!? なんあ皆さん倒れてるべ!!」

 

「ほら戻った。……スズカちゃんも食べる?」

 

「い、いただきます。」

 

 

せっかくだからということで、チヨノオーから手渡しで飴を受け取るスズカ。市販の飴と比べ一回りほど大きいソレは非常にきれいな桜色をしている。もしバクシンオーがここにいれば『素晴らしいバクシン!』と褒めたたえるだろう。口に含んでみれば見た目通りに、優しい甘みと桜の香りが頬いっぱいに広がり、外の冬景色と対照的に口から体に向けて徐々に春に代わっていくような気持ちになる。やさしさと温かさ、そんな味だ。

 

 

「ここでぶっ倒れて真っ白になってるクソ姉が作った飴ちゃん、思ったよりおいしいでしょ? 問題は起こすし、迷惑かけてくるけどこういうのは得意みたいなんだよね。」

 

「は、はぁ……。あ、それで皆さんどうしてこんな姿に?」

 

 

そう言いながらもう一度スピカの部室を見渡すスズカ。

 

ホワイトボード前、パイプ椅子に座りながら組み立て式の机に倒れ込んでいるウマ娘、『あなた』。色という色がなくなり、そこだけ白黒漫画になったかのように真っ白。しかも口からなんか吹き出しみたいのが出てるし、その上耳の先がなんか砂みたいになって体が崩れかけている。

 

なんか明らかにヤバそうな彼女は一応凱旋門賞ウマ娘。世界で一番権威のある芝レースに勝利したウマ娘であり、学園一の問題児。ゲートを壊すなんかかわいいものであり、凱旋門を爆破するはパリを火の海にするは、挙句の果てには地球事爆散するヤバいウマ娘である。とりあえずこいつに“門”とか“ゲート”を近づけたらいけない。ちぬ。

 

 

次にその右隣に座るサクラチヨノオー、描写レイヤーがバグったのか徐々に体の透明度が増しているウマ娘。いつか消えてしまいそうで怖い。透明になって来て見にくいが、眼の下にすごい隈がある。原作のかわいい彼女はマルゼンスキー産駒の『あなた』(前世血縁上の姉)によって消え去り、若干やさぐれてしまっている。

 

史実であればダービー馬の彼女はこの世界における数少ない三冠ウマ娘。クラシック期を怪物マルゼンスキーと邪神あなたの薫陶を受けることによっていち早く覚醒、ダービーに参加できたオグリや天才トレーナーと人馬一体になったクリークなどを打ち倒し三冠へと至った。なおその後のシニア期は停滞してしまい、連戦連敗。ドリームシリーズでようやく借りを返すことになる。

 

 

最後にゴルシ。机に突っ伏したままピクリとも動かない。一応さっきスぺちゃんの説明をしてくれたあたり起きているのだろうが、なんか上から眩い光が降りて来て天使みたいのが彼女の上をパタパタ飛んでいる。ただその天使の顔が皆ゴルシであり、飛んでいる方法も天使の羽ではなく、黄金の錨を高速回転させてホバリングしているのだが。

 

彼女も他の二人と比べても遜色のない成績を残しており、皐月賞と菊花賞の二冠。そして宝塚記念を三連覇するというとてもすごい記録を持っている。あとこの星のレースではないが、ゴルゴル星のお姫様で全GⅠ優勝経験があるらしい。本当かどうかはわからないけど……。

 

 

 

「クリスマス、クリスマスだ。」

 

 

スズカの疑問に、あなたが代表して答える。体の形を保てなくなった彼女はいつの間にか、ただの砂の山になっており机の上に置いてあるそれが彼女に向かって話しかけている形になる。思わず『うそでしょ!』と言いそうになった彼女であったが、ここで突っ込んでしまえば話が進まない。鋼の意思でそれを耐える。

 

 

「クリスマスはいわずと知れたサンタさんの日、毎年毎年真っ赤な服を着たサンタさんが子供たちにプレゼントをもってやってくる……。しかしながら! この話には裏があるのだ。」

 

 

砂の怪物になったあなたちゃんが静かに語り始める、が。隣にいるチヨノオーは画面の端っこを裏返して作画班に透明度がどんどん上がっていることに対してのクレームを言っているし、ゴルシの上でフヨフヨしているゴル天使たちはゴルシの頭にピラミッドを建築しようとしている。全く持って話が入ってこない。

 

 

「実は毎年どっちが子供にプレゼントを贈るか、ホワイトサンタとブラックサンタの抗争があってじゃな。ホワイトサンタは子供たちの望むプレゼントを、ブラックサンタは子供たちが嫌がるプレゼントを配るために血みどろの争いを繰り広げていたのじゃ。……ほら、サンタのコスチュームって真っ赤じゃろ? アレブラックサンタの返り血なんじゃ。」

 

「う、うそでしょ。」

 

 

説明しながら実際の抗争の映像を見せてあげるあなた。少々グロテスクなシーンが多いためモザイクやら謎の光やら黒い帯が大量に使われている未成年者仕様の映像だが、なんかやばいことになってるのが解る。ちなみにスぺは減量のためこんにゃくを食べて空腹を紛らわすのに忙しいため話を聞いていない。

 

 

「んで、今年ヤバいのがね。ホワイトサンタが腰痛で抗争に参加できなくなっちゃって、このままだとブラックサンタが世界中にヤバいプレゼントを配ることになりそうなんだよ。……というわけで夜なべしてブラックサンタ撃滅計画を立ててたの。」

 

 

と言いながら砂の状態でとげとげのいっぱいついたモーニングスターを掲げるあなた。明らかにヤルきである。

 

 

「ち、ちなみにブラックサンタがプレゼントを配った場合どうなるんですか……。」

 

「えっとね、スズカの場合……。『一年間走るの禁止チケット』で、スぺは『大食い禁止条例』だね。」

 

 

 

「「ヤりましょう。」」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「さぁ始まりましたブラックサンタ軍VSスピカサンタ応援団の大レース! 本日ここ特別レース場にて全世界の空を羽ばたくサンタがどちらなのか! 黒か赤かの最終決戦が今始まろうとしています! 実況はアニメで一度やったからという理由で引っ張り出されたイナリワンとぉ!」

 

「解説はオグリキャップが務める、バイト代に七面鳥の丸焼きを出されたので受けることにした。足りないのでお代わりください。」

 

「大食漢オグリは放っておいて選手入場といきましょう!」

 

 

エントリーナンバー一番! ブラックサンタ軍の主将! レッドサンタを血祭りにあげようとする男ォ! ブラックゥ! サンタァアアア!!!! ウマ娘とのレースを制するためにジェットパックを背負いの入場! 相手が何だろうとどんな手段を選んでも勝利するのがサンタの流儀! 世界中の子供たちに内蔵のお肉と石炭を届けに行くぞォ!

 

 

「地獄からの使者! ブラックサンタ―!」

 

 

続いてェ! エントリーナンバー二番! スピカサンタ応援団より最速の機能美ィ! サイレンスゥゥゥ! スゥズゥカァァアアア!!! 最速の名に恥じないその走りをサンタのために見せつけるゥ! 一枠一番は取られてしまったが先頭は決して譲らない! ウマソルジャーⅤの緑として世界中の子供のプレゼントを守り抜くぞ!

 

 

「……そのネタまだいじられるのね。」

 

 

お次! エントリーナンバー三番! ブラックサンタ軍より英知の結晶! デストロン軍からやって来たァ! スタァーァ! スクリィィィーム!!! トランスフォーマーとしてジェット機に変身できる能力を持つ彼! 作品によって女性になったり、すぐ裏切ったり、なんかカッコいい役どころを貰ったりする彼! 今回の優勝候補ダァ!

 

 

「……すまないが何故私はここに連れてこられたのだ?」

 

 

まだまだいこう! エントリーナンバー四番! スピカサンタ応援団主将! 完全無欠の大邪神! Y! О! U! あなたちゃん!!!!! この世界が誇る最強最悪の邪神! 三女神に睨まれながらも今日のレースでは全力を出す! 問題は出走前にちゃんとゲートに入れるか否かか! 最初に結論を言っておこう! 絶対無理!

 

 

「あなたちゃんにかなうものなど存在しない!」

 

 

さぁ折り返し地点だぞ! エントリーナンバー五番! ブラックサンタ軍よりやって来たのは超絶パワータイプ! ブラックゥゥ!!! あなたちゃん!!!!! 闇の力に飲まれてしまったいつものあなたちゃんが再登場だぁ! そう! 二人目だ! 敵の陣営にも自身を配置することで自身が負けるという可能性を0にしたァ! せこい!

 

 

「仮面ラ〇ダー! ブラック! アール、あなたちゃん!」

 

 

 

 

 

「……あれ、あなたちゃんだ。」

 

「……あなたちゃんだぞ?」

 

 

お、おぉっとぉ! もしかしてこの二人、初対面! 初対面だぁ! あなたちゃんとあなたちゃんが初めて会った様子! 先ほどせこいと言ったが訂正いたします! 同じ世界にあなたちゃんが二人! いやいつも300人くらいいますけどそれぞれの個体がお互いを認知してないのは初めてです! ねぇ認知して♡

 

 

「なんであなたちゃんが二人いるのだ?」

 

「わからぬ、ブラックあなたちゃんは首をかしげるのだ。」

 

 

「説明しよう! ブラックあなたちゃんはブラックサンタ軍が研究の結果開発したあなたちゃんのクローンなのだ! あなたちゃんと同様の性能を誇っており! あなたちゃんが何をしようともブラックあなたちゃんが相殺する! つまり! あなたちゃんはこのレースに置いて完全に無力化されるのだ! この勝負ブラックサンタ軍の勝利だァ!」

 

 

「……らしいぞ。」

 

「誰が生めと頼んだ? 誰が作ってくれと願った? 私は私を生んだ全てを恨む。だからこれは、攻撃でもなく宣戦布告でもなく、私を生んだお前達への、逆襲だ! ブラックあなたちゃんはこれよりあなたちゃんと合体し! 世界を崩壊させる!」

 

「面白い! 乗った!」

 

 

『「合体!」』

 

 

 

あなたちゃんとあなたちゃんがオーバレイネットワークを構築! あなたちゃんに宿るウマソウルと! ブラックあなたちゃんに宿るウマソウルが合体! 邪神と邪神で超融合!

 

 

「完成! あなたちゃん!」

 

 

そう! あなたちゃんは最初から完全体! 1+1は2ではない! 1だ!

 

 

「これより全世界にあなたちゃんからのプレゼントを差し上げる! そう! 爆発だ!」

 

 

両手に集まるのはあなたちゃんのエナジー! 打ち出されるは崩壊へのメモリー!

 

ゼットンの一兆度の火球を優に超すあなたちゃんのエネルギーは太陽よりも巨大なエネルギー体を生み出す!

 

 

 

「メェリィィィ!!! クリスマァァァアアアアアアスッ!!!!」

 

 

 




※崩壊した世界は三女神さまによって再生されました、さすが三女神
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。